木々の茂る森の中で、迷彩服を着た男性が人差し指を舐めて顔の前に立てる。
「微風か、いい塩梅だ」
風を感じ取り、男性はアーチェリーの弓を構える。その先には木に括りつけっれた丸い的がある。的は幾つもの木に高さもバラバラに付けられていた。
「ふー……一発必中」
狙いをつけると息を止め矢が放たれる。飛翔した矢は狙い違わず的の中心を射抜く。
「当たるべくして当たる。そして……」
男性は森に紛れ込むように身を隠す。そしてどこからともなく矢を放ち次の的を貫いた。
「森の狩人は決して獲物に気配を悟らせない。遠距離から一方的に攻撃して狩る。それが狩人の流儀だ」
緊張もなく自然体で男性は移動し、木々に隠れたり草木に身を潜め、矢を放っていく。全ての矢が的を射抜いていた。
「やはり弓を遣うには森が最適だ。この狩場なら誰にも負ける気がしない……誰だ!?」
男性が振り向く。そこには幻武極の姿があった。
「お前の、最高の『武術』を見せてみな!」
その言葉に心を支配された男性は狙い定めず素早く弓を引いて幻武極の腹に当てる。そして駆け出すと木々に姿を隠し、右、左と違う場所から次々と矢を放って全て命中させる。だが幻武極の体には傷一つついていなかった。
「僕のモザイクは晴れなかったけど、お前の武術はそれはそれで素晴らしかったよ」
歩を進めた幻武極は鍵を振り下ろす。そこには草で体を覆って隠れていた男性の姿があった。鍵は胸を貫き、男性の意識を奪い取る。
その倒れた男性の隣に、同じ姿をしたドリームイーターが現れた。
「お前の武術を見せ付けてきなよ」
幻武極の言葉にドリームイーターは頷き、矢を連続で放つ。それは木の的に当たり、そのまま木を貫いて飛んで行った。
「狩りの始まりだ」
風景に溶け込むように姿を消したドリームイーターは麓の町へと去っていった。
「弓を使った遠距離戦を得意とするドリームイーターが現れ事件を起こすようです」
女性にしか見えぬシャルロッテ・リースフェルト(お姉さん系の男の娘・e09272)がケルベロス達に事件の事を告げる。
「幻武極がまた事件を起こし、アーチェリーの練習をしていた男性が襲われ、自分に欠損している『武術』を奪いモザイクを晴らそうとしたようです」
詳しい話をセリカ・リュミエール(シャドウエルフのヘリオライダー・en0002)が続ける。
「モザイクは晴れなかったようです。ですが新たにドリームイーターを生み出して人を襲わせようとしています。そうなる前に敵を撃破してください」
獲物を狙う狩人と化した男性は、人を獲物として襲い出す。犠牲が出る前に倒さなくてはならない。
「今回敵となるドリームイーターは、30代の男性で迷彩服にアーチェリーの弓を武器に戦うようです。隠れて矢を飛ばす遠距離からの不意打ちを得意としているようです」
遠距離戦を得意とし、近づかせぬように気配を断ったり隠れたりするようだ。敵は逃げる事はないのでやるかやられるかの戦いとなる。
「場所は群馬県の山の麓辺りで、町に到着する前に待ち構えて迎撃します。それと避難は現時点で始まっており、一般人を巻き込む心配はありません」
到着時には戦いとなる周辺の人は避難が済んでいる。存分に戦う事が出来るだろう。
「アーチェリーも武技には違いありませんが、現代では人に向けていいものではありません。ただの凶器に成り下がる前にドリームイーターを倒してしまいましょう!」
セリカが説明を終えるとヘリオンの準備に向かう。
「銃の次は弓の使い手ですか、弓は音もあまり出ませんから隠れられると厄介かもしれません。ですが力を合わせればどんな敵も倒せるはずです!」
ぐっと拳をにぎったシャルロッテの言葉にケルベロス達は同意し、狩人を狩る為に動き出した。
参加者 | |
---|---|
嵐城・タツマ(ヘルヴァフィスト・e03283) |
ユーフォルビア・レティクルス(フロストダイア・e04857) |
分福・楽雲(笑うポンポコリン・e08036) |
シャルロッテ・リースフェルト(お姉さん系の男の娘・e09272) |
風音・和奈(哀しみの欠如・e13744) |
レヴィン・ペイルライダー(四次元のレボリューション・e25278) |
霧鷹・ユーリ(鬼天竺鼠のウィッチドクター・e30284) |
鬼塚・彌紗(とりあえず物理で殴る・e50403) |
●森に潜みし
手入れのされぬ自然のまま生い茂る森に、ケルベロス達が足を踏み入れる。
「この森のどこかに隠れているのかな?」
見通すように風音・和奈(哀しみの欠如・e13744)が目を細めて探すが、風力以外で動いているものを視認できなかった。
「森の中で、相手はスナイパーで、しかもホーミング攻撃持ち……」
霧鷹・ユーリ(鬼天竺鼠のウィッチドクター・e30284)の脳裏にふっと過去の悪夢が過ぎる。
「で、でも、よほど運が悪くない限り、あの悲劇の再来は起こらないと思うのできっと大丈夫、だと思います」
何とか自分を納得させようとするが、だんだん尻すぼみに自信を失っていた。
「隠密に長けた相手か、不意打ちを喰らうのは面白くないな」
嵐城・タツマ(ヘルヴァフィスト・e03283)は周囲を警戒し、油断なく足を進める。
「森はなんか元気になれる場所よねー」
ホームグラウンドである森から元気を貰うように、ユーフォルビア・レティクルス(フロストダイア・e04857)は軽い足取りで草花を踏まぬように避けて歩く。
「ま~た面倒なのが現れたなぁ。そりゃ弓術も立派な武術でしょうけどよ!」
囮として前を行く分福・楽雲(笑うポンポコリン・e08036)は、邪魔な草を踏み固め視界の悪い森の中から敵を探す。
「んー、弓ですか、敵に気取られることなくそもそも戦闘をせず相手を倒すのが理想の勝利、というのは分かりますが私としては近接戦で腕を競う方が楽しいので好きなんですけどね」
理想よりも楽しい方がいいと、鬼塚・彌紗(とりあえず物理で殴る・e50403)は柔らかく微笑む。
「銃火器が発達したこの時代にアーチェリーを使い、戦果をあげた軍人が実在したという記録がありました。そのような記録がある以上、警戒は必要ですね」
そんな記録を思い返しながら、どこから見ても可愛い女性に見えるシャルロッテ・リースフェルト(お姉さん系の男の娘・e09272)も警戒度を上げて後方から地形を確認する。
「地形を活かすのは敵の方が何倍も上かもしれないけど、みんなで協力して追い詰めよう!」
元気なレヴィン・ペイルライダー(四次元のレボリューション・e25278)の言葉に、自然と仲間達もやる気が出て来る。
そこへ一条の矢が森から飛んでくる。それを楽雲が籠手で弾いて視線を向ける。そこには木の陰からアーチェリーを手にしたドリームイーターが居た。
●狩人
「狩りの始まりだ」
狩人は身を翻し茂みの中へと姿を消す。
「見つけたよっ」
敵が隠れた茂みへ向けてユーフォルビアは影の弾丸を撃ち込む。だが手応えは無く茂みを揺らただけで狩人は姿を隠した。
「もう見えなくなりました……。かくれんぼが上手なんですね」
おっとりした様子で彌紗が鮮やかな消え方を褒める。
「すぐに手配書を作成しますね!」
「よし、できた!」
シャルロッテが手配書を書き始めると、いち早くレヴィンが完成させた手配書を見せる。そこには急ぎすぎてミミズが這ったような線で顔らしきものが描かれていた。
その後にシャルロッテが先ほどの敵と判る顔が描かれた手配書を作り出す。それは敵の居る方向を示すように向きを変えた。
「こっちか」
手配書を見て敵のおおよその方向を感知した楽雲が足を向けると、草木がひとりでに動いて通りやすく道を作りだす。
「森の隠密は草木が移動を阻害するからより厄介」
和奈も一歩踏み出すと植物が自ら避けるように道が広がり、そこを仲間達が続いて悠々と進む。
「でも、私達には通用しないよ」
「そうです……通用なんて、しない……ですよ」
キョロキョロと周囲を見渡したユーリも、恐る恐る前に出て道を作ってゆく。
「どうやら森は俺たちの味方みたいだな?」
そう楽雲がどこかでこちらを見ているだろう敵に向けて言うと、顔目掛けて矢が飛来してくる。楽雲は体内の妖気を増やし内なる力を引き出すオーラで自分を含めた仲間を包み、籠手状の竜槌を構えて矢を弾いた。だがそれを追うようにもう一矢が飛び楽雲の肩を射抜いた。
「狩りってのはな、逃げ隠れる獲物を追い立てて追い詰めて仕留めるものなんだぜ」
タツマは黒太陽を具現化して黒光を照射し、周辺を薙ぎ払うように隠れていた敵の姿を浮かび上がらせた。
「くっ」
慌てて狩人は黒く焦げた大木の裏へと回り込む。
「それで隠れたつもりか? こんなもんじゃ盾にはならんぞ!」
メタルを腕に纏わせたタツマは、隠れる木ごと打ち抜き、向こう側に隠れる狩人を吹き飛ばす。遅れて折れた木が横に倒れた。
「後方で横に布陣したウォンテッド使用の2人で相手の位置を補足」
仲間と敵の位置を確認しながら和奈が後衛に指示を出し、今この場に適した陣を作り出す。
「狩人ってのは攻められる側は慣れてないよなぁ」
間合を詰めた楽雲は、籠手からドラゴニックパワーを噴射して加速させた拳を叩き込む。
「ここは俺の狩場だ」
吹っ飛んだ先の茂みに突っ込んだ狩人はそのまま姿を消す。
「足を止めたら撃たれてしまいます! 壁を張ってさみだれ対策!」
ユーリは雷の壁を生み出して、敵の狙撃に備える。
警戒しながらケルベロス達が探していると、上からひらりと葉が落ちて来る。
「なにぃ!?」
ゴーグル越しにレヴィンは見上げ驚いた。いつの間にか木の枝に上った狩人が、何本もの矢を同時に番え下に向けていたのだ。
「雨に撃たれろ」
雨のように矢が降りそそぐ。
「射線の通りやすい木の上からの攻撃も想定の内です」
反射的にシャルロッテはリボルバー銃を抜き撃ち、最も危険な位置にいたレヴィンを狙う矢を狙い撃ち落とす。他の矢は周囲の仲間の脚に刺さっていた。
「助かった……もう隠れさせない!」
レヴィンは木を駆け上がり、枝の上から他の枝に逃れようとする狩人に飛び掛かり、地面に蹴り落とした。
「森のフィールドは貴方の専売じゃないってね」
ユーフォルビアは木を蹴って三角跳びで木と木の間を移動して頭上から襲い掛かり、小太刀を抜き打って肩を斬り裂いた。
「矢が刺さって痛そうです。すぐに治してしまいますね」
踊るように跳び、彌紗は戦場に花びらのオーラを舞わせて仲間達の傷を癒す。
「素早くとも動きを予想すれば、当てる!」
狩人は木々を跳躍するユーフォルビアの動きを読んで矢を複数放つ。
「残念っ動物とは違うんよねー」
ユーフォルビアは小太刀を木に突き立ててその場に留まり、敵の意表をついて真っ直ぐに飛び掛かり蹴りを放った。腕でガードしようとした体を薙ぎ倒し、すぐに跳び退いて木々の間に姿を消す。それを追って狩人も身を隠すと、炎の弾丸が森の中を照らす。
「どこに隠れようが燻りだしてやるぜ!」
ガトリングガンを構えたタツマは、燃え盛る炎の弾丸をばら撒き、暗闇を照らしながら草木を穴だらけにして燃焼させ敵の姿を燻り出す。
「ちっ」
狩人が草むらから飛び出して姿を現すと、タツマは突っ込んで拳を固めて殴りつけた。
「今度は補足した位置に、攻め手が壁役と一緒に突撃」
和奈は次の指示を前衛に出し、敵を追い詰める陣が完成する。
「陣形の名前なんて詳しくないから、ハンティングシフト、とでも名付けておくよ」
和奈の予想した通りに敵が追い詰められていく。
「接近戦の腕前はどうかな?」
駆け抜けたレヴィンはすれ違いざまに光の剣を振り抜き、周囲の草木をバッサリ切り払い同時に胴をも斬りつけていた。
「この距離は拙い」
狩人はすぐに間合い離そうと駆け出す。
「逃げるならこっちが狩る番だな」
呪詛を放つ刀を抜いた楽雲は、避けようとする敵を追いかけるように踏み込み背中を斬りつけた。
「隠れやすい場所はすでに測定済みです」
シャルロッテはアームドフォートの銃口を合わせ、砲弾を発射して敵の隠れる茂みごと爆発を起こす。草木が舞飛びその中に大きな影、狩人が宙に舞い上げられる姿があった。だがそんな状況でも狩人は矢を番える。
「……一発必中」
その体勢からたまたま狙い易かったユーリに向かって矢が飛び、避けようと身を捻ったところでお尻に突き刺さる。
「はうあああああああ!?」
痛みというよりその衝撃にユーリは驚いて叫び、獣のように四つん這いになった。
「よほど運が悪かったあああ!」
そして恐る恐る矢に手を伸ばし、覚悟を決めて引き抜いた。声にならない声が森に轟く。
「あらまあ大変……」
そこへ離れた場所から彌紗は拳を打ち込み、飛び出した拳圧がユーリのお尻を殴り飛ばして出血を止める。
●狩り狩られる
「この狩場から生きて出られると思うな」
傷だらけの狩人はそれでも鋭い殺気を放ち、外套を纏って姿を周囲に溶け込まし消え去った。
「野生の勘ってーの? 普通なら避ける所をまさか『当たりにいく』方向に発揮しなきゃなんないなんてな」
勘を働かせた楽雲は噴射加速する拳を打ち出し、どこからともなく飛んできた矢を弾いた。
「子供の頃から森で過ごしてきたからねー、痕跡探すのも得意だよ」
姿が見えずとも痕跡はあると、背後に忍び寄ったユーフォルビアは日本刀型の高周波ブレードを振り抜き、鈴虫の鳴き声に似た音を発す刃が敵の背の肉を削ぎ取った。
「逃げ隠れしても無駄だ。避けられない弾幕ってやつを見せてやるぜ」
タツマは左右に二丁のガトリングを軽々と持ち、無数の弾を放って弾幕を張る。避けられぬ破壊の暴風に狩人の体が吹き飛んだ。
「逃げ場を奪った後は私も攻撃に参加するよ」
駆け出した和奈は左手をオウガメタルのクウ君で包み、拳で迎撃の矢を弾きながら接近し顔を殴りつけた。
「ぜーったいに許さないです!」
続いて素早く懐に入ったユーリが腹を蹴りつけ、敵の体を木に叩きつけると、恨みを込めて何度も蹴りを叩き込む。
「調子に乗るな」
狩人は一瞬で矢を放ちユーリの太腿に突き立てる。そして連撃から抜け出すと駆け出した。
「あら? あらあらあら? 困りましたね……」
接近しながら彌紗が拳で殴ろうとすると、敵は近づかぬように身を隠して距離を取る。それを何度か繰り返すと、彌紗は手近な木を引き抜き、敵が隠れたと思わしきばしょにブン投げた。
「うっおっ!?」
すると狩人が茂みから飛び出し難を逃れた。
「み~つけた」
そこへ彌紗が左拳を叩き込み、敵の体が吹っ飛んでいく。
「ちっ」
狩人は木を蹴って大木に隠れ息を整える。
「少しずつ……着実に獲物を仕留める……。それが狩人のやり方……ですよね」
じっとライフルを構えたまま微動だにしないシャルロッテは、敵が木の陰から覗いた瞬間引き金を引いて冷凍光線で脚を撃ち抜いた。
「狙い撃ちなら、こちらも負けない!」
リボルバー銃を構えたレヴィンは精神を集中させ、呼吸を落ち着けると弾丸を放つ。その軌道は予想通りに木々を抜け、敵の腕を射抜いた。
「俺に狙撃勝負だと、獲物が吠えるな」
狩人は痛みを無視して矢を番え、無心で放つ。放物線を描いた矢はレヴィンの頭に落ちて来る。楽雲がその体を押すと、腕を矢が貫く。それを見届ける間もなく狩人は木々の間に飛び込む。
隠れてしまう前にとレヴィンが駆けると、すっと敵が通り過ぎた木の影から現れ背に矢を放つ。
「後ろ!? だけど!」
レヴィンは横に倒れ込むように避けながら、脇の下に銃を通し素早く引き金を引く。敵は顔を捻り躱そうとするが頬が削がれ耳が吹き飛ぶ。
「もうかくれんぼはお仕舞いですよ」
彌紗は大スイングで左拳を振り上げるように放ち、ボディブローが敵の脇腹を砕き体を持ち上げた。
「残念だったな、狩られるのはテメェのほうだ!」
タツマは炎の弾丸をばら撒き、周囲を全て薙ぎ倒す勢いで敵を強引に隠れた場所から引っ張り出す。
「こいつで終わりだ!」
撃ち切ったガトリングガンを振り回して横っ腹に叩き込んだ。
「ぐはっこんな……」
血反吐を撒き散らし、狩人は背を見せて茂みへ向かう。
「お返ししてあげます!」
その背中にライフルの銃口を少し下げて向けたユーリは、エネルギー光弾を発射し敵のお尻を撃ち抜いた。飛び上がるような痛みに足が遅くなる。
「逃がさないよー」
敵を追いかけたユーフォルビアは、小太刀に旋風を纏わせその背中に一太刀浴びせる。背中から血を流しながら敵は力尽きたように倒れ伏す。倒したかと思われた瞬間、狩人は起き上がり矢を放とうとする。
「俺たちがやってるのは狩るか狩られるかだぞ、俺なら悪手だと思うけどね」
その前に割り込んだ楽雲は刀で矢を斬り落とし、踏み込み返す刀で胴を斬り上げた。
「いや、そもそも、死ぬってか倒せば消えるじゃん」
そんなもので油断する訳がないとユーフォルビアは顔を蹴り抜いた。
「狩る側から狩られる立場になった気分はどうかな?」
和奈はクウ君をドラゴンの爪のように変形させ、間合に入るなり真横に薙ぎ払う。周囲の邪魔な草木を物ともせず吹き飛ばすような勢いの一撃に、身を捻った敵の腕をずだずだに引き裂いた。
「俺は狩人だ」
瀕死の状態でも狩人は木の陰へと身を隠し、矢の用意をする。
「そこへ自らの意思で逃げたのではありません……狩人ならこの意味が解かるはずです」
シャルロッテは敵との射線の届かぬ場所から、敵とは違う方向へ向けてリボルバー銃の残りを全て撃ち出す。その弾は木に当たって跳ね返り、ハッと顔を上げた敵に降り掛かった。顔を穴だらけにした敵の姿は幻のように消え去る。
●のどかな森
「ううう……悲劇は繰り返すんですね」
ユーリは泣く泣く自らのお尻を、巨大ワニの力を具現化させ野生の力で治療する。
「見つけたよ」
道を作った先に和奈が眠っている男性を見つけると、すぐに駆け寄って介抱する。
「全っ然似てないな……」
その隣ではレヴィンが先ほど自分が書いた手配書と本人を比べ、今さらながらこんな絵を描いてしまった事を恥ずかしく思い顔を隠すように俯いた。
「う、これは……?」
「おっ目が覚めたみたいだぜ」
男性の意識が戻ったのを楽雲が確認し、大丈夫か確認して事情を説明する。
「助けてくれたのか、ありがとう。私もまだまだ修練が足りないな」
「スナイパーの戦いというのは何時間でも何日でも動かずに潜んで目標を狙撃するものらしいな。俺には真似できない戦い方だぜ」
そんな気の長いやり方は向いていないとタツマが肩を竦める。
「狩人はまず獲物を探したり待ったりする根気こそが大事だからね」
男性が大変なのを楽しめなくてはできないと苦笑する。
「やっぱり遠距離より、近接戦の方が楽しそうですね」
そんな脳筋なコメントを彌紗がニコニコ顔で零す。
「まさに狩人に相応しい森をテリトリーとした戦い方でした」
シャルロッテは狩人との戦いをあれこれ語り、男性も興味深そうに質問していた。
「なにか懐かしい気分だよ」
そんな輪を離れてユーフォルビアは森の空気を味わい、険しい道を苦も無く楽しそうに歩き回る。狩人の居ない春の森にはおだやかな空気が流れていた。
作者:天木一 |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2018年4月2日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 3/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 0
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