菩薩累乗会~逃走者の影

作者:幾夜緋琉

●恵縁耶悌菩薩~逃走者の影
 人影も余り無い、町外れのとあるアパート。
 ……目を見開き、はぁ、はぁ……と荒い呼吸をしながら、車の外へ。
 改めて確認すると……その車のタイヤの所には、赤い筋……血痕が残っていた。
『はぁ、はぁ……や、やっちまった。やっちまったやっちまったやっちまった……』
 がくっ、とタイヤ傍で、まるで念仏の様に呟く彼は……血痕を見ない様に、と、そのまま部屋に閉じこもる。
 そんな彼の元に……突如近づいてくるのは、大量のひよこが周りを取り囲んでいる『デラックスひよこ明王』。
『え? な、何だよオマエ!?』
 と突所のことに驚く彼だが、デラックスひよこ明王は。
『ええんや、ええんやでー』
 ヒヨコの中から赤い眼が不敵に微笑む……関西弁で。
 本来なら、それにも恐怖するであろう事なのだが……既にひき逃げ時間を起こしてしまった彼には、そんな冷静な判断力は無く。
『な、何がええんや?』
 と問いかけ直す。それに対しデラックスひよこ明王は。
『そや、ええんや。あんたの罪はもう許されたんや。ほら、心を罪から解放し、恵縁耶悌菩薩の羽毛に抱かれるんやでー。恵縁耶悌菩薩の羽毛、めっちゃふわふわで、とっても気持ちよくて、罪など忘れてまうでー』
 柔和な関西弁を操り、彼を誘う……それに彼はとろんとした瞳になって。
『……あ、ああ……ええんやで、か……それ、なんて素晴らしい言葉なんだろう……俺の罪は、許されたんだな? なら、もう、もう自分を責める必要は無いんだな……ふわふわの羽毛、包まれたい……!』
『そや、ええんやでー』
 そして彼は……ふっわふわの羽毛に包まれる。
 そして羽毛からときはなたれた彼は……ビルシャナ化。
 そんなビルシャナ化した彼へ、デラックスひよこ明王は。
「恐らくすぐに、ケルベロス達が襲撃してくるはずや。そう、このケルベロス達は、君の罪を償わせようと襲いかかってくるんや。でも、君の罪は許された。君は戦わねばならないんや。勿論、恵縁耶悌菩薩の配下たる私も共に戦うから、充分勝利出来る筈やで。それに、自愛菩薩の力により新たなる配下とした、この者も君を守る筈や」
 と言うと共に、和服に身を包んだ女性型螺旋忍軍がすっと姿を現わし、頷くのであった。
「ケルベロスの皆さん、集まってくれたッスね! それじゃ、説明するッスよ!」
 と、黒瀬・ダンテは、集まったケルベロスに軽く挨拶すると、早速。
「予知によって、ビルシャナの菩薩達の恐ろしい作戦の実行が判明したッス。その恐ろしい作戦は『菩薩累乗会』、強力な菩薩を次々と地上へ出現させ、その力を利用し、更に強大な菩薩を出現させ続け、最終的には地球全てを菩薩の力で制圧するという物なんッスよ!」
「でも、この『菩薩累乗会』を阻止する方法……今の所判明してないッス。そこで我々が今できる事ッスけど、出現する菩薩が力を得るのを阻止し、菩薩累乗会の進行を食い止める事だけッス!」
「そして、現在、活動が確認されている菩薩は『恵縁耶悌菩薩』で、人間の罪の意識を持つ者を標的とし、自らの羽毛の力で罪の意識を消し去る事と引替えに、その存在を自らに取り込んでしまう、という菩薩ッス」
「被害者は罪の意識に苛まれている人で、配下のビルシャナである『デラックスひよこ明王』達が送り込まれている様ッス」
「そしてこのデラックスひよこ明王によってビルシャナ化させられた一般人は、自分を導いたデラックスひよこ明王と共に自宅へ留まり、羽毛に抱かれ続けて罪の意識より逃げ続ける様ッス。このままだと、罪の意識から逃れ、羽毛に魅了された彼らは恵縁耶悌菩薩の一部にされてしまうッス。そうさせない為にも、できるだけ早く、事件を解決してきて欲しいッスよ!」
 そして、更にダンテは、詳しい情報を説明を続ける。
「今回ケルベロスの皆さんに倒してきて貰うのは、ビルシャナ二体と、デラックスひよこ明王によって呼び寄せられた女性型の螺旋忍軍が一体ッス」
「まず、このデラックスひよこ明王ッスけど、攻撃手段もその身体の周りに取り憑いた大量のひよこを利用して攻撃してくるッス。その嘴が突き刺さると結構痛いッスから注意して欲しいッス!」
「次に、ビルシャナ化した彼ッスけど、ケルベロスの皆さんを罪を償わせようとしている敵対者として考えて居る様ッス。そして彼はケルベロスに瞬く眩しい光を放ったり、氷の輪を飛ばして来たりして攻撃してくる様ッス」
「ちなみに、ビルシャナ化した彼を先に撃破すると、デラックスひよこ明王は逃げてしまう様ッス。逆にデラックスひよこ明王を先に倒せば、彼を説得し、救出出来る可能性もあるッスけど、難易度は高くなるッスから注意して欲しいッスよ!」
「それと、螺旋忍軍の『幻花衆』は、自愛菩薩と協力関係になった螺旋忍軍の一派の戦闘員ッス。でも下級の戦闘員ッスから、余り戦闘力は高くないッス」
「この螺旋忍軍は、ビルシャナの二体を護り戦う立場の様ッス。なので、こちらを倒さない限り、中々ビルシャナ達に攻撃が当たらないッスから注意して欲しいッス!」
「尚、ビルシャナ二体を先に撃破出来ても、幻花衆は任務失敗を悟り撤退する様ッス。まぁ、こっちについては撃破しない方向で進められるなら、それでも問題無いッスよ!」
 そして、ダンテは最後に。
「デラックスひよこ明王が戦場に居る限り、恵縁耶悌菩薩の影響力は強いッスから、ビルシャナ化した人の説得は難しいッス。救出を目指すならば、デラックスひよこ明王を撃破するか、撤退させて欲しいッス。宜しく頼むッス!!』
 と、拳を強く振り上げるのであった。


参加者
ロベリア・エカルラート(花言葉は悪意・e01329)
リュセフィー・オルソン(オラトリオのウィッチドクター・e08996)
リオルト・フェオニール(ドラゴニアンの思春期・e26438)
言葉・彩色(妖シキ言ノ刃・e32430)
浜野・真砂(本の虫・e41105)
彩葉・戀(蒼き彗星・e41638)
中村・憐(生きてるだけで丸儲け・e42329)
ユニフローラム・イフェイオン(怠惰なる復讐鬼・e51137)

■リプレイ

●全てを赦せし
 ビルシャナの起こす事件、菩薩累乗会。
 恵縁耶悌菩薩による、デラックスひよこ明王が説きし教義は、どんな罪であっても、全ての罪を許す……という教義。
「全てを赦す……ねぇ」
 と白狐面の下に肩を竦める言葉・彩色(妖シキ言ノ刃・e32430)に、ロベリア・エカルラート(花言葉は悪意・e01329)も。
「そうね……まあ、罪を許されたいってのは解らなくもないけどさ。全く関係無い第三者が出しゃばるような話じゃないんだよねぇ……」
 と、ロベリアの言葉にビハインドのイリスもこくっ、と頷く。
 実際の所、軽い罪だったら許されてもいい、と思う事も僅かには有る。
 しかし今回の男が侵した罪は……殺人事件。
 車にて、何処かで起こしたひき逃げ事件……車には血がびっしりとこびりつき、それは彼を殺人者である……と認識させるには充分過ぎる証拠だろう。
「ん……ひき逃げ事故を起こした人を、警察に連れて行かないってどういう事ですか?」
 とリュセフィー・オルソン(オラトリオのウィッチドクター・e08996)が小首を傾げると、中村・憐(生きてるだけで丸儲け・e42329)が。
「勿論、本当は自首して欲しい所ッスよね。でも、このデラックスひよこ明王がその罪の意識を『ええんやで』と言って許してるのが一番の問題ッスよ!」
「そうですよね。罪を犯したのならば、その罪を償わなければいけませんね」
「そうッス。ひき逃げ事件を起こしてしまった『彼』を説得して、人間に引き戻すっすよ!!」
 拳を握りしめる憐……が、全く以て気合いが入らないのはユニフローラム・イフェイオン(怠惰なる復讐鬼・e51137)。
「……ハァ。ビルシャナ化したひき逃げ犯をわざわざ説得するなんて、無駄な徒労を行うなど、私には理解出来ないわ」
 勿論、それに同意する仲間達も居る訳で……彩色は。
「そうだね。『言葉』はね『色』を伝えるか、隠す為にあるのであって、決して歪ませるためにあるんじゃないんだよ。人の『本質』を『洗脳』で歪ませるビルシャナは、正直不快だね」
 と持論を展開するものの、それを確りと理解出来て居る仲間は居ない様である。
「えっと……何にせよ、頑張らないと……先輩方の中で、唯一のスナイパー。心配なところもあるけど、私に出来る全力で、この事件を解決して見せます」
 と浜野・真砂(本の虫・e41105)はぐっ、と脇に抱えた洋書を強く抱えると、その仕草何処か可愛さを感じたリオルト・フェオニール(ドラゴニアンの思春期・e26438)が。
「まぁ、ひよこさんが一杯の姿形をして、そのひよこさんを飛ばして攻撃してくるとか……形の上では可愛い事この上無いな。あ、いや、もこもこに包まれたいなって訳じゃないよ。当然、許されざる罪は罪だからね!」
 リオルトの言葉にうむ、と頷いた彩葉・戀(蒼き彗星・e41638)が。
「そうじゃな。全く、可愛い見た目の割にやることはえげつないのう。あの黄色いひよこ、実は今迄囚われた人間なのではないか、とすら思えてしまうわい」
「そうだね。罪を犯したからこそ、ちゃんと償わないと。その為には、デラックスひよこ明王を倒して、彼を説得しないと……まぁ、何にしても放置しておく事も出来ないし、さっさと始めようか」
 皆を促し、そしてケルベロス達は……彼の逃げ込んだ、彼の部屋のドアを蹴破り、突入していった。

●その言葉に癒され
『ドカァァン……!』
 響く破壊音。
『……!』
 と当然ながらその音に気づいて驚くビルシャナ……ドアから距離を取りながら……姿を現わすケルベロス。
『な、何だよあいつら!!』
 と指を差しいきり立つビルシャナに、デラックスひよこ明王が。
『んー、ああ、あいつらやでー。あいつらがさっき言ったケルベロスやー。君の罪を償わせようと、襲いかかってきたんや。あいつらに負けたら、罪は許されへんでー』
 と、ビルシャナを唆し……ケルベロス達を敵対者である……と、頭の中へ刷り込む。
 ……そんなビルシャナ及び、ひよこ明王達、そしてその傍らで無言で構える幻花衆。
 そんな彼らを一瞥したユニフローラムが。
「……ええ、いつもやる気のない私でも、今回の様な大規模進行なら少しはやる気出すわ……皆殺し、という意味でね」
 くすっ、と微笑む彼女。そして彩色も。
「ではでは、御耳と御目々を同時に拝借。今宵を彩るは怪異譚。どうか、最後の時までお楽しみ頂けますよう」
 と何処か戯ける様な声色で、九尾扇をばさっ、と広げる。
 ……勿論、敵陣はそんなケルベロスの動きに。
『さぁ、それじゃあ始めるでー。ほら、幻花衆の姉はん、気張って頼むんやでー』
 と指示を与えると、すぐさまケルベロスの下に接近し、短刀の様な物を振り抜く一撃。
 が、その一撃をばっ、とケルベロスチェインで弾くロベリア。
「お前が出しゃばる場面じゃないよ。さっさと引っ込みな」
 と言い放ち、迎撃に達人の一撃を喰らわせる。
 併せてイリスも連携し、ポルターガイストで幻花衆を切り刻み、確実にダメージを付与する。
 そして、続くはスナイパーの真砂。
「炎はあまり、好きじゃないけど……!」
 と言いつつ、熾炎業炎砲を放つ後、彩色が。
「今よりこの場を彩るは……月の光」
 とルナティックヒールで、ユニフローラムへの壊アップを付与。
 そしてリオルト、憐も。
「……邪魔だから、お前」
「そうっす。おまえのようなあたり判定甘そうな雑魚が出しゃばるでないっす!!」
 と斉天截拳撃、ケルベロスビーム。そしてユニフローラムが。
「デウスエクスは全て殺す……それが我が信念」
 と短い一言と共に、ルーンディバイドの一撃を叩き込んでいく。
 そして、リュセフィーのミミックは武装具現化で石化効果を叩きつける。
 又、リュセフィーと戀の二人は、仲間達の回復、強化へ回り、ウィッチオペレーションと、「紅瞳覚醒」にて回復を施し戦線を強化。
 続く刻、まだまだ幻花衆を初めとした敵陣は全員生存。
 そして、幻花衆に続き、後衛のビルシャナが目にも鮮やかな、瞬く眩しい光を放ち、視界を奪う。
 そして、デラックスひよこ明王は。
『ほーら、罪深いケルベロスにはひよこの突撃やでー』
 とぴよぴよひよこの突撃。
 鋭い嘴がぐさぐさっ、と突き刺さり……結構血飛沫が飛び散る。
「っ……流石に嘴の一撃は痛いの」
 と、行動を早め「紅瞳覚醒」による回復と、リュセフィーもウィッチオペレーションでの回復補助。
「ありがと」
『……♪』
 とロベリア、イリスが軽く頭を下げる。
 そして真砂がドラゴニックミラージュと、彩色が。
「ではでは、御耳と御目々を同時に拝借。今宵を彩る物語は、血に飢え狂う堕ちた英雄の御話――」
 と『実在した怪異譚『血錆』』にて、切り裂いた傷をジグザグ効果で一気に追加付与。
 そしてロベリアのフレイムグリードに、イリスのビハインドアタック、そして……ユニフローラムが。
「とっとと、落ちなさい」
 と鬼神角にて貫くと、その一撃に幻花衆が散る。
 ……続くターゲットは、すぐにデラックスひよこ明王へ定める。
 もふもふひよこがその身の周りに密集している姿形は、明王とは思えない感じではある。
「……ただの可愛い生き物であればいいのに、丸焼きにするよ」
 とリオルトが紅蓮大車輪で斬りかかると、更に憐も。
「『ええんやで』の一言で何でもうやむやに出来ると思ったら大間違いっす。光の国ガンダーラから来たとかいい加減な事を言いおって。お釈迦様は許しても、三蔵法師とかが許さんっす!!」
 とスターゲイザーの飛び蹴りを食らわせる。
 そして、次の刻になり、真砂が。
「きたれ、極夜よりの魔弾」
 と時空凍結弾を放ち氷効果を付与する一方、リュセフィーもライトニングボルトで攻撃。
 彩色の熾炎業炎砲に、ユニフローラのディスインテグレートで連携し、瞬く間にひよこ達を焼き尽くしていく。
 ……そして、燐の轟竜砲に、リオルトが降魔真拳。
 嘴の反撃をものともせず、そして……ビルシャナにも直接的な攻撃を与える事無く攻撃し、数分。
『なんやてぇぇ……!!』
 と、ユニフローラムのオウガナックルがめり込むと共に、吹き飛んで消滅するデラックスひよこ明王。
 ……そして、残るは罪を犯したビルシャナのみ。
『っ……』
 唇を噛みしめ、僅かに怯えの見える彼に対し、ロベリアが一歩進み出て。
「さて、君が何を罪だと思っているのかは詳しくは知らないけどさ……無関係な奴に何言われたって許される訳ないでしょ。ビルシャナに取り込まれるなんて、そんな罰を受ける程の事なのかな?」
 そんなロベリアの言葉にリュセフィーが。
「そうです。ひき逃げをしてしまった罪は、ちゃんと償わないといけませんよ。ずっと罪から逃げてると、罪悪感がずっと残る事になります!」
 と力強く、言葉を紡ぐ。
 が、二人の言葉に視線を背ける彼……やはり、罪悪感からどうにか逃げようという心がまだある様で。
「ふぅん……やっぱり、所詮は逃げ出した卑怯者ね。生きていたって、碌でもないのだから、引導を渡してやるのが慈悲じゃないかしら?」
 とユニフローラムがばっさりと言い放つと、明らかに動揺する彼。
 揺さぶられる心に、更に戀が。
「お主はそれで良いのかの……? 先ほどの様な人でもない物に許された所で、お主のこと、回りの『人』は許さぬじゃろう。何故か? それはお主が反省せぬからじゃ。罪を忘れるという事は、反省しないという事じゃからな。仮にお主がそれで良かろうと、お主の家族はどうなる? お主の意思にかかわらず、お主の責任を家族が問われる事になるのじゃよ?」
 家族、という言葉に、更に視線が揺れる彼。
 そして、憐と彩色、ロベリアが。
「人間やめて、ビルシャナに逃げたら、あんたの今迄の人生無駄になってしまうっす。そしてあんたの家族や友人も悲しむっす。罪を償う事は、まだ出来るっす!」
「でも……償うのは嫌かい? それならそれで、ボクは構わないよ。罪悪感を捨てるのも、償いから目を背けるのも、轢いた相手の顔から逃げるのも……それが君の『色』だというのなら、だけれどね?」
「まぁ、許されたいなら君自身が償わないといけないし、開き直りたいならどうぞ五勝手に、って事。どっちにしても、ビルシャナになんかなる必要はないよ」
 そして、リオルトと戀、彩色が。
「お兄さん。今のお兄さんは、やり直せる事を捨ててる状態だよ。そのまま無くなっていいの? ……罪に罪を重ねるなんて、本当に戻れなくなるよ。でも、今ならまだ、大丈夫」
「そうじゃ。ここまで聞いて、お主が逃げれば全て丸く収まる、そう思うかの? 本当に、それで良いかの?」
「そうだね。ま、きっと最後だろうから、聞かせてくれないか? 君の『本心』を、君の『本音』で。どうされたいかでも、どうするべきかでもなく、ただどうしたいのかを……このまま怪異に墜ちるのか、人として苦しむのか。ここから先は君だけが語れる御話だよ?」
 クスリ、と微笑む彩色……そして、手招き一つ。
『く……くそっ!!』
 と怒りと共に、近接。攻撃開始するビルシャナに対し、ロベリアは敢てその身で受ける。
「さぁ、キミの答えがどう出るか……楽しみだね」
 と言いつつ迎撃の達人の一撃を放つと、イリスが金縛り攻撃。
 更にミミックが愚者の黄金を喰らわせ、体力を削る。
 続き彩色が禁縄禁縛呪で攻撃すると、真砂も熾炎業炎砲、リュセフィーがライトニングボルトと連携。
 又、戀がメタリックバーストを前衛陣に再度付与し、狙アップ効果を付与。
 そして、高命中になった前衛陣は、いざ。
「ごめんね……一度倒さないと救えないから、倒さないと」
 と謝りつつも、リオルトが斉天截拳撃を叩きつけると、憐もケルベロスビーム。
 ……勢いに乗ったケルベロス達の猛攻は、瞬く間に体力を削り、そして。
「我が名は八傑衆が一人『鬼ノ耳』のユニフローラム……我が『星』の元に貴様の罪を怠惰に断罪しよう。罪には死による罰を、恨むなら墜ちた自信を恨め」
 と、ユニフローラムはそう言い放つと共に、オウガナックルの一撃を放ち……その一撃に、ビルシャナは断末魔の咆哮と共に、其の場に崩れ墜ちるのであった。

●許されざる事
 そして……デラックスひよこ明王も、幻花衆も、そして……罪のビルシャナも、全てを倒したケルベロス達。
「……ふむ。皆の者、お疲れ様じゃの。さて……かの者は、どうかの?
 と戀が視線を倒れたビルシャナに向ける……ビルシャナの姿は消えていない。
 ただ、意識はない様で、ピクリとも動きはしない。
「……全く。このまま死んでくれた方が、罪滅ぼしの一つにでもなるんじゃのかな? こんな碌でなし」
 とユニフローラムが辛辣に言い放つ一言に、戀はふむ……と瞑目しつつ。
「まぁ、確かにそれも一案かもしれぬがの。しかし生きて罪を償うのも一つの道ではあると思うのじゃ。勿論、人によって考えは様々じゃと思うがの」
「ふぅん……ま、いいけど。じゃ、わたしはもういいよね」
 肩を竦めながら、さっさと其の場を後にしてしまうユニフローラム。
 ……その間も、ずっとリュセフィーはしっかりとヒールグラビティを使い、傷ついた体力を癒し続ける。
 それから……十数分。
『……う……』
 不意に身じろぎ……そして、うっすらと目を開く彼。
「あ、気がついた様ね」
 と真砂の言葉に憐が。
「あ、起きたッスね! どうッスか?」
 と声を掛けてくるのだが……彼はきょとんとして、状況を把握出来て居ない。
 ……でも、暫くの間ぼーっとしていると、どうやら記憶がフラッシュバックしてきた様で。
『……あ……う……ああ……』
 ひき逃げした事、怖くなって、其の場から逃げてきたこと……次々と思い出す悪事に、みるみる内に表情が青ざめていく。
 そして……ケルベロス達が居る事に、更に恐怖を覚え。
『う、うわぁああああ……!!』
 と、脚をもつれさせながら、其の場から逃げようとする。
 が、そんな彼の肩を押さえる真砂。
 小柄な身体には見合わぬ、力強さを、振りほどくことが出来ない。
「逃げる事など許さない。この国は法治国家です。正しく裁かれなさい」
 と、真摯な真砂の言葉に、ひぃぃ、と悲鳴を上げた後……其の場に膝から崩れ墜ちる。
 ……そしてリュセフィーも。
「そうです。警察に自首して下さい。その罪を背負ったまま、逃げ続けるなど……赦すことは出来ません」
 と言い放ち……そしてうわぁぁぁ、と涙と共に泣き崩れる彼。
 そんな彼を見ながら、彩色は。
「君の贖罪の物語……これより、始まり始まり、と……」
 白狐面の下に語り部の如く呟くのであった。

作者:幾夜緋琉 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2018年3月22日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 1
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