累乗会反攻作戦~精舎必滅の剣閃

作者:天枷由良

「大成・朝希さんら数名のケルベロスによる調査で、菩薩累乗会を行っている菩薩達の動きを捉えることが出来たわ」
 ミィル・ケントニス(採録羊のヘリオライダー・en0134)はそう切り出すと、早速説明に入った。
「これまでの菩薩累乗会を引き起こしていた四体の菩薩は、ビルシャナが占領しているミッション地域に『精舎』を建立しようとしているようなの。この『精舎』が完成した地域は難攻不落の拠点となり、恐らくなんらかの大規模な儀式に使われるでしょう。
 これを防ぐため、皆には現在使用可能なグラディウス全てを投入しての大規模なミッション破壊作戦を行い、ビルシャナの占領地を強襲、精舎建立中の菩薩撃破を目指してもらうことになったわ。これから敵戦力の分布や注意事項を伝えるから、よく聞いてちょうだいね」

 精舎建立中の地域と対応する菩薩達は、
 一、埼玉県秩父山地にて、自愛菩薩。
 二、宮崎県高千穂峡にて、恵縁耶悌菩薩。
 三、岩手県奥州市胆沢城にて、闘争封殺絶対平和菩薩。
 四、青森県上北郡おいらせ町にて、芸夢主菩薩。
「――以上のようになっているわ。それぞれの地域で菩薩を護衛する戦力については用意した資料で確認してもらうとして……各地域のミッション破壊を確実に成功させるためには、複数チームによる攻撃が必要となるの。それだけでなく、グラディウスによる攻撃後は敵地で菩薩の撃破を目指すわけだから、今回は同地域を攻撃するチーム間で役割や目的についての認識をしっかりと共有しておくことが、とても重要になるでしょう」

 作戦の基本的な流れは、通常のミッション破壊と同じようにグラディウスでの降下攻撃を行ってから、敵が混乱している隙をついて菩薩撃破を狙うというものだ。
「菩薩の周囲には、菩薩直属のビルシャナ達と協力組織のデウスエクスが居るから、陽動作戦などを行って混乱を助長し、菩薩の周囲から戦力を引き離す必要があるわ」
 混乱している敵は『より派手な攻撃を行っているチーム』に殺到してくるので、陽動チームが派手に暴れまわって菩薩の護衛を多く引き付ける事ができれば、菩薩急襲チームの成功率を上げられるだろう。
「菩薩の護衛戦力は、目の前にいるケルベロスが逃走すれば菩薩の護衛に戻ろうとするから、陽動チームの撤退は殿を残したりなどしなくても容易だと思われるわ。でも撤退が早すぎると菩薩急襲チームの戦闘中に誘き出した護衛が戻ってきてしまうから、なるべく時間を稼げるように頑張りましょう。引きつけた敵が多ければ戦いも厳しくなるだろうけれど、陽動だから全ての敵とまともに戦って撃破する必要はない、という点は覚えておいてね」
 また、菩薩を撃破できた場合、敵軍は統率が取れなくなって散り散りに敗走していく。そうなればケルベロスたちの撤退が簡単になるだけでなく、余力があれば残敵の追撃を狙うこともできるだろう。
「各地域毎に10チーム以上の戦力を集中させれば、7割以上の確率で菩薩の撃破が叶うだろうと予測されているわ。菩薩の撃破確率はチーム数と連携の内容が大きく影響するから、一体でも確実に撃破しようとするなら、戦力を集中させた方がいいのかもしれないわね」
 難儀な作戦だがケルベロスとしての奮闘を信ずると結び、ミィルは説明を終えた。


参加者
真上・雪彦(狼貪の刃・e07031)
レイリア・スカーレット(鮮血の魔女・e24721)
プラン・クラリス(愛玩の紫水晶・e28432)
アンセルム・ビドー(蔦に鎖す・e34762)
霧山・和希(碧眼の渡鴉・e34973)
星宮・亜希(癒しの翼をはためかせ・e36281)
錆・ルーヒェン(青錆・e44396)
アメリー・ノイアルベール(本家からの使い・e45765)

■リプレイ

 岩と水が織り成す奇跡の絶景、高千穂峡。
 その上空から、輝く小剣を携えたケルベロス達が飛ぶ。
 数は七十二。それだけ居てもまだ、成功を確実とするには足りない。
 だがケルベロス達は振り返らず、躊躇わず。手にした刃に想いを込めた。
 そして――。


「ハッ、所詮は鳥公どもの薄っぺらい策謀だ。脆すぎるぜ」
 真上・雪彦(狼貪の刃・e07031)が、グラディウスを収めながら吐き捨てる。
 その瞳に、ビルシャナが築いた回廊や障壁は映っていない。高千穂峡に結集した九班七十二人の力は、最初にして最大の目的を見事に成し遂げていたのだった。
「人々の魂を、肉体を汚す鳥たちには、当然の報いですよ!」
 星宮・亜希(癒しの翼をはためかせ・e36281)が勝ち誇り、プラン・クラリス(愛玩の紫水晶・e28432)も静かに頷く。
「やったね、和希」
「……ええ」
 人形を抱き締める腕を少し緩めたアンセルム・ビドー(蔦に鎖す・e34762)の呼び掛けに、短くも力強い叫びを上げていた霧山・和希(碧眼の渡鴉・e34973)が答える。
「ですが……此処からが本番、ですね……」
 生涯で一二を争うのではと思うほどの大声を発しながらグラディウスを制御したことで、すっかり乱れた呼吸を何とか整えつつ、アメリー・ノイアルベール(本家からの使い・e45765)が呟いた。
「ああ。どうやら早速、お出ましのようだ」
 此方は準備万端といった様子のレイリア・スカーレット(鮮血の魔女・e24721)が、冷気纏う銀槍を携えて言う。
 その穂先が向けられた方。猛攻の余波が徐々に晴れていくところからは、陰鬱な忍びらしき姿が三つ、近づいていた。
「幻花衆って奴か?」
「うん。強さはそれほどって感じだけど――」
 刀を抜いた雪彦の言を肯定しつつ、アンセルムは同意を求めて親友へと目を向ける。
 しかし和希の意識は、既に忍び達へと集中しているらしい。押し黙ったまま白黒二丁のバスターライフルを構えた彼から答えを得るのは諦めて、アンセルムも“鎖”と“土”の名を持つ蔦に力を注ぐ。
 そうして続々とケルベロス達が戦闘態勢を整える中で。
「――ンふ」
 遠くを見つめながらふらふらとしていた錆・ルーヒェン(青錆・e44396)が、突然弾かれるように吠えた。
「ドコだいカワイイ菩薩ちゃん! 俺と遊ぼーよォ!!」
 狂気を孕む声は、たちまち戦場に木霊した。それに引き寄せられたか忍び達の向こうからダモクレス・輝きの夢が二体現れたのを見やり、ルーヒェンは口元を歪めて大鎚を構える。
「アンタらじゃねーっての!」
 大鎚は砲撃形態へと変じて、ルーヒェンの叫びを具現化するように砲弾を撃ち放った。
 それと同時に、幻花衆からも苦無や手裏剣が飛んでくる。
「チッ……いいぜ、望むところだ!」
 一つを打ち払い、一つを叩き落とし――そして一つを身体で受けてから、雪彦も声を張り上げる。
「来やがれ、片っ端から全部平らげてやるぜ!!」


 哮りに応じて、天空から無数の刀剣が降り注ぐ。
 とかく量を意識した技は大地を耕しながら敵に迫り、互いに庇い合うような動きを見せた忍び達を穿っていく。
「梅雨にはまだ早いが……私からも剣の雨をくれてやろう」
 続けざま、レイリアも討つべき相手を槍で示せば、さらに喚び出された刃が戦場の景色を一気に作り変えた。
「此処が貴様らの墓場となるのだ」
 標代わりと言わんばかりの刀剣に貫かれて呻く忍び達へと、吐きつけるレイリア。
 その冷徹な振る舞いを流し見てから、プランがダイナマイトモードに変身して前に出る。針山の如き戦場をゆらゆらと踊るように一つ、二つ、三つと越えて、大胆なデザインの戦闘服に押し込まれた胸元が覗けるかというほどまで忍び達に近づいたところで扇を振るえば、十八条の光線が四方八方を焼き払った。
「すっごーい!」
 知人の寡黙な雰囲気からは想像もつかない豪胆な攻めに――そしてあちこち零れそうになりながら舞い続ける姿に、思わず脳天気な歓声を上げる亜希。
 一方でアメリーは息を呑み、しかし気後れしてなどいられないとエイティーンを発動。数年の未来を先取りしたより淑やかな女性らしい姿となりながら、片手に握る爆破スイッチを押し込む。
 途端、方々から噴き上げた色鮮やかな爆風に乗り、和希が呪詛を塗り込めた服を靡かせて空に舞い上がった。
 そして“なにもない”ところを蹴ってさらに高く昇ると、狂気の滲む瞳で敵を見据える。
 態々二回も跳んだだけあってよく視える。ならば敵の群れからも己がよく視えるはず。
 だがそれでいい。来るなら来い。内なる囁きに導かれるまま、和希はトリガーを引いた。
 相反する色合いのライフルが、待ち侘びていたように巨大な魔力の奔流を解き放つ。ようやく串刺しから抜け出そうかという忍び達は、あっという間に呑み込まれて見えなくなり――さらに地下から湧き出たおびただしい量の蔦に押し流されて、戦場の片隅へと塵のように纏められる。
「前が開いたよ!」
 大地との融合を解除した蔦を手元に引き戻しながら、仲間達に呼び掛けるアンセルム。
「ありがとねェ! さァて、菩薩ちゃんはどっこかなァー!?」
 あくまでも強行突破する“ふり”だと分かっているのか否か。
 ともかくルーヒェンが足取り軽く、戦場を駆けていく。
 だが、その直後。
「――!」
 耳障りな音と共に、短刀や盾、槍に弓、果てはブロック玩具もどきまでもが雨あられと降ってきた。
 ルーヒェンは咄嗟に反転するも、バケツを引っくり返したような大量の道具は意外や狙いが正確で、全てを避けきることはできなかった。盾役が庇うのも間に合わず、彼の生身の部分にも機械の足にも数多の傷が刻まれていく。
 けれども見た目の痛々しさに反して、ルーヒェンは「痛い痛い、ンふ――こうでなきゃねェ」などと喜ぶように言いながら、仲間達の元へと戻ってきた。
「ちょっと大人しくしてよ! 回復出来ないから!」
 亜希は台詞ほどの危機感はなさそうな声音で言って、上が大きく下が小さな二対の白翼を一杯に広げつつ、槍を天に掲げる。程なく生み出された癒しの風は渦巻いてルーヒェンを包み、大方の傷を埋めていった。
 しかしそうしている間にも、態勢を立て直した忍び達が迫り――。


「彼奴等殺して」「ええんやで!」
 何とも気楽に物騒なことを言い出す鳥人までもが、戦場へと姿を現した。
「かっ……和希! 来た、来たよ! それも二匹!」
「はしゃがないでください!」
 起き抜けにクリスマスプレゼントと出くわした子供のように騒ぐアンセルムへ、和希は仕方なく厳しい口調で返す。
 二人が見据えた敵は、菩薩累乗会に抗う中で打ち破ったものと同類のデラックスひよこ明王。しかも二体。
(「もふもふ……はっ!」)
 ところどころ饅頭みたいに潰れた毛玉の塊に、ついつい触れてみたくなったのを自ら窘めて、アメリーは再び爆煙を起こした。
「あんな見た目でも……人々を脅かすデウスエクスに変わりはありません!」
「その通りだ。ふざけた鳥など、一匹残らず斬り捨てるまで!」
 アメリーの言に頷き、槍を構えたレイリアが翼を翻す。
 だが突撃をかける前に明王コンビはパタパタと引き下がって輝きの夢と並び、その前に幻花衆が割り込んでくる。
「忍者さんを先に倒さなきゃダメって感じね?」
「そうみたいだね」
 現状を確認した亜希に答えて、プランはふぅと小さく、恋人の耳にでも吹きかけるかのように息を吐いた。
 その些細な仕草は瞬く間に荒ぶ吹雪となって忍び達を包む。
「退きやがれ!」
 雪彦も魔力を籠めた咆哮を轟かせて三体の幻花衆を揺さぶる。
 そこに改めてレイリアが突進、霊力を込めた槍を振るえば、アンセルムはちらちらと明王を見つつも槍に穿たれた敵を蹴りつけ、和希は口を噤んで戦いに集中し直した後、白い方のライフルから凍結光線を撃った。
 集中攻撃に庇う間もなく、忍びの一体が崩れ落ちる。
「ほォら、油断してッと痛い目見るよォ!」
 ルーヒェンも『穢』を飛ばして畳み掛け、幻花衆の片割れを追い込むが。
「そんなに張り切らなくても」「ええんやで!」
 律儀に教えを説こうとする明王達が行進させた大量のひよこに抗えず、忍び達から引き離された。
 黄色い波はそのままアンセルムにまで襲いかかり――。
 もふもふに包まれるかという寸前、目の前で盾になった雪彦が拐われていく。
「ああっ!?」
「は、はいはい! トリさんこちらーっ!」
 何故か悔しがるアンセルムはさておき、自身も呑み込まれる寸前で何とか空に飛び上がった亜希は、明王達を煽りながらエクトプラズムを放って盾役達の傷を塞ぐ。
 それをアメリーは同じ失伝に連なるオラトリオとして眺めて、また一つ気を引き締めた。
 ……一時大きくなった肉体は仮初でも、そこに流れる血は確か。
「なら、この歌声で奇蹟だって起こせるはずです!」
 自信をもって口を開けば、紡がれる「悠久のメイズ」は二体の幻花衆を縛り上げた。
 攻めかかる好機だ。レイリアは神速の突きを繰り出そうと、槍を構えた。


 しかし。
「――おお、ケルベロス!」
 攻勢に出る寸前、聞こえた大仰な台詞がレイリアの足を止める。
「此度の戦も欲望を満たすための必然に過ぎぬ! 故に、汝ら強欲なれ!」
「来やがったな……!」
 雪彦がニヤリと笑う。
「テメエを食ってから菩薩をぶった斬ってやるぜ!」
「それが汝らの欲望であるならば!」
 受けて立つ、ということなのだろう。正面切って挑もうとする雪彦に両腕を広げて、アヴァリティアは叫ぶ。
「強欲なれ!」
「うるせェ!」
 言葉でも応酬を続けながら、雪彦はゆらりと踏み出した瞬間にその姿を溶かし、すれ違いざま敵を斬った。
「口開く前に目ェ凝らせよ!」
「笑止! 我が欲望、ただ一刀で斬り捨てられるほど軟弱に非ず!」
「ならば!」
 真っ先に討つべき相手を見据えて、レイリアが突きを放つ。
 槍は深々とアヴァリティアを貫き――。
「何と希薄な欲望よ!」
 飛び退かれる前に槍を掴んだアヴァリティアは、それを自らの身体から抜き取るや否や、レイリアごと放り投げた。
「っ、これじゃあひよこの相手なんかしてられないじゃないか!」
「――だそうなんで、もうちょっとこっち来てみませーん?」
 跳ねるような足取りで一気にアヴァリティアと間合いを詰め、文句を言いながらも残像が残るほどに鋭いサマーソルトキックを放ったアンセルムの代わりに、亜希がオーロラのような光を放ちつつ呼んでみるも。
「近寄らなくても」「ええんやで!」
 輝きの夢と一緒に遠目から攻撃してくる明王は、まるでその誘いに乗らない。
 ならば親友のためにも早く他の敵を排除して――と、まさかそんな事は欠片ほども思わず。ただデウスエクスを壊すという狂気に駆られて、和希がグラビティ中和弾を撃つ。
 その一撃を幻花衆の命で防いだアヴァリティアは――なおも銃口を向け続ける和希を見やって赤い目の輝きを強めた。
「くくっ、汝の瞳からは実に良い欲望が引きずり出せそうだ!」
「ッ……」
「欲望、欲望って。そんなに欲深いなら、サキュバスを物にしてみたくはない?」
 微かに怯んだ和希の視線を遮るようにしてプランが近づけば、一転、アヴァリティアは口を噤んだ。
「この格好が気に入らないの? それなら――」
 プランは白い肌も髪もより白く変え、一時、雪の女王と化して数多の槍騎兵を侍らせる。
「どう? ちょっとだけお色直し。それともドレス姿も好みじゃない?」
 騎兵の一つに跨がり、胸元開けて足組む姿は艷やかで、ただの人ならそれこそ欲望をかき立てそうだが……アヴァリティアは一瞥くれただけで視線を逸らす。
「強情だね。でも、そういう子を“堕とす”のも楽しいよね」
 くすくすと笑いながら、プランは片手を振った。
 それを号令として騎兵達は走り出す。プランの物言いとはかけ離れた豪快な突撃は、幾度も攻撃を凌いだアヴァリティアさえ蹂躙していく。

 ――しかし、如何せん敵の数が多い。
「強欲なれ! 強欲なれ!」
「――!」
 両翼を羽ばたかせて煽るアヴァリティアに強化されて、輝きの夢が猛攻を仕掛けてくる。
「ッ……!」
 不気味な仮面のような顔と向き合ったのも束の間、数えきれないほどの銃が一斉に火を噴き、雪彦の身体を貫いた。
 明王も矢継ぎ早にひよこを投げつけ、見た目とは裏腹な破壊力でレイリアを吹き飛ばす。
 次第に亜希一人では治癒の手が足りなくなり、幾人かが攻勢を止めて回復を行うが、その間にも続く機械とひよこの乱舞は程なく雪彦とレイリアを屠り、ルーヒェンからも余裕を奪い取り、やがて和希にも膝を折らせた。
「……そろそろ限界でしょうか」
「そうだね。十分、引きつけられたとは思うけど」
 アメリーの呟きに返して、プランは戦場を見回す。
「あっちから抜けられそうだね」
「……!? おお、ケルベロス! 欲望を叶えきらず去るというのか!」
 不穏な動きを察知して、アヴァリティアが拳を震わせながら叫んだ。
「ええんやで」「逃げてもええんやで!」
「言われなくとも、そのつもりだよ」
 ふんぞり返る明王二匹を名残惜しそうに眺めてから、アンセルムはひらり軽やかに背を向ける。
「和希、行くよ。……和希!」
 そう呼び掛けられては応じないわけにもいかず。和希は苦虫を噛み潰すような顔を一瞬だけ見せた後、渦巻く全てを暗い瞳の中に押し込めてアンセルムの片腕に縋り、敵群から離れていく。
 残るケルベロス達も自力で、或いは助けを借りて、それに続いた。
「貴様達の顔もすっかり見飽きた頃だ。いずれ――いや、近々決着をつけよう」
「せいぜい怯えて待つんだな、鳥公ども! 次こそ残さず食い散らかしてやるよ!!」
 冷ややかな態度で宣言するレイリアと肩を組み、雪彦が殺意に満ちた視線でビルシャナ達を射抜く。
「私は追いかけられるのも嫌いじゃないよ?」
 プランは思わせぶりな表情と艶やかな仕草で、最後まで敵を誘惑するように煽って。
「はァい、まったねェー!」
「あはは♪ ばいばーい!」
 ルーヒェンと亜希は場違いなほど底抜けに明るい声を発しながら、何とも無邪気に腕を振って別れを告げた。
「斯様に弱き欲望で我らを阻もうなどと!」
「今は何とでも言えばいいです。でも――」
 去り際、殆ど元の姿に戻りつつあったアメリーが、アヴァリティアを睨め付ける。
 疲労した身体に心の高ぶりが合わさってか、それとも仮初めの姿が幾らかの自信を残したか。いずれにせよ八人の中で一番幼い少女は、しかし力強く断じた。
「あなた達の冒涜的な教義なんか、すぐにわたし達が壊してやるのです!!」
 それが言葉だけではないと示すように、アメリーは両手のスイッチを押し込む。
 途端、ケルベロス達の姿を覆い隠すかの如く次々と爆発が起きた。
 やがて熱と衝撃が全て消え失せた頃、役目を果たした八人はまんまと逃げ果せていた。

作者:天枷由良 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2018年4月13日
難度:やや難
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 7/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 0
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