まさかりかついだ武術家

作者:なちゅい

●全てを砕く一撃を
 この山と共に生き、すでに十数年。
 林業を営む佐田・弘敏にとって、まさかりは使い慣れた愛用の武器。
 仕事で木を切るのには鉈やのこぎりなど様々な工具を使いはするものの、彼にとってはまさかりは手放せぬ体の一部ともなっている一品だ。
「そらっ!」
 日々の業務で鍛え上げた肉体で、佐田は今日もまさかりを振るい、技を磨く。
 仕事でまさかりを使うには限界があるが、オフであれば一人山小屋に篭って存分にまさかりを振り回すことができる。
「ふう……」
 ひとしきり汗を流した彼が息つき、タオルで汗を拭き取っていると……。
 物陰から青髪ポニーテールの少女、幻武極が歩み寄ってくる。
 そいつに見つめられた佐田は虚ろな表情で少女を見つめ、まさかりを握りしめた。
「お前の、最高の『武術』を見せてみな!」
「……うおおっ!」
 佐田は遠心力を活かし、その厚い刃を幻武極へと叩き込もうとする。
 その一撃は地面を割るほどの威力。にやりと笑いながら避ける少女は、敢えて一撃を受け止めてみせた。
 だが、そいつの体には傷一つついてはいない。
「僕のモザイクは晴れなかったけど、お前の武術はそれなりに素晴らしかったよ」
 ある程度、佐田の技を見定めた幻武極は虚空より巨大な鍵を取り出し、佐田の胸を貫く。
「ぬうっ……」
 がっくりと、その場に倒れこむ佐田。
 その身体には外傷が全くないのだが、そばにはいつの間にか佐田とほぼ同じ背格好をした男性の姿が現れていた。
「さて、と」
 幻武極は新たなドリームイーターの誕生を見て、拳を突き出していく。
 そして、武術家ドリームイーターはまさかりを獲物として応戦する。互いの技はモザイクに包まれ、外から確認するのは難しい。
 しばし交戦した幻武極は口元を吊り上げ、構えを解いた。
「お前の武術を、皆に見せ付けてきなよ」
 それに応じて頷いた武術家ドリームイーターはまさかりをかつぎ、山を降り始めたのだった。

 ドリームイーター、幻武極の武術家襲撃は続く。
「まさかりを使った武術を修める男性が狙われてしまうようだな」
 ヘリポートにて、無骨なロボットのような印象を抱かせるエング・セナレグ(重装前進踏襲制圧・e35745)がそんな話を持ちかけると、リーゼリット・クローナ(ほんわかヘリオライダー・en0039)はうんと頷いて説明を始める。
「ドリームイーター幻武極は自らに欠損した『武術』を奪い続けていて、モザイクを晴らそうとしているよ」
 今回奪った武術でも、幻武極はモザイクを晴らせなかったようだ。
 ただ、幻武極は新たに武術家ドリームイーターを生み出し、そいつに暴れさせようとするらしい。
 現れる武術家ドリームイーターは、襲われた武術家が目指す究極の武術家としての技を使ってくる。油断なきよう相手したい。
「武術家ドリームイーターが山を降りる途中で迎撃できそうだから、人的被害を考えることはなさそうだね」
 周囲の被害を気にせず戦うことができるので、ドリームイーターの討伐に集中したい。
 現れる武術家ドリームイーターは、タンクトップに作業用ズボンといった姿をしている。
 その姿は今回襲われる武術家とさほど変わらぬ見た目だが、かついだまさかりで繰り出す攻撃は全てモザイクに包まれているようだ。
 火力特化で攻撃を仕掛けてくるので、油断なきよう相手したい。
 現場は、和歌山県の某所だ。
 山小屋から住宅地までの間はかなり距離がある為、ドリームイーターがすぐ住宅地に到着する状況ではない。
 人通りのない場所を麓から山小屋目指して歩けば、武術家ドリームイーターと出くわすことができ、戦後のヒールのみ考えて戦えば問題はない。
「ドリームイーターを倒した後は、武術家の介抱とフォローをお願いしたいかな」
 彼に事情説明などし、まさかりを使った武術や仕事の話などして、交流をはかるとよいだろう。
「まさかりでの一撃は非常に強力で、まともに受けるとただではすまない威力だよ」
 まさに、攻撃特化といった武術。攻撃を受けるメンバーの戦術も大事だが、後方支援は欠かせぬ戦いとなるだろう。
「それでは行こう。よろしく頼んだよ」
 リーゼリットはそうして、ドリームイーターの討伐と武術家の救出をケルベロス達へと託すのである。


参加者
ヒマラヤン・サイアミーゼス(カオスウィザード・e16046)
篁・鷹兵(大空羽ばたく紅の翼・e22045)
スノードロップ・シングージ(抜けば魂散る絶死の魔刃・e23453)
トープ・ナイトウォーカー(影操る戦乙女・e24652)
エング・セナレグ(重装前進踏襲制圧・e35745)
逸見・響(未だ沈まずや・e43374)
アメリー・ノイアルベール(本家からの使い・e45765)
ファラハ・アルワーキ(オウガの光輪拳士・e50604)

■リプレイ

●まさかりといえば
 和歌山県某所に降り立つケルベロス。
 一行はまず山を見上げ、討伐対象の姿を探す。
「まさかり、名前は聞いたことがあります」
 オラトリオのアメリー・ノイアルベール(本家からの使い・e45765)はフランス出身だが、それが日本の童話、金太郎が持っていたものだと知っていたようだ。
「まーさかーりかーついで……」
 徐に歌い出した白猫のウェアライダー、ヒマラヤン・サイアミーゼス(カオスウィザード・e16046)。
 そこで、ヒマラヤンの頭の周りを飛んでいたウイングキャットのヴィーくんことヴィー・エフトが彼女の口を塞いでしまう。
「何をするので……え、やめとけ?」
 きっと多分おそらく、大人の事情である。
 それはさておき、自らの斧を手に取っていた篁・鷹兵(大空羽ばたく紅の翼・e22045)が切れ味を確かめつつ呟く。
「日本人ゆえに、金太郎を思い出すのかの思っていたのだが、な」
 思った以上の認知度の高さに、鷹兵は小さく唸る。
 軍服姿をしたヴァルキュリアのトープ・ナイトウォーカー(影操る戦乙女・e24652)もまた、すでに金太郎を知っていたらしく。
「用途的に、攻撃力は十分な農具。扱いを極めれば武術になりうる、か」
「マサカリを使った武術か、また豪快だね」
 この中では唯一の地球人、無表情の逸見・響(未だ沈まずや・e43374)は素直な印象を漏らす。
「ドリームイーターも相応に力強いと見ていいね。うまく力を封じられると良いな……」
 そんな希望を語る響。それを耳にしていたファラハ・アルワーキ(オウガの光輪拳士・e50604)はケルベロスとしての初仕事に、そして、武術の達人との戦いを前にして心を躍らせる。
「今のファラの技がどこまで通用するか、試させてもらうのじゃ」
 のんびりしているように見えて、ファラハもやはりオウガなのだろう。
「最近になって真面目に剣振るようになってきたデスガ、まだまだデスネー」
 仲間の話を聞いていた、スノードロップ・シングージ(抜けば魂散る絶死の魔刃・e23453)。
 自身と同名の花を髪に咲かせる彼女は先の依頼、化け物相手に途中でダウンしたことを思い返す。
 そういう作戦でかつ、織り込み済みで立ち回ったスノードロップだったが、剣士としての腕がもう少しあったなら、腕一本くらいはもっていけたのではないかと考えている。
「まあ……、上達には斬って斬って斬り捨てるしかないネー」
 これも武者修行だと、スノードロップは気概を持っていたようだ。

 さて、メンバー達は山小屋を目指して歩くこととなる。
 不意の遭遇を警戒していたトープは、物音や草木の動きにも注意を払う。
(「報告例が多いながら未だ足掛かりを掴めず、また幻武極もモザイクを晴らせてはいない……」)
 大局として膠着した状況を実感していたトープは、改めて今回の依頼の状況にも目を向ける。
 後ろに広がる人里に敵がたどり着く前に、交戦せねばならない。
 武術家ドリームイーターの姿を見逃さぬよう、無骨な姿のレプリカント、エング・セナレグ(重装前進踏襲制圧・e35745)は周囲を見回していると……。
「来たようだな」
 前方からゆっくり歩いてくるのは、まさかりをかついだ筋肉質な中年男性だった。
「何か、思ってたのと違うのですよ」
 ヒマラヤンはどうやら、金太郎のイメージを引きずっていたらしい。
「ああいう形をしているのですか……」
「武器が武器だ、直撃には気をつけねばな」
 思ったより刃の小さなまさかりをアメリーがまじまじと見つめていると、トープが仲間達へと注意を促す。
 一撃が驚異的な威力を持つと思われる相手。武術家ドリームイーターとは幾度か交戦経験のある響だが、格闘技が苦手とあって緊張も見せていたようだ。
「ドリームイーター! 我々が相手をするぞ!」
「サア、武術家ドリームイーターサン。アタシと斬り合いマショウ」
 近づいてくる夢喰いを抑えるべく、鷹兵、スノードロップが前に出て構えを取る。
「…………!」
 相手もまた己の技を見せつけようと、やる気十分のようだ。
 そして、ファラハも後方から声を上げて。
「幻武極とやらではないが……、そなたの武術、見せてみよ!」
 早速、彼女も仲間と共に武術家ドリームイーターへと挑みかかるのである。

●強力なる一撃を警戒して
 まさかりをかつぐ武術家ドリームイーター。
 一撃に集中する敵はゆっくりと武器を振りかぶり、刃を振るうタイミングをはかっている。
 だが、エングはそれをさせじと飛び出す。
「まずは機先を制する。その武器に込められたパワー。自由にはさせんぞ」
 彼は腕をドリルのように回転させ、夢喰いへと殴りかかっていく。
 それに合わせるようにエングのテレビウム「彼」が飛び出し、凶器を使って殴りかかっていく。
 また、翼猫ヴィーくんも前に出て尻尾のリングを飛ばし、相手のまさかりに絡めて力を発揮できないようにと試みていた。
 主のヒマラヤンは回復役に徹するようで、獣理扇で自らに幻影を纏わせ、効率よくグラビティの効力を発揮できるよう備えていた。
 その間に、前衛陣は一気に相手へと攻め込む。
「受けよ! 時空凍結弾ッ!!」
 伸ばした腕、バトルガントレットの指先から、鷹兵は時空凍結弾を連射する。
 それによって、体の表面を僅かに凍らせた夢喰いへとトープが飛び込み、ネイルガン型パイルバンカー「ホーネット」に凍気を纏わせて打ち込む。
 徐々に凍りつく身体に夢喰いはやや戸惑いを見せるが、スノードロップもまた攻め入って。
「とっておきを見せちゃるデース!!」
 鹵獲魔術で創り出したのは、生き血を求める紅の魔剣。
 最大火力である一撃で、スノードロップはまさかりを構えたままの相手の体を切り裂いていく。
 相手の強力な一撃を警戒する響。
 山小屋の位置はここからまだ距離があるので、被害者に影響が及ぶ心配が無いのは良いが、どれほどの威力があるのか分からぬ一撃を警戒し、ドローンを盾として展開する。
「これでだいじょう……ぶ」
 そう一言呟く響だったが、次の瞬間、目の前でモザイクを伴ってまさかりが振るわれた。
 まるで猛獣が眼前を通り過ぎたような気すらし、彼女は目をしばたかせてしまう。
 盾となってその一撃を受けたのは、エングだ。
「大丈夫だ。これが俺の役割だ」
 そうは言うものの、足元の地面ごと破壊してしまうほどの一撃。それだけで、彼の体は破壊されかねないほどの衝撃を受けてしまう。
「こちらに振り下ろされるとなると、かなりの迫力ですね」
 アメリーもその威力に少々恐ろしさを抱きつつも、エクトプラズムで作り出した疑似肉体で前線メンバーを覆う。
 のんびり屋にも思える態度のファラハは攻撃の瞬間、猛禽類を思わせる動きで相手に迫り、流星の蹴りを食らわせていく。
 ファラハのそばにいた箱竜メジェリーナも黙ったままで翼を羽ばたかせ、盾となりながら自らの属性注入に動いてくれていた。
 自らのダメージを気にかけるも仲間の援護を受けて持ち直すエングは、初撃の命中率をふまえて攻撃を重ねるべく日本刀を抜く。
「我が体躯は重鈍。されど刃は飛燕の如く!」
 彼はその刀で高速の突きを繰り出し、自らの自重を勢いに乗せて相手の体勢を崩そうとする。
 わずかにぐらつく夢喰いの体。その隙にヒマラヤンは光の盾を展開し、エングの傷を塞いだ上で防御も高めていく。
「大丈夫なのですか? あのまさかりは結構痛そうなので、油断しない様にするのですよ!」
 相手の一撃をいかに受けずに、またいかにして耐えながら倒すか。
 速攻と防御を両立させながら、ケルベロス達は武術家ドリームイーターの切り崩しへと当たる。

 狙い済ました強烈な一撃。
 武術家ドリームイーターはその武器の特性ゆえに個別にしか狙いはしないが、下手をすれば一撃だけで倒れてしまいかねない威力を持っている。
「歌え、血染めの白雪。怨むがママニ!!」
 手にする魔刀「血染めの白雪」の呪詛をのせ、スノードロップは美しい軌跡と共に相手の体を的確に切り裂き、やや前のめりに攻め立てる。
 それだけに狙われると、対処ができない。
「体躯を生かし、遮らせてもらうぞ。まさかりの一撃とて、防いでみせる」
 しかしながら、そこで回転とモザイクを伴って叩きつけられるまさかりを、エングがまたも受け止める。
 ダメージは小さくない。膝を突き、崩れかける自身の状態を自覚した彼は裂帛の気合を込めた叫びで倒れることを拒絶した。
 そこで、テレビウム「彼」が応援動画でエングを励ます。
 回復役となるアメリーもまた、攻撃されたメンバーへと気力を撃ち出し続けることとなる。同じく、ヒマラヤンも光の盾の展開によって回復の手を重ね、手厚いフォローで戦線を支えていく。
 ただ、敵はしっかりと攻撃を叩き込んでくる。一撃をやりすごしたからいいというものではない。
「闇を斬り裂けッ! フォトンッ! イレイザァァァァァァァァァッ!!」
 強烈な閃光と共に、両目から最大出力破壊光線を発射した鷹兵。
 されど、敵は多少服を破けさせてなお、再度地を割る一撃を叩き込んできた。
 この場は鷹兵が受け止める。足をぐらつかせるほどの強烈な一撃に、彼は身を屈めつつ耐えてみせた。
「相変わらず頼りになる」
 エングは鷹兵の堅さに胸を張って。
「この前線。突破できるとは思わぬことだ」
 目の前の夢喰いへと言い放ち、牽制する。
 渾身の力を見舞っているはずなのにと、敵はやや怯んでしまっていた。
 だが、それでケルベロスが攻撃と止めるはずもない。
「デウスエクス相手ならば、容赦する道理はない」
 トープは相手の影から茨を伸ばし、拘束する。一時的に身動きの取れなくなった相手の胸部を、鋭い死の棘が刺し貫く。
 しかし、夢喰いは倒れない。己の技をまだ見せ足りないと言わんばかりに。
「蝕め、ブラッディースノー」
 スノードロップは操る魔剣に無数の霊体を憑依させ、一刀を見舞った傷口から相手の体を汚染していく。
「遅いよ」
 続けざまに、響が得意の雷撃魔法を連続して浴びせかけていく。
 音が途切れることなく、鳴り響く雷鳴。立て続けに落ちる雷に、夢喰いは全身に痺れを覚えてしまう。
 そこに、ブレスを吐き掛けるメジェリーナが牽制してくれる間に、ファラハが肉薄して。
「かち割ってやろうかの」
 振りかぶるオウガの手刀は、まさかりと張り合う事のできるほどの破壊力を持つ。
 ファラハが相手の脳天に叩きつけた一撃は、効果覿面であったらしい。徐々にその存在を淡いモザイクに包んでいたようである。
 だが、相手もまた気合を込めた叫びで、自らの傷を塞ごうとする。
 モザイクを発するシャウトにヒマラヤンが目を見張りながら、ヴィーくんと共に回復を続ける合間に、跳び上がった鷹兵がルーンアックスを振り上げて。
「貴様もまた辛苦の時代を齎す者……消え去れ!」
 ……夢喰いの体を両断してしまった。
「…………!!」
 声にもならぬ叫びを上げた夢喰いは全身をモザイクと化し、そのまま消え去ったのだった。

●武術としてのまさかり
 ドリームイーターが消えた山道にて。
 山小屋に倒れているはずの被害者の元へと向かう前に、一般人が通行する可能性のあるこの戦場跡の修復にメンバー達は当たる。
 大きく穴の開いた道路には、ヒマラヤンがグラビティによって大きな注射器を作り出し、破壊された地面へとその中身を注入する。
 広範囲にはエングがドローンを飛ばしており、鷹兵が紅の翼を広げてオーロラの光を発していく。
 さらに、アメリーがエクトプラズムを使って細部を幻想で埋めていき、ファラハが癒しの拳で後詰めを行って修復を完了させる。
「さて、山小屋に向かうのじゃ」
 倒れている被害者の様子が気になるところ。メンバー達はそちらへと急行していく。

 山小屋付近にたどり着いたメンバー達は、倒れたままの被害者、佐田・弘敏の姿を発見し、トープが介抱する。
 外傷はないものの、念の為にとアメリーは気力を撃ち出し、魔導書を開いた響が詠唱を行って体力回復に当たると、佐田は程なく目覚めたようだ。
「無事のようだな。……なかなかの強さだったぞ」
 目覚めた彼に、鷹兵がそう一言かけてから事情を説明する。
 その間、ファラハは精悍な佐田の肉体を見つめ、惚れ惚れしていたようだ。
 話の間、持ち込んだお茶を振る舞っていた響は、説明が終わるタイミングを見て、佐田の持つまさかりに興味を抱く。
「マサカリの武術というのは、初めて聞いたな……」
「同じく、初めて見たのです」
 それが身体を動かす為のものなのかと尋ねるアメリーは、ストレス解消に良さそうだという印象を抱いていたようだ。
「……重いのです。これを軽々と振り回すなんて、すごいのです」
 元々、木に向けて振るうまさかり。ずっしりとした重さを感じたアメリーは軽々と振るう佐田に感嘆する。
 まさかりの技を対人戦闘に活かすのは難しいと佐田は諦観していたフシもあったが、ケルベロスの話もあって改めて武術として昇華できないかと考え始めていた様子。
 響が戦闘方法について尋ねると、佐田は相手の足止めからの一撃や、体術との合わせ技について語る。
「基本、止まっている物を破壊する物だからな」
 そこで、エングも抱いていた疑問を口にする。
 まさかりの様な重量のある物を振りかざす時、大きく遠心力がかかるはずだ。
「それを振り方による技術、鍛錬による体幹、どちらで克服しているのか」
「両方だな」
 佐田は常に、狙った場所へといかに渾身の力を叩きつけるかを意識しているという。
 その為に鍛錬で体幹を安定させるのはもちろんのこと、振りかぶりのモーションについても研究を重ねているのだとか。
 そんな難しい武術の話を、ヒマラヤンは黙って聞いていた。
 トープもしばし耳を傾けていたが、話の切れ目に佐田へと一言告げる。
「慣れているなら大丈夫であろうが、まさかりの扱いはくれぐれも気をつけてくれ」
 自身を助けてくれたトープ達ケルベロスの頼みとあらば、彼も無下にはできずに愛想笑いして頷いていたようだ。
「林業という職業、わたしよく知りません」
 アメリーもまた幼さの残る金の双眸で佐田を見つめ、その仕事が自分達の生活を支える大事な仕事なのだろうと語って。
「これからもお仕事、頑張ってください。応援してるです」
 そんな純粋な願いに、佐田はやや照れくさそうに「おう」と応えたのだった。

作者:なちゅい 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2018年3月31日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 6/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 0
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