燃えろ空! 凍えよ大地! 超次元奥義を見よ!

作者:天木一

 学校の裏山に子供の声が響く。
「てやーー!」
 ラフな格好をした小学生くらいの少年が木の棒を振るい、大木に打ち掛かる。木の棒はあっけなく弾かれ、少年は握り直し上段に構える。
「よける必要はない、どこにいても同じだ! 超次元奥義! 荒鷹」
 思い切り振り下ろした木の棒がかつんと音を立てて、少年の手が震える。
「いってーっ」
 少年は右手をブンブンと振って手に伝わった衝撃を逃す。
「はー奥義ってむずかしー。どうやったらゲームみたいに使えるようになるのかなー?」
 少年は首を傾げ、あーだこーだと悩みながら木の棒を振り回す。
「火とか氷とかも出してみたいし、ばったばったと剣でモンスターを切ってくみたいなのもしたいなー」
 遊んでいるゲームを思い出し、少年はそれっぽい構えをして木の棒を振るった。その少年の目の前に突然幻武極が現れる。
「お前の、最高の『武術』を見せてみな!」
 その言葉に操られるように少年が木の棒を振るって襲い掛かる。
「はーー! やーー! たーー!」
 限界まで引き出されたように、子供にしては強い打ち込みが入る。だが傷一つ付けることもできずに、少年は大きく肩で息をする。
「僕のモザイクは晴れなかったけど、お前の武術はそれはそれで素晴らしかったよ」
 無造作に幻武極は鍵を少年の胸に突き刺す。傷一つ残さずに引き抜かれ少年は意識を失い倒れる。
 するとその隣には少年と同じ顔をしたドリームイーターが生み出される。その姿は剣を持った軽装の戦士のような恰好だった。
「お前の武術を見せ付けてきなよ」
 そう幻武極が言うと、ドリームイーターは剣を抜き振り抜く。その一太刀で大木が真っ二つに割れた。
「燃えろ空! 凍えよ大地!」
 虚空に剣を二振りすると炎を氷が刃に宿る。
「メドロエレメンツ!」
 最後の一振りと共に放たれる白光が真っ直ぐに伸び、木々を薙ぎ倒した。そして剣を納めたドリームイーターは意気揚々と学校へ向けて歩き出した。

「今度のドリームイーターは子供、それもゲームの技を覚えようとしていた少年のようです」
 子供の姿をしたドリームイーターが現れると、ヒスイ・エレスチャル(白き春花の水月・e00604)が簡単に説明する。
「幻武極が特訓している少年を襲って、自分に欠損している『武術』を奪ってモザイクを晴らそうとしているようです」
 セリカ・リュミエール(シャドウエルフのヘリオライダー・en0002)が説明を引き継ぎ詳しく話し出す。
「モザイクは晴れなかったようですが、武術家ドリームイーターを生み、人々を襲わせようとしています」 少年の目指すゲームキャラのように力を発揮し、無差別に破壊活動を行おうとする。
「その前にドリームイーターを倒し、人々と少年を助けてあげて欲しいのです」
 まだ犠牲者は出ていない、敵が向かう学校で迎撃する事ができる。
「ドリームイーターは少年のファンタジーゲームに出て来る戦士の姿をしていて、剣を武器に戦います。剣技は普通のものとは違い、気や魔法といったものを組み合わせて使って来るようです」
 見た目の派手な威力重視の技を使って来る。子供だと油断すれば痛い目を見るだろう。
「現れるのは群馬県にある小学校の裏庭で、學校の裏口あたりで敵を待つ事になります。すぐに避難警報は出しますので、学校に残っている生徒も正門から逃げて巻き込まれる心配はないでしょう」
 敵は強者との戦いを望んでおり、逃げる者を追う事より戦いを優先する。
「子供の頃はいろいろなヒーローや物語の登場人物に憧れたりします。そんな無垢な心を持った少年が利用されるのを放ってはおけません。ドリームイーターを倒し、奪われた少年の心を取り戻してください」
 よろしくお願いしますと、セリカは説明を終えてヘリオンの準備に向かう。
「子供の夢見た剣技ですか、なんだか自分が子供の頃どうだったか思い出してしまいそうですね。どんな剣技なのか、剣を合わせてみましょうか」
 ヒスイの言葉にケルベロス達も腕が鳴ると、忙しなく動き出した。


参加者
水無月・鬼人(重力の鬼・e00414)
サラ・エクレール(銀雷閃・e05901)
分福・楽雲(笑うポンポコリン・e08036)
アミル・ララバイ(遊蝶花・e27996)
不入斗・葵(微風と黒兎・e41843)
御廟羽・彼方(眩い光ほど闇は深く黒く・e44429)
ティリル・フェニキア(死狂ノ刃・e44448)
鬼塚・彌紗(とりあえず物理で殴る・e50403)

■リプレイ

●勇者
 小学校の裏門で、ケルベロス達が門を塞ぐように敵を待ち構える。
「力に憧れを持つ年頃、か……」
 年齢を考えればそれも仕方ないと、水無月・鬼人(重力の鬼・e00414)は己の子供の頃を思い出す。
「幼い頃はアニメやゲームや漫画の主人公に憧れて、その必殺技の真似だとかをしたくなったりしますよね」
 自分もそうだったとサラ・エクレール(銀雷閃・e05901)は懐かしむ。
「そんな少年の憧れや夢を踏みにじる様な輩の存在を許す事は出来ません。私達、ケルベロスが打ち砕き、必ずや少年の心を取り戻しましょう」
 その言葉に仲間達も頷き助けようと意気込む。
「また武幻極絡み……、男の子の夢を利用するのは許さない! それを悪いことに使うのはもっと許せないの!」
 必ず阻止してみせると、RPGの僧侶風の衣装を着た不入斗・葵(微風と黒兎・e41843)は気合を入れた。
「魔法と剣技を合わせるのって、かっこいいわよね。純粋な夢を持った男の子だもの、助けてあげないと」
 その為にも早く終わらせようと、アミル・ララバイ(遊蝶花・e27996)は戦いの準備を整える。
「ごっこ遊びの延長戦みたいなもんも武術として狙うなんてなぁ。その無節操さ、俺といい勝負なんじゃないの~?」
 分福・楽雲(笑うポンポコリン・e08036)は敵のやり口と自分の行動を比べその無節操さに笑うと、タヌキに変身して身を潜めた。
「ゲームの技を使うドリームイーター、ねぇ。なるほど面白ぇ、ド派手な戦いが期待できそうだな」
 面白そうだとティリル・フェニキア(死狂ノ刃・e44448)は敵との戦いを想像して心昂らせる。
「……ええと、ゲームは良くわからないんですが斬撃や氷を飛ばしたりってケルベロス的には普通なんですけどねえ……」
 聞きかじったゲームの知識で鬼塚・彌紗(とりあえず物理で殴る・e50403)は敵をイメージして、やってる事はケルベロスと変わらないと首を捻った。
 そうして待っていると、裏山の方から一人の少年が悠々と歩いてくる。その姿はまるでファンタジーゲームに出て来る勇者のようだった。
「ドリームイーターの勇者! 止まって、私達が相手するよ! 戦いを望むなら私達があげる。あなたの暴力の剣術じゃ私を倒せない! ヒーローの力をとくと味わって!」」
 正面に立った御廟羽・彼方(眩い光ほど闇は深く黒く・e44429)がスタイリッシュに武装を纏い変身しながら刀を向けた。

●バトル
「へえ、ボクと戦おうっていうんだ?」
 嬉しそうに勇者は光り輝くロングソードを抜き放った。
「まずはその自慢の剣技、拝見させてもらいましょうか」
 援護するようにサラは専用のオウガメタルから粒子を放ち、仲間達の治療と感覚の向上を行う。
「さあ、ドリームイーター。この刀の錆にしてやるから掛かってきな!」
 ティリルは漆黒の刀身と紅い刃を持つ妖刀を抜き、刀から伝わる魂のエネルギーを己の身に漲らせて啖呵を切る。
「いくぞ!」
 勇者の振り下ろす剣から剣気が放たれる。ティリルは妖刀を振るい打ち消そうとするが、勢いに負けて後ろに吹き飛ぶ。
「清らかなる風よ、清き花よ、皆を守って!」
 葵は白い睡蓮の花びらを舞い散らし、仲間達を守り癒す力で包み込んだ。
「力に憧れるのは解るが……。どんな物にも、準備があるって事を教えてやらなきゃな。それに、力だけを求めるってのは危険な事だ。そこには、何のために振るうのか、意味を考えなきゃいけないってのを教えておこう」
 愛用の刀を抜いた鬼人は、霊力を帯びた刃をすれ違いながら振り抜き胴を薙ぐ。
「力は敵を倒すためにあるんだよ!」
 獅子の如きオーラを纏った勇者が鬼人の背を追いかけて突っ込んで来ると、ウイングキャットのチャロが割り込んで攻撃をその身で受ける。
「私は炎とかを飛ばしたりは出来ませんけど。そんなものが無くても破壊力なら負けませんよ?」
 その間に駆ける彌紗は地面すれすれの低空を飛び、足を刈り取るように蹴ると敵が反転して顔から地面に突っ込んだ。勇者が顔を上げて泥を拭うと、その目の前に愛嬌のあるタヌキが居た。
「あれ? もしかしてタヌキ?」
 タヌキの姿をした楽雲は敵の前に姿を現し愛らしい動作で近づくと、敵は油断して興味津々な様子で屈んで目線を近づける。
「引っ掛かったな!」
 そこへ楽雲はクルリンパと人の姿に戻って驚かせ、獣の腕で顔を殴りつけた。
「だましたなぁ!」
 怒った勇者が獅子のオーラで楽雲を吹き飛ばす。
「ファンタジーRPGの勇者とヒーロー。どちらも世界を護る救世主だよね? でもただ力を振るう暴力勇者なんて許さない! ヒーローが成敗するよ!」
 ローラーダッシュで加速した彼方は、炎を纏う蹴りを放って敵の腹を抉り燃え移らせる。
「番犬にでもならないと、剣と魔法の融合はなかなかできないわよねぇ」
 プリンセスの如く変身したアミルは、敵の目を引き付けながらオウガ粒子を派手に放出し、仲間達に超感覚を目覚めさせた。
「次はこっちの番だな、避けられるものなら避けてみろ!」
 踏み込んだティリルが妖刀を振うと敵も剣を振るって弾く。刃に敵の意識が向いているところへ不意を突き、蹴りを放ち膝を打ち抜いて機動力を奪う。
「派手な奥義バトルですか……。私、殴って大地を砕くとか拳圧を飛ばす程度しか出来ませんしちょっと場違い感がありますねえ。でも敵を倒す結果には変わりありませんね」
 彌紗は己が手を覆うように鬼の角を生やして篭手とし、敵の構えた剣ごと腹を殴りつけくの字に悶絶させる。
「このっ! ボクの奥義で全員ふっとばす!」
 勇者が虚空に向かって剣を二振りすると炎と氷が刃に宿る。
「メドロエレメンツ!」
 全てを消し飛ばすような破壊の閃光が放たれた。
「剣は昔から馴染み深いものだから、憧れとは少し違うのだけど。漫画的なものは素敵よねぇ」
 前に出たアミルは剣で攻撃を防ぎながら、オウガ粒子によって仲間達を包み込み治療を施す。だが白い閃光は勢いを弱めずにアミルを薙ぎ倒した。
「技はただ派手で威力があればいいというものではない。相手の力を削ぐ地味な技こそ重要だ」
 鬼人は弧を描いて刀を振るい、敵の手足を斬りつける。
「どれほど技を磨こうと、実戦経験が皆無では勝てません」
 メタルを腕に纏わせたサラは、死角から突っ込んで拳を放ち脇腹を打ち抜いた。
「勇者のボクにこんな攻撃が効くもんか! 獅子裂破!」
 剣を突き出すと獅子の方向の如きオーラが近くのケルベロス達を吹っ飛ばした。
「ゲームの僧侶らしく、みんなの傷はすぐに癒すね!」
 葵は戦場に響く声で歌い、前向きになれる歌詞が仲間達を癒し勇気づける。
「人を傷つけるだけの剣なんて、ヒーロー失格だよ!」
 助走をつけ跳躍した彼方は、矢のように飛び蹴りを胸に打ち込み敵を仰け反らせる。
「見た目が子供ってのはどうもやる気が出ないな。さっさと倒されてくれると嬉しいんだけど?」
 楽雲は籠手状の竜槌を嵌めた拳を向けて砲撃を行う。敵の足元で爆発が起こり体が吹き飛んだ。
「さけられぬ技を見せてやる! よける必要はない、どこにいても同じだ! 超次元奥義! 荒鷹」
 空中で勇者が振り下ろす剣から斬撃が形を持って放たれる。それは飛翔する鳥の如く楽雲の肩口から体を袈裟に斬り裂いた。
「己が強い、強ければ何をしてもいいという、その驕った心を斬る」
 刀を非物質化させ、鬼人は袈裟斬りに振り下ろし敵の霊体のみを斬り裂いた。
「いってええ! よくもやったな!」
 やり返してやると勇者はもう一度斬撃を飛ばす。
「見事な技です。ならばこちらも剣技をお見せしましょう」
 サラは太刀に霊体を憑依させて横に薙ぎ払い、飛んでくる斬撃にぶつけて弾き、返す刃で敵の胴を抜いた。
「それじゃ、盛り上げていきましょうか」
 楽しそうにアミルは色鮮やかなビオラを嘴に咥えた燕達を召喚し、落とす花弁が仲間の傷を癒していく。チャロはその様子を見ながら、自らも風を起こして仲間の治療を手伝う。
「ちょっとチャロー。人をジト目で見てるのはわかってるんだから! たまには空気を読みなさいな」
 そう言ってアミルが視線を向けると、チャロは真面目にやってますと風で花弁を舞い上げた。
「回復手段、自己強化、搦め手も使わずただただ攻撃……バカみたいだな! だけど嫌いじゃないぜ!」
 それに応えようと大きく踏み込んだ楽雲は、右拳を真っ直ぐ打ち込み、剣を弾いて隙を作ると左の拳で顔を打ち抜いた。
「こなくそ!」
 だが敵も負けじと剣を振るい、放たれるオーラが吠えるように楽雲の身体を撥ね飛ばした。
「どれだけ一人で強いボスがいても、ゲームならパーティを組んだ冒険者に負けるのが王道だよね」
 高らかに歌を続ける葵は、ダメージを受ける仲間をすぐに癒して援護する。
「どれだけ腕が立っても、悪党はヒーローには勝てない!」
 彼方は刀に極低温の魔力を纏わせて振り抜き、斬撃が敵の胴を斬りつけそこから体温を奪い凍えさせる。
「来いよ! こっちも派手な技でやり合ってやるぜ!」
「やってやる!」
 ティリルは空中に大魔法陣を描き、召喚した巨大な氷剣を飛ばした。襲い来る刃に勇者もまた剣を振り下ろして斬撃を飛ばすが、押し切られて肩を斬られよろける。
「剣なんて力いっぱい振ればそれで十分ですよ」
 彌紗は武骨な大剣を横に薙ぎ、体勢を崩している敵の防ごうとする剣を押し込んで軽々と体を吹っ飛ばした。勢い余り大剣は地面を深々と斬り裂く。

●奥義
「まだまだ、勇者の力はこんなもんじゃない!」
 血を流しながら勇者は剣を地面に突き立てて立ち上がり、その身に獅子のオーラを纏わせた。
「そんなに剣を振りたいならちょっとは付き合ってあげようか?」
 刀を抜き放った楽雲は刃を合わせて火花を散らし、引くと見せかけて切っ先で太腿を斬り裂いて魂を啜り上げる。
「剣と魔法の融合を見せてあげるわ!」
 続いてアミルが稲妻放つ剣を突き出し、切っ先が敵の胸を抉る。
「奥義! 獅子裂破!」
 勇者も合わせて突きを放ち、相打つ力が両者を吹き飛ばす。
「技ばかり上手く使えても、心がついてきていない。それではただ真似ているだけだ……」
 鬼人は刀で太腿の傷口を撫でるように斬り、傷を悪化させて動きを鈍らせる。
「背中が隙だらけですよ」
 背後に回ったサラは稲妻を帯びた十文字槍を突き入れ、敵の背中を深く貫く。
「はぁ!」
 勇者は目にも留まらぬ速さでサラの背後に回り、斬撃を放って背中を斬りつける。
「大丈夫。どんな怪我も回復してパーティを支えるの!」
 葵は御業を呼び出し、サラを覆い鎧と化して守護する。
「こっちも避けられない攻撃くらい使えるよ!」
 そこへ彼方は不可視の虚無球体を撃ち込み、避けようとした敵の脇腹の血肉を抉り取った。
「派手な技を使うだけが戦いじゃないぜ? 剣はこうして使うもんだ!」
 ティリルは脇腹に妖刀を突き入れ、傷を広げるように引き裂く。
「力比べと参りましょう」
 突っ込んだ彌紗が大振りで拳を振り抜くと、敵もまた剣を振り抜きぶつかり合い、衝撃波が走り地面を凹ませる。
「燃えろ空! 凍えよ大地! メドロエレメンツ!」
 勇者の放つ閃光が地面を抉りながら奔る。
「あと少し! みんながんばって!」
 葵は周囲に白い睡蓮の花びらを舞わせて、敵の攻撃を少しでも遮り威力を減衰させる。
「漫画みたいに派手な技だけど、派手なだけでは斬れないわよ!」
 割り込んだアミルはメタル纏った腕で攻撃を受け焼かれながらも、回し蹴りを放って敵の脚を叩き折る。
「私の奥義をお見せしましょう」
 太刀を納刀したサラは、踏み込み抜刀して一閃、敵の胴を斬りつけた後に突きを放ち喉を貫いた。
「がっぐがっ!」
 喉が潰れて勇者は唸りながらオーラを放つ。
「ゲームに出て来るようなヒーローになりたいなら、その剣を正しい事に為に使わないといけないんだよ!」
 刀に呪詛を載せ、彼方は一振り美しい斬撃を振り下ろす。その刃は肩から腰へと抜けて真っ赤な鮮血を噴き出させる。
「皆さんみたいに派手には出来ませんが、私の持てる力全てをお見せします」
 精神を集中した彌紗は、拳に全ての力と技を込めて全身全霊の一撃を放つ。対して敵も剣を真っ直ぐに振り抜き剣気を放つ。彌紗の拳は刃が食い込み血を流しながらも打ち抜き、真っ直ぐに敵の顔を打ち抜いた。
「ぶへっ」
 顔が吹き飛ぶような勢いで敵の体が飛び頭から木に突っ込んだ。
「子供の姿をしたのをよってたかって倒すって見た目ヤバイよね。だからさっさと終わらせちゃおうかな」
 楽雲は妖気を巨大な獣の腕に変化させ、下から掬い上げるような拳で敵を打ち上げ、追いかけるように跳躍すると敵を鷲掴みにして地面に投げ落とした。
「最後はド派手に決めてやるぜッ!」
「こっちのセリフだあ! 超次元奥義! 荒鷹!」
 大魔法陣を背にしたティリルは巨大な氷剣を放ち、最後の力で立ち上がった勇者の放つ斬撃を呑み込み刺し貫き氷漬けにする。
「これが本当の必殺技だ。我流剣術『鬼砕き』、食らいやがれ!」
 スタイリッシュに変身した鬼人は、刹那の間に左切り上げ、右薙ぎ、袈裟と斬りつけ、その刃筋が重なる中心に刺突を放ち胸を刺し貫く。するりと手応えが無くなり、勇者の姿は幻のように消え去った。

●将来の夢
「怪我はないみたい」
 葵が少年を介抱して無事を確かめる。
「ありがとう、ございました!」
 少年は地面にぶつけそうな勢いで頭を下げた。
「どうしたらゲームのキャラみたいな技を使えるの?」
 そして真剣な顔で少年がケルベロスに尋ねる。
「まあ使ってみたいんなら練習するしかねぇんじゃないか」
「技は使えなくても、力をつければ強くなれますよ」
 やってみなければ分からないとティリルが焚きつけ、彌紗が脳筋的なコメントをする。
「がんばっても人間はゲームの登場人物みたいになれない」
 楽雲が少年を諭すように言うと、少年はがくっと肩を落とす。
「目指すならゲームじゃなく、ここに居る現実のケルベロスを目指さないと!」
 一転して明るく己の胸を差す楽雲が笑みを浮かべると、少年も目を輝かせて大きく頷いた。
「厳しくても剣を教えてほしいか?」
 鬼人が問うとうんっと元気に少年が頷く。
「力を持つ責任とは、振るう前に、ありとあらゆる戦闘を回避する努力をし、それでも振るわなければならない、最後の手段だ」
 厳しくも心を籠めて鬼人は少年に基本の技と心得を教え始める。
「最初は憧れから入るものです。それを本物にしたければ努力を続けるしかありません」
「ゲームの勇者は強いけど人々の為に力を振るうよね? その目的を忘れなければ勇者にだってヒーローにだってなれるよ!」
 サラが懸命に木の棒を振るう少年を励まし、彼方も声援を送る。
「夢を大事にね」
 転んでも起き上がる少年を眺め、アミルは将来大きくなった少年と共に戦っている姿を思い描いた。

作者:天木一 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2018年4月10日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 2/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 3
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