漆黒の魔弾

作者:雷紋寺音弥

●黒きスナイパー
 見られている。そう感じ始めたのは、街に出てからのことだっただろうか。
 自分は監視されている。ともすれば、被害妄想に過ぎないと一笑に付されるだけの考えだとは解っていた。それでも、微かに残るノイズのようなものを感じ取り、ジョルディ・クレイグ(黒影の重騎士・e00466)は独り、既に遺棄されて久しい朽ち果てた倉庫の中へと足を踏み入れた。
「……誰もいない、か……」
 当たり前のことだけを口にすれば、その言葉が虚しく倉庫に響く。やはり、取り越し苦労だったのだろうか。そう思い、踵を返して戻ろうとした瞬間、後方より恐るべき殺気を感じ、ジョルディは思わず振り返った。
「……ッ!!」
 裂けるだけの余裕などない。咄嗟に、手にしていた刃を盾代わりにして防ぐと、足元に落ちたのは一発の銃弾。
「貴様は!?」
 弾の発射された方へ視線を向ければ、いつの間に現れていたのだろう。そこにいたのは黒光するボディに漆黒のジャケットを身に纏った、狙撃兵を思わせるダモクレス。
「キリングMk13か……」
 狙撃銃を構えるダモクレスの名前と思しきものをジョルディが紡いだが、黒き狙撃者はそれに答えなかった。ただ、左目を覆うスコープで状況を分析しながら、その結果を機械的な音声で繰り返すのみ。
「目標の狙撃、失敗……。だが、任務継続に支障はなし。引き続き、対象レプリカントの抹殺を開始する……」
 左肩のミサイルポット、そして腰に備え付けた拳銃のロックも外し、EXE-13と呼ばれたダモクレスがジョルディへと狙いを定める。下手に動けば狙い撃ちにされると解っている以上、ここで退く訳にはいかない。
「どうやら……戦うしかないようだな」
 話の通じる相手ではないと悟り、ジョルディもまた武器を引き抜いて身構えた。
 呪われたナンバー、13番。不吉を暗示する数字を冠するダモクレスの凶弾が、漆黒の騎士へと迫っていた。

●レプリカント抹殺指令
「召集に応じてくれ、感謝する。実は、ジョルディ・クレイグが宿敵であるデウスエクスの襲撃を受けることが予知された」
 慌てて連絡を取ろうとしたが、残念ながら間に合わなかった。最早、一刻の猶予もないと、クロート・エステス(ドワーフのヘリオライダー・en0211)は集まったケルベロス達に自らの垣間見た予知について語り始めた。
「ジョルディを狙っているのは、EXE-13 キリング・エグゼス。またの名を、キリングMk13と呼ばれているダモクレスだ。レプリカントをダモクレス達の反乱分子と見做し、抹殺を企んでいるようなんだが……」
 幸いにして、敵は街中で大量虐殺を行うような性格はしていない。しかし、代わりに狙撃を得意とし、狙った獲物は決して逃さない非情なるスナイパーとしての側面を持つ。そして、今回はジョルディに狙いを定め、その命を奪うべく行動を開始したようだ。
「今から向かえば、ジョルディが敵と本格的な戦闘に入る直前に、介入することも可能だぜ。場所は、埠頭の倉庫街にある、今は使われなくなって久しい倉庫の中だ。敵はキリング・エグゼスが1体のみだが……数の差があるからって、油断するなよ? ダモクレスならではの高速演算から繰り出される狙撃は、一切の無駄がない正確無比な代物だからな」
 敵は遠距離狙撃用のライフルの他に、ミサイルポッドや拳銃も武器とする。これらの武器で動きを封じ、最後にライフルの一撃で、正確に急所を貫いて倒すというのが得意技のようだ。
「レプリカントの抹殺指令……。それを任務として疑わないダモクレスを、これ以上野放しにするわけにはいかないぜ」
 それを抜きにしても、ここでジョルディを見捨てるわけにはいかない。恐るべき凶弾の射手から人々を、そして仲間を救って欲しい。
 最後に、それだけ言って、クロートは改めてケルベロス達に依頼した。


参加者
ジョルディ・クレイグ(黒影の重騎士・e00466)
リナリア・リーヴィス(クラウンウィッチ・e01958)
ユーリエル・レイマトゥス(知識求める無垢なるゼロ・e02403)
槙島・紫織(紫電の魔装機人・e02436)
レーン・レーン(蒼鱗水龍・e02990)
ティーシャ・マグノリア(殲滅の末妹・e05827)
マティアス・エルンスト(レプリフォース第二代団長・e18301)
神無月・佐祐理(機械鎧の半身・e35450)

■リプレイ

●均衡を崩す者
 人気の感じられない倉庫の中。キリング・エグゼスと対峙するジョルディ・クレイグ(黒影の重騎士・e00466)は、しかし一歩も動くことができないまま、相手の出方を窺っていた。
 敵の狙撃は百発百中。背中を向けることは勿論のこと、少しでも無駄な動きを見せたが最後、確実に急所を撃ち抜かれる。
(「これは迂闊に動けんな。だが、それは相手も同じこと、か……」)
 慎重に間合いを測りながら、ジョルディは冷静に相手の動きに目を凝らしていた。
 無駄な動きができないのは向こうも同じ。狙撃を外せば、その先に待っているのは手痛い反撃。それを知っているからこそ、圧倒的な力の差がありながら、敵は死角からこちらを狙って来たのだ。
 互いに睨み合ったまま、時間だけが過ぎて行く。1秒が1時間にも感じられてしまう程に、張り詰めた空気が漂う空間。だが、永遠に続くと思われた均衡は、突如として倉庫に響き渡る声によって破られた。
「おらぁー! うちで預かってた家出娘の旦那の親友の相棒くんを助けに来たぞ!」
 なんとも複雑な人間関係を叫びつつ、ミミックの椅子を蹴り飛ばしながら駆け付けたのはリナリア・リーヴィス(クラウンウィッチ・e01958)。見れば、他にもジョルディの仲間達が、次々と倉庫の入口から彼の下へと雪崩れ込んで来た。
「悪いが……まだ死ぬ訳にはいかない!」
 好機とばかりに、盾を構えつつも仲間達の場所まで下がるジョルディ。これで戦力差は互角以上。しかし、圧倒的な数の差を前にしても、キリング・エグゼスもまた退き下がる様子を見せなかった。
「抹殺対象、複数を確認。……殲滅を続行する」
 ジョルディ以外にも多数のレプリカント達が集まったことで、キリング・エグゼスは彼らの全てを標的と認識したようだ。
「エグゼフォース……。噂だけは聞いていたけれど、実在したなんて」
 レプリカントは全て抹殺。そんな敵を目の前にして、槙島・紫織(紫電の魔装機人・e02436)は思わず杖を握る手に力を込めた。
 噂には聞いていたが、まさか本当にこのようなダモクレスが存在していたとは。だが、だからこそ、放ってはおけない。ここでキリング・エグゼスを見逃したら最後、今度は何の力も持たない一般人としてのレプリカント達が、抹殺の標的にされるかもしれないのだから。
「レプリカントは、ダモクレス達の反乱分子……ですって?」
「わたくし達はダモクレスの不良品などではありません。貴方を倒して、それを証明します!」
 同じ機械の身体を持つ者として、レプリカントの抹殺などさせるものか。神無月・佐祐理(機械鎧の半身・e35450)とレーン・レーン(蒼鱗水龍・e02990)もまた武器を構えて立ちはだかったが、それでも敵は怯む様子さえ見せない。
「抹殺対象、7と確認。任務を続行する……」
 心を持たない、ダモクレスならではの反応と言ったところか。ならば、こちらも遠慮は不要だ。下手に情けなど見せたら最後、敵は確実にそこへ付け入ってくるであろうから。
「そちらが狙撃なら、私は制圧砲撃戦を見せてやる」
「戦闘準備完了。目標、敵ダモクレス『EXE-13』。……攻撃を開始します」
 散開するティーシャ・マグノリア(殲滅の末妹・e05827)とユーリエル・レイマトゥス(知識求める無垢なるゼロ・e02403)の二人。標的を散らばせるようにして敵の周囲を取り囲んだところで、マティアス・エルンスト(レプリフォース第二代団長・e18301)もまた、巨大な鉄塊剣を振り被り。
「攻撃フェーズ移行……。作戦を開始する」
 今、この瞬間だけは、非情なる戦闘機械へと戻ろう。
 漆黒の狙撃兵を前にしたケルベロス達の間には、再び緊迫した空気が漂い始めていた。

●不吉のナンバー
 倉庫の中に響き渡る銃声。木箱が砕け、跳弾が鉄骨に火花を散らす。
 EXE-13 キリング・エグゼス。そのナンバーが示すは不吉の印。その翡翠色の瞳に睨まれたら最後、逃れられる者は存在しない。
「標的多数、手数での形勢不利と判断……。牽制行動に移行する……」
 左手で拳銃を引き抜き、キリング・エグゼスは流れるようにして動きながらも、多数の銃弾をばら撒いて来た。だが、一見して闇雲に撃っているようにも思える銃弾の雨は、しかし確実にケルベロス達の足を捉え、その機動力を奪って行く。
「フォローはこちらに任せてください」
「了解した。防御支援機を展開は、こちらで行う」
 雷の障壁を繰り出す紫織の言葉に、マティアスが静かに頷きながら、防御用のドローンを展開した。
 少しでも足を止めれば、狙われるのは必至。だからこそ、些細な怪我でも甘く見るのは危険だ。ダメージが少ないと侮れば、やがて積み重なった機動力の低下は、そのまま急所を撃たれる確率を上げることに繋がってしまうから。
「Das Adlerauge!!」
 敵の猛攻が止んだ瞬間を狙い、佐祐理が右の瞳から高出力のレーザーを発射する。しかし、キリング・エグゼスとて腐ってもスナイパーのダモクレス。何ら取り乱すことなくライフルを構え、その照準を佐祐理の瞳に合わせ。
「そんな! 外れ……いいえ、外されたのですか!?」
 あまりのことに、佐祐理は思わず自分の目を疑わずにはいられなかった。
 飛来する光線に合わせてライフル弾を放ち、弾丸を直撃させて相殺する。およそ、人間には真似のできない恐るべき技。刹那の瞬きの間に放たれる光でさえも、この狙撃手にとっては止まって見えるとでも言うのだろうか。
 こいつは強い。誰が口にするともなく、改めて確信するケルベロス達。しかし、それでも正面の相手に集中し過ぎれば、そこに隙が生まれるのは道理。佐祐理の攻撃を迎え撃ったキリング・エグゼスではあったものの、それは上方への意識を一時だけ散漫にしてしまっていた。
「弾幕の穴……見切りました」
 倉庫の床を蹴り高々と飛翔したユーリエルの脚が、真っ直ぐに敵を狙って放たれる。それに合わせるようにして、ティーシャもまた紅蓮の蹴りを繰り出して炎を呼び。
「こいつもオマケだ。持って行け!」
 足先が弧を描いて振るわれると同時に、三日月状の炎が宙を舞う。それがユーリエルの脚に重なったところで、キリング・エグゼスの胸元へ容赦なく炸裂し。
「余所見はいけませんわ。まだ、終わりではありませんわよ」
 側方から一気に肉薄し、レーンの腕が擦れ違い様に敵の装甲を深々と抉る。間合いさえ詰められれば、こちらのものだ。
「椅子、アナタも行って来なさい」
 自らは癒しの風を繰り出しつつも、リナリアが駄目押しで椅子を敵の方へとブン投げた。命中する瞬間、八つ当たり気味に口を開いた椅子が、思い切り敵の頭に噛み付いていたような気もするが、それはそれ。
「あくまで距離を取る、か……ならば!」
 狙撃の間合いを崩さないキリング・エグゼス目掛け、ジョルディのアームドフォートが火を噴いた。だが、その砲弾が着弾した瞬間、煙を突き破って現れたのは、多数のミサイルによる反撃だった。
「やらせませんわ!」
 すかさず、自らの身を盾にしてレーンが間に入ったが、それだけで防ぎきれるものではない。脇をすり抜けたミサイルは、前衛で戦う者達には目もくれず、そのまま後方に着弾し。
「くっ……! まさか、先に後ろを狙ってくるとはな……」
 直撃を受け、ティーシャが肩を抑えつつも立ち上がった。なるほど、確かに後衛の支援要因から潰すのは、理に適った戦い方とも言えるだろう。
「戦闘レベル……ターゲット捕捉……。抹殺任務を続行する……」
 ライフルを構え、迫り来る漆黒のスナイパー。粛々と命を狩る戦い方は、正に黄泉路へと誘う殺戮兵器の名に相応しかった。

●不完全なる完全
 徹底的に獲物の逃げ場を奪い、着実に仕留める魔弾の射手。だが、そんなキリング・エグゼスであっても、やはり穴は存在する。
 二重、三重に張り巡らせた防御の布陣。雷の障壁や無数のドローンを破壊する術を持たないことは、ケルベロス達にとっても幸いだった。
「目標の弱体化、失敗……。これより、最終フェイズに強制移行する……」
 もはや、これ以上の小細工は無意味であると悟ったのだろう。ライフルを構え、狙撃の体勢に入るキリング・エグゼス。その瞳の先に映るのが誰であれ、狙われたら最後、逃れられないのは同じこと。
 空気を切り裂き、発射される一発の銃弾。それが狙うは、獲物の頭部か心臓か。今までになく強烈な一撃がケルベロス達に迫るが、果たしてそれを受けたのは、他でもない自らを盾にしたマティアスだった。
「攻撃軌道……計算完了」
 間一髪のところで銃弾の軌道を先読みし、その斜線上に身を躍らせる。もっとも、その代償は決して安くはなく、弾は勢いを何ら殺さないまま、マティアスの胸板を貫いた。
「……っ!? マティアスさん!」
 火花と共に鮮血が爆ぜ、思わず紫織が駆け寄った。一撃で急所を射抜かれたことで、嫌な予感が紫織の頭を微かに掠めたが。
「被ダメージ想定内。作戦行動に支障なし。戦闘を続行する……」
 胸元を押さえながらも、何ら表情を変えずにマティアスは立ち上がる。傷は決して浅くなかったが、それは敵も同じこと。搦め手を用いず、必殺の狙撃で仕留めに掛かってくるのであれば、こちらも一気呵成に攻め立てて勝負に出るのみ。
「マティアスさんのことは、私に任せてください。……悪性異常除去波動構築……完了。『手当て』を開始します!」
 未だ身体の中に残る銃弾を摘出しつつ、紫織は他の仲間達に向かって叫んだ。
 単に戦いに勝つだけならば、ここで彼女もまた攻撃に加わるべきだったのかもしれない。しかし、それができないのが、他でもない彼女が人間である証。心を持たないダモクレスと、心を持ったレプリカントの決定的な違いでもあり。
「なるほど……。感情を殺すことが出来れば、確かに戦うだけならそっちの方が楽でしょうが、それは私の美学に反しますね!」
 この世界で生き、地球にて定命の者となることを選んだ仲間を反乱分子呼ばわりするのは許せない。佐祐理のチェーンソー剣が音を立てて漆黒の装甲に食い込めば、レーンもまた装甲の亀裂にナイフを深々と刺し込んで抉り。
「確かに、わたくし達は完璧な存在ではありません。貴方のように、常に100%の何かを行えるわけでもありません。ですが……」
「それこそが、我々の『人』である部分だ! 心を得たこと、私は決して後悔などしてはいない!」
 続けて放たれるティーシャの中和光線。相殺を狙うキリング・エグゼスだったが、そう何度も上手く行くはずもなく。
「まだです! どれほど正確な狙いでも、間合いさえ詰めれば……」
「相対速度、距離算出。これより、接近戦を仕掛ける」
 ユーリエルの繰り出す鋼の拳と、燃えながら横薙ぎに払われるマティアスの鉄塊剣。それらはキリング・エグゼスを高々と倉庫の天井までカチ上げ、備え付けられていた照明に直撃させ。
「ほら椅子、力を貸せ。ここからじゃ、あいつに届かないからね」
 自らの相棒を踏み台にしつつ、リナリアが酒瓶片手に跳び上がる。そのまま落下してくる敵目掛け、豪快に振り下ろして脳天をカチ割った。
「個の弱さを団結する事で乗り越える……。それが心を持つ者の強さです!」
 床に叩きつけられたキリング・エグゼスへ、ジョルディは改めて諭すように告げる。
 人は、独りでは生きて行けない。個体としての強さで見れば、デウスエクスには決して敵わない。
 だが、だからこそどんな困難であっても、互いの力を合わせて乗り越えようとするのだと。勝率など、所詮は単なる目安でしかない。気合、勇気、友情、愛……様々な『感情』と呼ばれるものを心に抱き、共有することで、限界以上の力を発揮するのが人間なのだと。
「貴方も心を得れば……理解できる筈なのに……」
「……っ! 理解不能! 形のないものから力を得るなど……理解不能!」
 もっとも、そんなジョルディの言葉に、今さら耳を貸すキリング・エグゼスでもなかった。
 もう、これ以上の問答は無意味だろう。意を決し、ジョルディは自らの顔を形成する地獄の力を腕に流し込むと、そのまま燃え盛る刃へと変え。
「地獄纏いて飛べよ我が腕! 我が刃! 受けよ地獄の鉄・斧・破・断!」
 地獄の炎を推進力に、両脇から刃を生やした腕が飛ぶ。対するキリング・エグゼスもライフル銃で応戦するが、そんなもので必殺の拳は止められない。
「アァァァァァックスゥゥゥ……マグナァァァァァム!!!」
 銃弾を弾き飛ばし、飛翔する拳が漆黒の装甲を切り裂き、貫く。中枢を破壊されたキリング・エグゼスは静かに倒れて力尽きると、そのまま二度と再び立ち上がることはしなかった。

●心の絆
 戦いの終わった倉庫には、再び静寂が戻っていた。
「いやぁ、危なかったね。ジョルディくんに何かあったら律くんに怒られるからね」
 相棒の上に尻を乗せたまま、いつもの調子でリナリアが言った。その隣ではレーンと佐祐理が、互いに勝利の喜びを噛み締めており。
「やりましたわね」
「はい。私達の……心を持った者の勝利です」
 レプリカントは不良品でもなければ反乱分子でもない。それを証明できたことが、何よりも喜ばしいことであったと。
「うぅ~……心臓が止まるかと思いましたよぉ……」
 その一方、紫織は半分泣きながら、改めてマティアスに手当を施していた。
 当たり所が悪ければ、そのまま死んでいたかもしれない一撃。だが、それは他のメンバーも同じこと。まずは全員が生きて戻れたことを喜ぶべきだと、マティアスは優しく紫織へと微笑み掛け。
「皆、無事に揃っているな。良かった」
 周りを見回し安堵の表情を浮かべて告げるが、同時に新たな襲撃への警戒も怠らないように釘を刺す。そんな中、敵の残骸から武器と思しき物を回収しているジョルディを見て、思わずユーリエルが声を掛けたが。
「あの……もし、よろしければ、武器チップを……」
「今は止めておけ。ジョルディにも、何か思うところがあるだろうからな」
 全てを言い終わる前に、ティーシャが制した。あのダモクレスは、ジョルディとは浅からぬ因縁のある相手。その相手の武器を回収するということは、単なる戦闘力強化を目的としたものではないだろうと。
「狙撃手が一人で来るとは……。結局俺以上の壁役は……見付からなかったようですね」
 どこか遠い目をしながら、キリング・エグゼスを抱えてジョルディが呟く。だが、それでも過去を振り返りはしない。
「EXE……知らない部隊ですが……どんな敵が来ようとも、貴方に教わった事を忘れずに戦い抜きます」
 心を得たことで悠久の時を生きられなくなったが、後悔などはしていなかった。代わりに自分は最高の、共に生きる仲間を見つけたのだからと。

作者:雷紋寺音弥 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2018年3月14日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 3/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 5
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