花と午睡

作者:志羽

●花と午睡
 山の端の櫻を、川縁の櫻を。
 それらを眺めつつ、柔らかな風に吹かれながら。
 心地よく揺れる舟の上でとろとろ微睡ながら眺めるのは極上の時間。
 小さな屋形船は陽射しを遮る屋根があるのみ。人が一人、足を延ばしてゆっくり座れる幅がある四人のりのものだ。
 靴を脱ぎ、柔らかなソファ置かれた船底。その上には大小さまざまなクッション。
 それから、固定された板の橋が真ん中、テーブル代わりに。
 花見をするのも。それから昼寝をするのも良い。
 まったりとした時間を味わえるのはこの季節だからこそでもある。
 しかし、そんな時間を提供してくれる場所がデウスエクスの襲撃にあった。
 船着き場と、それから舟が破壊されてしまったのだ。
 花見をしつつ、と予約はすでに幾つも入っているが修理をする時間はない。
 そこで、ケルベロス達へと修復依頼が出されたのだった。

●ケルベロスさんにお願い
「お花見がてら修復をお願いしたいんだ」
 と、夜浪・イチ(蘇芳のヘリオライダー・en0047)はケルベロスたちに告げた。
 それはとある山間の観光地。そこはこれから、桜の季節なのだ。
「毎年、山に咲く桜を楽しみにしてる人たちがいるんだ。それから、山間には川があって。そこに屋形船を浮かべてゆっくり過ごすっていうのもあるんだけど……その屋形船と船着き場が壊されちゃったんだよね」
 なので、そこをヒールしてほしいのだとイチは続ける。
 それを聞いたザザ・コドラ(鴇色・en0050)は尻尾をびたんびたんと跳ねさせて。
「ヒールの後は素敵なお花見タイム、ということね!」
「そうそう。屋形船に限りがあるから一時間ずつくらい交代で。船頭さんが船を操ってオススメポイントで留まってくれるみたいだよ」
 屋形船は、四人がゆっくり過ごせるほどの大きさ。希望する者が多ければ相乗りもお願いすることになるとイチは言う。
「皆で賑やかにっていうよりはまったり過ごす感じ、かな。船の上でうとうとうたたね、とか。ゆっくり過ごしてもらえたら」
「なにその贅沢な時間……」
「うん、贅沢だと思う。他にも、川縁にカフェがあって。そこではお花見スイーツセットなるものが」
「すいーつ、せっと……!」
 お花見スイーツセット。
 それはお重のような入れ物に、九種類のスイーツが詰め込まれドリンク付きのお得なセットとのこと。
 店はオープンテラスの場所があり、そこでスイーツを楽しみつつ過ごす事が出来るのだ。
「ということで、ヒールのご褒美にどうかな」
 丁度、花も見頃だしねとイチは続ける。
 それぞれゆっくりとした時間を過ごす為に。


■リプレイ

●揺蕩うて
 緩やかな船の振動、心地よい風と気温が気持ちよすぎてうとうと。
 冬だって嫌いなわけじゃないけれど、どうしてもこもりがちになってしまう。
 けれどこうして、外の空気と共に桜の色と晴れやかな青空に気持ちは上向いて。
「あとでお礼を言いに行こう」
 この時間を教えてくれたイチに、とアリシスフェイルはまどろむ。

「美しいですね、日本らしい風景です」
 手土産を、と瑛華は桜の花型取った生菓子を。
 アトリは煎餅を差出す。
「有難う一之瀬さん、頂くよ」
「煎餅と生菓子か」
 どっちも普段食うことがねぇな、似合わんからとハンナは軽口と共に口へ。
 悪くない、とシニカルに笑って。
「この状況こそ風情を味わってる、って事なのだろうね」
 そう言って、屋形船は初めてなんだけど、とアトリが紡げば。
「わたしは宴席へのお呼ばれが一度ありますね。ハンナは来なかったっけ」
 今回とは真逆の雰囲気でしたねと続け。
「ありゃどう考えてもお前をご指名だったろ」
 そういうハンナは豪華客船と聞いてスケールが違うとアトリは零す。
「ま、アトリも客がつきゃそういうお誘いも来るさ」
 そんな話をしつつ、一区切りにアトリは改まり、上司である二人に深々と御辞儀をして。
「今後も職場でお世話になる事が多いと思うけれど。改めて、宜しくお願いします」
 そのアトリの様子に真面目だなぁと瑛華は苦笑しつつも、居住まいただし。
「こちらこそ頼りにしています」
 同じように一礼を。
 二人の様子にハンナは笑って。
「何だ、見合いかよ」
 ここでは生真面目である必要もなく。
 楽にと、笑う。

 カジミェシュはすっかり暖かくなったものだと、零す。
「……あらあら、鼓太郎さん眠たそうですね」
 そう言ってアイラノレは一枚、かけて。
「うーん……桜餅……むにゃむにゃ」
 すると、鼓太郎はその暖かさに眠りへ。
 つられてうとうと、アイラノレもカジミェシュに寄りかかる。

 屋形船はわくわくしちゃうと熾月は紡ぐ。
「ふわー、とっても快適空間だ」
 ぼーっと座っていたらねちゃいそう、と熾月は言う。
 グレインはその傍で包みを広げる。
 するとぴよがすぐさま飛びついて。
「はは、まっしぐらだな、ぴよはホーミングも備えていたのか」
 そこにあったのはドロップクッキー。
「お、どうしたロティ……」
「ふふ、ロティはグレインの隣が良いの?」 そういうことか、と納得するグレイン。
 大好きなお菓子とお茶。
 それに満足したらとろとろ、うとうと。
「うっかりすると本当に寝ちまいそうだな」
 そうグレインは零し、瞳を閉じる。
 最後まで起きているのは誰なのか、負けても幸せな勝負。
 うたた寝の時間。

 屋形船では恋の話。
「この間の依頼で彼とのデュエットのワイルドグラビティを歌っちゃいました」
 公然と恋人とらぶらぶしたりはできないけれど、お仕事なら別。
「人前で見せつけちゃうのって、恥ずかしいけれど……ちょっと誇らしい気持ちにもなりますね」
 鞠緒は照れつつ、笑んで。
「わあ、鞠緒、依頼でデュエットなんて素敵! 私も聴きたかった…!」
「歌で通じ合うのって、すごくいいなあ……!」
 鞠緒さんは離れててもいつも繋がってるのねとロゼは笑む。
 ちょっと前から一緒(の建物)に住んで毎日会えるとヴィヴィアンはてれてれ。
「すごく大事にしてもらってるし、いつも幸せなんだ~」
 その話にいつの間にとロゼは零す。
 一緒に、毎日というのはやっぱり羨ましい。
 私は、とロゼは少し考える。
 彼は、幸せの青い鳥。
「彼を愛してる」
 そう紡ぐロゼは幸せそうだ。
 そしてララは。
「今年は私、プロポーズしようと思うの!」
 と、ぐっと拳握り。
 それにプロポーズ?! と驚きの声。
「殿方からされるのって憧れだけど、彼はとても奥手だから」
 頑張ってとララに応援を皆で。
 それぞれの恋の、幸せの形。

 と、恋人たちの姿を少し離れた所から追う舟。
「恋人の仲間の恋人同士……」
 ややこしいな、と鬼人は惚気話っていっても、と零す。
「桜を愛でつつ、愛しのひとの話をするというのも風流なものですね」
 アレクセイは双眼鏡で愛しの君を見詰めつつ。
 緋雨は恋人の鞠緒は、と語る。
「しっかりしているようで、少しドジなところが可愛いというか堪らんのだ。いやー女子のギャップ萌えは堪らんのう! ハッハッハ!!」
 次は、と緋雨は鬼人に視線を向けた。
「俺は、ヴィヴィアンに感謝してるんだよ。心底、惚れてるしな」
 彼女がいなければ自分はどんな荒くれ野郎になっていたかと鬼人は思う。
 割と真面目に天使様、と言ってこそばゆさを感じる。
「こいして話を聞いていると……皆の幸せにあてられて、早く彼女に会いたくなるというのは贅沢かな」
「ルテリスは奥手すぎてなんとも」
「お、奥手でわるかったなっ」
「アレクセイ、お前は僕の妹に対して大胆すぎだよ」
 ルテリスは柔らかな笑み浮かべ。
「満開の桜もたしかに美しいが、僕はもっと美しく咲く……笑顔という花を知ってしまったからね」
「……私は皆様にも伴侶の方にも感謝しています」
 そう言ってアレクセイは皆にも感謝をと。
 この景色の中で彼女達に歌ってもらえたなら、それはきっと幸せな時間になるだろうから。

 いつもと全然違う花見にマイヤはお花見できて良かったね! と大はしゃぎ。
 マイヤの声にキラキラ綺麗とキアラも笑う。
「水面も近い物ね。少し涼しい風が気持ちいい……」
 セレスは瞳細め、風を感じる。
 ふと、香った匂いにキアラはくるりと視線を巡らせ。
「心なし桜の匂いもしてるかも? それともセレスの香水……かな?」
 本当だ、と頷くマイヤ。
 セレスはうんと頷く。
「折角のお出掛けだしキアラに貰った大事な物だもの、つけてきてるわよ」
 おしゃべりしながら賑やかに過ごしていると、相棒のラーシュが落ち着けとばかりにぺちぺちと。
 てへ、と笑いながらマイヤが二人に、屋形船は初めてかと尋ねれば二人共初めて。
 お揃いは嬉しくて。
「私もマイヤちゃんと一緒でワクワクしてるよ。こんなに楽しいなら、別の季節も乗ってみたいね」
「うんうん、別の季節も乗ってみたい」
「そうだね。ゆっくり過ごした後はカフェの方にも寄ってみる?」
 と、セレスが提案すると。
「わたしもカフェ賛成!」
「別の場所からもお花見したいしね」
 互いに笑いあって、全部満喫しようと紡ぐ。

 卓の上にも桜前線、と早速箸伸ばすゼレフは贅沢だねえと一口。
 メイアの手毬寿司とシィラの飾り寿司。
「ん~、しあわせの味っ」
「食べるのが勿体ないけれど」
 この場では食欲が増すというもの、と夜も手を伸ばしあっという間に空っぽ。
「どうぞ姫君がた、そして若君」
 花見の供にとゼレフが献上したのは甘酒。
 それに食後の甘味にと夜は色々な餡を好みで乗せる団子を献上。
「どうぞ姫君」
「ふふ、お姫様なんて照れちゃう」
 シィラははお団子も色んな風味が楽しめてと笑む。
「それに、殿」
「うむ、くるしゅーない」
 夜が片目瞑ってお道化返せば、ゼレフもまた。
 そんな中、岸部に見つけた姿に手を振って、振り返して。
 ゆるやかな時間。
 いつの間にか落ちる瞼。
 その姿に気付いたメイアはそーっと構え、そして気付いたシィラと視線あって頷きあう。
 響く音一つ。シャッターの音にゼレフははっとし、夜は瞬いてきょとんと。
「えへへ、ベストショット頂きました」
 メイアは笑って、そのカメラを船頭に。
 締めには記念撮影。
 桜の満開も、四人で一緒に切り取るのは、最年長の掛け声と一緒に。
 満開! の掛け声にひとつ、欠伸まじりの声。
 春の陽気には勝てないねと夜は紡ぐ。

 座ったまま、流れていく桜の景観。
 クィルはそれを見つつジエロを見上げ。
「ね、ジエロ、すこし寒いからお茶を飲みませんか?」
 それと、寒いからと言い訳して膝の上に。
 ジエロはくすくす笑って、ぎゅっと腕を回してみたら、きっとと。
 そうすると、とってもあったかくて。
 二人で笑い合ってしまう。
 桜色に染まる世界。ずっと続けばいいのにというクィルにジエロは頷き返す。
「ねぇ、来年も一緒に見ようね」
 ひとひら。
 遊びに来た花弁を掌に招いて。
 ふと、願い事が叶うと聞いたおまじないをジエロは思いだす。
 毎年、桜を手にして願って。
「来年も、君と一緒に」
 ふたりで願いを叶えていく。

「ノーレがお弁当を作ってくれたゆえな。ありがたくつまんでおくれね!」
「! ノーレのお弁当。夜目にも彩りゆたか」
「あっ、カニウインナーは私のだ。タコさんはいくつでもいいぞ!」
 ではありがたくタコさんウィンナーをとティアンは一口。釧が手を伸ばしたのは唐揚げだ。
 そしてティアンはポタージュスープを。
「ふふふ、春になったとはいえこういうものがあるのは良いな」
「ほっこり温まりそうだな、おいしそう」
 釧に頷いて、ティアンはゆっくりのんでほしいと一言。
「花見のお供といったら和菓子も良いぞ」
 釧が差し出したのは三食団子と桜餅。
「おお、三色団子に桜餅! 酒もあるのか?」
 クラレットが輝かせるともちろんと。
「花見酒も楽しめるのは成人の特権か」
「ティアンは酒はできんが、茶でもいいかね」
「なんだ、子供はティアンだけか。なんならお酌しようか、なんて」
 はやく大人になりたいものだとティアンは零しながら茶を手にする。
「花のひとつでも浮かべると風流で良いかもなあ」
 クラレットはとれんだろうかと花弁をひとひら、杯に。
「なるほどこれが風流というやつ」
 春ごと飲み干そうとクラレットが口にする姿をティアンは目で追う。
 のんびり流れていく時間は至福。

「イチカ大丈夫?」
「あっあのイチカ船べりじゃなくてまんなかへんに……いれてください」
 と、浮き輪もって真ん中でふるふるしているのはイチカ。
「イチカを川ぼちゃしたら面白そうなんてそんなことはアハハ」
 紡のからかいに面白くないから! とイチカは声上げる。
 そこへ全然関係ないんだけどとリィは言って。
「近くのカフェではお花見スイーツセットなんてものが出るみたい。一体どんな素敵なものが詰まってるのかしら」
「えっすごいプレッシャー! あっあの、おべんと、すっごい普通のものしか詰めてきてないよお」
 今日はおにぎりとからあげにしときました! とイチカが最初に。
 ロールサンドを出したのは繭紗。
「お食事むきのものに、チョコやジャムのおやつ系も」
 具材といろのいろいろをこぢんまり詰めこんだお弁当。
「……こぢんまり、すぎたかも」
 と、繭紗は零すが女子力が高いとリィは覗き込む。
 リィの手には渋めのお茶と桜餅。残念ながら手作りではなく。
「……でもなんかリィ、全体的にチョイス渋くない?」
「そんなことはないわ。美味しいもの」
 と、それも楽しみに。
「かわいいなあ。くるくるーっとしてる」
 イチカにもおひとつくださいなっと摘まめば笑顔。
「肴……もといお弁当はイチカとマユサが持ってきてくれるから、じゃん! あたしはビールと未成年用子どもビール!」
 マユサは結構呑めるクチ? と紡は笑う。
「大人はお酒でふわふわできるのいいなあ」
「またいつか、お嬢さんたちがお酒を嗜める齢になったら来ましょ、ね」
「お楽しみは大人になってからってことで」
 そう言いながら花見酒は最高だよね! と紡は幸せ気分。
 のんびりぽかぽか。正直寝たいとリィは瞳をゆるゆる瞬く。
「リィちゃんクッションあげる!」
 クッション受け取ってリィはふかふか夢心地。イチカは浮き輪でゴロゴロと。
 こういった行楽も悪くないと、ころりとリィは転がる。
 お昼寝気分、でもその前に記念撮影を一枚を微睡と戦いながら。

●憩のひと時
 ゆっくりと進む船に雲の根追う旅仲間に手を振り返しオルテンシアは菓子をひとつ、摘む。
「ああほら。これ、あなたに似てると思わない?」
 シュークリームの中、淡い桜色を従者の口に寄せれば。
 はらはら、花弁が零れ出る様に瞬いて。
「悪戯もまあ、これくらいなら風流ね」
 静かだと思ったのよとヒールの間を思い返し、シュークリームを半分こ。

 先日の礼にとイチを誘ってお重の菓子に眼を輝かせ過ごす時間。
 まだ友達がいないという桔梗には特別なものだ。
「だから貴方がこうして、御一緒してくれて……嬉しい、の……ありがとう」
 小さく頭下げると、月の簪はしゃらんと鳴く。

「何これ、うんま!」
 ジノは店員へ、これうまいです! と振り返る。
 それに苦笑しているのを、シャイだなあと思いつつもう一口。
「なぁぁんて可愛いんだろうか!」
 と、春風の中髪を抑えて歩く女性達の声に簡単あげて、店員からの視線に黙る。
 が、一口食べれば元通り。

 野郎一人で頼むのも恥ずかしい。
「というわけで、春色の最も似合う君を誘ったわけだ!」
 と、律はイブへと正直に告白。
 すると僕で良いならいくらでも誘っておくれとイブは笑う。
「アンナはどのスイーツが一番好き?」
「この中では桜の練り込んだシフォンケーキとか……」
 思わず顔がふにゃーっとなるくらいどれも絶品。紅茶に合うスイーツがすきだよと言いながら、律くんも如何と勧めて。
 本当に美味しそうに食べる、と葎は思う。
 この光景と、目の前に愛する人というのは律にとって完璧な布陣。
 来年もまた一緒に観られたらいいなと、律は零す。
「うん、来年もきみと、喜んで」
 こういうまったりした休息もいいなと、イブは笑む。

 自分以外は竜派ドラゴニアン男性。
 それに少し緊張気味の静葉。
「ほぼ一口サイズだが……ふむ。重ならではの楽しみか」
 隆治は濃い目の抹茶と頂けば、苦味と甘味の両方を楽しめるなと。
「……思っていたより小さいな」
 と、晟は菓子を見詰め、和菓子はそういうものだしなと零す。
 それにおかわりも、できる。
「俺の親が花びら餅好きだったんだよな……」
 と、非正規雇用は花びら餅を見て。
「これってさ、お菓子なのに何故、白味噌やゴボウを使うんだろう?」
 すると私自身も詳しくは分かりませんが、と静葉は紡ぐ。
「たしか花びら餅の始まりは平安時代だった様な事を聞いた事があります。京都の御雑煮って白味噌仕立てですし、その辺り関係が有るかもしれませんね」
「へぇ~、まぁ美味いからどうでもいいけど」
 ぱくっと非正規雇用が口に運ぶ様子に、説明をしてもらいながらと晟はじっとり目線で。
「なかなかいい度胸をしているな? そもそも一般的な桜と言える……」
 と、始まる晟の蘊蓄。それを聞きつつ、隆治は。
「あぁ、神崎。つれてきてくれてありがとうな。たまにはこうしてのんびり出来るのもいいものだな」
「花をじっと見てるのもいいが、頭を使う遊びもしようぜ!」
 そう言って花札を持ち出し、今日は『桜に幕』を取ったら100点な! と非正規雇用は決める。
 ルールは知らないが相手はしてやろうと隆治が言えば。
「花札はいいが桜に幕だけで100点はゲームとして破たんしているだろうに」
 そう言いながら、負けたら個々の土産は奢りということでいいか、と晟は手加減抜きの構え。

 あーんと、愛しい旦那様、冬真の口に苺タルトを。
 それは先程の苺大福のお返し。
 いつもより美味しく感じるのは食べさせてくれるからかなと冬真は笑う。
 すると幸せが何倍にもなるねと有理も笑み。
「それじゃ……タルトもあーんしてくれる?」
 その笑顔を見て触れる度に冬真は愛しさが増して。
 来年はもっとずっと、愛おしくなっている。

 屋形船にも興味はあるけれど。
 大好きないちごがあるならスイーツを。
「……おお……おお! ちっちゃな桜色お菓子が並んでる……!」
 瞳をきらきら。ルチルは感嘆の声を。
 そういえば、と目を向けた桜の菓子。
 桜を見ながらそれをいただくのは。
「これがワビサビ、風流な嗜み方というのだろうか。うむ、いただきます、だ!」
 いちごソーダをお供に幸せタイム。

「オレはいちご大福から食おうかね。ヒコは?」
「俺はシュークリームを貰おうか」
 苺大福へと伸ばしかけた手を、その隣へ。
「へぇ、シュークリーム……ち、ちいせぇ!」
 口に放り込めば美味いの一言。
 けれど桜も見頃。桜を放置してっと怒るかもなあと市松は笑って。
「前みてぇに嘘じゃあねぇからしっかり見れるぜー」
「仮にも嘘なら『良く出来たもんだ』と褒めてやるさ。美味い尽くしに綺麗尽くし」
 と、味わう時間にヒコは市松、と改まる。
「ロールケーキがよ、どっちの味も気になってた。しかし分けるにゃ小さくて……市松はどっちがお好みだ?」
 市松は迷い、こっちと指さした方をヒコはひょいと摘まんで。
「成程。よし、お前の好いたほうを食らってやる」
「んじゃ、オレはお前さんの好きなもんを食ってやんよ!」
 そんな、互いの好みを知る時間。

「ん? あぁ、桜色尽くしだな……」
「つかさ、桜なら向こうにあるぞ?」
「お重の中も、野山も川辺も桜色で綺麗だな?」
 スイーツ重の姿に飛びつきそうなミュゲ。
 輝くその表情につかさとレイヴンは顔を見合わせまた笑う。
 そしてつかさはその笑顔を写真に。
「って、撮っているのは俺達か……!?」
 それに気付いてミュゲ、とレイヴン。
「つかさにスイーツをあーん開始だ!」
 今度はその様子をレイヴンは笑いながら写真に。
「え? ゆるっゆるなあんたの笑い顔? ちょ、ずるいぞ?」
 そう言いながらも口に運ばれるのを食べるしかなく。
 そしてもう一枚は家族そろって。

作者:志羽 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2018年5月4日
難度:易しい
参加:50人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 1/素敵だった 5/キャラが大事にされていた 0
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