累乗会反攻作戦~反撃の時は今

作者:洗井落雲

●反撃の時は来た
「皆、集まってくれたか。では、これより作戦の説明を始めよう」
 いつもより、些か緊張した面持ちで、アーサー・カトール(ウェアライダーのヘリオライダー・en0240)集まったケルベロス達に向けて、そう言った。
 曰く、シルフィディア・サザンクロス(ピースフルキーパー・e01257)やアビス・ゼリュティオ(輝盾の氷壁・e24467)といったケルベロス達の調査活動により、菩薩累乗会を行っている、菩薩達の動きを察知することができたという。
「これまで菩薩累乗会を行っていた4体の菩薩は、ビルシャナの占領地である『埼玉県秩父山地』、『青森県上北郡おいらせ町』、『宮崎県高千穂峡』、そして『岩手県奥州市胆沢城』を拠点として、占領地に『精舎』を建立しようとしているという事が分かったのだ」
 もし、この地に精舎が建立されてしまえば、拠点として難攻不落の物となってしまう上、何らかの大規模儀式の拠点となる可能性があるという。
「この精舎の建立を防ぐ手立ては一つ。大規模なミッション破壊作戦を行い、ビルシャナの占領地を攻撃するしかない。現在使用可能なグラディウスを全て使い切り、ビルシャナの占領地を強襲。その後、精舎建立中の菩薩の撃破を目指す。それが今回の作戦だ」
 菩薩が現れる4っつのミッション地域について説明しよう。
「先ほども説明したが、今回菩薩が活動しているミッション地域は次の4ポイントだ」
 まずは一つ目。埼玉県秩父山地。
 この地域には、自愛菩薩を精舎を建立しようとしている。そして、戦力として、エゴシャナ、幻花衆、輝きの軍勢、ちっぱい絶対殺す明王が存在しているという。
 二点目は、宮崎県高千穂峡だ。
 ここにいる菩薩は、恵縁耶悌菩薩。配下はデラックスひよこ明王、幻花衆、輝きの軍勢、アヴァリティア達。
 三か所目は、岩手県奥州市、胆沢城。
 この地域を担当するのが、闘争封殺絶対平和菩薩。そしてカムイカル法師、幻花衆、輝きの軍勢、鳳凰光背武強明王たちだ。
 四か所目、青森県上北郡おいらせ町。
 芸夢主菩薩が精舎を建立しようとしており、ケルベロス絶対殺す明王、幻花衆、輝きの軍勢、フリーダムビルシャナがそれを守っているという。
「各地域を確実に攻略するためには、埼玉県秩父山地で3チーム、青森県上北郡おいらせ町は9チーム。宮崎県高千穂峡と岩手県奥州市、胆沢城は12チームほどの戦力が必要だと予測されている。勿論、これは確実に攻略するためのチーム数だ。確率は下がるが、このチーム数以下でも、攻略は可能になる」
 例えば、チーム数が1/3の場合でも50%程の確率でミッション地域の攻略が可能で、チーム数が多い程、攻略成功の確率が上昇するという。
「今回の作戦は、グラディウスによるミッション破壊を成功させ、敵が混乱している隙をついて、菩薩撃破を目指すものだ。菩薩の周囲には、菩薩直属のビルシャナ達と、協力組織のデウスエクスが居るため、陽動作戦なども行って敵をさらに混乱させ、菩薩の周囲から戦力を引き離す必要がある」
 アーサーは、ヒゲを撫でつつ、言った。
 派手に陽動を行うことができれば、多くの敵を引き付けることができるだろう。多くの敵を引き付ける事の出来たチームは、厳しい状況に置かれるものの、全ての敵と戦う必要はない。上手く敵をかく乱し、可能な限り有力な敵を各個撃破した上で、脱出を目指すことになる。
 そして、多くのチームが敵を引き付けることができれば、菩薩を襲撃するチームがより有利になる。
「隠密行動で菩薩に近づくチームは、菩薩と、その周囲に残った戦力と戦う事になる。菩薩は安全に撤退する事を優先する為、戦力的に菩薩の撃破が不可能という場合は、その時点で撤退を選ぶ勇気も必要だ」
 また、隠密行動中に敵に発見された場合は、敵が迎撃してくる為、菩薩のところまで辿り着く事はできなくなってしまう。
「陽動部隊と隠密部隊。どちらもしっかりとした作戦を立てられなければ、菩薩を撃破する事は難しいだろう。とはいえ、ミッション地域の開放さえできれば、菩薩は精舎を建立できなくなる。作戦自体は、ミッション地域を解放できれば成功だ」
 そう言って、アーサーはふむん、と唸った。
「この作戦は、菩薩累乗会を阻止できる可能性のある重要な作戦だ。危険で、難しい作戦だが、君達なら必ず、やり遂げられると信じている。作戦の成功と、何より君達の無事を、祈っているよ」
 そう言って、アーサーはケルベロス達を送り出したのだった。


参加者
一式・要(狂咬突破・e01362)
槙野・清登(棚晒しのライダー・e03074)
狼森・朔夜(迷い狗・e06190)
鷹野・慶(蝙蝠・e08354)
伽羅楽・信倖(巌鷲の蒼鬼・e19015)
神宮寺・純恋(陽だまりに咲く柔らかな紫花・e22273)
天羽・蛍(突撃戦闘機・e39796)
ソールロッド・エギル(影の祀り手・e45970)

■リプレイ

●放たれし矢
 岩手県奥州市、胆沢城。今日この日、空よりいくつもの流れ星がこの地に流れ落ちた。
 いや、それは、流れ星ではない。反撃の嚆矢、グラディウスを携えたケルベロス達だ。
 怒りを、正義を、義憤を、憎悪を、様々な感情を乗せ、流星は敵地へと降り注ぐ。
 全ての星が地に降り立った時。悪しき結界は砕かれた。
 そして、今この時より、ケルベロス達の反撃が始まるのだ。

 輝きの軍勢、その一個体である輝きの華の視界を、何かがよぎった。
 それが脱ぎ捨てられたコートが宙を舞う姿であると気づいた時には、輝きの華は横合いから思い切り殴り飛ばされていた。
「ちょーちんっ!」
 拳を繰り出した相手――ケルベロス、一式・要(狂咬突破・e01362)が叫ぶのへ、要のテレビウム、『赤提灯』は、手にした凶器、酒瓶で以て、輝きの華へと追撃を仕掛ける。
「行くわよ、テレ蔵くん。まずはぁ、なるべく派手に、ね?」
 次に動いたのは、神宮寺・純恋(陽だまりに咲く柔らかな紫花・e22273)だ。テレビウム、『テレ蔵くん』へと声をかけ、純恋は『護りの紫花』を構える。
「ふぁいあ!!」
 気合とともに放たれた光弾は、殴り飛ばされ、今まさに起き上がろうとしていた輝きの華に直撃した。激しい光と爆発音。その合間を縫って、テレ蔵くんは追撃の斬撃をお見舞いする。
「まずは――」
 狼森・朔夜(迷い狗・e06190)が駆ける。青白く輝くオーラを身にまとい、獣のごとく疾走する。
「――てめぇからだ!」
 『天津狗(アマツイヌ)』。空から降りた星は、地上を走り、輝きの華を貫いた。
「ホーホー! 剣呑ですなぁ!」
 朔夜の攻撃により、輝きの華が爆散したのと同時。あたりに声が響く。
 姿ともに現れたのは、ビルシャナ・カムイカル法師。そして幻花衆、輝きの軍勢の一個体、輝きの鎌。さらに。
「奇襲、ぶっこみ、喧嘩の華よ。雄たけびを上げ突撃するもまた良し。なるほど、仏恥義理の心、よくよく理解していると見える」
 ビルシャナ・鳳凰光背武強明王だ。ケルベロス達へ、その武による圧を加えながら、言った。
「別に、お前に褒められるために来たわけじゃねぇよ……!」
 鷹野・慶(蝙蝠・e08354)が、黒太陽を具現化した。絶望の黒光はデウスエクス達に確かな圧となって降り注ぎ、その動きを封じる。
「ユキ、奴の武器を封じる!」
 ウイングキャット、『ユキ』は、鳴き声で応じた。リングを飛ばし、明王の手を封じるも、
「ホホホ! 無益!」
 カムイカル法師は笑うと、その翼を大きく羽ばたかせた。巻き起こる風はデウスエクス達の傷を癒し、身体にかけられた封じを完治させる。
「メディックか!」
 慶がうなる。
「回復されたって、何度でもっ!」
 天羽・蛍(突撃戦闘機・e39796)が叫び、敵群に突撃した。敵前衛デウスエクス達を巻き込んだ、高速の突撃!
「闘争や平和。どっちの行き過ぎも、それで被害を一番受けるのって力のない民衆でしょ!?」
 翼をはためかせ、一気に敵から距離をとる。
「個人でやるのは勝手だけど、他人に考えを押し付けるのなら……今ここで叩き潰す!」
「そうだとも!」
 伽羅楽・信倖(巌鷲の蒼鬼・e19015)が吠えた。怒りの雄たけびは雷となり、明王に降り注ぐ。
「己が思想を説くのは結構、自由に表現すれば良い。だが他者の思想さえも奪うのは最早洗脳だ。生き方を選べない程、人はそこまで弱くない」
「ホーホホホ! 口先だけは立派よな、ケルベロス!」
 カムイカル法師が吠える。
「口だけじゃない」
 槙野・清登(棚晒しのライダー・e03074)が言う。ライドキャリバー、『雷火』へとまたがり、
「今、俺の胸のエンジンが叫ぶのさ……早くアクセルを回せってな!」
 『無職鼓動(ジョブレスビート)』。職という寄る辺ではなく己の信念を頼りに立つ、孤高の騎士こと自宅警備員。その魂の鼓動を高らかに響かせる技。鳴り響く胸のエンジン――魂の鼓動の音は、仲間たちへの応援となる。
「心は絶対に不可侵な大切な場所だ! お前らの勝手にはさせん! いくぞ、相棒!」
 雷火はエンジンをふかしてその言葉に応える。清登を乗せたまま発進し、炎を纏った雷火は、明王へと突撃。
「むうっ!」
 その一撃を受け、明王がうなった。炎の一部が身体に燃え移るのも意に介さず、
「良き単車よ! 仏恥義理を感じる!」
「そりゃどーも!」
 と、清登。
「どれだけ理屈を積み上げたって……ビルシャナ達のやってきた事は、多くの人達から大切な何かを奪う事でしかないんだ……だから!」
 ソールロッド・エギル(影の祀り手・e45970)は、足元に魔法陣を展開した。アリアデバイス、『風の声』……様々な道具を用いて、声を届かせる。遠く、遠くへ。
「これより歌うは英雄の戦い、その勇姿! ビルシャナ、あなた達との戦いの歌です!」
 即興で歌詞を作り、歌い上げる。つたないながらも勇気を奮い起させるその歌は、ケルベロス達の内部から力を奮い立たせる。それは、『英雄の詩(エイユウノウタ)』だ。
「ホ! 挑発のつもりですかな!?」
 カムイカル法師が言い、
「歌で喧嘩に華を添えるもまた仏恥義理よ!」
 デウスエクス達も動いた。幻花衆が放つ螺旋氷縛波。テレ蔵くんはケルベロス達を守るため、それを自ら受けた。体の一部に氷がへばりつくが、キッと敵へと対峙する。
 次いで、輝きの鎌が鎌を投擲する。唸り声をあげて迫るそれを、信倖が『天銘』を構え、受け止めた。
「――ハッ! この程度じゃなぁ!」
 ニヤリ、と笑う信倖。
「その意気やよし!」
 明王が言った。
「では、我が仏恥義理を以て貴様らに応えよう。行くぞ! 喧嘩を始めようぞ!」
 明王、その背中の輝きがまし、プレッシャーとなってケルベロス達に襲い掛かる。
 ケルベロス達は改めて構え直すと、デウスエクス達に対峙した。

●反撃の時
「仏恥義理!!」
 明王が叫び、ケルベロス達へと斬りかかる。
「ちぃっ!」
 朔夜がドラゴニックハンマーにてその斬撃を防ぐ。力が吸い取られる感覚。ドレイン能力か! 衝撃と脱力が身体を駆け抜けるのを、朔夜は感じた。
「あたしとも遊んでもらうわよ!」
 要が飛んだ。その拳に水のオーラを纏わせ、相手の足元へと叩きつける一撃。
「まったく、あんたたちのせいで、こっちは虎の子を全部使いきっちゃったのよ……後が、つかえてんだよっ!」
 『瀬墜(ライツイ)』の一撃が、明王を襲う。同時に、赤提灯の凶器攻撃が明王に繰り出されるが、これを明王は回避。
「こいつはお返しだ!」
 要の攻撃に続くように、朔夜が動いた。ドラゴニックハンマーを轟竜砲へと変形させ、明王へ向けてぶっ放す。
「奥州は、でかい力に抵抗した人達、長い戦乱の終わりと本当の平和を願った人達の歴史が刻まれた場所だ。口先だけの闘争も平和もお呼びじゃねぇんだよ! 喧嘩がやりたきゃ他所でやれ!」
「むうっ!?」
 その一撃に気圧されるように、明王は後方へ飛んだ。
「お前らの救いだのなんだに! こっちは散々振り回されて、奪われて、押し付けられて……もう沢山なんだよ!」
 慶が追撃を仕掛ける。
「命ず、眇たるものよ転変し敵手を排せ……!」
 『使役術師の黒書より抜粋(メタモルフォーシス)』。それは、周囲の物質を生命へと変化させ、敵を襲わせる古代語魔法だ。例えば命なき石はネズミに、土塊はカエルへ、散り逝く花すら蜂の大軍へ、そして開かれた本は鳥へと為るだろう。生まれた生命が、一斉に明王へと攻撃を仕掛ける。振り払ってもまとわりつく、偽りの命の奔流。ユキもまた、その群れに加わる様に、爪でひっかき傷を与える。
「平和は自分達で勝ち取るモノよ。他から一方的に押し付けられるのはノーセンキュ-よん。まぁ、ケンカ明王さまに言ってもあんまり意味ないかもだけどー?」
 言って、純恋がオウガメタルを活性化させる。
「オウガメタルちゃん、よろしくー。テレ蔵くんは回復お願い!」
 オウガ粒子がケルベロス達に降り注ぎ、傷を癒し、超感覚を活性化。テレ蔵くんも応援動画で、味方のケルベロスの傷を癒した。
「むむ、明王様、お助けいたしますぞ」
 カムイカル法師が再び回復の風を巻き起こす。
「こっちも援護するよ! 飛んで、ヒールドローン!」
 蛍がドローンを展開し、味方の援護を行い、
「暫し故郷を離れてみれば好き放題群がりおって! この地で人々を貶めようとするのならば、落とし前をつけて貰おうか!」
 信倖が吠え、零式鉄爪を構える。駒のごとく回転しながら斬りつけ、敵デウスエクスを纏めてなで斬りにした。
「メタルさん! 力をお借りします!」
 清登の言葉に、『メタルさん』が応える。その身をオウガメタルの装甲で覆った清登は、雷火と共に突撃。
「ビルシャナ! 此処から……出ていけ!」
 オウガメタルの装甲に、ライドキャリバーの勢いも載せた、全力の拳の一撃が明王に叩き込まれる。攻撃が叩き込まれたのを確認するや、雷火はガトリング砲を猛回転させ、デウスエクス達に弾丸の雨を見舞った。
「――取り戻すんだ。この場所を、人々の平和な生活を。そのために全力を尽くせないなら……今、ここに僕がいる、意味がない!」
 ソールロッドは歌う。「想捧」。愛を謳い、世界を愛する者を歌う。
 だが、デウスエクス達も黙ってはいない。幻花衆は螺旋掌による一撃を繰り出し、輝きの鎌もまた、鎌を振りかざし、ケルベロス達に斬りかかる。
 デウスエクス達の攻撃は苛烈だ。ケルベロス達にも傷は増えていく。
 だが、撤退できない理由が、ケルベロス達にはあった。今まさに菩薩と戦っているだろう仲間たちの為にも、可能な限り、敵を引き付けておかなければならない。
 華やかなりしは、大敵を討伐する戦いだろう。
 だが、そのための道を作る事もまた、必ず必要となる戦いである。
 歌には歌われぬかもしれない。
 だが、その活躍は決して色あせない。
 土壌がなければ華は芽吹けず。水がなければ華は咲けない。
 たとえ歌われずとも、たとえ華やかにあらずとも。ここに集いしは、間違いなく英雄たちである。
 その矜持が。ケルベロス達を奮い立たせ続けた。
 そして、その戦いが、活躍が、真に報われる時が、ここに訪れたのである。
 突如、デウスエクス達が浮足立ったのが、ケルベロス達にはわかった。
 あの明王ですら、動揺を見せる程の状態。ケルベロスとの戦い。それ以上に重大何かが、デウスエクス達に突きつけられた。そう言う様子だった。
 それは隙となる。そしてそれを見逃すほど、ケルベロス達は甘くはない。
「よそ見してると……噛み殺すわよ!」
 『練成闘気 -蛟-』を拳にまとわせ、要が明王へと殴り掛かった。完全に隙をつかれた明王に、その一撃はクリーンヒットする。赤提灯は応援動画を流し、ケルベロスへの援護を行った。
「ぐ……おおっ!」
 明王が喘ぐ。さらなる動揺が、デウスエクス達を襲った。
「へえー、これは……皆ぁ、もう少しよー! 痛いの痛いの飛んでいけ――」
 状況を察した純恋が笑い、『癒しの紫花(ヒーリングビオラ)』を展開する。咲き誇る紫色の菫の花は、光を放ち、ケルベロス達の傷を癒した。テレ蔵くんも、応援動画でケルベロスへ最後の援護をかける。
「これで仕留める……!」
 朔夜が言った。『天津狗』による突撃! 蒼白く輝く流星は大地を駆け、明王の身体を文字通りに貫いた!
「く……見事な……仏恥義理…………!」
 それが明王の最期の言葉となった。明王は地に倒れ伏し、動かなくなる。
「みょ、明王!」
 慌てるカムイカル法師へ、
「慌てるなよ。お前もすぐに後を追えるさ」
 慶が言い、グラビティで生成した塗料を撃ち放つ。激しく放たれたそれは、弾丸にも似た衝撃をカムイカル法師に与えた。そして、ユキの爪撃が、カムイカル法師へトドメをさす。
「ば、馬鹿……なぁ……!」
 断末魔。浮足立ち、戦いに専念できなくなった相手など、もはやケルベロス達の敵ではないのだ。
「大物が倒れたのなら……!」
 蛍が『独立機動砲台+5』の銃口を幻花衆に向け、一斉射。放たれた砲撃が、幻花衆を吹き飛ばす。
「コイツで仕舞いだ!」
 天銘を構え、信倖は突きを繰り出した。幾度となく繰り出される高速の突き。それはまさに槍の雨。【秘槍・雨の型】より放たれるは、奥義、『天槍『荒梅雨』(テンソウアラツユ)』。
 この攻撃を受けてはひとたまりもない。輝きの鎌は悲鳴をあげる間もなく爆散する。
 もはや動く敵は存在しない。ケルベロス達は見事、勝利を勝ち取ったのだった。

●勝利の凱旋
「やった……!」
 蛍が喜びの声をあげた。それは、この戦いで勝利を手にしただけではない。ここ最近起きた、ビルシャナによる一連の事件。対処行動をとる事しかできなかった現状を打破し、ついに一矢報いた。その喜びもあった。
「喜ぶのはあとねー。ひとまず撤退しましょう?」
 純恋の言葉に、ケルベロス達は頷いた。時間稼ぎとしては十分以上の成果をあげられただろう。ここで孤立しては意味がない。
 だが、撤退中に、ケルベロス達は風向きが変わった事に気付いた。道中、デウスエクス達がわき目もふらずに撤退していくのが見えたのだ。
「これは……皆、やったみたいね」
 走りながら、要が言う。周囲の状況から、もたらされる結論は一つだ。勿論断定はできないが、大きな戦果をあげたであろうことは間違いないだろう。
「俺達が狩れたのは二匹だったが……どうやら、作戦としては大物を狩れたみたいだな」
 慶がにやりと笑いながら、言った。
「この場所も……人々の手に、戻るんですね……」
 ソールロッドが言うのへ、
「ああ」
 朔夜が一言だけ。しかしどこか嬉しそうに答える。
「後は、俺達が無事に帰るだけ。最後まで気を抜かずに」
 清登が言い、
「さぁ、行こう」
 力強く頷いて、信倖が言った。

 ケルベロス達は離脱の途に就く。
 菩薩への反撃作戦。その結果として、大きな成功を手にし。
 ケルベロス達は、凱旋するのだった。

作者:洗井落雲 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2018年4月13日
難度:やや難
参加:8人
結果:成功!
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