星空に花を開いて

作者:崎田航輝

「いち、にい、さん。いち、にい、さん、と」
 夜の海岸で少年がひとり、遊んでいた。
 岩礁地帯でもあるそこは、全体がごつごつとした岩場になっている。少年はそこをジャンプし、スキップするように進んでいた。
 段差のある岩場は天然のアスレチックのようだ。行き来するだけでスリリングだし、こうやって星空の下を進んでいると、別の星を探検しているみたいで楽しかった。
「あれっ、こんなところに花がある」
 と、少年は足を止める。星明りにキラリと光るように、岩の間に小さな花があったのだ。
 それは、アルメリア。細い茎の先に、ボール状に満開となっている花弁が特徴的な、美しい花だった。
 海辺でも枯れない強さと、かんざしのような見た目を持つそれは、和名でも文字通り浜簪と呼ばれる。岩の中に一輪だけ咲く姿は、寂しげながらも力強い可憐さがあった。
「キミもひとり? 一緒に、星を眺めようか」
 少年は花に語りかけるように、その側に腰を下ろして休憩を挟むことにする。
 しかし、その時だった。
 不意にそのアルメリアが、独りでに蠢いて、動き出していた。
 空から降ってきた花粉のようなものを受け入れて、巨大化していたのだ。
「わぁ……!?」
 少年が驚く頃には、それは喰らいつくように、少年を取り込んでしまう。
 うねるように這い出すそれは、攻性植物。少年に寄生したアルメリアは、そのまま岩場を抜けて、星空の下を這っていった。

「集まっていただいてありがとうございます」
 イマジネイター・リコレクション(レプリカントのヘリオライダー・en0255)は、ケルベロスたちに説明を始めていた。
「今回は、攻性植物の出現があったことを伝えさせていただきますね。海辺にて、ある胞子を受け入れたらしい花が、攻性植物に変化し……一般人の少年に寄生してしまうという事件です」
 放置しておけば、少年は助からないだろう。
 だけでなく、攻性植物として人の多い場所へ出れば、多数の犠牲が出る可能性もある。
「それを防ぐために、この攻性植物の撃破をお願い致します」

 それでは詳細の説明を、とイマジネイターは続ける。
「敵は、人間に寄生した攻性植物が1体。場所は海岸となります」
 岩礁地帯であり、夜でもあるために一帯にひとけはない。戦闘中に人が介入してくることもないので、避難などを行う必要もないと言った。
「戦闘に集中できる環境と言えそうです」
 ただ、と、イマジネイターは忠告を付け加える。
「今回の敵は、一般人の少年に寄生し、一体化している状態となります。普通に倒すだけでは、この少年も死んでしまうことでしょう」
 これを避けるためには、ヒールを併用した作戦が必要だという。
「相手にヒールをかけながら戦い、少しずつ深い傷だけを蓄積させていくのです」
 粘り強くこの作戦を続け、ヒール不可能なダメージで倒す。これによって、攻性植物だけを倒して少年を救うことが出来る可能性があるのだという。
「敵を回復しながらとなると、戦闘の難易度は上がります。救出をするならば、しっかりと戦法を練って臨む必要はあるかもしれません」
 では、敵の能力の説明を、と続ける。
「攻性植物は、蔓触手形態による近単捕縛攻撃、捕食形態による近単毒攻撃、埋葬形態による遠列催眠攻撃の3つを行使してきます」
 各能力に気をつけておいて下さい、と言った。
「撃破が最優先となります。けれど、助けられる命もありますから……そのことについても考えてもらえればと思います」
 イマジネイターはそう言葉を結んだ。


参加者
藤守・景臣(ウィスタリア・e00069)
アリシア・メイデンフェルト(マグダレーネ・e01432)
タキオン・リンデンバウム(知識の探究者・e18641)
鴻野・紗更(よもすがら・e28270)
ルチル・アルコル(天の瞳・e33675)
長篠・ゴロベエ(パッチワークライフ・e34485)
雨後・晴天(本日は晴天なり・e37185)
綾崎・玲奈(アヤカシの剣・e46163)

■リプレイ

●接敵
 ケルベロス達は、星空の海岸へと駆けつけてきていた。
 岩礁とはいえ、視界を遮るものもない。少し進めば、遠目にその異形の姿が見えてきていた。
「海辺の星、ですか」
 タキオン・リンデンバウム(知識の探究者・e18641)が言って見据える。それは、アルメリアの攻性植物。大きな房となった花弁を揺らしながら、岩の間を移動しはじめていた。
「ああなってしまっても、綺麗な花ではあるでしょうね──」
「アルメリア自体が元々、可憐で、飾らない美しさを持っておりますから」
 タキオンにそう応えるのは、鴻野・紗更(よもすがら・e28270)。花弁の間を見つめ、声を続けていた。
「……彼の少年も、其の花になんらかを感じたのかもしれませんね」
 その視線の先。攻性植物の中で、磔のように囚われている少年の姿が垣間見えていた。
 意識は朦朧としているようだ。タキオンはそこへ距離を詰めていく。
「綺麗でも、それが攻性植物だとしたら、やはり放ってはおけませんね」
「そうだな。無辜の少年へ、寄生とは。惨いことを」
 ルチル・アルコル(天の瞳・e33675)は機械の瞳に、星明りと感情の色を映す。
「少年よ。助けに来たぞ」
 その声に、少年は応えない。それでもルチルは構わずに、言葉を伝えた。
「わたしたちは必ず、お前を救いだすからな」
「ええ。最悪の展開になど、させるものですか」
 アリシア・メイデンフェルト(マグダレーネ・e01432)は一度目を伏せて、そう誓う。
 楚々とした気品。柔和な声音。しかしその中に確固とした意志を含み、少年を見つめた。
「私共がきっと、あなたを救って見せましょう」
 それに対し、攻性植物は威嚇をするようにわななきを発してくる。
 だが、それに怯むでもなく、長篠・ゴロベエ(パッチワークライフ・e34485)は拳を打ち鳴らしてみせた。
「さて、戦いだね。今日も今日とて、仕事の時間だ」
 それから前面に立ち、敵の正面で構えを取る。
「行こうか。少年、ちょっと待ってろ。いま助けるからな」

 攻性植物は敵意のままに、蔓触手を伸ばしてきていた。
 が、それよりも早く、攻撃に移った影がある。
「さぁ、行きましょうネオン。回復は任せますよ」
 それは、声とともに岩を蹴って肉迫する、綾崎・玲奈(アヤカシの剣・e46163)。紫の髪を靡かせ、喰霊刀を高く掲げていた。
 ボクスドラゴンのネオンが背中を守るように鳴き声を返すと、玲奈は一閃。刀身の怨念を載せた、黒色の斬撃を叩き込んでいく。
「皆さん、今のうちに出来ることを」
「お任せを。僕が準備を進めておきましょう」
 そう応えたのは、藤守・景臣(ウィスタリア・e00069)。眼鏡を外すと、朧げな紅の地獄をたなびかせながら、その瞳を藤色に灯していた。
 同時に解き放つ攻性植物・いとしもまた酔い痴れる様な彩の藤。そこから生み出された淡い光で、仲間を包むようにして耐性を高めていた。
「前面の守りはこれで、平気でしょう」
「ふむ。ならば後ろはこちらにやらせてもらおうか」
 次いで、雨後・晴天(本日は晴天なり・e37185)もロッドを掲げていた。
 冷静な面持ちで、輝かせるのは雷の壁。晴天に霹靂が落つるような非現実的な鮮やかさをもって、それは仲間を守護。後ろの守りも万全にした。
「さて、攻撃は頼むぞ」
「ええ、いざ、参ると致しましょうか」
 雅やかに頷いてみせた紗更が、そこで疾駆。揺らめいていた巨花へ、痛烈な拳を打ち当てる。
 攻性植物も触手を飛ばしてくるが、それはゴロベエが腕で絡めとるように防御していた。
「悪いけど、長期戦で耐え忍ぶのは、得意分野だからね」
 言うと、ゴロベエはそのままブラックスライムを解放して全身に痛打を加えていく。
 ゴロベエの傷は、玲奈から飛び立ったネオンが光を注いで即座に治癒。攻性植物の傷も、タキオンが魔法の針で縫うことで回復していた。
 敵の体力に問題がなくなれば、ルチルは『斯くも甘き堕落の園』を行使している。
「目がなくとも、植物であるなら光を感知できるだろう。それならば──わたしの目からは逃れられない」
 それは、不可視の光を目から放つ、人工魔眼。器官から侵入した光は、幻惑するように内部から蝕み、攻性植物の動きを縛った。
 そこへ翼をはためかせ、アリシアが飛翔している。
「全力で、挑ませて頂きます。守るものの為に」
 風を裂いて滑空するアリシアは、大斧・Lowenherzで一閃。
 獅子心王の名を戴く勇気の刃の通り、苛烈な斬撃で蔓触手を纏めて切り飛ばしていった。

●交戦
 攻性植物は、一度飛び退くように岩の間に下がっていた。
 触手を失った様は、傷の蓄積を物語ってもいる。が、未だ体力には余裕があるのか、捕食形態に変貌。無数の花弁を動かし、こちらを捕らえようと様子を窺っていた。
「星の形をした花ですか」
 花弁は星明かりを浴び、異形となってなお美しい。玲奈はそれを見上げて呟く。
「こうして見ても、やはり綺麗ですね」
「ええ、星のように美しい花──地上の星が散った後は 夜空の星となるのでしょうか」
 景臣は満天の星空を仰ぐように、ふと声を零していた。
 ただ、それでもすぐに視線を下ろす。
「……然し少年も連れて逝かせる訳にはいきません。彼は未だ、星になるには早過ぎる」
「そうですね。美しい花でも、人々を脅かすなら、倒すのみです」
 玲奈も頷き、刀を構え直していた。
 攻性植物はそこへ這い寄り、花弁で食らいつこうとしてくる。が、それより早く、景臣が斬霊刀・此咲を振るってその一片を切り裂いていた。
 それは、剣舞の如き流れる太刀筋。洗練された剣閃が踊れば、攻性植物の全身に深い傷が刻まれていく。
 連続して、紗更は『蔓荊』。グラビティ・チェインを蔓へと変換し、敵へ飛ばしていた。
「少々痛むかもしれませんが、耐えてくださりませね」
 淡い青色を宿した蔓は、着弾と同時に攻性植物に絡みつき、強烈な締め上げで花弁を引き裂いていく。
 その間も敵の様子を観察し、紗更は言った。
「あと一撃程度ならば、攻撃が可能でございましょう」
「じゃ、俺が調整しておくよ」
 と、そこで応えたのはゴロベエ。
 自宅警備員として、実戦だけでなくゲームで得た経験のおかげで、武器の扱いも巧みだ。瞬間、如意棒を振り回して苛烈な払い攻撃。花弁を一片切り裂き、その体ごと転倒させていた。
 攻性植物が苦しげな様子を見せると、タキオンが即座に駆け寄り、治癒行動に入る。
「やはり、敵を回復するのは不本意ですが──それも少年の為ですね」
 小さく呟くと、手元に生み出したのは小さなグラビティの刃だ。それをメス代わりに、敵の体に魔術切開を応用した処置を施し始めていた。
「施術を開始します!」
 手さばきは、流麗で素早い。淀み無い手際で、一瞬の後には傷を塞いでその体力を危険域から脱させている。
「これで全快ではありません。もう少し、治癒はできそうです」
「ならば、私がいたします」
 そう応えてふわりと降り立つのは、アリシアだった。
「私は闘争を否定する者。故に、この歌を高らかに紡ぎましょう――」
 同時、歌い上げるのは、『不戦を歌う共鳴の旋律』。声に力を帯びさせて、聴くものを癒す能力だった。
「勇士らへ送る旋律はせめてもの癒しを。戦場に翔ける風よ、せめて彼の者らに今一度立ち上がる力を──」
 戦場の中で歌う不戦の歌は、朗々と共鳴するように反響。攻性植物、そして少年を限界まで癒しきっていた。
 少年の意識は未だ、判然としない。それでもアリシアは優しく、言葉をかける。
「わけもわからぬままに取り込まれてしまって……さぞお辛いでしょう、今しばらく、ほんの少しだけ、お待ちください」
「ああ。大丈夫、もう少しの辛抱だ。……必ず助けてみせるよ」
 晴天もまた、少年に宣言してみせる。
 すると、少年は明滅する意識の中で、微かに表情を動かしていた。それは何かに反応するようでもあったろうか。
 攻性植物自身は、構わず花弁で食いかかってくる。だが、それを景臣が防御してみせると、直後には晴天が治癒のオーラを生成。晴れやかな空の如き眩い光を施し、景臣を回復した。
「さて、助手くんも頼むよ」
 さらに、晴天の声に応じてシャーマンズゴーストの快晴も素早く景臣を回復。浅い傷を完治させていく。
 この間に、敵へはルチルが黄金の籠手・荘厳を向けていた。
 ガジェットでもあるそれは、一瞬で指が鉄砲へ変形。蒼い魔弾を発射し、花弁を石化させる。
「今だ。頼めるか」
「勿論です」
 穏やかに頷いてみせた玲奈は、手を伸ばしグラビティを爆縮していた。
「そのまま吹き飛んでしまいなさい!」
 瞬間、それを拡散。局所的な爆破を起し、花弁を粉々に吹っ飛ばした。

●命
 攻性植物は横倒れになりつつも、未だ力尽きてはいない。
 逆に、根を岩場に同化させて侵食。埋葬形態と化し、岩に無数の小花を咲かせていた。
「……こんな存在がいるのでは、安心して花を見ることも出来ないだろうな」
 呟く晴天に焦りの色はない。あくまでマイペースに、しかし客観的な事実を述べるように声を零していた。
「本当に、厄介だよ。どうにかならないものかね」
「ええ──ただ、今は現れた敵を倒すしか無いのでしょう」
 紗更は慇懃に視線を巡らす。そして地を蹴って、その一輪に肉迫していた。
「悲劇になる前に、かたをつけねばなりませんから」
 瞬間、まっすぐの拳がその花を四散させる。
 ああ、と頷くルチルは、再び魔眼を行使していた。
「命がかかっているからな。慎重に、確実に。いくぞ」
 そのまま幻視の作用をさせると、花群は虚脱感と多幸感に囚われ、動きを失う。
「今だ、ルービィも好きにやってこい」
 次いで、ルチルの指示でミミックのルービィも駆け出す。そのまま蒼色のエクトプラズムを生み、花群を切り裂いていた。
 敵が弱ったと見れば、タキオンがそこへ近づいている。生み出したグラビティの針を攻性植物へ突き刺し、点滴のように直接治癒の力を送り込んでいた。
「回復幅も、減りつつありますね。もう少しで癒しきれるでしょうか」
「わかった。後は俺がやっておくよ」
 そこに、ゴロベエは『自宅警備の心意気』。少年へそっと触れ、生きるための想いを呼び覚ましていた。
「諦めるのはまだ早いからね。さあ、もう少しだから一緒に帰ろう」
 その言葉と喚起された意思は、少年の体力を限界まで回復させていく。
 攻性植物は、残った花群から催眠性の花粉を撒いてきた。だが、そこへは晴天が、青空模様の傘を掲げる。
 するとそこに治癒の雨が降り出して、花粉を洗い流していった。
 連続して、アリシアは4枚の翼を大きく広げ、オーロラの如き煌めきを生み出していく。
「さあ、シグも皆様を、助けるのよ」
 美しい輝きが仲間を癒すと、アリシアの声に呼応して、ボクスドラゴンのシグフレドも白い光を発現。ゴロベエを癒すことで前衛を万全に保った。
 攻性植物は連撃を狙っている。が、その花群へ、玲奈が刀を振り上げていた。
「呪われた刀の一撃を、その身に受けなさい」
 昏い陽炎を靡かせた刀身は、呪いを振りまくように、衝撃波の乗った剣撃で花群を吹き飛ばしていく。
 景臣も連続して『終焉』。此咲に凍える紅炎を纏わせ、敵本体を狙っていた。
「星ならば、星らしく。地に根付くものでは、ありませんよ」
 刹那、流麗な曲線を描いた剣閃は、根を燃やし、切り裂く。攻性植物は岩との融合を断たれ、大きくその場に転倒していた。

●決着
 攻性植物は体の多くを失い、少年を縛る枝葉と、少ない花弁を残すのみとなっている。
 景臣はそれでも真っ直ぐに向き合い、剣を構えていた。
「せめて、咲き誇る貴女の姿は僕達が──最期まで見届けましょう」
 瞬間、踏み込んで連続斬撃を叩き込む。
 そこへ紗更も青い蔓を放ち、枝葉を引き裂いていた。
「回復を、お願いできますか」
「わかりました」
 頷くタキオンは、光を薬のように浸透させ、攻性植物を治癒していく。
「だいぶ治りにくくなっていますね。一旦攻撃に移ってください」
「ああ。では俺が攻めるとしよう」
 タキオンにそう応えたのは晴天。突き出した傘から光の奔流が発射され、花弁を焼き切っていっていた。
「これで、あともう少しか」
 と、さらにゴロベエも如意棒で刺突を繰り出し、残る花弁を消し飛ばしていく。
 敵が死に近づけば、少年も苦悶の声を漏らしていた。アリシアは鼓舞するように、そこへ言葉をかけてゆく。
「今しばらくの我慢です。どうか、貴方の力を見せてください。私たちは、その思いにかならずや応えます」
 そして、再び癒しの旋律を歌うことで、最後の敵の浅い傷を消し去った。
 皆と頷いた玲奈は、至近からグラビティを爆破させ、少年を縛るものを破砕していく。
「あと、一撃です」
「ならばこれで終わりだ。──その子を返してもらうぞ」
 そこへ、ルチルは籠手を貫手の形にして、一撃。ドリル形態で貫き、植物の全てを粉砕し、その場に少年だけを残していた。

 皆はすぐに少年に駆け寄る。
 タキオンは助け起こすように少年を支え、声をかけた。
「大丈夫ですか、意識はありますか?」
「う……僕は……」
 少年は始め、意識も判然としない。
 だが皆でヒールをかけて介抱すると、すぐにそれも回復していった。
 晴天は本職も医者であることもあって、それらをつぶさに検分し、無事を確認する。
「意識は問題ないようだ。後は痛むところは、ないかね」
「大丈夫です。ありがとうございました」
 少年がぺこりと頭を下げると、アリシアは柔和に頷いた。
「怪我もなく終わって、本当に良かったです」
「ええ、ご無事で、何よりでございました」
 紗更もそっと声を継ぐ。
 景臣は少年の名を聞いたあとで、目線を合わせて優しく注意した。
「それでも、独りで夜遊びは危ないですよ?」
「……うん。ごめんなさい」
「……ふふ、でもこんなに星が綺麗な日は、出掛けたくなる気持ちも分りますけれど」
 素直に頷く少年に、景臣は微笑む。そして少年を家まで送り届けに、帰還していった。
 ルチルは見回す。
「作戦終了だな。花は残骸もなしか」
「仮に少年にケルベロスの素質があったら、共生もあったかも……なんてもしもの話か」
 ゴロベエはつぶやき、スマホで花を調べる。
「ケルト語の“ar mor”が語源で、花言葉は、心遣い、思いやり……。まあ、またここに、咲けばいいね」
 そう言うと、ゴロベエはそれきり、岩礁地帯を跳び回りに去っていった。
 晴天も快晴とともに散歩するように歩き出す。
「仕事終りのご褒美だ。折角の星空と海岸、眺めて帰るか」
「それも、いいですね。これほど綺麗なのですから」
 玲奈も、視線を巡らせる。
 平和の戻った海岸。それは星明りと穏やかな波音に彩られ、いつまでも美しい景色を作り出していた。

作者:崎田航輝 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2018年3月19日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 1/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 4
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