全てのイケメンに課税しろ!!

作者:柊暮葉


「全てのイケメンに税金をかけるものである!」
 一体どうやって借りる事が出来たのか、公民館の会議室でビルシャナが叫んでいる。
「今の日本の危機的状況を回避するためには、新たに課税するしかない。そのためにはまず、全てのイケメンに課税をすべきである。何故ならイケメンは生まれた時から優遇措置を受けているから!! あらゆる面で得しているから!! だったらちょっとぐらい課税されても文句言うな!! 来年からは全てのイケメンは高額の納税をすべきなのだー!!」
 壇上で拳を振り上げ、熱く吼えるビルシャナ。それに対して老若10名の男性が同じく熱く吼えて答えた。
「全てのイケメンに税金を!!」


「全てのイケメンに税金を導入すべきであるという悟りを開いたビルシャナが発生しました。問題を解決してください」
 ソニア・サンダース(シャドウエルフのヘリオライダー・en0266)が集めたケルベロスに説明を開始した。
「悟りを開いてビルシャナ化した人間とその配下と戦って、ビルシャナ化した人間を撃破する事が、今回の目的です。このビルシャナ化した人間が、周囲の人間に自分の考えを布教して、配下を増やそうとしている所に乗り込む事になります。ビルシャナ化している人間の言葉には強い説得力がある為、ほうっておくと一般人は配下になってしまいます。ここで、ビルシャナ化した人間の主張を覆すようなインパクトのある主張を行えば、周囲の人間が配下になる事を防ぐことができるかもしれません。ビルシャナの配下となった人間は、ビルシャナが撃破されるまでの間、ビルシャナのサーヴァントのような扱いとなり、戦闘に参加します。ビルシャナさえ倒せば元に戻るので、救出は可能ですが、配下が多くなれば、それだけ戦闘で不利になるでしょう」


「ビルシャナの能力は?」
 誰かの質問に対して、ソニアはすぐに資料を広げてくれた。
 ビルシャナ閃光……敵を退ける、破壊の光を放ちます。
 八寒氷輪……氷の輪を飛ばし、敵を凍りつけさせます。
 浄罪の鐘……鐘の音を鳴り響かせ、敵のトラウマを具現化させます。
 これらの力で戦うらしい。
「今回のビルシャナは非モテで非リアな人生を送ってきて数十年、なんでこんなことになったのかと人生をつらつら振り返り、どういう訳か最終的に全てはイケメンが悪いという結論に行き着き、その場で悟りを開いてビルシャナ化したものです」
 ソニアは説明を続けた。
「配下の10名も、まあ大体似たり寄ったりです。非モテなのも非リアなのも、全てはリア充のイケメンが悪いとうっすら思っていたところをビルシャナの洗脳にあって行動が極端化、今にもイケメンを襲撃しそうな勢いです。それは阻止しなければならないので、配下達にはインパクトを与えて正気に返し、ビルシャナは退治してください」


 最後にソニアはこう言った。
「ビルシャナはもう助からないので仕方ありませんが、洗脳されている一般人達はインパクト次第で正気に返ります。悪い洗脳が解けるような強烈なインパクトがあるといいかもしれませんね!」


参加者
ペトラ・クライシュテルス(血染めのバーベナ・e00334)
ミリア・シェルテッド(ドリアッドのウィッチドクター・e00892)
チェリー・ブロッサム(桜花爛漫・e17323)
宇原場・日出武(偽りの天才・e18180)
アレックス・アストライア(煌剣の爽騎士・e25497)
ケルツェ・フランメ(不死身の自爆王・e35711)
雑賀・真也(不滅の守護者・e36613)
ザベウコ・エルギオート(破壊の猛獣・e54335)

■リプレイ


 またしても奇妙なビルシャナが発生したとの報告を受け、ケルベロス達は迅速に行動を開始した……。

 該当の公民館の前でミリア・シェルテッド(ドリアッドのウィッチドクター・e00892)は、別の意味でしみじみとした顔になっていた。
「ほんと、ビルシャナって倒しても倒しても生えてきますよね……。……除草剤って効かないでしょうか」
 最早、雑草扱いである。
「教義に興味はありませんが、生えて……じゃなかった悟りを開いた以上は叩きましょう……」
 そんな事を言いながら、薄める除草剤を原液のままビルシャナにかけてやろうかと考えるミリアであった。
「私もイケメンになりたいですのでビルシャナの気持ちも分からなくは無いのですが、課税よりもする事があると思うのです。まぁ、張り倒しましょう!」
 ケルツェ・フランメ(不死身の自爆王・e35711)は、胸を張って言い切った。
 一方、雑賀・真也(不滅の守護者・e36613)は、不細工に変装出来るマスクを被っていた。
「やれやれ……暖かくなると不審者が多くなると聞くが、ビルシャナも同じなのかね。ところで皆、俺はちゃんと変装できているか?」
 そう周囲に尋ねると、大丈夫だという返事が返ってきた。
 ペトラ・クライシュテルス(血染めのバーベナ・e00334)、チェリー・ブロッサム(桜花爛漫・e17323)、宇原場・日出武(偽りの天才・e18180)、アレックス・アストライア(煌剣の爽騎士・e25497)、ザベウコ・エルギオート(破壊の猛獣・e54335)も公民館前に集まり、作戦内容を確認しあった。
 その後、全員で館内へと入っていった。

 ケルベロス達は受付に一声かけて、自主避難して貰うと、ビルシャナのいる会議室へと急いだ。
 ビルシャナは公民館中に響き渡るような大声で演説を続けている。
「全てのイケメンに課税しろー!」
 そのまま嫉妬にまみれてもう言いたい放題である。信者も一緒になって課税課税と騒いでいるようだった。
 ビルシャナのいる部屋のドアを、ケルツェはぶち破る勢いで大きく開けた。
「信者の皆さんよーく聞くのですよ! 私はイケメンでは無いからという理由だけで! そう! その理由だけで沢山の苦渋を舐めさせられてきました! 貴方もそうですね?」
 突然のレプリカントの登場に、ビルシャナも他の男達も呆気に取られている。
「そこで私は思うのです! 課税だけでは足りないと! 君! 君もそうは思いませんか! この世の中を変えましょう!」
「え? いや、あの、世の中を変えるっていうか、ていうか……」
「ここにイケメンを爆破するスイッチがあれば! 私は、それを押して押して押しまくりイケメンを爆破するのです! イケメンに制裁を! イケメン滅殺! 慈悲の心を捨てて立ち向かおう!」
「あ、あの、あの、イケメン爆破……?」
「終わりなき闘争の第一歩を今、踏み出せェェッ!」
 ケルツェの形相に、信者達は明らかに動揺している。困っている。
「そうだー! イケメン爆破! イケメン滅殺! それぞ真理!! お前、よく言った!!」
 しかし、ビルシャナだけは喜んでいた。流石に悟りを開いただけはある。
 そのビルシャナを横目に、ちゃらけた金髪騎士のアレックスが信者達に話しかけた。彼は紳士だが女の子大好きである。
「イケメン税を俺に課すというなら、それは俺がイケメンであることの罪だね。君は俺にいくらの税金を課したいんだい?」
 アレックスに尋ねられると信者達はまた動揺した。
「ご、五万円ぐらい……」
「それで、なんでその額なのかな?」
「え……なんか……」
「どうやって徴収するんだい? 集めたお金は何に使うのかな?』
「えっ、いや、そのう……」
「――へぇ、ちゃんと決めてないのにただ課税するんだ」
 そこでアレックスはビルシャナの方を振り返った。
「それで、教祖の君にはいくら入るのかな?」
「人聞きの悪い事を言うな。俺には一円も入らない!! ただ、イケメンが気に入らないから苦しめばいいってそれだけの話だ!!」
 ビルシャナは胸を張って大いばり。
 ケルベロス達は一様に冷ややかな視線をビルシャナに送る。信者達もだんだん挙動不審になってくる。
「イケメンに課税するだなんてボクは許せない!」
 そこでチェリーが声を張り上げた。
「イケメンはもっと優遇されるべきだよ! まずイケメンから税金を取るのはやめよう! そして次にイケメンには給付金を出す! 圧倒的にイケメンが住みやすい世界を作ることでみんながイケメンになろうとするんだ……! イケメンは生まれつきの才能だけではないしねっ!」
 人の話を全く聞かずに次々と話し始めるチェリー。
 しまいには脳内彼氏と脳内デートを始めて妄想をマシンガントーク。
「……お前は俺に喧嘩を売っているのか」
 羽毛の上からもこめかみの青筋が分かるほど怒るビルシャナ。しかしチェリーは聞いていない。
「イケメンは生まれた時から優遇措置を受けている。我々を虐げている。だから課税しなくてはならないんだ!!」
「まずねぇ、そのメンタリティがモテない原因なのよぉ」
 そこでペトラが口を挟んだ。
「嫉妬心が醜くてしかたないわぁ。メンタルイケメンになりたかったら嫉妬するのはやめなさぁい」
「メ、メンタルイケメン!?」
 聞き慣れない単語にビルシャナが素っ頓狂に裏返った声を立てる。
「他人の足を引っ張るのではなく、自分を見つめて、自分を高めることができなければ一生モテないままよぉ」
 正論を言うペトラ。
「そう、イケメンを虐げるのではなく自分がイケメンになれるように努力するべき! そうすれば女の子と素敵なデートが出来るよ!」
 都合のいいところだけ聞き取ってチェリーがさらに大きく声を上げる。
「くっ……この馬鹿女どもっ……!!」
 どうやら怒りのツボに入ったらしく益々逆上していくビルシャナ。
「メンタルイケメンだの雰囲気イケメンだの、訳の分からないイケメンを増やすな! 我々から居場所を奪うなー!!」
 とにかくイケメンとついたら何でも憎いらしい。
 そこでミリアが冷め切った視線をビルシャナに投げた。
 ミリアは事前に写真を三枚、用意していた。
 まずは一枚を取り出す。
「こちら、アイドルの…(名前忘れた)…とにかく、世間一般でイケメンとされるアイドルです。100人に聞いたら110人ぐらいがイケメンって答えるレベルです」
「110はないだろ!」
 ビルシャナの突っ込みは放置して、ミリアは二枚目を取り出した。
「同じアイドルの写真…ですが、こっちは画像編集で作画崩壊させています。顔のパーツは同じですが、イケメンですか?」
「……」
 ビルシャナはなんとも言えない顔になった。
「顔のパーツが同じでも、ちょっとの違いでイケメンではなくなる…じゃぁ、イケメンの定義はどこにあるんでしょう?」
「イケメンは、顔で優遇措置を受けていたらイケメンで……」
 ビルシャナは本人の中でだけ分かっている事を言い出した。周囲の人間は何言ってるのか全然分からなかった。
「課税をうたう以上、数値で表せますよね? この芸能人は何点です?」
 一枚目のアイドルにブサイクアイドルを合成させてミリアが問い詰める。
「す、数値とか……ていうかアイドルだったら女にモテて優遇措置受けているんだろ! そんな奴、五万でも十万でも課税されて当たり前じゃないか!!」
「当たり前じゃないよ」
 アレックスが躊躇わずに突っ込んだ。
 ミリアはミリアで寒い気持ちになってくる。
(「このニワトリ、「こいつイケメン、こいつ普通、こいつブサイク」みたいに、感覚で振り分けるつもりだったんでしょうか……同じ人を判定待ちに何回か並ばせたら、毎回結果変わりそうですね……」)
 そんな税の取り立て方絶対嫌である。
 アレックスだけではなくケルツェもチェリーもペトラも突っ込み始め、そこに信者達が参戦して、周囲は喧々囂々何が何だか分からなくなってきた。イケメンの線引きってどこからだ。
 そこを見計らって日出武が口を開いた。
「イケメンに税金なんてとんでもない! このわたしなんかいくら取られるかわかったものじゃあないですよ、ああ恐ろしい。そしてわたしでさえ課税されるのです! あなたがたも当然課税対象ですよ! それも高額の!」
 アレックスではなく日出武がそんなことを言い出したので皆絶句。
 そして、それなりの容姿の信者達が一斉に抗議の声を上げ始めた。
「なんでお前がイケメン税を払う事になるんだよ」
「俺達だって払う訳ないだろー!」
 ブーイングを浴びながら日出武は頑として言い切る。
「ほう。どうしても自分は課税対象にならないと主張する。ならば」
 日出武は目をギラつかせた。
「きさまらにはブサイク税をかける! ブサイクは存在するだけで美観を損ね、環境に害を与える! ならば当然税金をかけるべきであろう! それも高額のだ! どうだ嫌だろう!!」
「な、なんだと……!!」
 ビルシャナはコケコッコー!!の形で嘴を開いている。信者達も言葉を失う。
(自分がイケメンとの主張はあくまで依頼解決のための方便であり、実際の自己評価とは異なる可能性がアリマス。またブサイクが環境に害を与えるとの主張も依頼解決のための方便であり、実生活において男を顔で評価しているわけではございません。女? 今回の依頼とか無関係なので省略」)
 そんな事を思いながら石のように固まっている信者達を眺める日出武であった。
「そうだよな~。我々不細工にとって、イケメンは大敵だ。イケメンに課税すべきだよな! だが、そんなものでは生ぬるい。『容姿端麗罪』というものを新たに作り、公開処刑にすべきだ! ほら、このイケメンのようにな!」
 そこで不細工のマスクを被った真也が前に出て来たと思うと、いきなり拳を振りかぶった。
 そのまま勢いをつけて、イケメン代表を名乗る日出武に戦術超鋼拳を炸裂!!
 石化したまま目を剥くビルシャナと信者達。
「がはぁ」
 喉からのけぞって白目を剥く日出武。
 真也はこっそりメタリックバーストの準備をする。空気を読んでうまく日出武を回復するつもりだ。
 しかしそこにザベウコが走り込んできた。
「イケメン税とか言ったなァ~ッ? おいおい、気付いてないのかァ? あんたらもイケメンなんだぜェーッ!! イケメンかどうかなんて人それぞれの印象だ。ほォ~ら、こっち(味方)にもイケメンが勢揃い! 理解したか? ヒャハハ、つまりあんたらも課税対象ってわけだ! 残念だったなァーッ! 諦めて内面でも磨いとくんだぜェェエエーッ!」
 そんな事を一通り喚いたかと思うと、走って勢いをつけた上で、戦術超鋼拳で服破り受けている日出武に癒しのジャーマンスープレックスを行った。
 痛そう。
 凄く痛そう。
「ぐ……くっ……自らをイケメンと認めないならば……あなたたち全員、不細工税だ……」
 スープレックス受けた格好のまま、日出武がそう言った。ちなみに癒しのスープレックスなんだから回復がかかっているんだが、画面が本当に痛そうなんである。

「イ、イケメンと言いがかりをつけられてあんな目に……」

 信者達の間に戦慄が走る。自分ら絶対にそんな目に会いたくない。
「イ、イケメンを嫉んで税金かけるのやめます……」
 一人、また一人とケルベロスへ向かって投降を始めた。イケメン税でも不細工税でも自分が払うんだったら絶対嫌であるらしい。
「貴様ら、裏切る気か! イケメンに天罰を与えたくないのかーッ!!」
 ビルシャナだけが喚いている。それを見て、ケルツェが言った。
「イケメン以前に、デウスエクスに天罰でしょう!!」


 そういう訳で、ビルシャナがビルシャナ閃光をぶっ放してきたので、ミリアは醒めた表情でメディカルレインを降らせた。
「私も貴方も! みんなHappy!! イケメンを嫉んでいるうちにはこの境地にはたどり着けないんですよ!」
 そんな事を言いながらケルツェはバラマキスプラッシュでビルシャナを足止め。
「ヒャッハー!! イケメンは俺が蹴り倒してやるぜ!!」
 ノリノリでザベウコは旋刃脚を炸裂させ、ビルシャナの動きを奪う。
「この怒り! この悲しみ! その他諸々! 全て貴様にぶつけてやります!!」
 真也に受けた戦術超鋼拳のお返しをルーンディバイドにしてビルシャナをぶったたく日出武。
「イケメンを守るためにボクは戦う!!」
 チェリーはそう叫んでドラゴニックミラージュでビルシャナを燃やした。
『ズバっと切れるわよぉ!』
 お天道様の通り道・改(シャイニングレイ・エクスタシス)でペトラは魔力のレンズで光を集束し、ビルシャナを高温で穿ち焼き捨てた。
 そこで真也が素手のまま貫手の構えをとった。
「お前みたいな奴に武器は必要なさそうだな。この手であの世に送ってやるよ」
 そう言い放つと、凄まじい殺気を放ちつつ、神速で間合いに入る宇。
 そして喉へ向かって貫手を放った。動脈に触れた瞬間、掴んで握り潰し、止めを刺す。
 ビルシャナは滅びた。


 戦闘後--。
「やれやれ…血塗られた人間はイケメンとは呼べんな。ただの殺人鬼だ」
 ビルシャナにトドメを刺した真也がそう呟いた。
 するとおもむろにザベウコは真也の背後に忍び寄り、問答無用でバックブリーカーを行った。
「お前のその台詞がイケメン的なんだぜェえーッ! これがお前のイケメン税だぁ!!」
 ぐるんぐるんぐるんぐるん。
「や~め~ろ~……!!」
 叫ぶ真也を見ているうちに楽しくなってきたケルベロスは、お互いにイケメン税をかけあって暫く遊んだ。

 何をもってイケメンとするかは人によって違う。
 ちなみにマザーテレサはどんな人間にでも美しいところがあると言う。その美しいところを見つめているとマザーになれるんだそうである。つまり、人類全ての男女はイケメンになれる要素を生まれながらに持っているのである。それを生かすか殺すかは本人の心意気次第。
 人々を守りデウスエクスと戦うケルベロス達は、皆イケメンなのかもしれなかった。

作者:柊暮葉 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2018年3月31日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 3/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 3
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