菩薩累乗会~アナタのエゴはどこから?

作者:沙羅衝

「太いから……なによ……」
 夜のマンションの一室で、一人手作りのからあげを目の前にした女性がいた。名を海老原・霞と言った。彼女は、証券会社に勤めるOLである。とは言え、花形の営業ではなく、事務職である。ただ、腕は確かであり、彼女には作業も早く、ミスというミスが無かった。
 彼女はその日、上司である男性の営業部長に、少し痩せろと言われたのだ。
 しかし、それ程太いと感じる男性は少数派であろう。女性から見れば確かに太いと判断されるかもしれないが、男性からはちょうど良い。むしろ少し肉付きが良いほうが人気も出るというものだ。それに、彼女には愛嬌があった。美味しいものは美味しくいただく。お酒も大好き! がモットーで、良く笑うのだ。
 ただ、その営業部長からすれば、太っているという判断なのだろう。
 今日彼女は、珍しくミスをした。そして、容姿について言われたのだ。少し痩せてみたら気分でも変わるんじゃないかね? と。完全に言いがかりであるが、珍しいミスという事で、堪えた。
 彼女も女性である。おなかに少しついた、ぷにっとしたお肉が気になってはいる。スレンダーな女性を見ると憧れも沸く。しかし、食べることを止める事は自分を否定する事にも等しかった。働いているのも、美味しいものを食べたいだけ食べる為だからだ。
「はぁ……。明日、仕事休もうかな……。自信も無くなっちゃった……」
 霞はため息を吐き、グラスにビールを注ぎ、その泡を見る。すると、目の前に大きな鳥のような怪物が現れた。
「あなたは正しいわ。自分が一番大事。さあ、ぐぐっといっちゃいなさい」
「誰!?」
「誰でも良いの。まずあなたは自分の事だけを思えば良いのよ。他人の評価の為に自分を偽るのは間違っている。ありのままの自分こそ最高。そうでしょう? 一番大事な自分が、自分だけを最高に評価したのならば、それが、あなたの評価。そう、あなたは最高なのよ」
 その大きな鳥、エゴシャナの声に、霞はぱあっと目の前が開けたような感覚になった。
「そう、よね。そうだわ! 私は最高なのよ」
 ゴクッ! ゴクッ! ゴクッ!!
 素晴らしく喉を鳴らしてビールを一気に飲み干す霞。
「私は私が大好き! さあ、からあげもじゃんじゃん食べるわよ!! うまいー!!!」
 そう叫んだ霞は、ビルシャナとなってしまったのだった。

「皆ええか。ビルシャナの菩薩達が、恐ろしい作戦を実行しようとしている事がわかったんや」
 宮元・絹(レプリカントのヘリオライダー・en0084)が、集まったケルベロス達に依頼の説明を開始していた。
「『菩薩累乗会』っちゅう作戦らしいねんけど、強力な菩薩を次々に地上に出現させてな、その力を利用して、更に強大な菩薩を出現させ続けて、最終的には地球全てを菩薩の力で制圧する。っちゅう事らしい」
 絹は手に持ったタブレット端末を見ながら、困った顔をする。
「今んとこ、この『菩薩累乗会』を阻止する方法は分かってへんねんけど、とりあえず出現する菩薩が力を得るのを阻止して、菩薩累乗会の進行を食い止めるで。
 いま、活動が確認されている菩薩は『自愛菩薩』っちゅうてな、自分が一番大事で、自分以外は必要ないという『自愛』を教義としている菩薩らしいわ。自愛菩薩は、配下のビルシャナの、エゴシャナ達を、なんかの理由で自己を否定してしてしまっている状態の一般人の元へと派遣してな、甘い言葉でビルシャナ化させて、最終的にその力を奪って合一しようとしているらしい。ビルシャナ化させられた一般人は、自分を導いたエゴシャナと共に自宅に留まり続け、自分を愛する気持ちを高め続けるわけや。
 このままやったら、その高まった力を奪われて、新たな菩薩を出現させる糧になってまうやろ」
 絹の説明から、まずは出来るだけ早くにこの事件を解決させなければならない事が想像できた。
「今回向かってもらう被害者の行き先は、海老原・霞ちゃん。28歳のOLさんの自宅や。大家さんには話つけとくから、合鍵もらって進入するで。そこに居るのは、ビルシャナ化した霞ちゃんと、ビルシャナ化させたエゴシャナや。
 霞ちゃんは、食べる事とか飲む事が好きでな、ちょっと自分でも気になっているおなかのお肉の事を、どうやらいやらしい上司に言われたっぽい。ほんま、関係ない事を辺に言う難儀なヤツもおるもんやな。それで、ちょっと落ち込んでしもた所をつかれた。まあ、そう言うこっちゃ。
 で、ビルシャナ化した霞ちゃんは、自分の部屋も自分の一部と思ってるから、すぐに攻撃してくるやろ。もし、このビルシャナ化した霞ちゃんを先に倒した場合、エゴシャナは逃げ出す事になるわ。で、エゴシャナを先に倒した場合は、霞ちゃんを救出できる可能性が出てくる。でも当然、エゴシャナのほうが強いから、苦しくなる事は必至や。それでも先にエゴシャナを倒せたら、霞ちゃんに励ましの言葉をかけてあげて、霞ちゃんを撃破すればチャンスが出てくる。せやから、その辺りの作戦も考えてな」
 絹はそう言って、話しを纏めた。彼女を救う為には、倒す順番や、ビルシャナよりも説得力のある言葉で、彼女の心を救う事が必要になりそうだった。
「エゴシャナの言う事は、ちょっと言われたら嬉しいことや。でも、それもエゴや。これに対抗するには、どうしたらええかな? この辺りちょっと考えたら、良いアイデア出るかもしれんで。ほな、がんばってな!」


参加者
マキナ・アルカディア(蒼銀の鋼乙女・e00701)
小山内・真奈(おばちゃんドワーフ・e02080)
神崎・晟(熱烈峻厳・e02896)
天海・矜棲(ランブルフィッシュ海賊団船長・e03027)
シィ・ブラントネール(ウイングにゃんこ・e03575)
黒住・舞彩(鶏竜拳士・e04871)
エストレイア・ティアクライス(従順系メイド騎士・e24843)
ララ・フリージア(ヴァルキュリアのゴッドペインター・e44578)

■リプレイ

●自愛を叫ぶビルシャナとピンクの応援
「さて、ここじゃの……」
 ララ・フリージア(ヴァルキュリアのゴッドペインター・e44578)が長い金髪を揺らしながら、一つの扉の前で呟いた。
「全世界決戦体制は人々の協力あってこそ。彼女もその一人、なんて言うと、エゴからの救出になるのかしら? なんてね。
 ……その為に殺す、か。これもエゴかしらね」
「でも、そうは言っても、いまいち説得力には足りないわね!」
 黒住・舞彩(鶏竜拳士・e04871)が鉄塊剣『竜殺しの大剣』を出現させながらそう考えていると、シィ・ブラントネール(ウイングにゃんこ・e03575)は呪いの日本刀『劉鐵』の感触を確かめながら答えた。彼女の後ろにはシャーマンズゴーストの『レトラ』が控えている。
 ケルベロス達は絹の情報にあった、マンションの一室まで来ていた。
「エゴシャナが言ってることも間違ってはない気もする。自分は大事やからな。でも、おばちゃんも、なんか違うと思うわ」
 シィの言葉に頷くのは小山内・真奈(おばちゃんドワーフ・e02080)。確かに、情報による自愛の教えそのものは、そこまで間違っている訳ではない。だが、何処か引っかかる。
「心が弱った瞬間を狙うビルシャナの行為、許せるものではないわ。心を弄ぶビルシャナの魔の手から、救ってみせるわ」
「だな。人の心にはどうしたって隙がある。だけど、そこにつけ込んで人を歪ませるのは、許せないことだ」
 マキナ・アルカディア(蒼銀の鋼乙女・e00701)と天海・矜棲(ランブルフィッシュ海賊団船長・e03027)は、そもそもエゴシャナにとっての真の目的が許せないものだと気合を入れた。その言葉にエストレイア・ティアクライス(従順系メイド騎士・e24843)も頷いた。
「よし、では行くぞ……!」
 ガチャリ!
 神崎・晟(熱烈峻厳・e02896)が合鍵で玄関を開けて、そのまま一気にケルベロス達は部屋へと雪崩れ込んだ。
 短い廊下を駆け抜け、奥にある部屋へと突入する。
 バン!
 そして、勢い良く扉を開け放った。
「ティアクライスのエストレイア、参上です! 人様の心につけ入り唆そうなど言語道断!
 ここで朽ち果てて頂きます!」
 エストレイアがそう叫ぶと、お返しとばかりに叫び声がはね返ってきた。
「ああー! 美味しい! もう、このからあげ最高! 私、サイコー!!」
「そうよ! あなたは最高なの、さあ、じゃんじゃん食べましょう! ……と、言いたい所だけど、邪魔が入ったわ! 分かるわよね? あなたの領域に入ってきた人達が。さあ、さっさとやっつけて、また食べるわよ! 頑張れ!」
 そこには、叫び狂っていたビルシャナと、ピンク色をしたビルシャナが居た。
「変身! さあ、錨を上げるぜ!」
 瞬時に状況を判断した矜棲が、ベルトの操舵輪型バックルを回す。
『オモカジイッパーイ! リベル! ヨーソロー!』
 その電子音声が部屋に響いた時、ギロリとした視線がケルベロス達に向けられる。
「私の邪魔、しないで!」
 そして、叫び声を上げていたビルシャナ、つまり海老原・霞が、エゴシャナの言葉を聞いて直ぐに襲い掛かってきたのだった。

●焼き鳥
「あら? あなた達。どうしたの? そんなに血相をかえて? エゴこそ救いよ、わかるでしょう? ね、あなたたちもそう思うわよね?」
 エゴシャナはそう言って、羽ばたき、後ろで狙いを定めているシィ、ララと、ヒールドローンを展開しつつあるエストレイア、そしてレトラに魔法の力をぶつける。
「おおっと、そう好きにはさせんぞ! ラグナル!」
 ラグナルと共に前で体を投げ出す晟とマキナが、その攻撃を受けきる。そしてそれでも抜けてきた力はエストレイアに向かうが、かろうじて避けることができた。
「最高の自分……だけ見て、愛でる。それは自分以外の物事に責任を押しつけたり、問題から目をそらしているだけだわ!」
 マキナが受けきった力を吹き飛ばし、蒼い菱形クリスタルを生成し始める。
『Code A.I.D.S…,start up. Crystal generate.…Ready,Go ahead』
 そのクリスタルが、傷を受けた晟、ラグナル、そして自分自身と真奈、矜棲へと攻撃から身を護るシールド領域となり、広がった。それと同時に、晟もまたオウガメタルからオウガ粒子を放出させたのだった。

 ケルベロス達は、霞を助けるべく、完全にエゴシャナと対峙した。
 当然霞からは、太くても良いじゃない! とその鬱憤を晴らす叫びと共に攻撃が飛んでくる。
 しかし、ケルベロス達はそれでも、まずエゴシャナだけに攻撃を絞ったのだった。
『祈りを捧げます。かの者に、守りの加護を!』
 エストレイアとレトラを中心に、防御の盾を作り、矜棲が星座の光をばら撒く。こうして鉄壁の形を形成していった。
 その様子を確認したララが、ドラゴニックハンマーで狙い済ませた竜砲弾を放ち、エゴシャナの足を飛ばす。
「当りなのじゃ!」
 そして、ララの攻撃でバランスを崩した所に、真奈がエクスカリバールに釘をはやしながらフルスイング!
 ドガァ!!
「グワッ!!」
 鳥のような鳴き声をあげ、回転しながら床に叩きつけられるエゴシャナ。そこをシィと舞彩が重力を宿した蹴りで踏みつける。
 ケルベロス達は、こうして容赦ない攻撃をエゴシャナだけに叩き付け続けた。それも、ビルシャナと化した霞の攻撃にきっちりと対応した成果があるからこそだった。

「さあ、錨を上げるぜ!」
 そして、ケルベロス達は、エゴシャナの体力が付きかけてきたのを見抜くと、矜棲の掛け声と共に総攻撃を開始した。
『シメはこいつだ!』
 矜棲がゾディアックソードをエゴシャナに投げつけ、リボルバー銃をその剣に向かって放つ。その弾丸が見事にヒットした剣は、その弾丸のスピードを使って加速し、エゴシャナの眉間に突き刺さる。
 続けて、マキナが胸部を変形展開させ、エネルギー光線で追撃。さらに真奈が電光石火の蹴りを、エゴシャナのこめかみ目掛けて打ち込む。
「ビルシャナというのは、みんな鳥みたいなやつなんじゃのぅ……。そうじゃ……」
 ララがグラビティで作り出した塗料を使い、光を作り出す。その光は一体の不死鳥となった。
『今回のおしおきを楽しんでみるといいのじゃ』
 すると、不死鳥がエゴシャナの腹部を突き抜け、同時にエストレイアが己を光の粒子に変え、また、突き抜ける。
「グエエエエェェ!!」
 その叫び声が続く中、シィが舞彩に頷きかける。
「マイア! 行くわ!」
「おっけー!」
 バチバチバチ!!
 シィが1.21ジゴワットもの膨大な電力を生み出す。
「わお……。時空でも超えれそう。なんてね」
 その光を見た舞彩はというと、鶏ファミリアの【メイ】に、
『メイ、みんなを呼んで。』
 と命じる。すると、メイは大きく鳴き、百羽以上の鶏ファミリアを召喚する。
『時を超えるほどのエネルギー、味わってみる?』
『総攻撃!』
 にやりと笑った二人が放った攻撃は、エゴシャナの傷を抉り、あらゆる箇所を切り裂き、破壊していった。
「さて、仕上げと行こうか……。ああ、焼き鳥がいいかな?」
 晟がぷすぷすと煙を上げているエゴシャナを見て、こちらもにやりと笑った。
『「身」頭滅却すれば、火もまた涼し。燃えるものが残らねば、熱さなど感じないだろう?』
 晟は口に蒼い炎を充満させ、そして一気に吹き付けると、その息吹は火炎旋風となり、エゴシャナを焼き尽くしたのだった。

●最高のアナタ
 エゴシャナが消滅した後に残ったのは、ダメージを最小限に抑えられたビルシャナと化した霞の姿だけが残った。
「さて、これからが本番じゃの……」
 ララは、そう言って、はあはあと肩で息をする霞に向き合った。
「私……。私は、最高、なのよ……」
 そう言って霞は炎を投げる。だが、その炎もマキナに軽く制圧される。
「先に述べた最高の自分。それは貴女でなく、貶した部長さんが、かしらね。責任を感じている、だからこそ容姿を突かれて自信も無くしたのではないかしら」
 マキナはその炎を握りつぶしながら話す。
「自己の否定ほど心が傷つき、辛い事はないわ。ただ、自己を肯定するだけだと行き着く先は部長ではないかしら? 私は誇りと好きな気持ちの両方を持つのが大切だと思うわ」
 すると、矜棲が少し前にでて声をかける。
「さっきのエゴシャナの言葉は、うわべだけの、耳心地が良いだけの言葉だ。
 霞さんの事なんて微塵も気にかけてはいない。
 食べる事は悪いことじゃないけど度が過ぎればどうなるか、あなたならよくわかるだろう。
 自分を大事にするという事は、自分勝手にするという事では無いんだ」
 すると、ララが先程召喚した不死鳥を塗料へと戻しながら話す。
「そうじゃの。自分の評価も大事じゃが他人からの評価も大事ではないかのぅ。
 そなたは仕事もできるし性格もいいんじゃろう。そなたの性格にも笑顔にも好意的な評価を受けてるようじゃし自分も認め自信を持ち他人からも賞賛されるような暮らしに戻りたくはないかの」
 ララもそう言って霞に言葉を投げかける。
「嫌な上司などどこにでも必ずいるじゃろう。じゃがそれで全て捨ててしまうにはそなたはもったいないのじゃ。このまま流されればこれからそなたを待つ楽しい事も嬉しい事もみんななくなってしまうのじゃ」
 それを聞き、霞の動きが少し停止してきた。そして、もったいない? と呟いた。
「先程の鳥に騙されては駄目です。理解者のフリをして誑かそうとする悪者です。
 それは一時の逃避にはなっても、解決にはなりません。貴方を騙して貴女のこれからを全て奪うつもりなんです。
 そうなったらもう美味しいものも食べれなくなりますよ。エゴの塊みたいなものの声に耳を傾けては駄目です!
 貴女が消えてしまってもいいんですか!」
「美味しい、もの。そう、私は美味しいものを……」
 エストレイアの言葉は、霞の求めるものを、鮮明に思い出させる事ができた。しかし、その為のエゴシャナではなかったのか? そんな疑問を浮かべているのか、戸惑う様子を見せる。
「せや、あんたの言うとおりや。自分が大事なんやから、自分がやりたいことをしたらええんや。あんたがそれでよければ人の目を気にする必要はないんや」
 真奈の言葉はあくまでも、霞を肯定する。それは晟も同様であった。
「好きに飲み食いするのを否定するつもりはない。だが、それと同時になりたい自分があるのだろう?
 とすれば、むしろこれは好機だ。
 食べたのであればその分消費すればいい。
 ミスをしたならその分を取り返せばいい。
 自分のしたいことで、相手を見返してやるんだ。それだけの力が君にはある」
 それは、彼なりの優しさであった。そのかいあってか、霞の動きは完全に停止した。
「そうよ。貴女ならわかるはず。自分に優しくするのと、甘やかすのは違う。
 今が最高。そう自分を甘やかして、貴女は成長できるのかしら?
 そうだ、自分に優しく、食べて飲んで、明日も頑張るって糧にしましょう?
 私も食事は好きなの。ねぇ、今日はこんな運動もして、終わったら一緒に食べない?」
 舞彩が話した言葉は、優しさと甘さの違いについてだ。そう、そこを履き違えない事こそが、エゴシャナの教義との決定的な違いなのだ。
「自分を大事にするのは当然だけど、あのフラミンゴみたいな色の鳥の言うこと聞いてもダメ!
 美味しいものを食べて、その分運動もお仕事も精一杯頑張って部長さんなんて見返して!」
 すると、シィが『劉鐵』を手に持ちながら、笑顔で霞に歩み寄る。
「自分の求めることも、自分に求められてることも全部やりきるのが、本当の『最高のアナタ』になるはずよ!!」
 その言葉を言いながら、シィは霞のビルシャナの鎖を断ち切ったのだった。

●もぐもぐたいむ
 じゅわー……。
「タコ焼き器……。マイアは何でも持っているのね!」
「宮元に借りたのよ。あ、これ宮元の特製ソースね。後で来てくれるように頼んでおいたわ」
 シィの言葉に、少し得意げな舞彩。今はレトラが見事な腕前で、タコ焼きをくるくると回していた。
 ヒールのついでに、ララによって、かなり芸術的なペイントが施されたのだが、その絵は派手なようで、何処か落ち着く、そんな絵であった。
 そうこうして、ケルベロス達は掃除した後、霞の激例会を開いていた。
 勿論、食べて飲む。これに限る、という事であったのだが……。
「ぷはー! お兄さん、強いわねえ! 大きい体しているだけはある!」
「あ、ああ……」
 そう言ってビールをあおる霞に、ばんばんと背中を叩かれている晟。最初は、細身よりも健康的な体系の方が、個人的には好みとか、そもそも下手に痩せようとすれば、脂肪だけでなく筋肉も落ちてしまうわけで……。などと話していたのだが、今やすっかり霞のペースに飲まれながら、グラスに注いだビールを口に入れる。ラグナルはというと、すっかりと食べきったから揚げに満足したのか、主のピンチを気にする事無く、大きくしたおなかを天井に向けながら眠っていた。
「酒乱……だった、のか?」
「そう、みたいです、ね」
 エストレイアは矜棲に出来立ての追加のから揚げを渡し、自らも座る。矜棲はありがたくいただきながら、から揚げを口に入れた。
「ほら、たこ焼き焼けたで。レトラはほんま器用やな。ほいっ」
 真奈が出した皿に、無駄の一切ない動きで、盛り付けるレトラ、そして間髪入れずソースが塗られた。
「これなら、大丈夫のようね」
 マキナはそう言って、安心した表情で晟と矜棲、そして霞に持ってきたビールを差し出した。
「うむ。旨いの。また何かあったら、わらわが付き合うから、何でも呼ぶといいのじゃ。遊びでも運動でもよいのじゃぞ?」
 ララが出来たてのたこ焼きを口に入れながら言う。
「本当! 嬉しい!!」
 すると霞はララに抱きつく。
 盛り上がっていたかと思えば、落ち込む様子を見せたり、嬉しくなったり。
 その感情豊かな彼女を見て、ケルベロス達は安堵の表情を見せた。

 エゴシャナの自愛とは、また別の愛情。それを、ケルベロス達は示すことが出来た。
 それは、生という大事な大事な事柄に対して、彼らが持つ一つの回答なのだろう。
 そんな事を感じ、伝えながら、楽しい笑い声と共に、夜は更けて行ったのだった。

作者:沙羅衝 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2018年3月15日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 2/キャラが大事にされていた 3
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