●学校狂騒曲
「ハハハッ……コイツで、この学校も終わりだな!」
春休みを前にした小学校の家庭科実習室。
ガスの元栓を片っ端から開けて歩く、濁った目の妖精族。
そいつは、すべての栓を開け終えると、タールの翼を広げ距離を取り、掌から灼熱の炎塊を放った。
!!!
派手な爆発と共に、火災が発生。
けたたましい警報のベル――崩壊への序曲が鳴り響く。
ゴォーッ!
炎は瞬く間に広がり、通気口を伝って噴き出した炎が、生徒たちの避難誘導に当たっていた教師を直撃。幾人もが火傷で倒れる。
「教頭先生、大丈夫ですか! 無事なら倒れた先生に代わって子供たちを!」
難を逃れた校長の指示がすばやく飛ぶ。だが……。
(「冗談じゃない。もうやってられん……」)
教頭の中で何かが爆ぜた。
「私も火傷で思うように動けない。後は、校長……頼みます」
一方的にそれだけを伝え、踵を返し校舎裏への窓から飛ぶ。たかが2階――命までは失うまい、と。
(「火の手はあちこちから上がるし、このままじゃ生徒を助けたところで自分が危ない。あと1年勤めれば、校長の椅子が待っていると言うのに……」)
が、そんな余計なことを考えていたせいか着地に失敗。足を折ってしまう。
「だ、誰か……」
助けを求める教頭の前に舞い降りたのは、タールの翼で濁った眼の妖精、シャイターン。
「いいねぇ、その身勝手な発想。教師のくせに子供より自分の安全を優先するとは……素晴らしい。特別に、俺の選定でエインヘリアルにしてやろう」
「た、助けてくれるのか?」
期待の眼差しで見上げる教頭に、シャイターンは両手に携えた妖精の弓を重ね合わせて引き絞る。
「ま、待て……助けてくれるんじゃ!?」
「助けるとも。まぁ、助かるかどうかはお前次第だがな……」
弓に生成されし漆黒の巨大矢を撃つシャイターン。矢は教頭の胸部を穿ち、そのまま命を奪い去った。もちろんピクリとも反応する気配はない。
「ちっ、ハズレか。次だ、次!」
滅びの妖精族は、つまらなそうに吐き捨てると、新たな候補を求め、飛び去って行くのだった。
●炎を止めて!
「集まってくれて、ありがとう」
赤井・陽乃鳥(オラトリオのヘリオライダー・en0110)が、ケルベロスたちに無垢な微笑みを見せた。
「神奈川県藤沢市の小学校にシャイターンが現れるの。シャイターンは、ガス爆発を起こし、避難しようとして死にかける人を殺し、エインヘリアルに導こうとしているの。そんなロクでもない凶行……決して見逃す訳にはいかないもの。力を貸してくれる?」
小学校に起こる惨劇の様子を語る陽乃鳥。
「小学校の先生や生徒さんたちを、事前に避難させてあげられれば良いんだけど、そうすると別の学校などが襲撃され、却って被害を止められなくなりそうなの。だから……みんなはあらかじめ学校に潜伏して、最初の爆発が発生したら、うまく被害を出さないよう選定対象の教頭先生以外を誘導しつつ、ヒールを駆使して、延焼と校舎の崩壊を阻止して欲しいの」
と、まずは被害の拡大阻止を優先に動いて欲しいと告げた。そして……、
「そのうち教頭先生は我先に窓から逃げようとする筈だから、被害を防げる目処が立ち次第、校舎裏に向かって、シャイターンを撃破して。お願い!」
陽乃鳥は頭を下げながらそう言うと、続けて襲撃するシャイターンについての説明に移る。
「敵の容貌については今さらだと思うから省くけど、シャイターンとの決着は、向こうが現れる校舎裏で着けてね。広大とは言わないけれど制約が掛かるほど狭くもないはずだから。状況が状況だけに、人が来ることはないと思うから存分に戦えると思うの。あと……戦闘に関して言えば、向こうは妖精弓を2つ携えていることと、地獄の炎を召喚することができるらしい事だけは確実だから、対策も建て易いと思うの」
ただし練りすぎて状況に即応できないと困るから、相談はそこそこにね……と。
「事件の状況的に多少の怪我は仕方ないけど、せめて大怪我をしたり死亡したりする人のないように、事件を解決してね」
最後にそう言うと、陽乃鳥は信じてるから……と、もう一度深くお辞儀をするのだった。
参加者 | |
---|---|
ゼロアリエ・ハート(紅蓮・e00186) |
アイン・オルキス(誇りの帆を上げて・e00841) |
難駄芭・ナナコ(爛熟バナナマイスター・e02032) |
イルヴァ・セリアン(あけいろの葬雪花・e04389) |
ファルゼン・ヴァルキュリア(輝盾のビトレイアー・e24308) |
ラグナシセロ・リズ(レストインピース・e28503) |
空野・紀美(ソラノキミ・e35685) |
天喰・雨生(雨渡り・e36450) |
●炎の中で…
「わー、机ちっちゃーい! かわいー!」
「こんなに小さかったのか……、カワイイなぁ」
無事に小学校に潜入し、2階に上がったところで、子どもたちの机や椅子に目を奪われた、空野・紀美(ソラノキミ・e35685)と、ゼロアリエ・ハート(紅蓮・e00186)。
こんなかわいいサイズを使っている子どもたちが災厄に巻き込まれるなど、あって良いはずがない。
ケルベロスたちは気配を断ったり変装したりで、家庭科実習室の場所や消化器の位置、避難経路などを手分けして確かめてゆく。
「このアタイの背丈なら、普段着のままでも……」
なかでも、難駄芭・ナナコ(爛熟バナナマイスター・e02032)は小学生になりすまそうと言うのだから、際立ったチャレンジャー。
「せめてJCェ……!」
見咎められずに済んだのを、幸いと取るか、逆にショックか……。
「ぜったいぜったい、みーんな守っちゃうんだから!」
「……ちゃんと守らないとね」
!!!
そう言った途端、報知器のベルがけたたましく響く。
屋上に待機していたアイン・オルキス(誇りの帆を上げて・e00841)は、プリンセスモードを発動し、ケルベロスであることを告げて最上階から子どもたちの誘導を支援。
「狼狽えるなッ! ここは我々に任せればいい!」
避難してきた者たちには、途中階に位置取ったイルヴァ・セリアン(あけいろの葬雪花・e04389)やラグナシセロ・リズ(レストインピース・e28503)らが細かく指示して外へと誘導。
しかし幾ら懸命に避難したとしても、校舎が倒壊しては意味がない。それを防ぐのはファルゼン・ヴァルキュリア(輝盾のビトレイアー・e24308)らの務め。
(「……慣れたものだ。確保すべきところも、延焼を防ぐためのポイントも、建物による差などない」)
それでも、炎が回るのは早い。通気口を伝う炎までは防ぎようがなく、噴き出した炎が教師を直撃。
校長がすかさず教頭先生たちに指示を飛ばすが、教頭は子どもたちの事など構っていられるかと、踵を返して窓の方へ。
「校長……あとは頼みます」
短く告げて、自分だけとっとと飛び降りようと。
その様子をいち早く見つけた天喰・雨生(雨渡り・e36450)が、仲間に連絡するとともに後を追った。
「その心根……実に素晴らしい。特別に俺の選定でエインヘリアルにしてやろう」
「た、助けてくれるのか?」
過分な期待を込めた教頭の眼差しに、両手の弓を重ね合わせることで応えるシャイターン。
「助かるかどうかはお前次第だがな……」
「待ちなよ!」
雨生の声は教頭の飛び降りた窓の方から。その声でほんの一瞬だけ気を削ぐことができたものの、紡がれた矢は無情にも邪妖精の指を離れた。
……だが、その一瞬こそが、必要だった『間』。
ギュルルッ!
ゼロアリエのサーヴァント、ライキャリさんが滑るようにして割り入った。
漆黒の巨大矢が、車体に当たって消えてゆく。
●学校狂騒曲
「まずは一発、派手にやるぜェ!」
ナナコが砲撃形態のドラゴニックハンマーを肩に構え、砲撃一閃。
「おぉーっと、危ねぇ、危ねぇ」
寸前で躱されこそすれ、邪妖精を大きく退かせることが出来た。
その間に、紀美が地面に乙女座の紋様をさらさらっと描き、仲間たちを守護。さらにイルヴァも黄金の果実を皆に振舞って攻撃に備える。
「そんなもんで防げると思ってんじゃねーぞ」
体勢を立て直した敵が再び弓を構えようとしているところを、ラグナシセロの紡ぎし冷気がレーザーとなって貫いた。
「甘いですよ。貴方の目論見は、此処で打ち破ります!」
「……焼かれる感覚を教えてやろう」
ファルゼンが感情らしきものの片鱗すら窺わせることなくドラゴニックハンマーを振り下ろす。纏わせた炎が邪妖精の皮膚を焦がした。
ぎゃっ、と叫んで飛び退く敵を尻目に、霊力を込めた紙兵をばら撒くゼロアリエ。同時にアインの元から花びらのオーラが降り注ぎ、ライキャリさんを包む獄炎を消し去る。
さらに敵が飛び退いた先には雨生が待ち受けており、呪われし太刀で斬り付け血を啜る。
その直後、イルヴァの詠唱が校舎裏に響いた。
「亡びも終わりの静寂も。すべてをこえて幾度でも命は巡り、花は咲く。だから――」
貫いた先で氷晶の花が咲く。そこに込められし想い――それは、あまねく命と取り巻くすべてを守りたいという何より大きな、それでいて唯一無二の願い。
願いの花が咲くと共に、想いの丈が皆に伝わってゆく。
「甘ぇ、甘過ぎんだよ。守りたい? 何もかも? 無理無理。そんな徒労より死んでいく奴らを選定してやった方が皆ハッピーだろうが」
露骨に嫌悪を浮かべる妖精のエネルギーの矢が、彼女を貫いた。
――心の奥底に靄のようなものが生まれ、脳裡を直接揺さぶる。その様子を見て取った紀美が、すかさずペイントブキでグラフィティによる癒しをもたらした。
「そういう考え方で小学校を狙うなんて、サイテーすぎ!! わたしねー、おこってるんだから!!」
ビシッと指差しで叱りつける。
「ふざ……」
反抗しかけた敵の両サイドから、ナナコとラグナシセロが滑るように疾走し、高々と跳躍。
敵の頭上から流星のような蹴りがクロスする。
「教頭先生は確かにズルいよ。でも……それは襲っていい免罪符になんかならない。手加減はしないよ!」
ゼロアリエの放った凍気が、醜悪な躯を穿った。
「くそっ!」
口汚い言葉と共に、邪妖精は両手を翳して炎塊を生む。炎は球体を取りながら悪意と共に膨れ上がる……。
その危険を察したファルゼンが真っ先に動いた。
竜の力をコンパクトに振り上げ、最速で『凍結』の一撃。が、それよりも一瞬だけ早くゲヘナの炎が完成し、ハンマーの軌跡と交差する……ほんの僅かに相殺に及ばない。
しかし、大きな炎が彼女を灼く寸前、主を救うべくフレイヤが飛び入って小さなからだで炎塊を引き受けた。しかも……それでも尚、主らに属性を付与することを忘れずに。
ふらふらと上空で力なく浮遊した後、墜落するように落ちてゆくボクスドラゴン。
「助けなきゃ! もふもふバリアーっ!」
すかさず両手を広げた紀美の元から、もふもふと膨れ上がった綿が受け止めた。
彼女の創造力が生み出した罠が、優しく労わるように包み込んでフレイヤの傷を癒してゆく。
「大丈夫。死なせやしないよ……花こそ散らめ!」
続くゼロアリエ。桜などない校舎裏に、美しい花びらが1つ、2つ。増えていくそれは薄紅色の吹雪……幻想的な美が火傷の痛みを忘れさせてゆく。
それを阻害すべく動こうととした敵の足を、ライキャリさんが轢く。動きを止めた邪妖精の胸元へイルヴァが狙い澄ました一撃を叩き込んだ。
さらに雨生の指先から撃たれた黒き弾丸が足に命中。スピードを奪うと共に漆黒の闇が侵食してゆく。
「終わらせようか」
一気に畳み掛けるかと思いきや、アインは飽くまでも冷静。決着は望めど、焦りはミスを生む――己が殺戮衝動を伝播させることで皆の潜在能力を引き出してゆく。
一方でシャイターンの方はまったくの逆。どんどん冷静さを欠き恨みとばかりにライドキャリバーの主人に向かってエネルギーの矢を撃ち込む。
「我がために動け!」と。
しかし、催眠の力が行き渡るより早く、ラグナシセロが神々に祈る。
「豊穣を司りし神々よ……」
祈りに応えたのか、やわらかく温かい微風が吹き抜けて異質なものを消し去ってゆく。
(「では私は敵を処理しよう」)
ファルゼンの光の翼が輝きを増し、敵に向かって加速。その瞬間、誰もが彼女の姿を見失い、次の瞬間にはシャイターンだけがその場に倒れていた。
そこに太刀『想喰子』を突き立てる雨生。込められし呪詛が敵の躯を穢してゆく。しかし敵は癒す術など持ち合わせていない。
「しぶてェな。もうくたばっちまえよォ!」
いい加減、痺れを切らしたナナコの砲撃。すべて纏めて吹き飛ばしてしまえ! と。
が、敵はそれらの攻撃にも耐えて立ち上がると、両手の弓を再びピタリと合わせ、大きな大きな矢を紡ぐ。標的は神々への祈りなどを捧げしラグナシセロ。その矢こそが神殺しだと言わんばかりに。
引き絞り、撃ち込まれた漆黒の矢。だが、その矢が彼を貫くより早く、高速移動の余力を借りたファルゼンが身を以て庇った――その腹部を、巨大な矢が大きく貫いていた。
●憎しみの焔
しかし、彼女はそれほどの大きな負傷すらも厭わず、ゼロアリエに「呼吸を合わせろ」と呼び掛ける――呼吸を、そして意識を合わせてシャウトすることにより、回復効果を高める彼女ならではの秘技のために。
その声の力強さに、シャイターンが大きく動揺し注意が逸れた。
その瞬間を逃すことなく一息に距離を詰めたイルヴァ。エクスカリバールによる完全に虚を突いた一撃。既に氷に覆われ掛けた敵の躯が一層白く冷えきってゆく。
その間にファルゼンの治癒を引き受けたのはアイン。手にした喰霊刀を通して魂の力を分け与えてゆく……。
そんな風に仲間たちの連携が回っている様子に安堵すると共に、攻撃の手を休める訳にはいかないと、ラグナシセロがダメ押しのように凍気のエネルギーで撃ち抜いた。
己の熱がどんどん奪われ、急激な寒さに躯が動かなくなりつつあるのを感じながらも、邪妖精は残された力を矢に換えて放つ――まるで命を代償としたかのように気配を消してナナコを射抜いたのだった。
「ぐっ……」
苦悶の声――かと思いきや、「バナナだ、バナナをくれぇ……」
その両の手には、いつの間にやら2本のバナナ。思わず彼女の口元が緩む。
「待て! まだ心が蝕まれている。先にその蝕む毒を殺す」
催眠が効を発する前に、とアインが立て続けに放った雷の針。痺れるような衝撃が、全身を駆け巡りBSを消し去ってゆく。
「よし、全快! 右手にバナナ! 左手にもバナナ! 2本のバナナを合わせれば! 百倍以上の威力を生み出すぜぇ!」
交差させた両手のバナナに注ぐ過分な愛情。そこから漲る力と赴く心のまま無数の連撃を叩き込んでゆく。
シャイターンの顔が、躯が、瞬く間に歪んでゆく。
「かわいくなーい! ヒールの代わりに、これでも食らえ、だよっ!」
カラフルな塗料を次々と飛ばす紀美。痣やら傷やらがアートの一部と化してゆく。
妖精族は、既にほぼ開けなくなった濁った瞳を向け、ふらつきながらもケルベロスたちに無作為に手を翳す。
「お前らなど選定してやらん。我が灼熱に塗れて死ね!」
巨大な炎の塊が螺旋を描くように飛び、雨生に炸裂。
業焔がコートを灼き、奥の皮膚をも焦がす。かつて経験したこともない痛みと共に炎が彼を蝕んでゆく。
だが、蝕む炎を振り払うようにして、視線をキッと炎の使い手に合わせた。
「雨を冠する者として、この程度の焔には負けないよ――さよならだ」
血に応えよ――と、呪を唱え、敵を解析し始める雨生。詠唱を終えると共に、同調を終えた波動を掌底で叩き込む。
ブルルッ! 濁った瞳の妖精族のに躯がガクガクと激しく振動し、崩壊を始める。
「な……なんだ、こいつぁ……」
「火を使うのが得意なんだってね。自分が炙られる気持ちは……どう?」
言葉を掛けながらも返答に耳を傾けるつもりなど端からない。雨生がクルリと振り返って背を向けた瞬間、シャイターンは、断末魔の声すらなく塵と化していった……。
●神聖なる学び舎で
「ひぃぃ。た、助かったぁ……」
折れた足の痛みも忘れたかのように、心から安堵の息を漏らす教頭。
しかしケルベロスたちは、そんな教頭に対し、極めて冷たい。
「……はいはい。良かったね」
素っ気ない雨生。教頭の介助などより優先すべきことがあるとばかりに、校舎へ戻ろうと急ぐ。
「ち、ちょっと待ってくれたまえ」
焦りの色を浮かべた教頭が、そんな彼らの背に必死で声を掛けた。
「救ってくれたことは感謝している。だが、それだけじゃないだろう? 私は怪我人なんだ……たぶん骨が折れてる。歩けないんだよ」
「大丈夫だよ! 足が折れたくらいじゃ人は死なないもんっ!」
微塵も悪気なく応える紀美。
その紀美に対して、応答する時間すら勿体ないとばかりにイルヴァが声を掛ける。
「わたしたちの役目は無事な人の話相手じゃないですよ。まだ命を失い兼ねない人がいるかも。急ぎましょう」
「今は他を救う事が優先だ。行くぞ」
アインも淡々と告げる。ファルゼンに至っては興味を示すどころか、既に校舎のヒールを効率的に行うために頭を巡らせている。
だが、教頭のようなタイプは自身のことになると極めて五月蠅い。
仕方ないとばかりにラグナシセロが話しかける。
「教頭先生……あなたが何故今ここで怪我をしたか、原因はお分かりでしょうか? ……僕らと違って大人ですから、お分かりですよね。もしあなたが子供たちを最優先にしていたら、こんな事にはなっていませんでした」
「馬鹿な……助けが来る保証などないんだ。そのままでは死んでいたかも知れない」
「本心からそう思われているのでしたら同情します。あなたの性根はもう治らないでしょうから」
丁寧に言っても通用しないものかと、呆れながら返すラグナシセロ。
やむなくゼロアリエも口を挟んだ。
「……仕方ないから一言だけ。少なくとも校長先生に相応しいのは、生徒第一に生きるヒトだと思うよ。それで死んでも教育者なら本望なはず。でも、せっかく助かった命だし、せめて今後の教育に活かして欲しいなぁ」
それ以上やり取りを続けるつもりはないという意志を滲ませながら。
「じゃあな。これ、やるから元気出せよ。うまいぞォ!」
ナナコが去り際にバナナを放り投げたのが、この会話の終わり。
そうして、消火活動に入っている大人たちの元へ駆けつけて手伝いながら、避難の遅れた者や、それによって新たに怪我を負った人々がいないかを丹念に見て回る面々。
都度、校舎の破損や崩れかけた箇所がないかもチェックして、片っ端からヒールしつつ……小学校丸々となるだけに、かなり大掛かりにはなったが、それでも何とか日が落ちるまでにはやり終えることができた。
ありがとう……口々に感謝を示す皆に対し、むしろ未然に防ぐことができず申し訳ない、と告げ、大事にならずに済んで良かった等と丁寧に応えてゆく。
――小学校はこれから春休み。およそ2週間後に学校は新たな1年が始まる。その節目を大過なく乗り切ることが出来る事を子供たちや教師たちと一緒に喜びつつ、ケルベロスは帰路に着くのだった。
作者:千咲 |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2018年3月31日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 2/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 1
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