わたしの星

作者:雨音瑛

●プラネタリウムにて
 ドーム状の室内が暗くなると、視界の端に星々が見え始める。
 アナウンスはなく、ただただゆっくりと星たちがゆるやかに流れてゆくこの状況を、人々は静かに見守っている。
「あっ、あたしがつくった星座が出たよ! お兄ちゃん座!」
 少女が耳打ちして指差した星座は、少し大きな人型。なるほど、スーツを着た青年の身長は、180cmほど。照れたように笑う青年は、それでも嬉しそうに妹が指差した星が動くのを見つめる。
 すると、一瞬にしてすべての星が消えた。
「……機材トラブルかな? 何か案内があるかもしれないから、待ってようね」
 不安そうにする妹へ、兄が声をかける。
 しかし、いくら待てども状況を説明するような案内はなく、みしり、という音が次第に大きくなってゆく。
 一瞬の静寂の後、天が割れた。
「あらっ、おかしいわね。プラネタリウムって、星がいっぱいで、キラキラキレイな場所じゃなかったの? スピカ、そう聞いたけど」
 チラシ片手に、身長3mとはあろうかという「男」が首を傾げる。
「ま、いいわ。スピカは難しいことわかんないから、とりあえず――」
 自身をスピカと呼ぶ男は手にした剣を構える。
「殺して殺して、殺すわ」
 言うが早いか、乙女座のオーラが人々へと襲い掛かった。
「危ない……ッ!」
「……お兄ちゃん? お兄ちゃん、お兄ちゃん、死んじゃやだよ!!」
 妹に被さるようにして庇った青年の意識は既にない。それどころか、呼吸も止まっている。
「まぁ、まだ生きてるなんて! 大丈夫、怖くないわ。すぐにお兄ちゃんのところに送って、あ、げ、る」
 ウインクをして、スピカは少女へと剣を振り下ろした。

●ヘリポートにて
 エインヘリアルがプラネタリウムに現れ、人々を虐殺する。
 それは、プラネタリウムに敵の現れる気配がする、というレカ・ビアバルナ(ソムニウム・e00931)の懸念に基づいてウィズ・ホライズン(レプリカントのヘリオライダー・en0158)予知を行ったところ、判明したことだ。
「現れるエインヘリアルは、過去、アスガルドで重罪を犯した凶悪犯のようだ。彼を放置すればプラネタリウムに訪れた人々が無残に殺されてしまうだろう」
 それだけではない。人々に恐怖と憎悪をもたらすことで、地球で活動するエインヘリアルの定命化を遅らせる、といったことも考えられる。
「向かってもらうのは、エインヘリアルが現れるプラネタリウムだ。現地には50人ほどの一般人がいるから、現場に到着したらすぐに避難させるのが良いだろうな」
 なにせ、到着後ほとんど時間をあけずにエインヘリアルが現れる。人々がエインヘリアルの手にかからないため、そして戦闘に巻き込まれないようにするため、迅速に行う必要がある。とはいえ、邪魔立てする者が現れたらエインヘリアルの興味はそちらに向くだろうから、人々には声掛けだけしてすぐに全員で戦闘に入っても問題無いという。
「戦闘となるのは『スピカ』と名乗る男性エインヘリアル。口調に癖があり、あまり頭が良いとはいえないが、戦闘能力はそれなりに高い。ゾディアックソードを装備しており、どの一撃も確実に当てようとしてくるだろう」
 また、スピカは「使い捨ての戦力」として送り込まれている。たとえ戦闘で不利な状況となっても、撤退することはない、とウィズは付け足した。
「無事にスピカを撃破したら、人々を呼び戻して一緒にプラネタリウムを楽しむのも良いだろう。用紙に星と線を書いてスタッフに渡すと、プラネタリウムにその星座を投影してくれるという『オリジナル星座づくり』というイベントを行っているようだしな」
「それは素敵ですね。人々を守るため、まずはエインヘリアルにしっかり対処する必要がありそうです。……では、協力のほど、どうぞよろしく願いしますね」
 と、レカは集まったケルベロスたちにぺこりと頭を下げた。


参加者
レカ・ビアバルナ(ソムニウム・e00931)
スプーキー・ドリズル(アフターザレイン・e01608)
エリオット・シャルトリュー(イカロス・e01740)
エリヤ・シャルトリュー(影は微睡む・e01913)
月見里・ゼノア(バスカヴィルの猟犬・e36605)
ルリ・エトマーシュ(フランボワーズ・e38012)
アレクシス・エクレフ(金細工の足枷・e39940)

■リプレイ

●天の光
 星の光が零れ始めたプラネタリウムに、強い光が差し込んだ。何事か、と驚く人々の目には、開け放たれた入り口と複数人のシルエット。
「皆さん、落ち着いて転ばないように出口へと向かってください」
 静かなプラネタリウム内で、ルリ・エトマーシュ(フランボワーズ・e38012)の声が響く。ロストーク・ヴィスナー(庇翼・e02023)は「龍の牙」という名のランプを置き、避難する人々の一助とする。
 そこから数秒もしないうちに、プラネタリウムの天井に亀裂が入り始めた。
「お洒落な上に案外明るいんですよね、カンテン。……と、来ますよ、みなさんお気を付けて!」
 どこか呑気に言いつつ、月見里・ゼノア(バスカヴィルの猟犬・e36605)も「バスカヴィルのカンテラ」で視界を確保するつもりだ。
「お転婆娘が宇宙を割ってやってくる……それだけなら、風変わりな童話のようだけれど」
 ランプ「Prove」をぶら下げ、スプーキー・ドリズル(アフターザレイン・e01608)が闇となった宙を見上げる。
「実際に現れるのはデウスエクス・アスガルド――エインヘリアル、ですからね」
 レカ・ビアバルナ(ソムニウム・e00931)は「ブルーファイアランプ」を設置し、亀裂がひときわ大きな場所を注視する。
 するとケルベロスたちが持ち込んだ光が揺れ、天井が崩壊した。
「あらっ、おかしいわね。プラネタリウムって、星がいっぱいで、キラキラキレイな場所じゃなかったの? スピカ、そう聞い――」
 スピカが言い終えるが早いか、オーラの弾丸が彼の横っ面に命中する。
「一等星、特等席で見られたじゃないか。良かったな」
 エリオット・シャルトリュー(イカロス・e01740)は、スピカへと皮肉な笑みを向けた。
「……輝きを求めるならば、紅い煌きで君そのものを染めて御覧に入れよう」
 一般人を背に、スプーキーもリボルバー銃「clepsydra」の引き金を絞る。
「That's original sin」
 最初に届いた香りは硝煙か、焦げた砂糖か。スピカの肩口で破裂した弾丸は、血より鮮やかな紅で染める。
「きらきらが好きなのは僕も分かる」
 静かに言い放つのは、エリヤ・シャルトリュー(影は微睡む・e01913)。
「でも、見えない腹いせで周りを壊す事や壊すのが好きなのは理解できないし、するつもりもないよ」
 魔術回路を操り、思考を、言葉を明瞭に。
「《我が邪眼》《閃光の蜂》《其等の棘で影を穿て》」
 エリヤの影の一部が、蜂のような鋭い針を携えた異形蝶の群体へと変化する。それが一斉に射出されるさまは、針の雨がごとく。
 ケルベロスの猛攻に、スピカは未だ言葉の一つも挟めない。
「きらきらしたものが好きなら、こんなのはどうだい」
 ロストークもまた、一般人を背にして立ち向かう。位置取るは、スピカの真正面だ。
「謡え、詠え、慈悲なき凍れる冬のうた」
 その言葉で、槍斧に刻まれたルーンが解放される。白い手袋を着用した手はスピカを、いつしか氷霧を纏った槍斧の向かう先を示した。
 スピカの足に氷が纏い付くと、ボクスドラゴン「プラーミァ」がすかさず炎のブレスを吐きつけた。足の氷が厚さを増すのを見て、スピカは表情を歪める。
「アンタたち……なん、なの、よぉっ!」
 スピカが力任せに振るった星辰の剣は、ゼノアの前で虚しく空を切る。
「ふふん、何だと思います? なんと! ケルベロスなんですよー。ほーら、鬼さんこーちら」
 ゼノアの銃が跳ね、幾つもの弾丸がスピカの足元へとばら撒かれた。
「貴方自身を星にしてさしあげましょう」
 星を砕いて現れる彼の姿は、風情があるのだかないのだか。よくわからないが、ともかくその暴挙だけはゼノアにとって目に余るものだ。
 レカの手にした弓は、極限までしなっている。
「スピカはこの国の言葉では『真珠星』と呼ぶそうですね。純白に輝く一等星……貴方にスピカの名は不釣り合いですよ」
 矢を持つ手を離すと、一条の矢が真っ直ぐにスピカの心臓部を貫く。
「……言ってくれるじゃなぁい? スピカにこの名前が似合っているかどうか……」
 胸元に刺さった矢を抜き、スピカは剣を払った。
「確かめてみなさい!」

●記憶
 アレクシス・エクレフ(金細工の足枷・e39940)は、いったん戦闘を仲間に任せ、ルリとともに避難誘導へと回っていた。
「私達ケルベロスが皆さんをお守りしますよ。安心してください」
 開放した出入り口からは、次から次へと一般人が出てくる。そのたびに、少しでも人々が恐れを抱かないようにと、ルリは温かな言葉をかける。
 出てくる人の数は、次第にまばらになってゆく。
「三分の二くらいは出た、かな」
 外へと続く出入り口を見ながら、アレクシスも人々の動向を見守る。闇に馴れた目には眩しすぎるであろうランプの光で人々の顔を直接照らさないよう、気をつけながら。
 アレクシスにとって初めての仕事ではあるが、人々を安心させようと柔らかな微笑は絶やさない。同時に、恐ろしさを感じてもいる。こんなすぐ近くに、守らなければならない人々がいることに。
「……もう、出てくる人はいないみたいだね」
「そのようですね。私達も急ぎましょう」
 顔を見合わせてうなずき、二人はプラネタリウムの中へと入った。
 そうしてアレクシスは扉を閉じ、ルリと共に剣戟の聞こえる方へと急ぐ。
 一般人の気配がなくなったところで、ゼノアは移動の範囲を大幅に広げた。
 プラネタリウムの座席を蹴り、宙へ。そのままスピカの肩を足場に、もう一段高く。
「星は視えましたか?」
 元より返答は期待していない。視線で追ってくるスピカへ、ゼノアは淡々と言葉を告げる。
「孤独に寄り添う影よ 解放の時は来た」
 とたん、ゼノアの影が彼女から分離した。実体化した影は主のかたちを失い、スピカを闇に染め、体の自由を奪う。
 続けざまに、スピカの背中を痛烈な一撃が襲った。
「お待たせしました、皆さん無事ですか?」
 つい先ほど参戦した、アレクシスによるものだ。
「大きな怪我は……ないようですね。安心しました」
 胸をなで下ろし、ルリはエリヤへと矢を放った。矢に宿る妖精の祝福と癒しは、彼に破魔の力を与える。
 ウイングキャット「みるく」は小さく鳴き、尾のリングをスピカへと飛ばした。小気味よい音が響くと、スピカはやや広い場所で魔法陣を描く。
「ふふん! 何人集まろうと、ムダよ!」
 星の加護が、得意気に笑うスピカに宿る。
「さて、それはどうかな。……スピカ、お転婆もほどほどに、ね」
 淑女を窘めるような笑みを向け、スプーキーは手の爪を硬化させた。貫く一撃に、レカとロストークの音速の拳が続けざまに叩き込まれる。
 加護は破壊された。ならば、とエリオットは地獄の炎を脚に纏わせた。
「黒炎の地獄鳥よ、我が敵を穿て!」
 地面を蹴れば、怪鳥を形取る漆黒の炎が解き放たれる。
「さ、あいつに存分に罰を与えておくれよ女神サマ」
 炎の軌跡すら見えないくらいの速度で、鳥はスピカを穿った。霧散した炎を横目に、エリオットは双子の弟を見遣る。不意に脳裏に浮かぶのは、痛ましい火事のこと。
 赤い炎は幻視か。エリオットは一度だけ首を振り、エリヤに呼びかける。
「エリヤ、続けてくれ!」
「うん、にいさんに続くね」
 プラネタリウムに残る壁や天井の反響から、エリヤはスピカの位置を割り出す。放った弾丸は確かにスピカを捉え、腕を貫いては氷を増やした。
 後を任せる相手は、ロストーク。エリヤにとって、もう一人の頼れる兄のような存在だ。
「ローシャくん、お願い」
「任せて、エーリャ」
 ロストークは飛び上がり、流星煌めく蹴りをスピカの頭部へ。
 鮮やかな連携は、スピカの体力を的確に奪ってゆく。

●星の最後
 日本刀を手に、アレクシスはスピカへと迫る。
 確かな命中精度を以て与えた斬撃は、スピカの鎧を貫通して肌を滑る。
「ああ、……心が躍るようだ」
 アレクシスがひとりつぶやいた言葉は、デウスエクスへの復讐心から出たものだ。
 それでも、穏やかで柔らかな微笑は変わらず。軽やかにスピカから離れ、出方を窺う。
「なんで……誰も、倒れない、の、よおっ!」
 スピカが薙いだ剣から、オーラが解き放たれる。向かう先は後衛のようで、スプーキーとロストークは同時に動いた。
 ルリの眼前に、ドラゴニアンの影と翼が広がる。銃創のある翼は、それでも優しく覆ってくれる。
「お怪我は?」
 翼をたたみ、スプーキーが手を差し伸べた。
「ええ、おかげさまで。ありがとうございます、スプーキーさん」
 ルリは微笑み、そっと自身の手を重ねた。
 一方、ロストークが庇ったのは、エリヤだ。
 背中の痛みで、ロストークは予知の兄妹を思い返した。
 いくら守ろうとも、自分が倒れてしまえば、次は守りたかった子の番になる。
「……だから、僕は倒れない」
 誓うように言った言葉で、自身がいもうとを庇って片翼を落としかけたことも思い出す。落ち着かない気分にはなるが、表情には出ない。
 エリヤの無事を確認し、ロストークは再び仲間の前に出る。
「ありがとう、ローシャ」
 とは、兄のエリオットからの言葉。誰かを頼るのが不慣れなエリオットにとって、ロストークは遠慮無く頼れる相手だ。それは、共に『誰かの兄』だからかもしれない。
「どういたしまして。それじゃお先にどうぞ、リョーシャ」
 返答は、首肯のみ。エリオットが痛烈な一撃でスピカの呼吸を一瞬止めれば、ロストークもルーンアックス「ледников」を手に高い位置からの一撃を見舞って地へと落とす。連携の呼吸も、ぴったりだ。
「お見事。僕も続こう」
 短く拍手をして、スプーキーは日本刀「雨久花」でスピカを斬りつける。
 人々の日常を脅かすスピカのような存在は、野放しにはしていられないのだ。戦いは不得手である、と自認するルリは、仲間を支えるべく動く。救える命があるのなら、出来る限りのことをしたいからだ。
「みなさん、一緒にがんばりましょう」
 あたたかな言葉に次いで、白い木苺の花が咲き乱れる。仄かな癒しの光は、プラネタリウムにおいては地上の星のようだ。
 花びらは風に乗り、癒しの光をもって前衛の仲間たちへと届く。
 みるくのひっかきに、プラーミァのブレス。さらに、ゼノアはナイフを手に空中からスピカを狙う。
「一気にいきますよー」
 刃は禍々しい形を取り、突き立てたスピカの傷を、状態異常を増やしてゆく。
「血の匂いが濃くなってきたね」
 つぶやき、エリヤはブラックスライム「ArabesuquE」を変形させた。広く大きく口を開けた残滓は、小さく悲鳴を上げて驚くスピカを一息に呑み込む。
 やがて闇の帳が開けて安堵するスピカに、レカが斬撃を繰り出した。
「これで――おしまい、です」
「――え?」
 最後の一撃は、スピカには見えない。自身の呼吸が止まったことも、わからない。
 スピカの体は眩い光となって、星屑のように消えていった。
 辺りを見れば、戦闘で――というよりは、スピカが現れた際に壊された天井の方が被害が大きいようだ。
 スプーキーとロストークはヒールで修復を済ませ、再入場の手伝いを始める。

●わたしたちの星
 小さなざわめきの中、上映再開を報せる放送が館内に響く。
「見る前に寝たりは……。しないって言いきれないかな。寝ちゃったら起こして……」
 エリヤの言葉に、エリオットは笑いながらもちろん、と応える。
 先の一件は、人々にとって恐ろしい体験であっただろう。それでも、これから見上げる星空がその恐怖を払拭してくれると信じて、レカは静かに、未だ暗いプラネタリウム内の音を聞く。聞こえてくるのは、ケルベロスへの感謝と、これから見える星への期待だ。
「『わたしの星』を空に映せるなんて、とっても素敵な経験ですものね」
「そうですね。そろそろ始まるみたいですよ、レカさん」
 レカとルリは声をひそめ、星が現れるのを待つ。
 徐々に見え始めた星に、スプーキーが表情を和らげた。
「あら、スプーキーさんのつくられた星なんですか?」
「そう、『ヴァイオリン座』だ。少し気恥ずかしいけれど……これは感動、だね」
 ルリの問いに小さく返せば、次の星たちも見えてくる。
 十字の星座は、エリオットのつくったものだ。
「腕輪の飾りからの連想なんだが……あはは、安直かね? けど綺麗なもんだろう」
 なんて友人と弟に告げると、既に眠そうな弟が視界に入る。こっそり起こし、ほら、と星々を指差してみたりもして。
「お星さま綺麗だねぇ」
 どこかぽんやりした様子で見た中に、エリヤの描いた星もある。5個の星を結んで丸を、その上に2個の星を置いて線でつなげた星座は、耳のかわいらしい「うさぎ座」だ。
「線の部分が耳に見えるかな。僕のファミリアに似ているかな」
「大丈夫、うさぎに見えるよ」
 オリジナル星座が思いつかずに早々に諦めたロストークは、エリヤの言葉に静かにうなずく。首に巻き付いたプラーミァは、気付けば小さな寝息を立てている。
 続いて出て来たのは、ルリがつくった、木苺の星座だ。
「タルトもいいなぁと思っていたのですけど……ふふ。食いしん坊さんに思われちゃうでしょうか」
「かわいらしくて良いと思いますよ。あっ、またお店に寄らせてくださいね」
 ルリの店を一度足が運んだことがあるレカにとって、彼女との再会は喜ばしいものだ。
「もちろんです、いつでも歓迎しますよ」
 と、ルリも好意をもって返答する。その間にも、星はゆっくりと動いていく。
「みなさまは、何をお願いされたんですか?」
「僕は『ひよこ座』を。……子どもっぽいかな?」
 アレクシスが示す先には、羽根と足を結ぶ星、嘴を作る短い線でできた星座が。
「いえいえ、素敵ですよ。……あら、あちらのは? 何という星座でしょう?」
「あ、あれは私のですね。五芒星の形です。分かりづらい? 誰がどう言おうとこれは五芒星です……名前は五芒座でいいんじゃないですか?」
 不思議そうに五芒星を見つめるレカに、ゼノアが応える。
「名前だけ聞くと、野菜みたいだね」
「気のせいです」
 スプーキーの言葉に即答し、ゼノアは星空を見つめ続けている。
「ケルベロスさんたちの星、すてきだね」
 聞こえてきたのは、予知で聞いていた少女の言葉だ。隣には、もちろん兄の姿もある。
 微笑ましい姿に、レカはあらためて守れて良かった、と安堵する。
 また、アレクシスは自身と妹の姿を重ねて微笑を浮かべた。夜空の散歩が好きな妹と一緒にこの夜空を眺めたいな、と願いながら。
 兄妹だけではない。再び集まった人々は、誰もが笑顔だ。
「……宿敵亡き後も闘い続ける理由が、見つかった気がする」
 つぶやいて、スプーキーはまた星へと視線を移す。
 人々が星へとムケル、希望と期待の眼差し。
 それは、ケルベロスへと向けられる視線にも似ていた。

作者:雨音瑛 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2018年3月20日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 3/キャラが大事にされていた 1
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