累乗会反攻作戦~菩薩に逢うては菩薩を斬れ

作者:青葉桂都

●菩薩たちを狙え
「菩薩累乗会を行っていた菩薩たちを発見することができました」
 集まっていたケルベロスたちに、石田・芹架(ドラゴニアンのヘリオライダー・en0117)が告げる。
 シルフィディア・サザンクロス、軋峰・双吉、大成・朝希、アビス・ゼリュティオ、フィオ・エリアルド、館花・詩月といった様々なケルベロスたちの調査によって判明したという。
「4体の菩薩は、強襲型魔空回廊を用いてビルシャナが支配している地域、いわゆる『ミッション地域』にいるようです」
 菩薩が潜んでいるのは埼玉県秩父山地、青森県上北郡おいらせ町、宮崎県高千穂峡、岩手県奥州市胆沢城の4ヶ所。
 敵はそれらの拠点に『精舎』を建立しようとしているらしい。
 もしも建立されてしまえば、その地は難攻不落の要塞と化してしまう。
 そればかりか、なんらかの大規模儀式の拠点となってしまうだろう。
「建立を防ぐため、現在使用可能なすべてのグラディウスを使用して、ミッション破壊作戦を行うことになりました」
 4ヶ所のビルシャナ支配地域にある魔空回廊を破壊し、その後に精舎建立を目論む菩薩を撃破する作戦となる。
 それから芹架は各地域の敵戦力について説明を始めた。
「各地域には4体のうちいずれかの菩薩と、その直属の配下であるビルシャナがいます。また、菩薩累乗会に協力していた幻花衆や輝きの軍勢も菩薩を守護しているようです」
 また、当然ながら各ミッション地域で通常遭遇するビルシャナたちは今も多数徘徊している。
 ちっぱい絶対殺す明王が教団を築いた秩父山地には自愛菩薩が精舎を建立しており、直属のエゴシャナや協力組織のデウスエクスが守護している。
 同様に、アヴァリティアが強欲を礼賛する高千穂峡には、恵縁耶悌菩薩とデラックスひよこ明王がいる。
 鳳凰後背武強明王の寺院が出現した丹沢城には、闘争封殺絶対平和菩薩とカムイカル法師。
 そして、フリーダムビルシャナの聖域と化したおいらせ町では、芸夢主菩薩をケルベロス絶対殺す明王らが守護している。
「今回の作戦では、各ミッション地域の魔空回廊をまず破壊しなければなりません」
 確実に破壊するためには、秩父山地は3チーム、おいらせ町は9チーム、高千穂峡と丹沢城は12チームずつが必要になるだろうと芹架は言った。
 もちろん、4ヶ所すべてに十分な数を送り込めるとは限らないだろう。ただ、数が足りなければ確実ではないだけで、破壊できる可能性はある。
 おそらく3分の1のチーム数で攻撃したとき破壊確率は50パーセント程度。数が増えれば増えるほど成功率は上がるはずだ。
 どこに攻撃をしかけるかは、この数を参考に決めて欲しいと芹架は告げた。
「無事に魔空回廊破壊に成功した場合、さらに混乱に乗じて菩薩撃破の作戦を行うことになります」
 先ほども言ったが、菩薩の周囲には直属のビルシャナと協力組織のデウスエクスがいる。
 一部のチームが派手な陽動をしかけて菩薩を守護する敵をうまく引き剥がし、残るチームは隠密行動を行って菩薩を急襲することになる。
 陽動は派手であればあるほど効果がある。もちろんたくさん引き付ければ戦力的に厳しくなるが、別に全滅させる必要はなく時間を稼いだら撤退すればいい。
 襲撃チームは逆に見つからないことが重要だ。途中で発見されたら菩薩に近づくことはできなくなる。
 各地域10チーム以上が集まればおそらく7割ほどの確率で菩薩を撃破できるだろう。
「陽動と急襲の配分やチーム間の連携、さらには個々の作戦によってこの確率はさらに上げることができます」
 よく作戦を練ったほうがいいだろうと芹架は言った。
「グラディウスをすべて投入するこの作戦は、やり直しがききません。ですが、ケルベロスの皆さんならば精舎の建立を必ず防いでくれると信じています」
 説明を終えて、最後に芹架はケルベロスたちにそう告げた。


参加者
神白・鈴(天狼姉弟の天使なお姉ちゃん・e04623)
カルナ・ロッシュ(彷徨える霧雨・e05112)
ノーザンライト・ゴーストセイン(ヤンデレ魔女・e05320)
タクティ・ハーロット(重力喰尽晶龍・e06699)
神白・煉(死神を追う天狼姉弟の弟狼・e07023)
円城・キアリ(傷だらけの仔猫・e09214)
アト・タウィル(静寂に響く音色・e12058)
ウルトレス・クレイドルキーパー(虚無の慟哭・e29591)

■リプレイ

●砕け散るバリア
 岩手県奥州市、胆沢城の上空には実に12機ものヘリオンが飛行していた。
 グラディウスを手にしたケルベロスたちは、次々に魔空回廊へと降下していく。
「終わりにします」
 アト・タウィル(静寂に響く音色・e12058)がグラディウスをバリアへと突き出した。
 その静かな言葉には、この作戦の成功を願う祈りが籠っている。
 この地に精舎を築こうとしている闘争封殺絶対平和菩薩、あるいは聖域を築いた鳳凰光背武強明王に向かって、ケルベロスたちは魂の叫びを叩きつける。
「仏恥義理? お前は昭和のヤンキーか」
 ネットの友人に続いてウルトレス・クレイドルキーパー(虚無の慟哭・e29591)が突っ込みどころの多い明王へ無表情に突っ込みを入れた。
「悟り拓いたような事を言ってる割りにヒトの心を誑かし弄ぶような真似ばかり。カタルシスとやらを待つまでもなく、俺等が無に帰してやる」
 言葉は激しくなかったが、しかしそこには彼の演奏と同じく魂がこもっている。
「変な寺院を勝手に作ってもらっても困るんですよね。ここはここに住んでいた人の、そして今の生活を営む人たちの為の場所。好き勝手にはさせません」
 浮世離れした雰囲気を宿すカルナ・ロッシュ(彷徨える霧雨・e05112)はいつも通りにマイペースだったけれど、グラディウスにはこの地の人々への想いがこもっていた。
 先日事件を起こしたばかりの菩薩への怒りはさらに激しかった。かの菩薩が引き起こした事件を解決するために戦った者ならなおさらだ。
「平和を謳っときながら、罪もねぇ奴らを狂騒に駆り立てるやり口には反吐がでらぁっ!」
 青い髪と瞳を持つ狼の少年の表情には、誰の目にも明らかな怒りがあった。
「ああ、あいつを救ってやれなかったのは俺の力不足だよ。が、てめぇらがいなけりゃ、あんな事件起こらなかったじゃねぇか」
 その戦いで、彼は救いたかった誰かを救えなかったのだろう。
「殺す。その魂の一片まで燃え尽きろ。ただ認められたかった少年の無念は俺が晴らす!」
 神白・煉(死神を追う天狼姉弟の弟狼・e07023)の怒りが、魔空回廊へと炸裂する。
「争いは良くない? 平和が一番? ……先に攻めて来たのはそっちじゃないですか!
 少年に続くのは、彼と同じ色の髪と瞳を持つオラトリオの少女。
「ふざけないでください。あなた達のせいで一体いくつの命が……この手から零れていったと思ってるんですか。レンちゃんの心まで傷つけて……」
 激しく怒る弟の想いを感じて、神白・鈴(天狼姉弟の天使なお姉ちゃん・e04623)もまた怒っている。
「こんな想いはもうたくさん。潰します、絶対に!」
 姉弟の叫びと共に、グラディウスが炸裂した。
「洗脳紛いの行為をして、平和とは馬鹿にしてる。化けの皮と鶏皮剥いで、地獄の業火で焼いてくれる!」
 普段はあまり出さない大声を絞り出して、ノーザンライト・ゴーストセイン(ヤンデレ魔女・e05320)も叫ぶ。
 そして、ミミックを背に乗せた緑の髪をした青年が、両方をまとめて否定して見せた。
「救済捨てたの救済の手助けしたり、力を求めたのに闘争封殺したり……ふざけてんのかって話だぜ。そんな奴に負けねーのだぜ!」
 タクティ・ハーロット(重力喰尽晶龍・e06699)のグラディウスが七度目の……いや、何度目かわからない爆発を起こす。
「……ビルシャナ共がこんな余計な真似をしなければ……」
 小学生か、中学生か。事件のせいでなにか予定を潰されたらしいまだ幼い少女が、グラディウスを強く握った。
「気が付けばどんどん湧いて、口からは妄言ばかり。あなたたちビルシャナもその魔空回廊も鬱陶しいの! 根こそぎ消えろ!!」
 いつもは無口な円城・キアリ(傷だらけの仔猫・e09214)が、トドメとばかりにすべてのビルシャナを否定してみせた。
 胆沢城にすべてのケルベロスが降り立った時、もはや魔空回廊が存在していなかったことは間違いない。
 もっとも今回は壊して終わりではない。
 今の叫びが、戦いの開始を告げるときの声に過ぎないことを、ケルベロスたちは当然理解していた。

●封じられる戦意
 デウスエクスたちが混乱する中、ケルベロスたちは移動を始めた。
 明王の寺院の中を慎重に進む。
 気流をまとって進むケルベロスたちは、5人と数を減らしていた。
 とはいえ、別に残る3人が離脱したわけではない。
 鈴のボクスドラゴンとタクティのミミック、キアリのオルトロスと共に、黒猫と蒼い毛並みの狼、そして黒いコートを着た犬が混ざっている。
 犬の口には大量のトローチが詰まっていて、まるで大声を出した喉をいたわっているかのようだ。
 動物の姿の方が目立たないと考えて、それぞれウェアライダーであるキアリ、煉、ノーザンライトが変身した姿だった。
 アトはすその長い服を引きずってしまわぬように、色とりどりのベルトをしっかりと締めているようだ。
 できうる限り敵に見つかるリスクを下げるため、ケルベロスたちは言葉を発さず明王殿を進んでいく。
 カルナが静かに先行し、敵がいないことを確かめては仲間にハンドサインで合図する。
 他の者たちも、手や尻尾の動きで意志を疎通しながら警戒しつつ進んでいく。
 半ばまで建設された精舎は、タイのストゥーパに似た形をしていた。
 陽動チームがうまくやってくれたおかげもあるのだろう。隠密を行って近づいていた5つのチームは、すべて到着している。
「逃走封殺……こんな感じ?」
 人間の姿に戻ったノーザンライトが、完成した包囲網を見て呟く。
 闘争封殺絶対平和菩薩は仏塔の中心で精舎建立の祈りを捧げていたようだ。
 こちらのチームからは、菩薩の右半面が見えている。
 ケルベロスたちが、武器を構えて一斉に立ち上がった。
 菩薩は慌てる様子もなくケルベロスたちへと語りかけてきた。
「よくここまで辿り着きました。ですが、これ以上の戦いは無益です。この地域は解放され、精舎の建設は失敗に終わりました、戦わずとも私たちは、この地より立ち去りましょう」
 その背から光がさして、ケルベロスから見える横顔をまばゆく照らしだしている。
「バカ言うなだぜ。お前らを見逃してやる理由なんてこっちにはないんだぜ」
「襲ってくる『敵』相手に、戦いを避けられるものなら避けてみればいい」
 タクティやノーザンライトが菩薩の言葉に反発する。
 他のチームからも口々に反論の言葉が飛んでいるようだが、菩薩はなおも争いを止めるように語りかけ続ける。
 奇妙なことに、菩薩の言葉を否定しつつも、問答無用で攻撃をしかける者はいなかった。
 これこそが闘争を封殺する菩薩の力だと、果たして気づいた者がいただろうか。
「戦いは何も生み出しません。『絶対平和教義』に従い、疾く立ち去りなさい」
 菩薩の力は、少しずつケルベロスたちの心をも侵食していた。
「私は争いを否定はしません。争い闘うことで得るものがあり、それを奪うことは停滞を意味します」
 アトが呟いた。
「闘いを避けるためにも力は必要で、その力を手に入れるには闘いも避けられないですから……でも、すでに勝っているのにここで争う必要はあるのでしょうか?」
 菩薩を否定し、争いを肯定する想いを抱いていたはずなのに、アトは首をかしげた。仲間たちへと視線を送ると、誰もが迷いの表情を浮かべているようだった。
 他のチームも同じだ。
 いや、本当はなにをすべきかわかっているのだ。だから退く者はいない。
 そして菩薩の力も無限ではなかった。
「ダメだ! 昔の姉ちゃんとダブる奴を俺に殺させやがって……。あの時のあいつのためにも、ここで絶対に菩薩を倒すんだ!」
 煉が叫んだ。
 彼だけではない。他のチームでも声を上げている者がいるのが聞こえてくる。
 そして、煉の声に応じて無数の武器を背に浮かべた明王が進み出る。
「良くぞ言ったケルベロス。我ら、鳳凰光背武強明王、ここで戦い果てる覚悟也。いざ勝負」
 ケルベロスたちが惑わされている間に、陽動に引っかからなかった20を数えるデウスエクスが菩薩の守護する陣形を固めていた。
 明王の他に、カムイカル法師と幻花衆、3体の輝きの軍勢が進路を塞ぐ。
 襲いくる敵を突破するべく、ケルベロスたちは挑みかかった。

●ビルシャナとの激戦
 6体のデウスエクスは、8人と3体のケルベロスとサーヴァントに襲いかかってくる。
 どうやらここだけが特別に敵が多いわけではなく、四方それぞれに同程度の戦力が散っているようだ。
 強敵だが、退くわけにはいかない。
 特に強力なのは、やはり鳳凰光背武強明王だろうか。黄色の炎が踊り、ケルベロスたちの前衛を薙ぎ払ってきた。
 残る5体も明王を支援し、そして菩薩への攻撃をさまたげている。
 ケルベロスたちは菩薩を最も優先して攻撃するつもりでいたが、残念ながらまずは目の前の敵をある程度片付けないと攻撃が届きそうもない。
 とはいえ、ケルベロス側も精鋭揃いだ。
 鈴はボクスドラゴンのリュガに属性をインストールして回るよう指示しつつ、自分がオリジナルで組み上げた巫術を発動させた。
「大地に眠る祖霊の魂……今ここに……闇を照らし、 道を示せ!」
 現れるのはエネルギー体の狼の群れ。
 死神を探知・追跡するべく作られた巫術は、敵を追跡する力を仲間たちへと与える。
 支援に合わせて煉が明王に飛び蹴りを加えた。
 だが、簡単に倒せる敵ではない。
 救済という目的を捨てて力を得た明王に対して、輝きの軍勢に所属するダモクレスのうち1体が追随し、守りを固めていた。
 どうやらディフェンダーは1体きりのようだ。
 戦場にギターの音が鳴り響く。
 ウルトレスはハーモニカを吹いて回復を行っていたアトに合わせて、ギターをかき鳴らしていた。
「サイレンナイッ フィーバァァァァッ――!!!」
 疾走感あふれるサウンドが戦場に響く。
 普段はネットを通じて関わっている少女と奏でるジャムセッションは、仲間たちの細胞を活性化して攻撃力を高めていた。
 支援を受けて攻撃を続けるうち、無表情に味方をかばい続ける輝きの軍勢がボロボロになっていく。
 カルナが後衛から一気に接近した。装甲の弱い部分を見抜き、エアシューズで鋭い蹴りを入れて砕く。
 ノーザンライトは隙を逃さず左の掌に右の手を当てた。
「魔女ノーザンライトの名において。顕現せよ七色の聖剣……ノーザンライツセイバー」
 オーロラの片手剣が吸い込まれるように破れた装甲から潜り込み、断ち切った。
 ようやく1体。しかし、まだ5体の敵が残っている。
「敵は強い方がいいですね。そっちのほうが長く楽しめますから」
 けれど、少年が後退しながらマイペースに呟く。
「さぁ、闘いましょう、どちらかが倒れるまで、ね」
「菩薩を殺せば撤退の心配なし……迷いはない。一撃でも多く浴びせるの」
 ノーザンライトも、いつも通りなにを考えているかわからない表情のまま、ただ敵へと攻撃を続ける意思を見せた。
 打撃役である明王の仏恥義理の一閃が仲間を倒した魔女へと向かった。
 タクティは攻撃に割り込み、ガントレットで受け止める。
 腕がしびれるほどの威力だが、倒れはしない。
 さらに輝きの軍勢のうち1体が後衛から狙撃してきた。煉をかばったミミックが貫かれる。
「やっぱり強いんだぜ、こいつら」
 ただ、攻撃力も厄介ではあるが、それよりも優先すべき敵は中衛でケルベロスたちを弱体化させてくる幻花衆だ。
 ボロボロになったミミックと共に、タクティはすべてを食らう竜の顎を具現化した。
「さあ俺達、いや我らの進むべき道の礎とさせて貰うのだぜ!」
 ドラゴンの顎が食らいつき、痛打を与える。しかし、反撃で放たれた花嵐が、ミミックを打ち倒していた。
「菩薩累乗会を阻止したんだから、今回も必ず菩薩を討ち取ってみせるの!」
 キアリが両手で構えたガトリングガンから、幻花衆へ向けて無数の弾丸が飛んでいく。
 オルトロスのアロンもミミック同様に傷ついていたが、それでも攻撃を続けている。
 傷ついた仲間を癒しているのはアトと鈴の2人だ。
「皆さんが動きを止めぬよう、私から送る曲です。どうぞ……」
 ハーモニカの調べが打撃役と狙撃役の3体による攻撃を受ける仲間を支える。ウルトレスがその音にあわせてギターを爪弾き、砲撃を加える。
 敵はカムイカル法師がもふもふしながら回復を行っていたが、削る勢いはそるよりも早い。
 ノーザンライトがまた輝く剣を突き立てた。
「煉、鈴、トドメをくれてやれぞな」
 幻花衆から刃を引き抜きながら、蒼い髪の姉弟へと蹴り飛ばす。
「ああ、任せろ! これが親父から受け継いだ、俺の牙だっ!」
 煉は魔女へと応じた。
 オラトリオの翼を広げて、鈴が攻撃を放つ。その動きに合わせ、煉は蒼炎を宿した拳で動きを止めた幻花衆を焼き尽くしていた。
 だが、それでもなお、敵の壁は厚かった。

●届いた勝どきの声
 ストゥーパに向かって左側から、大きな声が聞こえてきた。
「あと少しで俺たちの刃が菩薩に届くぞ!」
 2チームで戦う形になっていた後方から仕掛けた者たちが突破に成功したのだ。
 カムイカル法師が一瞬後ろを向く。他の敵もだ。だが、明王は意に介することなくウルトレスを仏恥義理にしようとした。
「やらせないんだぜ!」
 タクティがその強烈な攻撃をかばい……今まで耐えてきた彼がついに倒れる。
 しかし、他のケルベロスたちはひるむことなく攻撃を続けた。
「そこをどきやがれ!」
「どくものか!」
 煉の叫びを明王は受け止める。
 できれば菩薩との戦いに加勢したい想いは皆、抱いている。それができなくとも、少なくともここにいる敵は止めておかなくてはならない。
「風よ、嵐を告げよ」
 カルナは氷晶を伴った嵐を起こして、明王の足を止める。
 慌てず、少年はマイペースに敵を止め続ける。
 ウルトレスのレーザーが、ノーザンライトの氷騎兵が明王を凍らせ、ダメージを増す。
 タクティが倒れたことで他の仲間が攻撃を受けていたが、彼がしっかり守っていたことと鈴とアトの回復のおかげで、簡単に倒されはしない。
 断末魔の悲鳴が風にのって届いた。次いで勝どきの声も。
「まさか、菩薩が……!」
 さしもの明王が動揺した瞬間、蒼炎が、輝剣が、氷嵐が、そして砲撃が一気に明王をとらえた。
 キアリは後方から一気に敵へと接近した。
「勢いを付け、スピードを乗せ、破壊力を補助する感じで……うんっ」
 少女の怒りを込めた一撃が敵を打つ。
「ぐぅあぁーっ!」
 股間を痛烈に蹴りあげられ、明王はこの世のものとも思えぬ悲鳴を残し、消滅した。
 残る3体が、菩薩が倒れたと知って逃亡を始める。
 自分たちが菩薩を倒せなかったことは少し残念だったが、ケルベロスたちはまず完全な勝利をおさめたことを喜ぶことにした。
 ストゥーパの中心へと、皆は足早に近づいていった。

作者:青葉桂都 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2018年4月13日
難度:やや難
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 3/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 3
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