変幻自在ヌンチャクマスター!

作者:天木一

 緑豊かな大きな森林公園で一人のジャージ姿の少年が木製のヌンチャクを構える。
「ホォォォホァッ!」
 怪鳥音を響かせながら、少年はヌンチャクを木に叩きつける。
「ホワッホアアァッ!!」
 器用にヌンチャクを右へ左へと体に当てずに振り回し、どこから繰り出すか分からぬヌンチャクの打撃を木に叩き込んでいく。
「ホアッホワタァッッ!!」
 速度を上げ連続してヌンチャクを木に叩き込んで表皮を削ると、脇でヌンチャクを挟んで止まる。
「すーーーーはーーーーーー」
 大きく深呼吸するとヌンチャクを手にして構えを解いた。
「よっしゃーー!! 一度も体にぶつけずにできた!」
 嬉しそうに少年はガッツポーズを作る。
「この調子ならヌンチャクをマスターする日も近いな! へへっ絶対に極めてやるぜ!」
 感覚を忘れない内におさらいしようと、少年はもう一度ヌンチャクを構える。だがそれを振るう前に幻武極が現れ声をかける。
「お前の、最高の『武術』を見せてみな!」
 その言葉に操られるように少年はヌンチャクを幻武極に叩き込む。顔から胴、胴から胸、そして脳天を叩き更に背後に回りヌンチャクの鎖で首を絞める。だが幻武極は涼しげな表情で無防備に攻撃を受け続ける。
「僕のモザイクは晴れなかったけど、お前の武術はそれはそれで素晴らしかったよ」
 幻武極がいつの間にか拘束を逃れると、少年の胸に鍵を突き刺した。すると少年は意識を失い倒れる。その隣には黄色いカンフージャージ姿の少年と同じ顔をしたドリームイーターが生まれていた。
「お前の武術を見せ付けてきなよ」
 そう幻武極が言うと、ドリームイーターは鉄製のヌンチャクを構えて振り回す。
「ホワアアアアッ!!」
 振り抜かれたヌンチャクは木を砕き薙ぎ倒した。
「ホワァァーーー!」
 死闘を求め、ドリームイーターは森林公園を出て駅の方へと向かった。

「今度はヌンチャクを使うドリームイーターが暴れる事件が起きちゃうよ!」
 光宗・睦(上から読んでも下から読んでも・e02124)が新しい事件をケルベロス達に伝える。
「ドリームイーターの幻武極が現れ、ヌンチャクの練習をする少年が襲われてしまいます。自分に欠損している『武術』を奪ってモザイクを晴らそうとしているようです」
 続けてセリカ・リュミエール(シャドウエルフのヘリオライダー・en0002)が事件の説明を始めた。
「モザイクは晴れなかったようですが、新たなドリームイーターを生み出して人々を襲わせるつもりです」
 ドリームイーターは少年の目指す理想のヌンチャクマスターとなって人々を襲う。
「今なら犠牲者が出る前に現場に到着できます。そこで敵が人と接触する前に迎撃してください」
 敵は戦うのが目的であり、その武を使えるのならば喜んで戦いを受けるだろう。
「ドリームイーターは高校生の男子の姿をしていて、ヌンチャクを自由自在に操り、打撃のみならず、受けや関節技に使ったりと、リーチは短いがその速度や動きの読みづらい攻撃をしてくるようです」
 一撃の威力よりも手数と不意を突くような軌道の攻撃が確実にダメージを与えて来る。
「場所は埼玉県の森林公園です。そこから出る前たところで迎撃する事になります。周辺の人々への非難誘導は始まっており、敵を引き付ければすぐに避難は終わるでしょう」
 到着時に避難はある程度終わっている。敵も戦いを望んでいるので逃げる者を追うような事はない。
「ヌンチャクですか、扱うのが難しそうな武器ですね。そんな武器の練習に励む少年から武を奪うなんて許せません。ドリームイーターを倒して人々と少年を助けてあげてください」
 よろしくお願いしますとセリカが頭を下げ、ヘリオンの準備へと向かった。
「ヌンチャクマスターなんて、まるで映画の武術みたいだよねっ! でも人を襲うならヒーローじゃなくて悪党だから、みんなでやっつけちゃおう!」
 元気な睦の言葉にケルベロス達も頷き、ヌンチャクアクションの出て来る映画について話しながら動き出した。


参加者
ジョン・スミス(三十四歳独身・e00517)
光宗・睦(上から読んでも下から読んでも・e02124)
アンジェラ・コルレアーニ(泉の奏者・e05715)
イリス・フルーリア(銀天の剣・e09423)
ジェニファー・キッド(銃撃の聖乙女・e24304)
蟹谷・アルタ(美少女ワイルド研究者・e44330)
今・日和(形象拳猫之形皆伝者・e44484)
柴田・鬼太郎(オウガの猪武者・e50471)

■リプレイ

●カンフージャージ
 人々が避難してゆく森林公園を出たところでケルベロス達が迎撃態勢を整えていた。
「ヌンチャクって、アクション映画みたいでかっこいい! 今日の私たちは悪のカンフーマスターと対峙するスーパーヒーロー! なんちゃって」
 カンフーっぽいポーズを取った光宗・睦(上から読んでも下から読んでも・e02124)が楽しそうな笑みを浮かべる。
「幻武極の事件は中々後を絶ちませんね……。鍛錬が好きな方々が多いのは好ましいとは思いますが……」
 次々と起こる事件にイリス・フルーリア(銀天の剣・e09423)は眉をひそめる。
「こんなにたくさん事件が発生してると、一人で修業したい人がいなくなってしまうかもしれません、です? 頑張って修行しやすいようにしませんと、です」
 日夜努力している人々を不安にさせない為にもアンジェラ・コルレアーニ(泉の奏者・e05715)は頑張ろうと翼を羽ばたかせ舞い上がった。
「武術に憧れる少年尊み、秀吉……本能が変……。butそれを踏み躙るドリームイーター、幻武極をワタシ……ワタシ許されへんッ!」
 己が世界に入り込んだジョン・スミス(三十四歳独身・e00517)は、35mmの撮影機をデデン!と設置した。
「ヌンチャクマスターって、あのアクションスターみたいだね! ボクも見てみたかったんだ。楽しみだなーっ!」
 映画を思い出して今・日和(形象拳猫之形皆伝者・e44484)は早く敵の技を見てみたいとワクワクする。
「達人になると、ヌンチャクの動きが見えないんだってね。武術としての完成度も要チェックだね!」
「ヌンチャクを使った敵……銃を使うのは反則かもという気もしますが、やむをえません……。私の武器はこれなので!」
 近接戦を鍛えた相手に飛び道具はどうかと思いつつも、ジェニファー・キッド(銃撃の聖乙女・e24304)は腰に吊るした銃を叩く。
「この手のは2回目だネ。ヌンチャクというのも面白い。ケルベロスの固有武器には無いようだが、参考までに観察しておこう」
 興味深いと蟹谷・アルタ(美少女ワイルド研究者・e44330)は敵の武術に期待を膨らます。
「ああ、勿論戦闘もちゃんとやるから大丈夫大丈夫」
 きっちり戦いもこなしてみせると周囲を警戒した。すると林の中から黄色いカンフージャージを着た高校生くらいの男子。首にはヌンチャクをかけたドリームイーターが近づいてくる。
「本当にこっちは色々な相手がいて飽きねえな。パンダ以外と戦えるのはうれしいぜ」
 柴田・鬼太郎(オウガの猪武者・e50471)は昂る闘気を隠す事無く発して堂々と敵を待つ。

●変幻自在の技
「あんたが求める強敵なら、ここにいるよ!」
 周囲に立ち入り禁止テープを張った睦は、敵を挑発して注意を引き付ける。
「ホワァァー!」
 怪鳥音を発し、武術家はヌンチャクを高速で振り回し両手で広げて構える。
「あの黄色いカンフージャージ……武術を求める性質と別に、某スーパー映画スターに影響を受けているのでしょう。カメラを置けばカメラの撮影範囲内に収まろうとするだろという目論見ですねハイ」
 ジョンは撮影機の向きを合わせると、剣を地面に刺し守護星座の光で仲間達を覆うと加護を与えた。
「ヌンチャクとは良い武器を持ってますね! 私達と勝負です!」
 敵の前に立ったイリスは刀を抜き放つ。
「銀天剣、イリス・フルーリア―――参ります!」
 名乗りを上げ刃に光を集め、上段から刀を振り下ろす。敵はヌンチャクの鎖で受け止めるが同時に放たれる光の鎖が体中に絡みつき縛り上げる。
「あの人の純粋な夢を、返してもらいにきました、です!!」
 そこへアンジェラは空から虹を纏って急降下し蹴りを頭に浴びせた。
「ふふふ、この公園からは出られません、です♪」
 そして挑発的に敵の前へと降り立つ。
「ホワァッ!」
 ヌンチャクを振り回して拘束を吹き飛ばすと、アンジェラの顔に向けて振るう。それをライドキャリバーのホッパーが突っ込んでヌンチャクを車体で受け止めた。
「私は銃……あなたはヌンチャク……端から見れば私の方が邪道かもしれませんがあなたを倒さねば被害が出る! 戦ってもらいます!!」
「ホアッ! 来い、どんな相手だろうと俺が勝つ!」
 ジェニファーが二丁拳銃を構えると、敵はクイクイッとヌンチャクを脇に挟んだ構えで手招きをした。ジェニファーが光の翼を広げその力を弾丸に込めて撃つと、敵はヌンチャクを振るって弾丸を弾いた。
「器用なものだネ。観察のしがいがあるヨ」
 面白そうに見ながらアルタはオウガ粒子で仲間達を包み、超感覚を呼び起こして神経を研ぎ澄まさせる。
「ヌンチャクか。珍しい武器だが、こっちでは有名な拳法家がいたそうだな。いつか戦ってみたいと思っていたんだ。楽しませてくれよ」
 ニヤリと笑った鬼太郎は当世具足を纏い、右手に剣、左手に棍を持って立ち塞がる。すると敵はヌンチャクを振るい叩きつけて来る。それを棍で受け剣で斬りつける。だが敵はヌンチャクで弾き、振り回すと鬼太郎の腹に一発叩き込んだ。
「コレでもヌンチャク振り回せるかな? 行け、Null。アイツを捕まえろ!」
 日和は鎖を猟犬のように放ち、足元から敵に絡みつかせた。
「小さくて軽い身体だからって、甘く見ないでください、です!」
 柵を踏み台にしたアンジェラは空に飛び上がり、翼を動かし加速して敵に突っ込み体当たりで薙ぎ倒し、地面すれすれを飛びまた空へと舞い戻った。
「ホォォォッ」
 跳ね起きた武術家がヌンチャクを構える。
「どれだけ振り回そうと、隙は必ず出来るものです!」
 銀の軌跡を描き羽のように跳んだイリスは、飛び蹴りで敵の背中を蹴りつけた。だが敵はよろめきながらもヌンチャクをイリスの足に絡ませ、ハンマー投げのように地面に叩き落とした。
「ヌンチャクごと叩きのめす!」
 睦は翼で練り固めた空気をジェットエンジンの如く噴射して空を飛び、ガントレットを嵌めた拳を思い切り叩き込んだ。拳は迎撃に放たれるヌンチャクを弾き顔面と捉えて吹き飛ばす。
「ホアッ」
 武術家は空中で一回転して着地し、血の混じった唾を吐き捨てる。
「遠心力を使った打撃はなかなか侮れないようだネ」
 手に混沌を纏わせたアルタはイリスの背に触れ、その力を伝えてすぐに傷を癒してしまう。
「避難はほぼ終わったようですね。もう被害を心配する必要もないですし、サポートしますので思う存分やってしまってください!」
 周囲を確認したジョンは薬液の雨を降らせ、仲間達の傷を癒していく。
「銃弾を弾くなんて流石ですね、正面からは防がれましたがこれなら!」
 横に飛びながらジェニファーは炎纏う弾丸を放ち、敵の横っ腹を穿ち爆炎を起こした。血を流しながら敵はジェニファーへと間合いを詰める。
「そこは俺の間合いの中だぜ!」
 そこへ向け鬼太郎は剣を地面に叩きつける勢いで振り下ろし、剣圧は風の刃となって敵を横から切り裂いた。
「手業はイイけど、足元が弱いかな!」
 駆け出した日和は顔面目掛けて振り抜かれるヌンチャクをスライディングで躱し、そのままの勢いで足を刈り取ってよろめかせた。
「ふふ、あなたはきっとわたしに夢中、です♪」
 頭上からアンジェラは急降下して蹴りを放つ。すると敵は跳び上がって躱しながらヌンチャクを首に絡みつかせて締め上げた。
「あぐっ……!? は、離し、て……」
 力が抜けて墜落し圧し掛かる敵に睦がローラーダッシュで突っ込む。
「そうはさせないよっ! スーパーヒーローの一撃を受けてみなよ!!」
 睦は炎を纏う足で回し蹴りを脇腹に叩き込む。力が緩んだところでアンジェラは拘束を逃れた。
「ほうほう、そんな使い方もするのだネ、面白い」
 アルタは混沌の水を集め、モザイクの影として顕現しアンジェラを護るように覆って治療を施す。
「もう一度動きを封じます!」
 イリスは光纏う刀を横に振り抜き、胴を斬り裂くと共に拘束する。
「ヌンチャクよりも銃の方が速いです!」
 銃をホルスターに納めたジェニファーはダッシュで敵の視界を外れ、背後から素早く銃を抜いて背中を撃ち抜く。
「投げ技はこう打つんだよ!」
 離れた位置から日和は相手の気を掴み、まるで近くに居るかのように投げ飛ばしてしまう。
「ホゥワッ!」
 地面を転がり跳ね跳んだ武術家が上からヌンチャクを振り回しながら襲い来る。
「殴り合いなら負けねえぞ!」
 割り込んだ鬼太郎が剣で攻撃を受け損ね、腕に食らいながらも棍を伸ばして敵の胸を突いて吹き飛ばした。
「いい絵が撮れそうなアクションです! その調子でガンガンいってみましょう!」
 ジョンはオウガ粒子を放出し、仲間達の治療を感覚を鋭くさせて戦闘力を高める。

●ヌンチャクマスター
「ホォォホアッ!!」
 流血に指で触れ、それを舐めた武術家は燃え上がるオーラを放ってヌンチャクを回す。
「打ち返せるものなら打ち返してみなよ!」
 睦は掌に集めたオーラの塊を放つ。ヌンチャクを振るい弾こうとするが、気弾は変化球のように軌道を変えて敵の肩を食い千切るように抉った。
「ホワッ」
 ケルベロス達の中へ武術家は跳び込みヌンチャクを振り回す。
「銃なら接近戦に弱いと思いましたか? 手はあります!」
 ピンッと帽子を指で弾いたジェニファーは己が身を光の粒子に変えて突撃して敵を透過し、衝撃を与えながら背後で実体化する。
「あのくらいじゃ、わたしは倒せない、です!」
 アンジェラは地を蹴り翼を広げ弾丸のように敵の横っ腹に突撃して吹き飛ばす。だがカウンターのヌンチャクが同じように脇腹に打ち込まれた。
「ヌンチャクも極めれば手の延長のように扱えるものなのだネ。興味深い武器だ」
 アルタはガジェットから魔導金属片を含む蒸気を噴出してアンジェラの体を覆って癒した。
「動きが鈍って来たようですが、ヌンチャク捌きだけは衰えていないようですね」
 着地したところへ間合を詰めたイリスは刀を下から斬り上げる。敵も同時にヌンチャクを振り下ろして鎖骨を砕くが、体を斬りつけた傷口から魂を吸い上げイリスは自らの傷を癒す。
「拳にも投げにも魂を込められないと、武術とは呼べない。ヌンチャクに振り回されていないか、よく考えるんだね!」
 間合に跳び込んだ日和が屈んでヌンチャクを躱し、足払いで敵を転ばせる。
「クライマックスが近づてきた感じでしょうか、いいですよ。まさにカンフー映画です!」
 斧を振るったジョンは破壊のルーンを睦に与え、破魔の力をその身に宿した。
「おら、かかってこいよ!」
「ホアアアアアァッ!」
 鬼太郎の言葉に乗って敵が襲い掛かって来る。見えぬ程のヌンチャクの怒涛の連打を、鬼太郎は剣と棍で防ぐが捌ききれずに被弾していく。鎧にひびが入っても一歩も引かずに攻撃を防ぎ続けた。
「ヴァルキュリアの弾丸よ、敵を貫け!」
 二丁の銃を構え狙い澄ましたジェニファーは光を纏う弾丸を撃ち、敵の胸に2つの風穴を空けた。
「―――そこです!」
 敵の動きを見極めたイリスは、一気に間合いに踏み込み刀を振るう。刃は横一閃に胴を薙ぎ深く刀傷を刻んだ。
「ホォオオッ!」
 血を噴き出しながらも、ヌンチャクを振り回しイリスの体を弾き飛ばす。
「最後の演出といきましょうか。守護の光でヌンチャク極めの打点をズラす事によりBSを防ぐんですね。どういう理屈かわかりませんがそういう理屈です」
 剣を立てたジョンが守護星座の輝きを放ち、仲間達に加護の光を与え、実際にその光はヌンチャクの軌道を若干歪ませた。
「さて、十分に見させてもらったし、終わりにしようか」
 腕をメタルで覆ったアルタは、振りかぶった拳を打ち込み敵の腹を陥没させる。
「光と闇の拳で砕け散れ!」
 続いて接近した日和は真っ直ぐにガントレットの拳を放ち、敵の胸中央を捉えて口から血が溢れる。
「どうした、そんなもんで終わるのか? 全力を見せてみろ!」
「オオオオッホワッ!」
 鬼太郎に向かい敵は最速のヌンチャクを振るう。鬼太郎もまた大上段から剣を振り下ろして応じ、ヌンチャクは胸を打ち、剣は肩から腰まで深い傷を走らせた。
「これがわたしの全速力、です!!」
 空高くに飛び上がったアンジェラは、一直線に加速してヌンチャクを蹴り飛ばしてそのまま通り過ぎ、旋回すると背後から体当たりを背中に叩き込んだ。
「これで決めるよ! 正々堂々最後の勝負!!」
「ヌンチャクは負けねぇ! ホワタァッッ!!」
 両腕のガントレットに光と闇を纏わせた睦に、敵もまたヌンチャクを振り回して構える。睦は聖なる左手で敵を引き寄せると、敵はカウンターに顔を狙いヌンチャクを放つ。それを左手で受け止めると、闇の右手で胴を貫いた。
「ハイカーーット!」
 敵の姿が幻のように消え去ると、撮影終了とジョンが撮影機を止めた。

●映画スター
「助かったよ! ありがとう!」
 事情を知らされた少年が深々と頭を下げる。
「それで、俺のニセモノって強かったかな?」
「ものすごい技でした! ぜひヌンチャクをきわめてください!」
 いずれ極めた技を見せてほしいとジェニファーが少年に言葉を掛ける。
「ニセモノの技には魂が籠ってなかったよ。キミのヌンチャクには魂を籠めてね」
 日和があのアクションスターみたいにと言うと少年は強く頷いた。
「そうだよな! あの人みたいに極めたらぜってー強くなれるはず!」
「私も特撮ヒーローに憧れてこんな戦い方してるんだよね。だから、気持ちすごい分かるよ!」
 同感だと睦は昔見た憧れのヒーローの話をして少年と互いのヒーローを語り合う。
「ヌンチャクって、とても難しそう、です……? ええと、こう……へびゅっ!?」
 アンジェラが試しにヌンチャクを振り回すと、自らの頭にヒットした。
「……え、ええと、鍛錬、がんばってください、です!」
 その失敗を誤魔化すように頭を押さえながら応援する。
「最初は失敗するもんだよっと」
 少年が器用にヌンチャクを振り回し、どこにもぶつけずに脇に挟んで止めた。
「その年でそれだけのヌンチャク捌き、いやはや立派なものです」
「私はあまりヌンチャクの知識はありませんけど、カッコいいですよね!」
 うんうんと頷くジョンが少年を愛でるように眺めながらそれらしい事を語り、イリスも素直に褒めると少年は頭を掻いて照れ臭そうに笑った。
「いいものを見させてもらったヨ。ヌンチャクなんて珍しい武器だからネ」
 興味津々にアルタはあれこれと少年に質問してたじたじにさせる。
「小僧、お前の目指していたヌンチャクマスターなかなか良い武術だったぜ。修行してもっと強くなったらいつか俺と戦ってくれよな。楽しみにしてるぜ」
 厳つい顔であるが優しさを感じる口調で鬼太郎は激励すると、はいっと少年に気合が入る。
 戦いの玄人であるケルベロス達との武術談義に少年は目を輝かせ、あれこれ聞いて会話を弾ませるのだった。

作者:天木一 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2018年3月19日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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