天下に轟く二天一流

作者:天木一

 人気のない山の中で、剣道着に袴を纏った壮年の男性が大木を前に腰を落とし、大小二本の木刀を構える。
「えぇいっ! やぁあっ!」
 裂帛の気合と共に木刀が振り抜かれ、右の一閃が袈裟斬り入り、左の一閃が横に胴の辺りを叩き木を削る。
「いええええぃっ!!」
 そこからさらに左右の連撃を続けて入れ、何度も何度も木刀が力いっぱい叩きつけられる。
「はぁぁっ!」
 最後に右の大刀で斬りつけて動きが止まり、ゆっくりと構えを解き息を整える。
「左右の連携に淀みがある。二刀流を極めるのはまだまだ先か……」
 ゆるやかに左右の木刀を振るい、動きを確かめながら問題点を修正していく。
「天下無双と呼ばれた武蔵の二天一流、必ず蘇らせてみせよう。そして俺が現代の天下一の剣士となってみせる」
 力強く男は足を踏み込み空を一閃した。その背後に幻武極が現れる。
「何奴!?」
「お前の、最高の『武術』を見せてみな!」
 振り向く男性に、幻武極が声をかける。すると操られるように男性が二刀の木刀を振るい首を薙ぎ腹を刺す。続けて袈裟斬りに振るい胴を払い、突きが顔面に叩き込まれる。
「僕のモザイクは晴れなかったけど、お前の武術はそれはそれで素晴らしかったよ」
 どれだけ攻撃されようと無傷のままの幻武極が手にした鍵を男性の胸に突き刺した。引き抜かれた胸に傷一つ残ってはいない。だが男性は意識を失い崩れ落ちる。
 その場に倒れた男性の隣に、同じ姿をしたドリームイーターが現れる。その手に持ったのは木刀ではなく、真剣の大小の刀だった。
「お前の武術を見せ付けてきなよ」
 幻武極がそう言うと、ドリームイーターは左右の刀を振るう。すると傷ついた大木がバラバラに切り裂かれた。
「二天一流こそ、天下無双の剣なり!」
 左腰の鞘に二刀を納め、ドリームイーターは山を下り町へと向かう。

「今度は二刀流のドリームイーターが暴れるみたいだよ」
 エリン・ウェントゥス(クローザーズフェイト・e38033)が新たな事件をケルベロス達に告げる。
「幻武極が二天一流を復元しようと特訓をする男性を襲い、自分に欠損している『武術』を奪いモザイクを晴らそうとしたようです」
 資料を手にしたセリカ・リュミエール(シャドウエルフのヘリオライダー・en0002)が事件の詳細な情報を提示する。
「モザイクは晴れなかったのですが、武術家ドリームイーターを生み出して人々を襲わせようとしているようです」
 男性の目指す二刀流の達人となったドリームイーターは一般人の力で止める事はできない。
「町に敵が辿り着く前に迎撃し、倒してしまってください」
 敵は山道を歩いて下りて来るので、そこで待っていれば遭遇できる。
「戦う事になるドリームイーターは、剣道着を着た40歳程の男性です。身長は高めで筋肉の付いた鍛えられた体をして、片手でも十分に刀を振れる力を持ち二刀流で戦うようです」
 大小二刀の刀を自在に振るい、攻防一体の戦いをするようだ。
「現れる場所は愛知県の山の麓にある町で、戦場となる周辺は到着時には避難が終わっています。ですので戦いに集中する事ができます」
 外に出ていた人々は町の中へと避難が済んでいる。
「武術家であるドリームイーターはこちらから戦いを望めば喜んで剣を交えようとします。存分に戦い敵を撃破して人々を守ってください」
 説明を終えたセリカは出発準備に向かう。
「剣を交えたいというなら、堂々と戦って打ち破ろう。奪った剣術なんかに負けはしない」
 エリンの言葉にケルベロス達も同意し、二刀流剣士との戦いに心昂らせながら動き出した。


参加者
ガーネット・レイランサー(桜華葬紅・e00557)
月海・汐音(紅心サクシード・e01276)
奏真・一十(背水・e03433)
ロウガ・ジェラフィード(金色の戦天使・e04854)
螺堂・セイヤ(螺旋竜・e05343)
草間・影士(焔拳・e05971)
ウォリア・トゥバーン(獄界の双焔竜・e12736)
エレオノーラ・ペトリーシェヴァ(ある意味神がかった絵描き少女・e36646)

■リプレイ

●侍
 町に続く道をケルベロス達が通行止めにする。
「本流はほぼ廃れたようだが、傍流は残っているらしい」
 流派の情報をガーネット・レイランサー(桜華葬紅・e00557)が口にする。
「天下無双の剣豪。二天一流……本人に非ず、人の夢の贋物とは知れど。その意思を継ぐモノノフと一手死合える機が廻るとは……心が滾る……!」
 二つの人格を持つウォリア・トゥバーン(獄界の双焔竜・e12736)の片眼が焔に包まれ心昂らせていた。
「近距離のみか、いかにも剣術家らしき実直さであるが……」
 だがその技が奪ったものであれば剣術家を名乗るのもおこがましいと奏真・一十(背水・e03433)は顔をしかめる。
「剣の技は剣士の費やした情熱と努力、即ち時間。その時間を力無き者を虐殺する為に使うなど、剣士としての誇りとオラトリオとしての誇りへの侮辱に他ならぬこと」
 断じて思い通りにはさせないとロウガ・ジェラフィード(金色の戦天使・e04854)の体から金色の闘気が漏れ出た。
「二天一流……宮本武蔵といえば、過去の日本で最強とまで謳われた剣豪だったわね。それでは、その現代の二天一流を見せてもらおうかしら」
 表情には出さないが興味心を膨らませて月海・汐音(紅心サクシード・e01276)は敵が現れるのを待つ。
「世に轟く二天一流……。自己流とはいえ、二天一流とやり合えるのであれば、相手にとって不足はない……」
 剣士として、螺堂・セイヤ(螺旋竜・e05343)は敬意を持って正面から打ち破ってやろうと意気込む。
「過去の剣豪の技か。実際はどんなものだったかは分からないが、今回の敵はかなりの使い手の様だ。気を引き締めて、行くとするか」
 草間・影士(焔拳・e05971)は無手の技が存分に振るえそうだと拳を握る。
「二天一流、剣の道を志すなら確かに憧れますよね。その憧れは絶対に取り返さないと、ですね」
 エレオノーラ・ペトリーシェヴァ(ある意味神がかった絵描き少女・e36646)は奪われたものを取り戻そうと心に決めて道の先を見る。そこには左腰に二刀を差す黒い剣道着の壮年の男性。殺気を放つ侍ドリームイーターだった。

●二天一流
「二天一流の剣士と見受けする……。俺の名は螺堂セイヤ。古流武術『竜旋流』の継承者だ……。一人の剣士として、貴殿に勝負を挑ませて貰う……!」
 名乗りを上げたセイヤが跳び込むと敵は横へと避ける。そこへ魔を討つ妖刀を抜き打つ。侍は抜いた刀で受け止め、反対の刃を薙ぎ払うとセイヤは地に転がって避けた。
「我が二天一流の最初の獲物にしてやろうぞ!」
「上から見ると土を逆さにしたように見えるので、逆土の陣。なんてのはどうでしょうか」
 後方から戦場を俯瞰するようにエレオノーラは陣形を見出し仲間達に破魔の力を与える。
「彼の研鑽ごと奪い取り、あまつさえ人を襲おうとは、全くもって頂けんなあ」
 一十は戦斧を振るいウォリアに破壊のルーンを宿させ加護を破る力を付与する。
「名乗りは必要か?__誇る流派等無く我流の邪剣なれど、誉れ高き二天一流に挑まん……いざ、尋常に__勝負!」
「来い!」
 竜の翼を広げたウォリアが上昇し、急下降しながら雷霆を纏う蹴りを放つ。敵は刀をクロスして受け止める。足を地面に食い込ませながらウォリアの体を空へ押し戻す。
「目標捕捉。戦闘を開始する」
 ガーネットの耳の辺りからアンテナが起き上がり、ゴーグルが装着されて瞳が輝き戦闘態勢へと移行する。
「ふむ。見せてもらおうか」
 小型ドローンを飛ばして周囲に展開させる。それを邪魔だとばかりに侍が斬り捨ててゆく。
「私にもあるのよ。もう一つ、ね」
 漆黒の刀を手にした汐音はもう片方の手に一振りの長剣を創造する。敵は左の刀で漆黒の刃を受け流し、金の剣を右の刀で受け止めようとするが金の光はそれを押し切り肩から深く斬り裂いた。
「瞬く刃、初手を制し全てを制す!!」
 続いて踏み込んだロウガは漆黒の刀身をした長剣に雷を纏わせ突きを放つ。雷光のような一撃は右胸に突き刺さった。
「如何に力を持ったとしても、闇雲に振うならただの凶剣。無用な血を流す前に砕かせて貰う」
 影士は敵の四方から囲むように深紅の槍を生み出して串刺し、炎の魔力の毒が伝わり動きを止める。そこへ炎の魔力を放出しながら影士が拳を打ち込んだ。
「カァッ!!」
 火炎毒に体内を蝕まれながらも、十字に刃がガードする影士の腕を斬り裂いた。その傷をボクスドラゴンのサキミは無愛想ながらも水属性を与えて治療する。
「攻防一体の技のようね。でもこれを捉えられるかしら」
 駆け抜けながら汐音は呪詛を放つ刀を横に薙ぎ胴を抜く。それに対して敵は左刀で受け止めながら右刀を振り下ろす。だが汐音は刃が届く前に間合いの外へと抜けた。
「遅い」
 その隙に跳躍したガーネットは紅の流星のように飛び蹴りを放ち、左刀で受けようとする敵を薙ぎ倒す。
「俺の流派は拳と刀術の組み合わせだが、今回は刀術メインで付き合おう!」
 軽く跳んだセイヤが魔装の脚甲で蹴りを放って片膝をつきガードする刀を弾き、着地と同時に刀を振り抜き肩から胸へと斬り裂く。
「この俺を侮るか!」
 下から斬り上げる刀がセイヤの脚を裂いた。
「生憎と今日は刀は留守番でな。こいつで我慢してもらおう!」
 空から降るようにウォリアが刀剣状に変化させたオウガメタルを突き入れる。敵は刀で受け流すが、先端は肩を捉えた。
「宮本武蔵の剣術、如何程の物か、手合わせ願います!」
 勢いをつけるとエレオノーラはスライディングするように低空を飛び、足を刈るように蹴りつける。
「鏡(カエ)しの刃、立ち進む手足を断つ!!」
 よろめいたところへ右手の剣で刀を弾いたロウガは、左手で刀を抜き放ち弧を描く刃が太腿を薙ぐ。
「二つの天とはよく言ったものだ。だが此方も両の手に魂を込めている。そう簡単に倒れはしない」
 影士はグラビティを右拳に込めて真っ直ぐに殴りつける。それを刃で防がれると沈むように踏み込んで続く斬撃を躱し、左のボディブローを叩き込んだ。
「後方支援は任せておけ、正々堂々ひと勝負と参ろう!」
 一十は満月の如きエネルギーを放ち、セイヤの傷を塞ぎ同時に凶暴性を高め力を増させる。
「二天一流を名乗るだけの事はある。だが勝つのは俺達だ!」
 セイヤが刀を振るうと敵が受け鍔迫り合いが起こる。そこへ片手を離し漆黒の手甲で顔を殴りつけた。
「……アサルトコンバットパターンSB-2、始動」
「く、目晦ましか」
 ガーネットはチャフを散布しフレアも放って敵の目を眩ませ、背後に回るとナイフを深く突き入れた。舞い散る光が花びらの如く消える。視界が戻ると眼前には汐音の姿があった。
「攻撃を受け流す事で反撃のタイミングを作っているみたいね」
 汐音は振り下ろされる刃を左で持った刀で防ぎ、右拳を打ち出すが敵は反対の刀で受け流す。だが汐音は肩から敵にぶつかりよろめかせた。
「その剣技を培った時間こそが重要だ。借り物の技では天下など取れない!!」
 ロウガは左の刀を振るうと敵はそれを弾く、そこへ右の長剣を突き入れて腹を刺した。だが敵も同じくもう一刀を振るいロウガの肩を斬り裂く。更に放たれる刃を影士が拳と腕で受け止める。
「よそ見をしてるなよ。その剣は俺が受けてやる。何度でもな」
 腕から血を滴らせながら影士は敵を深紅の槍で囲む。だが敵は二刀の刀を振り回し囲みを破って飛び出る。そこへ影士は拳を放つが、敵は肩で受け止め刀で胴を撫で切った。
「磨かれた二天の剣技、多少の興味はそそられるが、じっくり眺めている場合でも無さそうだ」
 オウガ粒子を放出した一十は、仲間達に治療を施して超感覚を目覚めさせる。
「……来たれ星の思念、我が意、異界より呼び寄せられし竜の影法師よ………神魔霊獣、聖邪主眷!!!総て纏めて……いざ尽く絶滅するが好いッ!」
 異形の片刃斧を手にしたウォリアの足元から炎が周囲に奔り、噴き出る火柱の中から様々な武具を構えた分身を4体生み出し、一斉に敵の襲い掛かる。敵はそれを左右の刀で捌くが、防ぎ切れずに全身に傷を負っていく。
「きぇぃっ!」
 ならばと守りを捨て一気に刀を振るい炎を消し飛ばす。
「思うように刀を振るわせません!」
 エレオノーラは敵の手を見つめ、グラビティを集めると爆発を起こした。

●天下無双
「やりよるわ。ならばこそ斬る価値がある!」
 戦鬼の如く嗤う侍はゆらりと腕を下して脱力する。
「斬り伏せてみせるわ」
 両手で上段に構えた汐音は刀を振り下ろす。敵は刀を合わせて軌道を逸らした。そして反対の刀で汐音の首を狙うが、汐音もまた刀を返し斬り上げて凶刃を弾いた。
「砕け!」
 高速で間合いを詰めたガーネットは、紅の軌跡を描きながら回し蹴りを放ち敵の脇腹を打ち抜いた。だが同時に敵の刃も深くガーネットの腹を斬りつけていた。
「大丈夫。痛くない!」
 一十は鍵を模した鉄塊剣をガーネットの傷口に差し捻って引き抜く。すると痛みもなく一瞬にして傷口が閉じて血が止まる。
「そちらに合わせて不慣れな二刀流で勝負してやろう。付け焼刃の剣技などこれで十分だと思い知れ!!」
 ロウガと敵の刀が結び合い火花が散る。剣で突きを放つと敵は弾き逆に首を狙う。それをロウガは屈んで躱して斬り上げると刀と刀がぶつかり合い両者は間合いを空けて仕切り直す。
「鋭い剣筋だがそろそろ目が慣れてきた。今度はこちらから行く」
 降魔の力を宿した影士は剣戟を紙一重で躱して近づき、放たれる剣閃をすり抜けて脇腹に拳を打ち込んだ。
「天に輝く七の星を見よ……オマエに死を告げる赫赫たる星こそが我……天下無双の夢より生まれし儚き強者よ、地獄に堕ちる覚悟はできているな?」
 ウォリアは斧に炎を纏わせて両断する勢いで振り下ろす。防げぬと敵は刀で横から叩き軌道を逸らそうとする。だが勢いが勝り肩の肉が裂け骨を砕き傷口が焼ける。
「おおっ!」
 だが侍は筋肉を引き締めて腕を動かし刀で斧を弾き上げる。
「二天一流といえども、これだけの戦力差は覆せないでしょう」
 刀を抜いたエレオノーラは霊力を宿して斬りつける。正確に胴の傷口をなぞった刃は深く肉を裂く。
「随分動きが鈍ってきたんじゃないか?」
「ぬかせ!」
 セイヤは手甲で敵の攻撃を受け止め刀で胴を薙ぐ。敵は反対の刀で受け止め、両の刃を同時に振るいセイヤの両肩を裂くと、すぐにサキミが水で傷口を覆い傷を癒した。
「儚く散り逝け! デウスエクス!」
 花吹雪のように目晦ましをしたガーネットは大きく敵を飛び越えて背後を取る。すると敵が脇の下から刀を後方へ突き出してきた。ガーネットははそれをガトリング砲で逸らしながら銃口を突きつけ、零距離から弾丸を叩き込んだ。
「刃に舞うは末期の華、踊り狂うは刹那の剣風、乱れ華やぎ美しく――生命の理、この刃にて封ず!!」
 ロウガの髪の薔薇から赤・青・紫・黒・白の五色の花弁を生み出し、剣の周囲に舞わせると二刀による連撃を浴びせる。薔薇の花弁が甘美な芳香を放ち熱量を魅了して剣風で熱を吹き飛び体を凍結させた。
「この程度で、我が剣は止められん!」
「剣に深いこだわりがあるようだ。僕も稀に一対の短剣を使うが、然程こだわりは無いなあ。必要に応じればこうして違う武器も使うしな」
 斧を担いだ一十は高く跳躍し、頭上から体重を乗せて斧を振り下ろし額を割って顔を赤く染めた。
「ぬぅっ!」
「……その剣、覚えたわ」
 光の長剣を創って二刀となった汐音は、長剣を唐竹割に振り下ろす。敵は刀身を滑らせるように軌道を逸らした。反撃に胸に突き出される刃を汐音は刀で弾く。そして長剣を逆袈裟に斬り上げ、腰から肩へと真っ赤な血飛沫を上げさせた。
「影よりの一撃、避けられるものじゃないですよ。影打!」
 汐音の体を遮蔽物として視界から外れていたエレオノーラは、隙をついて刀を振り上げる瞬間に突きを放った。刀は真っ直ぐに伸びて喉を貫く。
「最後だ……貴殿の剣と俺の秘剣、どちらが上か……勝負……!」
「応!!」
 体内に溜め込んだオーラを解放したセイヤは一瞬にして間合いを縮め、神速の居合を放つ。その不可視の刃に敵は勘で刃を上げるが、勢いを止める事は出来ず右腕が斬り落とされた。それでも左の刃を突き出してくる。
「その剣をここで砕いてやる」
 影士が放たれる必殺の刃に拳をぶつけ、鬼気迫る片手の連撃を拳のラッシュで受け止める。その身を燃えるように炎を放出し加速し、やがて剣速を超えた拳が相手の心臓を打ち抜いた。
「ぐぼっ……まだだ! 天下無双と成るまで負けられぬ!」
 血を吐きそれでも踏み止まった侍は二振りで×の字に振るい影士を切り裂く。
 そこへウォリアは炎で己の分身を7体作って囲み斬りつける。対して侍は躱し、受け流し、反撃し分身を斬り裂いていく。ウォリアは分身ごと纏めて斬り飛ばすように斧を振り抜いた。それすらも敵に受け止める。そこへ反対の手で刃となったオウガメタルを突き出す。それを躱そうとした敵の体に分身たちが組み付く。
「……さぁ、オレ/我がオマエを此処で殺す……終焉の時は、来たれり」
 顔面を炎で包んだウォリアの刃が胸を貫き、炎が駆け抜け内部から燃やし尽くし全身を消し炭に変えた。

●剣の道
「ここは……?」
「気付きましたか? どこか痛みますか?」
 目覚めた男性に介抱していたエレオノーラが安否を確かめ事情を説明する。
「それはご迷惑をおかけしたようだ。申し訳ない」
 礼儀正しく壮年の男性は居住まいを正し頭を下げる。
「それで、私の剣術は二天一流へと達していましたか?」
「そうだな俺達八人を相手取れる程の剣豪だった。鍛えればいずれ届くかもな」
 質問に影士がまだ傷の癒え切らぬ両腕を見せる。
「学ぶべきとろこの多い戦いだったわ」
 汐音がこのまま武を極めれば自分達と戦えるような剣士になるだろうと褒める。
「宮本武蔵とまではいかなくとも、それに近づいていた。いずれ二刀流を真に極めた時には立ち合いたいな」
「……確か、傍流を受け継ぐ者もいたはずだ。その辺りもあたってはどうか」
 セイヤの言葉に喜んでと深く男性は頷き、ガーネットの提案には首を振り、既に試してみたのだと肩を落とした。
「同じ剣士として気持ちは分かる。ならばこそ先に進むしかないだろう」
「この道を進むならいずれまた相まみえるだろう」
 剣の道はずっと続くのだとロウガが励まし、その時まで精進しろとウォリアが告げる。
「確かに、剣にしか生きられぬなら、悩んでいても仕方がないですな」
「お身体に障らぬようであれば、夢喰いのものでない本物の技を見せて頂きたいものだ」
 一十がそう願うと男性が木刀を握る。裂帛の気合と共に振るわれる太刀筋は、長い年月を掛けて練られたものだと同じ道をゆくケルベロス達には理解できる。果てない剣の道を切り開かんとする一振りだった。

作者:天木一 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2018年3月15日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 6/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 1
 あなたが購入した「複数ピンナップ(複数バトルピンナップ)」を、このシナリオの挿絵にして貰うよう、担当マスターに申請できます。
 シナリオの通常参加者は、掲載されている「自分の顔アイコン」を変更できます。