「連日の菩薩累乗会への対応、お疲れさまでした。皆のお陰で、新たな情報が得られた」
本当にありがとう。ケンジ・サルヴァトーレ(シャドウエルフのヘリオライダー・en0076)はまず、感謝を告げ、丁寧に頭を下げた。
「判明したのは、菩薩累乗会を画策した四菩薩の動きだ。現在、『埼玉県秩父山地』『青森県上北郡おいらせ町』『宮崎県高千穂峡』『岩手県奥州市胆沢城』を拠点として『精舎』を建立を目論んでいる」
これらの情報は、シルフィディア・サザンクロス、軋峰・双吉、大成・朝希、アビス・ゼリュティオ、フィオ・エリアルド、館花・詩月によって得られた。いずれもビルシャナ占領地、通称ミッション地域であることから、皆の地道な調査活動による補完なくしては、導き出すことはできなかったことは明らかだろう。
「事が進行しているのがミッション地域である以上、通常の手段では手出し出来ない、だから今回はこれを使う」
そう告げて、ケンジは小剣をあなた方に見せた。
「見覚えのある方もいると思うけど、これは『グラディウス』と呼称される武器だ。これがあればミッション地域のゲートを攻撃できるよね」
過去にあったような少数による、反復攻撃ではなく、集中運用による決戦を仕掛ければ、ミッション地域であっても精舎建立中の菩薩の撃破を狙える筈だ。
「四菩薩が活動中のミッション地域の情報については、既に判明している情報を参考にして欲しい。既に判明している戦力に加えて、各菩薩とその配下の戦力が存在する。わかりにくいと思うけど、充分に気をつけて欲しい。なお『島根県隠岐島』では菩薩の活動は確認されていない」
『(1)埼玉県秩父山地』
自愛菩薩、エゴシャナ、幻花衆、輝きの軍勢、ちっぱい絶対殺す明王。
『(2)宮崎県高千穂峡』
恵縁耶悌菩薩、デラックスひよこ明王、幻花衆、輝きの軍勢、アヴァリティア。
『(3)岩手県奥州市、胆沢城』
闘争封殺絶対平和菩薩、カムイカル法師、幻花衆、輝きの軍勢、鳳凰光背武強明王。
『(4)青森県上北郡おいらせ町』
芸夢主菩薩、ケルベロス絶対殺す明王、幻花衆、輝きの軍勢、フリーダムビルシャナ。
「魔空回廊の破壊を確かなものにする為には、数多くのチームが攻撃に向かった方が有利になる。難易度が高いのは高千穂峡と丹沢城、次に難しいのが、おいらせ町。秩父山地についてはそれなりの模様だ」
グラディウス攻撃によるミッション破壊の混乱に乗じて、菩薩撃破を目指すのが、今回の大まかな戦略。
「各地域の菩薩の周囲には、直衛のビルシャナたちと、協力組織のデウスエクスによって堅く守られている。ゲート破壊の混乱だけを以て、直接攻撃を掛けるのは困難だよ。つまり何処かのチームが菩薩を守る戦力を引きつけて、菩薩の守りに隙を作り出し、別のチームがその隙を突いて菩薩の撃破を狙うことになる」
なお、ゲート破壊により混乱している敵は『より派手な攻撃を行っているチーム』向かって来る。
陽動を担うチームは敵を引きつけながら、同時に撤退もこなす危険を冒すことになるが、この勇敢な行動が無しにには菩薩への攻撃は出来ない。
「確実な撃破を望むならば必要になる戦力は10チームを下らない。しかも陽動を担うチームと、密かに菩薩に近づき撃破を狙うチームの連携も必要だから、打ち合わせを含めてかなり大変な作戦になると思う」
隠密行動で菩薩に近づく途中に発見される恐れもある。また優れた行動で沢山の敵を引きつけたチームが勝ち目の無い数の敵を相手にすることも予想される。
もし戦いの最中に神の目でも持っているが如くに状況を把握できる、などと幻想を抱く者がいれば未熟者として淘汰される。
人智は万能ではない。ただ予め想定し、準備して、最良のタイミングで動ければ、神の如き所行を成し遂げることもある。それは奇蹟と呼ばれる。違う場面で同じことを模倣しても再現は出来ない。
「今回の作戦は、全容が分からなかった、菩薩累乗会に対する反攻の一手となるはず」
そこで言葉を終え、ケンジは丁寧に一礼をすると、今回の作戦に志願してくれるケルベロスを募り始めた。
参加者 | |
---|---|
平・和(平和を愛する脳筋哲学徒・e00547) |
鳴神・猛(バーニングブレイカー・e01245) |
ディークス・カフェイン(月影宿す白狼・e01544) |
クーデリカ・ベルレイム(白炎に彩られし小花・e02310) |
シィ・ブラントネール(ウイングにゃんこ・e03575) |
千斉・アンジェリカ(空墜天使・e03786) |
フォルトゥナ・コリス(運命の輪・e07602) |
鏡・胡蝶(夢幻泡影・e17699) |
●芸夢主菩薩を討て
「運はボクたちに味方しているみたいだね」
頭の上にのし掛かるような圧迫感が薄らぐのを感じながら、鳴神・猛(バーニングブレイカー・e01245)は天を仰ぐと、時計で時間を確認した。
「やりましたね。ではこのまま予定通り進めましょう――宜しいですよね?」
「スニーキングミッションね! 腕がなるわ!」
恐らくは最も正確に状況を把握できてる、クーデリカ・ベルレイム(白炎に彩られし小花・e02310)が念のために問いかけると、シィ・ブラントネール(ウイングにゃんこ・e03575)は迷いなく応じ、気持ちでは負けていない、千斉・アンジェリカ(空墜天使・e03786)も力強く頷いた。
「あんじゅちゃんもがんばる♪ 芸夢主菩薩、絶対にやっつけよう!」
状況を知らぬ者がみれば、なぜ確認が必要かと感じるかも知れないが、おいらせ町の攻略作戦に集まったチーム数は4、戦力的に魔空回廊の破壊はかなり危なかった。この上、守りを固めた芸夢主菩薩に対して、少ない戦力で攻撃を掛けるのだから、方針の確認はあった方が良いだろう。
「光学迷彩なんて子どもだましにしかならないだろうけど……」
「このインカムもサーマルスキャナーも、デウスエクス相手にはオモチャかも知れん。だが気休めぐらいにはなってくれるはずだ」
制作者がアクアカーモと名付けたレインコートが行き渡り、平・和(平和を愛する脳筋哲学徒・e00547)の狙い通り、メンバーの見た目が統一されたことで目立たなくなった。そして、持参した道具の手入れに余念の無い、ディークス・カフェイン(月影宿す白狼・e01544)には藁にも縋るような必死さが滲んでいた。
陽動を担うチームは2チーム、自分たちを含めて隠密行動で菩薩を狙うチームも2チーム、陽動が成功し、菩薩の守りが手薄になる隙を衝けば、ワンチャンスの勝機は見込めるはず。
すでに目標は決まっており、他のチームも同時に動き出している。
偵察を繰り返し、行動方針を決めるような悠長なことをしていては、陽動チームの努力を無意味なものとしてしまう。
従って、鏡・胡蝶(夢幻泡影・e17699)とクーデリカに導かれるようにして、一行は単縦に並ぶ形で先を急いだ。
メンバーの外見が服装によって統一されたことは、目立たないという点で効果的であった。また必要とされるコミュニケーションを簡易なハンドサインに置き換えたことは、音を立てることによって、敵に発見されるネガティブリスクを低減した。そしてそれは隠密気流の様なグラビティに対しても、ポジティブな効果をもたらす。
具体的なランドマークにより距離と方角を見定め、速力と隠密性のバランスを取ったクーデリカの動きは今回の作戦に置いては最も効果的で、結果、誰にも悟られることなく、敵の懐の奥深くに飛び込むことが出来た。
果たして、今、一行の視界には、巨大な鳥居の如き建造物が映っている。
(「ここが精舎の建設現場で間違いなさそうね」)
その周囲にある神社の建築様式に似た建造物、それらの大きさを比較から、その規模はすぐに把握できた。
身を低くして、物陰から覗き見るようにして菩薩を探しながら、攻撃が不発に終わった時のために、得られる情報があれば得ておこうと、各々が目耳に全神経を集中させる。
魔空回廊の破壊、さらには陽動作戦が、効果を上げているのか、敵はかなり混乱しているようだ。しかし護衛戦力はかなりの規模だ。
そんなタイミングで、胡蝶の傍らにやって来たクーデリカが指先で肩を叩き、目線と指が鳥居のような建造物の方を指し示した。そこには芸夢主菩薩の姿があった。
「どう思いますか、今、やはり仕掛けるのは厳しいでしょうか?」
自陣に戦力がもっと戦力があると仮定すれば、攻撃を掛けられる千載一遇の好機と言えた。諦観を含んだクーデリカの囁きに、胡蝶は首を横に振って応じる。
伸るか反るかの大博打を打ってみたい気持ちが微塵も無いと言えば嘘になるかも知れないが、自分や仲間の命をチップにして、まず負けるだろう賭けに気安くベットしようと思い切れる人間はまず居ない。
「状況が混乱しています。危険ですから、念のため、菩薩様は中にお入り下さい」
――いやここにいる。芸夢主菩薩はそんな感じに応じつつ、ビルシャナたちに指示を出しているように見える。
そして、幻花衆、輝きの軍勢、フリーダムビルシャナの一群が、わらわらと動き出す。
(「もしかしたら、2チーム居れば、何か出来るかもしれないな」)
迷彩グッズを色々試しながら、和は物陰から物陰へ移動し、菩薩とその取り巻きの様子を窺い続ける。
攻撃の機を見いだせないまま、かといって打つ手を見いだせない状況では、同じく隠密行動を取っているチームとの合流に、可能性を求めたくなるのは、自然な感情であった。
(「きっと何か出来ることがあるはずだ……」)
そんな淡い期待をディークスも抱きはじめていた。ディークスは、芸夢主菩薩と視線が重なった様な気がした。
背筋に冷たい物が走った。
動物変身をしたウェアライダーは、デウスエクスにとって、動物の姿では無く、『動物変身をしたウェアライダーの姿』として認識される。つまり身を隠したりするのには便利なこともある動物変身を以て、ケルベロスであることを隠すことは出来ない。
次の瞬間、嫌な感覚は現実の変化となって顕現した。
(「ケルベロス絶対殺す明王がまっすぐこちらに向かって来るわ」)
前方を警戒していた胡蝶は小声に続けて、左右の手で8の数を表す。そして右手を挙げて後ろに送るような動きを見せた。
「ケルベロス絶対殺す明王、8体も?!」
フォルトゥナ・コリス(運命の輪・e07602)は向き直ると、周りの者に聞こえるように、言った。
●撤退戦
茂みの隙間から、ディークスが駆け戻ってくる。
「落ち着いて! 敵の目的は菩薩の護衛よ。だから、この場を離れさえすれば、深追いはして来ない筈よ」
胡蝶の冷静な声に、浮き足立ち掛けた雰囲気はすぐに落ち着きを取り戻す。
「今度は、敵中突破の撤退作戦。頼りにしてるわよ?」
シィは心臓の高鳴りを抑えるように、シャーマンズゴースト『レトラ』に言うと、胸の前で拳を握った。
今、ここで見た物を伝えれば、未知のヴェールに包まれている、菩薩累乗会の解明への一助にもなる。だから、絶対に生きて帰ろう。誰一人損なうこと無く。
——そこには自分たちだけでは無く、今、此処で顔を見ることは出来ないが、共においらせ町での作戦を選び、正に今、苦しい戦いをしているかも知れない別のチームの仲間も含まれている。
「行きと同じようには行かないでしょうが、全力を尽くします」
再び、クーデリカが前に出る。そして、胡蝶がすぐ後に続く。
「苦労を掛けるわね。でも、心配しないで。敵が現れても私が守るから、——構わず突っ込むのよ」
目的は撤退。殺る気満々の強敵なら兎も角、そうで無いなら、リスクを冒してでも強行突破を狙うのはありだ。
「ありがとう。ですが、避けられる戦いは、避けましょう。無理をしないのも大事ですよ」
クーデリカが微笑みと、頷きで返したタイミングで、焦げた臭いの漂う、墨色の風景の中に、輝きの騎士たちが、仄光る白い花のように、居並んで進む背中が見えた。
「そうも言ってられない、みたいだよ。だから、ここはボクがぶち抜くよ!」
後から声がして、前を行く者たちが、歩みを緩めれば、拳の一点に力を集中させた猛は、地を蹴り込んで跳び上がり、輝きの騎士が一体、輝きの鎌に狙いを定める。
「立ち塞がる何もかもを撃ち砕く!」
叫びと共に、極限まで威力が高められたバーニングブレイカーが打ち付けられ、輝きの鎌は身体をバラバラに砕かれた様にして果てた。
「穴が空きました……一気に押し通ります!」
猛の攻撃に応じて、再び足を早めたクーデリカが声を上げる。
「レトラ、お願いね!」
シィが奇蹟を請願する外典の禁歌で敵群を呪縛し、続けてシャーマンズゴースト『レトラ』が召喚した『原始の炎』を解放し、輝きの軍勢を燃え上がらせた。
「どうして敵が後から——」
「神すら過去を革めることをえず」
フォルトゥナの薙ぐルーンアックス、ソーラフレアの軌跡が別の輝きが軍勢の一体、輝きの華を両断して、精緻な造形の施された身体を閃光で焼いて灰と変える。
背後からの攻撃など考えてもいなかった、輝きの軍勢の分隊は大きく態勢を崩し、そこに足を早めたクーデリカと胡蝶が通り過ぎて行く。
「ほらほら、退いてくれないと、正義の鉄槌☆くらわせちゃうんだから♪」
叫びを上げる刹那に、アンジェリカは脇から突っ込んで来た、別の敵の構造的弱点を高速演算により見破り、次の瞬間、痛烈な一撃により打ち砕いた。
『大丈夫、どんどん進もう——』
「ああ、分かったよ」
「まだ追ってくるようだな、急ごう」
前を向いたままの和がハンドサインで告げれば、最後尾に入れ替わった、猛とディークス追ってくるケルベロス絶対殺す明王の動勢を伝えてくる。
何処まで離れれば見逃してくれるのかは分からないが、幸いまだダメージを負っている者は居ない為、もと来た道を反対方向に進む。そのことに気がついた、和とシィが疑問を投げかける。
「違う方向に行った方が、敵に遭わないんじゃない?」
元来た方向に向かうと言うことは、建設中の精舎を出撃した敵が向かったのと同じ方向に向かうのと同じ。わざわざ敵の中に飛び込んで行くようなものだと、感じたのだろう。
「私もそう思います。——ですが、陽動チームの誰かが、窮地に陥っているかも知れませんし、既に通った道なら状況変化にも気づけますし」
平時であれば話し合って決めるところかも知れないが、緊急時には出来るものが決断しなければ素早く動けない。
もし、ディークスが持っていたチョークを積極的に使っていれば、撤退の助けにも出来たかも知れないし、敵を惑わしたり、あるいは別のチームに進路を告げる手助けになっていたかも知れない。
だが、単に逃げ延びる為だけではなく、この撤退にも積極的な意思があることに気がついて、絶対に駆け抜けてやると、一行の腹は固まる。
「よーし、それじゃあ、派手に撤退して、敵をひっかき回したほうがいいんだね♪」
「いいえ、それは危険を招き寄せるだけよ。お願いだからやめてよね」
全力でつっこみを入れる、シィにアンジェリカは無邪気に頷きを返した。芸夢主菩薩を倒すという目標は既に実現不可能だが、まだやれることはある。『やれることを、しっかりとやろう』クーデリカの抱いていた思いは、いつの間にかに、一行の間に広がっていた。
戦いの余波による残り火がくすぶる森の中を、駆ける8人の耳に響くのは、風の音と、地を踏みしめる自らの足音、炎の爆ぜる音ばかりだ。
後を振り向けば、追ってくる8体のケルベロス絶対殺す明王との距離は、駆けてくるわけでもないのに、ジワジワと詰まってきていることが分かる。
この時点で、8人のメンバーの内、6人までが、暴走する未来を意識していた。
それ故発見されていないのならば、わざわざ此方から仕掛けることは無いと、フリーダムビルシャナ、続けて、輝きの軍勢の分隊との戦闘を避けて、一行は撤退を続けた。
そしてあと少しでグラディウス攻撃後の効果地点という所で、対面方向からの幻花衆の分隊と鉢合わせる。
次の瞬間、戦いの火ぶたはグラビティによる遠距離射撃の応酬で切って落とされた。
「咲いた、咲いた、赤い薔薇。咲いた咲いた大きな薔薇。赤い花は彼岸へ流し、彼方の空へ」
アンジェリカは声を張り上げる。あと少しなんだからお願いなの——直後、覚悟を孕んだ歌声はこの世のものとは思えぬ轟きとなる。狙いを定められた幻花衆の一人が全身から赤い血を噴き上がらせながら、仰向けに倒れて果てる。
一歩、身体を後に下げた幻花衆たちがざわめく。
正面から敵が戻って来ているということは、この幻花衆たちは仕事を切り上げて帰還の途についたところなのだろう、つまり陽動チームは既に撤退したか、陽動作戦を終えたと判断出来る。
「そこをどいてくれないかしら? 命は大切にするものよ」
次の瞬間、胡蝶によって召還された、雷嵐の神の如き大蛇、竜を模した激しい雷嵐が、幻花衆の一人を飲み込んで、命を奪い去る。
「こいつら手練れだぞ……」
別の幻花衆が流した冷や汗が地面に染みを作った瞬間、天高く飛び上がり、降下してきたフォルトゥナの斧刃が、その脳天を捉えられて、瞬く間に両断され息絶えた。
その返り血に顔を赤く塗られたたフォルトゥナが周囲を見渡すと、近くに居た幻花衆たちは恐れをなしたように二歩後に下がる。
「そこ通りたいの。退いてくれない?」
ここの幻花衆は数こそ多いが、リーダーを除けば、個人戦闘力はさほど高くないようだ。
しかし、後方から迫るケルベロス絶対殺す明王との距離は急速に詰まって来ている。
「押し通ります!」
戦闘力の優位を確信したせいか、それとも追跡者からのプレッシャーのせいか、ここまで、慎重な行動を続けていたクーデリカが強硬な行動に出る。
そしてその隙を好機と見たリーダーの一撃に誘発された幻花衆たちの攻撃が集中する。
「……っ! 守ってあげる……って言ったでしょう?」
数えるのが恐ろしくなるほどの刃に貫かれて、目の前で血を噴き上げる胡蝶の顔色が急速に青白くなる様が見えた。
「なんですか、これ、あと少しだったのに、これじゃぁ……」
「まだ、戦いは終わってないぜ!」
ここまで必死に頑張ってきたのに、心が折れそうになるクーデリカの耳に、和の叫びが届く。
叫びと共に七色の爆発が起こり、心地の良い爆風が、ケルベロスたちの背中を押す。
クーデリカはすうっと息を吸い込んで冷静さを取り戻すと、狙い定めた絶空斬の一閃で、敵とばかりに幻花衆を打ち倒した。そして、前に出た猛の電光石火の蹴りが続いて、居並ぶ幻花衆の陣形に大きな穴を穿った。
「帰りましょう!」
次の瞬間、猛に頷きを向けたクーデリカは、傷ついた胡蝶に肩を貸し、再び駆け始める。
「大丈夫、ここは、あんじゅちゃんにまかせて☆」
「それには及ばないわ、あなたも一緒に引いてちょうだい!」
意志を言葉に乗せ、幻花衆たちへ戦いを挑もうとするアンジェリカに、シィはすかさず撤退を促した。
幻花衆を突破したところで、もうケルベロス絶対殺す明王は追跡を止めたように見えた。
かくして戦いは終わり、傷ついた胡蝶を支え、目にした精舎の記憶を持って一行は帰路に着く。
魔空回廊は破壊されたが、残った戦力は芸夢主菩薩の元に集結するはずだ。
決戦の時が間近に迫っていることを誰もが予感しはじめていた。
作者:ほむらもやし |
重傷:鏡・胡蝶(夢幻泡影・e17699) 死亡:なし 暴走:なし |
|
種類:
公開:2018年4月13日
難度:やや難
参加:8人
結果:成功!
|
||
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 5
|
||
あなたが購入した「複数ピンナップ(複数バトルピンナップ)」を、このシナリオの挿絵にして貰うよう、担当マスターに申請できます。
|
||
シナリオの通常参加者は、掲載されている「自分の顔アイコン」を変更できます。
|