朧笑い

作者:長谷部兼光

●Smile
 単純な、思い付きだったはずだ。
 ……偶々時間が空いたので、桐山・憩(ステンレス・e00836)は気の向くまま街を散策し、ふと、何時もは使わぬ小路へ足を向けた。
 けれどもそんな些細な選択が、非日常へと道を繋いでしまったか。
「嫌だなぁ。ここで会ったのも何かの『縁』じゃないか。そんな強張った顔をしてないで、もっと笑おうよ。世の中笑顔だよ? 笑顔」
 見知った街の見知らぬ路地。燃えるような夕陽の下、少年の形をしたドリームイーターが飄々と、憩の眼前に立つ。
「はっ、顔をすっぽりモザイクで覆った野郎が、寄りにも寄って笑顔を説くか。笑えない冗談だぜ?」
「……いいね。話が早くて助かるよ。どうやら僕の審美眼も、強ち捨てたものじゃないらしい」
 最も、眼だってモザイクに覆われて曇りっぱなしだけどね、と、少年は哀楽の分らぬ調子で言った。
「そう、笑顔。至高の『笑顔』だ。それこそがきっと唯一、僕のモザイクを晴らしてくれる。その為にいろいろ試してみたんだよ。人助け――気紛れに、君らの真似をしたこともあったっけ。他のデウスエクスを出し抜くのは楽しかったけれど……困ったことに、どれもちっとも『笑え』やしない」
 嘆息しながら、少年は自身の顔(モザイク)を撫でる。
「……能書きは良い。どうせ、端から殺り合うつもりなんだろう?」
 少年よりも一足先に、憩が構える。ウイングキャット・エイブラハムは彼女の肩から飛び降りると、総毛を逆立て威嚇する。

「ご明察。正直、自分だけじゃ八方塞がりでね。君らと刃を交えれば、新しい発見もあるかもしれない。悪いけど、死ぬまで付き合ってもらうよ!」

●笑顔の追求者
 憩と連絡が取れない。ザイフリート王子(エインヘリアルのヘリオライダー)のその一言で、ヘリポートに集合したケルベロス達は全てを察する。
「……そう言う事だ。今は一秒の時間も惜しい。ヘリオンに乗り込め。事件の詳細は道すがら説明する」
 場所は街の大通りから少し奥まった場所にある路地。
 道幅も戦闘するに不足無く、人気(ひとけ)は無い。
 そこで憩が邂逅したのは『J』と言う名のドリームイーター。至高の『笑顔』を追求する存在で、状況、情勢、グラビティチェインや、果ては命よりも『それ』を優先する姿勢は、他のデウスエクスから見ればかなり異質に見えるだろう、と王子は語る。
 戦闘スタイル的には、催眠、アンチヒール、トラウマなどの搦め手を得意とし、隙を見せれば容易く付け込んでくる相手だ。何かしらの対策は考えた方が良い。
「準備は良いか。そろそろ現場に到着する。後は任せたぞ。願わくば、全員無事に戻ってこい――武運を祈る!」


参加者
桐山・憩(ステンレス・e00836)
樫木・正彦(牡羊座の人間要塞・e00916)
巽・真紀(竜巻ダンサー・e02677)
九十九折・かだん(いきとしいきよ・e18614)
一之瀬・白(八極龍拳・e31651)
ルチル・アルコル(天の瞳・e33675)
ローゼリア・ブラッド(狂った様に舞う蝶・e33931)

■リプレイ

●逢魔が時
 夕陽に照らされ、真っ赤に染まった街の路地。二人と一匹の影法師が乱れ舞い、ぶつかり合って火花を散らす。
「シハハ! くだらねぇ、ご立派なのは目的だけかァ?」
 Jの蹴撃をチェーンソー剣・Dreadnought's Roarで斬り払った桐山・憩(ステンレス・e00836)はそのまま彼を『嘲笑う』。
「いやはや。全く持って面目ない。けど――これならどうかな?」
 朧笑いの掌より放たれたモザイク弾。今度は回避が間に合わず、爆ぜる。飛散したモザイクは憩の周囲に滞空し、エイブラハムからのヒールを弾いているらしい。傷の治りが明らかに遅い。加えて大きな実力差。
「ったく、ロクに散歩もできやしねぇ」
 だが、そんな状況に置かれても、憩が零すのは精々愚痴の一つきり。弱音を零してやる道理も無い。
「それは大変だ。何なら僕がエスコート役を買って出ようか」
「いらねぇよ。てか、十割方お前のせいじゃねーか」
 朧笑いの軽口を意にも介さず、憩は加減無くDreadnought's Roarを叩き当て、彼の躰のその奥に、深く怒りを刻み付ける。
「それにな、エスコート役ならもう席は無ぇよ」
 憩が不敵に笑うと、刹那、路地を新たな影が疾った。標的を捉えた影の腕先は無数に枝分かれ、左右上下を埋めつくし、朧笑いを絡め取る。その正体は、九十九折・かだん(いきとしいきよ・e18614)が繰る攻性植物・カーリーテール・エンデだ。
「憩に、目ェ付けたやつの顔。見に来た」
「こんな顔だ。美丈夫だろう?」
「……ノーコメントだ。笑えない」
『吐息』をひとつつく前に、攻撃を差し込む余裕があった。
 果たして捕縛は成功し、駆けつけたかだんは憩の同列(よこ)に立つ。
「憩、あいつ知り合い?」
「いや。でもどっかで見た気はする」
「他人の空似かもよ。良くある顔さ。ドリームイーターなら特に、ね」
 記憶を辿ろうとする憩。それに茶々を入れるJ。彼が憩に目を付けた以上、何かしらの経緯はあるのかもしれないが……。
「ま、殴り飛ばして良いに、変わりは無いか」
 愛おしく思う相手には柔らかな微笑みを、彼女の命を狙う相手には憐憫を含んだ冷ややかな微笑みを。そして次にかだんがJへ見せる微笑みは、反撃の時を告げる獰猛な威嚇(ほほえみ)だ。
「憩殿、待たせた!」
 直後、無数の鎖が四方より現れ、縦横無尽に天と地を泳ぐと、戦場の一点、即ちJ目掛けて集結し、その身を拘束する。
「よくやった百火! そのままそいつを逃がすな!」
 ビハインド・百火が夕映えに響く言に幽か頷くと、鎖達はさらに束縛を強め、Jの頸を一之瀬・白(八極龍拳・e31651)へと差し出した。
 白は己が手刀に魂魄を収束させ、魂魄は巨大な戦斧を形作る。
「噛み砕け、咬龍の牙!」
 一撃。頸を落とすには至らなかったが、彼に接触した魂魄は残留し、彼の動作を阻害する。
「カウムにいないと思ったら、まさかこんな事になっておったとはのう。まぁ、憩殿ならそうそうやられる事は無いと思うが……あまり皆に心配を掛けるでないぞ?」
「ああ。悪かった。心配させた分は、後で奮発する」
「それは楽しみ。けど、その前に、やるべきことが一つある」
「うん! お世話になってる憩さんのピンチと聞いて!! しつこい男はシベリアの大地でコヤシになってもらうの!」
 ルチル・アルコル(天の瞳・e33675)とフィアールカ・ツヴェターエヴァ(赫星拳姫・e15338)がほぼ同時にスイッチを押し込むと、色とりどりの爆風が次々に上がり前衛の士気を高めた。二人のミミック・ルービィとスームカも互いに武装を取り出して、乱打乱撃躊躇なく、朧笑いを叩いてのめす。
 二重の鼓舞を背に受けて、樫木・正彦(牡羊座の人間要塞・e00916)は狂を発した笑みを浮かべ、ライフル型のガジェットを回転衝角形態に組み替える。恵体を生かし、Jと憩の『縁』の間に割り込むと、朧笑いだけを強引に引き剥がし、穿つ。
「出待ちのストーカー……か? 至高の笑顔の追求者を自称する奴がとる手段としては、陰湿極まりない気もするが……」
 衝角の高速回転と轟音が響き渡る最中、小心と恐れの震えまでは伝わってくれるなと、そう念じた。
「酷いな。言うにしたってもうちょっと詩的な言い方があるだろう。ええと、ほら、うん、無い? 無いな。なんてこった。それじゃ僕ストーカーじゃないか!」
 ……この男。やりにくいかもしれない。少なくとも彼のペースに巻き込れれば大火傷をする。
「真紀。回復は任せた、ベースのリズムを刻んでくれ」
「了解」
 Jの芝居を振り切るように、正彦は巽・真紀(竜巻ダンサー・e02677)へ呼び掛けた。
 真紀は憩に幻影を纏わせ、癒す。これで直に彼女の回復を遮るモザイクは消失するだろう。
「しっかし、夢喰連中だきゃ『何が欠けてる何処が欠けてる』っつって、ソレがまんま行動原理やらになってるヤツこそザラだけどよ。トンチキなモチベで絡まれる側にしてみりゃたまったモンじゃねーよな、実際」
「手厳しいね。事実過ぎて反論の仕様も無いと来た」
 Jはわらう。顔がモザイクに覆われている故だろう、純粋に笑っているのか、それとも嗤笑しているのか、解らない。
「あんま聞いてなかったけど、何はともあれやってることは『悪』のそれだよなァ? 私はそういうのが好きじゃねェんだァ! 遠慮なくぶっ飛ばさせていただくゼ!!」
 ローゼリア・ブラッド(狂った様に舞う蝶・e33931)は黄昏色の空を裂き、全体重とありったけのグラビティを脚部に乗せてJへ叩き込み、機動力をさらに奪う。
「よォ、大丈夫かァ? みんなと一緒に助太刀ってやつだぜェ!」
 ローゼリアが見事戦場に『着地』して、七人のケルベロス達は憩との合流を果たす。
「早かったな。ザイフリートの運転はどうだった? シシ」
 意地の悪い口調で、憩はローゼリアに訊く。
「……快適だったぜェ。何せ未だ天地がごっちゃになってるもんなァ!」
「そりゃあ結構。だったら日頃の感謝も込めて、後に使う領収書の宛名は王子につけておく」
 チェーンソーの切っ先をJに向け、憩は再び嘲笑う。
「人もサーヴァントも全部ひっくるめて十四。いいね。大入りだ。改めて、僕の事は気軽にJと呼んで欲しい」
 伊達か酔狂か、朧笑いは敵の目の前で、芝居がかった会釈をしてみせる。
「さて。まずは数の有利を台無しにしよう。さぁ……キミ達の笑顔を見せてくれないか」
 Jがスマートフォンを叩く。不愉快な耳鳴りと共に、催眠電波が後衛達の脳内に潜り込んだ。

●夕闇
 積極的にまき散らされる催眠電波を、真紀の散布した紙兵が弾く。
 催眠による乱痴気騒ぎもようやく収まって、宙を揺蕩う紙兵の数が充分ある事を確認すると、真紀は縛霊手ごとオウガメタルを纏い、眩い粒子を放出する。
「つかなんなんだよオメー。J? 気軽にジョーって呼んで欲しそうなツラしやがって。何帽子被ってんだよ。人に挨拶すんなら帽子脱げよ。ハゲてんのか? ハゲ隠してんのか?」
「いや別にハゲてはイナイよ? いないからね?」
 この男のレスポンスの良さは弱点でもあるだろう。憩はバスターライフルで朧笑いを睨みつけ、せっかくなので真紀の挑発に続くことにした。
「取り繕ったってバレてんだぜ? 嫌らしい攻撃ばっかしやがって、このハゲ!」
「ハゲじゃねぇよ!!」
 凍結光線に曝されながらも力強く否定するあたり、真実なのかもしれない。単にノリが良いだけなのかも知れない。
「どっちでも構いやしないぜェ! アンタの流儀に合わせるなら、世の中笑顔だろォ? だったら笑えヨ。題目だけじゃないならなァ!」
 迸る闘争の心地よさにローゼリアは大笑しながら意識を集中する。研ぎ澄まされた精神は爆風となって具現化し、氷諸共朧笑いを砕く。
「勿論。どうあれ笑顔は大好きさ。けれど、嘲笑われるのは嫌いでね」
 Jは軽やかに跳躍し、怒りのままに憩を蹴り飛ばそうとする。
「憩さんはやらせない。壁に、なるの!」
 しかし直前フィアールカが盾となって蹴撃を受け止め、その隙をついたルチルのルービィがJの脚にガブリと噛みついた。
 良くやった、と、ルチルは短くルービィを褒める。
「一つ、問おう……何でも、人助けやらもしてきたという話が聞こえたが……その助けた者を、お主は最終的に『どう』してきたのじゃ?」
 朧笑いの至近にて、白は泰然と八極拳の構えを取る。
「助けられた人間たちは、窮地を脱し、ほっと笑顔を覗かせた。至高の笑顔を追求するドリームイーターの前でね。だったら次の瞬間には『こう』するしかないだろう」
 地が捲れ、底より無数の『鍵』が槍衾の如き密度で現出したのと、白が心身より淡く光を放ち、震脚によって間合いを零まで詰めたのは同時だった。
「……成程。やはり、お主は此処から絶対に逃がす訳にはいかぬのう!」
 鉄山靠がJの痩身長躯を吹き飛ばす。だが、鍵達もからがら陸の船の強襲を逃れ、ルチルの心を抉った。
 相手が笑顔に引き寄せられたのなら、盾役である自分が微笑んでいた効果もあっただろうか。抉られた心は、いずれ真紀の紙兵とかだんの果実が埋めてくれるだろう。ルチルは手の先で指鉄砲を作り、その銃口をJに向けた。
「ヒトの感情への興味、そこには共感できる。わたしも学んでいる最中だし、観察は怠っていない。そうまでして引き出したい笑顔というのにも興味はある」
 黄金籠手のガジェットが変形し、指鉄砲は、そのまま真の銃となる。
「だが、ヒトが死ぬまで、なんてだめだ。ヒトの命を奪うような検証も、実験も、許せることではない」
「異質と異端の道を這いつくばってでも、僕には欲しいものがある。残念ながら、聞けないな」
 ならば討つしかないだろう。ルチルは指先より魔導石化弾を放ち、フィアールカとスームカがそれに追随した。
「行くよスームカ! 息を合わせて! ダブル石化なの!」
 零の境地を籠めた拳とスームカの武装が交差して十字を描き、さらにかだんがチェーンソー剣を大きく振りかぶり、ズタズタに斬り荒ぶ。
 黄金の果実は全員に行き渡った。後は鋸刃を回すのみ。
「――憩に目を着けるのはいいセンスだ。昂ぶってる時の、牙を剥いた顔とか、私も好き」
 けど、あの子は優しい顔もするよ。と、かだんは語る。
「お前が欲しい笑顔が、もし前者で良いなら、それは獣の威嚇行為と大差無い。今日のお前は、こんな形で出逢って、果たしてそれを見れるかな?」
「中々興味深い話だね。本人にはオフレコで、もう少し、詳しく聞かせてもらおうかな」
 朧笑いの魔手がかだんに到達する直前、突如として彼の足下よりマグマが噴出し、邪心を遮った。
「怪我しすぎるなよ、かだん。その分余計にみんなが痛む」
 マグマを収め、正彦は無刃の鉄塊にJの姿を映す。
「……酸っぱいコーヒーと出来立てのサンドイッチを食べる生活。それが分かれば、お前は笑顔を知っただろうか?」
「モザイクの晴れない顔で何かを食べたって、なにも美味しくはないのさ」
 けれど魅力的な提案だ、とJは僅か首肯する。
「君たちを倒してモザイクが晴れた暁には、じっくり堪能するとしよう」
 言いながらJは、生成したモザイク弾を掌で玩んだ。

●宵
「アハハッ! 楽しいねェ!」
 ローゼリアは笑う。朧笑いは関係なく、戦闘狂の性分だ。誰が相手であろうとこのスタンスは変わらない。
 ローゼリアが電光石火の蹴りを放ち、Jの急所を貫けば、フィアールカもローゼリアと『同性質』の笑みを満面に浮かべる。
「いい? 笑顔って本来攻撃的なものなのよ。獣が牙を向くことこそ、笑いの原点だものッ!! 喰らえ!サラスヴァティー・サーンクツィイ!!」
 バレエの如き流麗な蹴りはやがて波濤となって渦を巻き、煌々と輝いて激流に変じ、終局、凪へと還る。
「オレも螺旋忍者っポいトコ、見せてやんよ」
 凪いだ水面を今一度揺らすように、真紀は分身と共に連撃を仕掛ける。虚像が踊り実体が舞う幻影殺法。Jは終ぞ看破できぬまま、虚実全てをその身に食らい後退る。
「逃がすものか。お前にイコイの笑顔は奪わせない」
 虚実の後には螺旋が渦を巻いていた。ルチルのアームが朧笑いの守りを穿つと、百火が彼の背後に回り込んで強引に締め上げる。
「笑顔の為に戦うのは良い心掛けじゃ……それが利己的な目的でさえなければな!」
 白は小太刀・慈龍の柄に手をかけ、これこそこの刀が放つ『最後の一閃』とばかりに渾身の月を描く。
 幻の月を見た正彦は、笑う。ごまかしの狂笑ではない。勝利を確信した、真実(ほんとう)の笑みだ。
「黄道十二封印限定開放!」
 ゾディアックソードの封印は全て解け、『無刃の鉄塊』は反物質の刃を形成する。
「ついでだ。十三星座目もつけてやる」
 かだんがチェーンソーを大きく鳴らすと、二人は一息に踏み込んで、朧笑いのモザイク以外を削ぎ落す。
「今だ、決めろ! 憩!」
「刮目しろよ。特等席だ」
 Jは遮二無二体を動かそうとするものの、『石』のように固まって、動けない。
「……テメェは大きなミスをした。私に手を出した事じゃない。この『街』に来た事だ。街を脅かす奴は、私達が叩き潰す」
 容赦は無い。憩は再びDreadnought's Roarのエンジンに火を入れ――。

「『街』……か。はは。通りで、一人じゃどうやっても辿り着けない……筈だ」
 モザイクと共に、Jは消える。
 消えゆく朧笑いの声はどこか穏やかで……もしかすると消滅する直前に、彼の求めた答えへ辿り着けたのかもしれない。
「あばよ笑い男。その帽子、似合ってたぜ」
 弔うように、憩は呟いた。

●街
 終わってみれば大過無く、被害らしい被害と言えばエイブラハムが悲しげな瞳のまま伸びていたこと位だ。
「伸びてる」
「伸びてるね」
「エーイブラハムだこれ」
 エーイブラハムだった。
 憩は破れた四肢の布地を繕うと、程良く伸びたエーイブラハムを抱え上げ、丁度小腹が空いてきたよなと、皆に訊く。
「サンドイッチ、何食べたい?」
「私は甘いのがいいねェ? 欲を言えばクリームチーズとレーズンのやつ」
「わたしな、わたし、たまごのサンドイッチ食べたい」
「んじゃドライカレー挟んだヤツ」
「ベーコンレタスサンド、ベーコン増しで。あ、肉汁も掛けてくれると嬉しいのじゃ」
「マチャヒコ、お腹が空きました! カツサンドで!」
「え!?」
「ん?」
「ご……ごほん。私ね、お肉いっぱいのサンドがいいの! ……その、酸っぱいコーヒーって、どれくらい酸っぱいの?」
 フィアールカはとあるワードが口の先まで出かかったものの、とりあえず、豚頭になった正彦のカツサンドからは目を逸らすことにした。
「…………いちご」

「ああ。いいぜ。何でもござれだ。けど覚悟しろよ? こっちも思う存分、腕に縒りを掛けるからな」
 Jが遺した帽子をふわり頭に軽く乗せ、憩は優しい顔で、微笑んだ。

作者:長谷部兼光 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2018年4月25日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 6/感動した 0/素敵だった 3/キャラが大事にされていた 2
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