鳴き踊るは猫拳! それは可愛く愛らしい狩猟者!

作者:天木一

「にゃにゃー!」
 少年の声が放課後の学校の裏山に響く。見れば寒空の中、体操服姿で少年が元気に駆け回っていた。猫の動きを模倣してキョロキョロと周囲を見たり、そろりとした動きがら俊敏にダッシュしたりと、猫のコロコロ変わる性格をよく反映していた。
「ふぅー! うみゃみゃー!」
 そして威嚇するような声から勢いよく飛び掛かり、仮想の敵に向かって引っ掻くように爪を振るった。
「にゃにゃにゃにゃにゃー!」
 連続してがむしゃらに爪を振り回すと、やがて息切れして大きく肩を上下させて腕を下す。
「はー、はー、つっかれたー! 猫ってなんであんな元気なんだろ?」
 これだけ動いただけでもこんなに息が上がるのにと、少年はこそっとこちらを見ていた猫の方へと視線を向ける。猫は視線が合うと、ぷいっと素知らぬ顔をしてしまった。
「でもそれだけ猫が強いってことだよな! 自分の身長の何倍もジャンプするし、動いたらぜんぜん捕まんないし!」
 以前猫を追いかけた時の事を思い出し、その運動能力に舌を巻く。
「だからこの猫拳を身に着けて、超スゲー格闘家になってやるんだ!」
 元気に少年は空を引っ掻くそぶりをする。そこへ幻武極が突然姿を現わした。
「お前の、最高の『武術』を見せてみな!」
 その言葉に操られ、少年は喉を鳴らして襲い掛かる。
「ふー! にゃー!」
 爪で顔を引っ掻き、四つん這いになって後ろ脚で蹴りつけ、猫パンチを叩き込む。だがどれもかすり傷一つ負わす事は出来ない。
「僕のモザイクは晴れなかったけど、お前の武術はそれはそれで素晴らしかったよ」
 攻撃が一通り終わったところで、幻武極は手にした鍵を少年の胸に突き刺した。
「ふあ……?」
 少年は意識を失い眠りに就く。その横には少年と同じ顔、だが服装はまるで違い、猫のように肉球のついた手袋と靴、そしてふかふかの服に、猫耳をつけたドリームイーターが現れる。
「お前の武術を見せ付けてきなよ」
 幻武極がそう命じると、ドリームイーターは猫パンチを木に叩き込む。すると木が砕け倒れる。それに驚いた猫がにゃっと逃げて行った。
「にゃにゃー! 猫拳の進む道を妨げる事は誰にも出来ないニャ!」
 高々と跳躍したドリームイーターは木の枝に乗り、そのまま大きくジャンプして学校の方へと向かった。

「なんだか可愛らしい猫の拳法を使うドリームイーターが現れるみたいだよ!」
 山之内・涼子(おにぎり拳士・e02918)が事件の発生をケルベロス達に告げた。
「幻武極が自己流武術の特訓中の少年を襲い、欠損している『武術』を奪いモザイクを晴らそうとするようです」
 前に出たセリカ・リュミエール(シャドウエルフのヘリオライダー・en0002)が説明を引き継ぐ。
「少年から奪った武術でモザイクが晴れる事はありませんが、生み出した武術家ドリームイーターを暴れさせようとしています」
 武術家ドリームイーターは少年の理想の格闘家となっている。まるで猫を人にしたような俊敏な動きはケルベロスにしか対応できない。
「今なら人々が襲われる前に現場に到着し、敵を迎え撃つことができます」
 予知をしている分イニシアチブはこちらにある。
「敵が現れるのは神奈川県の小学校の裏山。まずは手始めに放課後の学校に残った子供達を襲おうとしています。裏山から続く道で待ち構え、敵を迎撃し子供達に近づけないようにしてください」
 到着時学校に残った生徒の避難は始まっている。敵の注意を引き付ければ巻き込む心配をしなくていいだろう。
「武術家ドリームイーターは男の子の姿をして、猫を思わせる服装をしているようです。その動きは実物の猫のように素早く、爪や肉球での近接を得意としているようです」
 猫の身軽さと気ままさによる読みにくい動きをするようだ。油断すれば痛い目に遭うだろう。
「猫の拳法ですか、見てみたい気もしますが、まずは一般の方に被害が出ないようにしなくてはいけません。見せびらかしたいと思っている敵の相手をし、人々と眠った少年を助けてあげてください」
 よろしくお願いしますと一礼したセリカはヘリオンの準備に行く。
「猫拳か……想像すると何だか可愛いものしか思い浮かばないね! どんな武術なのか気になるし、行って確かめてみようよ!」
 興味津々に目を輝かす涼子の言葉に頷き、ケルベロス達もいつもより足早に準備に取り掛かった。


参加者
朝倉・ほのか(フォーリングレイン・e01107)
白雪・まゆ(月のように太陽のように・e01987)
三村・美衣子(美少女探偵・e02815)
山之内・涼子(おにぎり拳士・e02918)
瀬戸口・灰(忘れじの・e04992)
ファルゼン・ヴァルキュリア(輝盾のビトレイアー・e24308)
エリカ・アルゲントゥム(風に舞う白銀の花・e24421)
斑鳩・眠兎(ヴァルキュリアのブラックウィザード・e45153)

■リプレイ

●学校の裏山
 放課後人の減った学校から裏山へと続く道でケルベロス達が立ち止まる。
「可愛い猫拳士ってちょっと気になるかも。でも、これ以上被害を出さないためにもがんばらないと」
 少し興味を覚えながらも、山之内・涼子(おにぎり拳士・e02918)は戦いの手は抜かないと気合を入れる。
「猫は好きです。可愛いですし、飄々としているのも良いですね。そんな猫にインスピレーションを得た拳法、とても気になります」
 どんな拳法なのだろうかと、朝倉・ほのか(フォーリングレイン・e01107)は猫のように俊敏な動きを想像しながらまたたびを撒く。
「猫を人にしたような……となりますと、もしかして、猫耳、肉球、三毛のボディペイント、なフルコースなのでしょうか!?」
 その姿を思い描いた白雪・まゆ(月のように太陽のように・e01987)は、楽しそうに緩む頬を慌てて引き締め、ぐっと我慢して戦いに集中しようと、チーズと鰹節を用意しておく。
「可愛い男の子が猫の格好とか、ちょっとそそるじゃない……っと、可愛いからって油断は出来ないわね」
 その姿を想像して頬を緩めていた三村・美衣子(美少女探偵・e02815)は、頭を振って雑念を払う。
「猫か……」
 ファルゼン・ヴァルキュリア(輝盾のビトレイアー・e24308)は何者かと木の影からこちらを覗く野良猫と目が合う。
「猫の動きを真似するなんてよく思いついたものだね。……だから悪用されるのは許せない」
 人の努力を利用する敵のやり方にエリカ・アルゲントゥム(風に舞う白銀の花・e24421)は怒りを覚える。
「ふふ、依頼をこなせば沢山お金が貰えるのよね。どれくらいかしら? 両手一杯のチョコが買えると嬉しいわね」
 甘いチョコの香りを思い出しながら、斑鳩・眠兎(ヴァルキュリアのブラックウィザード・e45153)は微笑む。
「猫の気を引くもので注意を引き付けて戦いを挑もう。というわけで頼んだぞ、夜朱」
 瀬戸口・灰(忘れじの・e04992)が隣に浮かぶウイングキャットの夜朱に視線を向けると、任せてとそのふくよかなお腹を反らした。そしてにゃあっ!と夜朱が大きな声で鳴き、灰は笛を吹いて音色を響かせる。
「にゃにゃ!? いい音といい匂いがするにゃ!」
 そこへ誘われるように現れたのは、10才くらいの少年。その姿はまるで猫のように肉球のついた手袋と靴に、三毛猫柄のふかふかの服。そして頭には猫耳までついていた。その少年こそターゲットであるドリームイーターの姿だった。

●猫拳士
「必殺! 見よう見まね蛇拳! なのです!」
 猫拳に対抗してまゆは蛇拳の某香港映画で見た手の形だけ真似をしてみせる。
「にゃ!! 蛇は危険ニャ!」
 まだ声変わりしていない少年の高い声に警戒の色が混じり毛を逆立てる。
「戦いを始めるにゃん」
 猫耳パーカーに猫グローブ着用でにゃんだふるモードとなったほのかは、黒い巨大なハンマーを砲に変えて砲撃を行う。放たれた砲弾が敵の足元で爆発し体を吹き飛ばした。
「にゃにゃん!?」
 少年は空中で回転して着地した。その正面には涼子が立っている。
「着ぐるみ少年……可愛い」
 見惚れては駄目だと涼子は意識を切り替え前に出る。
「さあ、かかってきなよ!」
 そう声を出しながら、ガントレットを両腕に嵌めて殴り掛かる。その拳の上に跳躍した敵が軽やかに乗る。
「そんなのろまな拳じゃ猫拳士は捉えられないニャ!」
 そして肉球をその顔面に叩きつけようとする。
「話し通り随分と素早いわね。でもこちらには秘策があるわ……それはこの『猫じゃらし』よ!! これがあれば、どんな猫でも動きがとまるってもんだわ!」
 美衣子が取り出した猫じゃらしを敵の視界に入るようにふりふりさせる。その隣でエリカも猫じゃらしをふーりふりと振った。
「さぁ、可愛い猫ちゃん、じゃれなさい……」
「……にゃーーー♪」
 すると肉球を下げた猫拳士が声をかける美衣子に向かって飛びつき、猫のようの手を伸ばして猫じゃらしと戯れる。
「気を引いている間に、不意を突かせてもらうわね」
 抜いた刀に無数の霊体を憑依させた眠兎は、背後から袈裟斬りに振るい背中を斬り裂いて傷口から霊が汚染する。
「猫拳使いの少年、その力を思う存分見せてもらうぞ」
 灰は鈍く光る黒色歯車から粒子を放ち、仲間達の超感覚を目覚めさせる。
「回復はわたしに任せて、皆は攻撃に専念を」
 エリカもオウガ粒子を放出して更に広範囲に仲間達の覚醒を促す。
「よくもやってくれたニャ!」
 猫拳士が爪を伸ばして眠兎に飛び掛かり刃物のような鋭い爪で引っ掻く。
「私が先に相手をしよう」
 そこへ割り込んだファルゼンは、格闘に臨むように構えて腕を切り裂かれながら、口から出る煙を吹きかけ、相手の意識を奪うような強烈な眠気を与える。その隙にビハインドのヘザーは周囲の石を弾丸のように飛ばして敵にぶつけた。
「威力は蛇よりありますのですよっ!」
 自分の身長よりも大きなバトルハンマーを担いでまゆはダッシュし、一回転して遠心力を乗せると上から叩きつける。
「のろまニャ!」
 敵は咄嗟に身を捻って躱す、だがハンマーが地面に叩きつけられ、地面が放射状に凹み衝撃波で敵の体は薙ぎ倒された。
「頑張りましょう」
 ほのかは灰に向けてぐっと握りこぶしを見せると灰も拳を向けてきた。ほのかは先に駆け出して跳躍すると飛び蹴りを浴びせる。敵は腕で受け止めるが勢いに負けて吹き飛ぶ。
「にゃっと! 休む間もないニャ!」
 だがくるりと空中で回転すると猫のようにしゅたっと着地した。
「猫真似は可愛らしいが、ドリームイーター相手に油断はできんな」
 動物好きの灰は敵の動きに興味を引かれながらも、黒鉄で腕を覆い拳を敵の顔に打ち込んだ。
「にゃにゃー!」
 反撃の肉球パンチをボクスドラゴンのフレイヤはブレスを吐きながら割り込み体で受け止める。
「あぁ、可愛い……癒されるわねぇ……でも眺めてばかりいる訳にはいかないのよね」
 仕方ないと美衣子は踏み込むとガントレットを嵌めた腕で胸を殴りつけた。衝撃に敵の体が仰け反る。
「動きが速いなら、足を削って行かないとねー」
 眠兎は刀に呪詛を宿し斬り上げて敵の脚を斬りつける。だが刃が深く入る前に猫拳士は跳躍し頭上を取った。
「猫だからって油断は禁物だね!」
 敵よりも高く跳び上がった涼子は蹴りを放ち、敵の背中を捉えて地面に叩きつける。
「うにゃ!」
 ゴロリと転がって起き上がった猫拳士は涼子の着地の隙を狙い飛び掛かる。
「猫らしい動きだね。離れて見ていれば動きがよく分かるよ」
 その前にエリカは光の盾を生み出し、敵の爪攻撃の勢いを弱らせ爪は皮膚を裂く程度で止まるが、何度も引っ掻きが続き盾が削れて消えた。
「猫の相手にはこれが最適……」
 ファルゼンは密迹金剛を変化させたネズミを操り地面を駆けさせると、敵は攻撃の手を止めて本能的にそれを追い駆ける。
「本物の猫のような動きですねっ」
 敵の動きを観察するまゆが視線を向けてグラビティを込めると、敵の眼前で爆発が起こり動きを止めさせた。
「動きを予測して放てば……!」
 淡く光る銀色の西洋弓を構えたエリカは、エネルギーの矢を放ち敵の精神を射抜いて心惑わす。
「こっちよ猫ちゃん、次はボール遊びをするわよ」
 美衣子は突進して体をボールのように回転させて敵に衝突し撥ね飛ばした。
「この距離なら避けられないよね」
 着地したところへ、懐に跳び込んだ眠兎は拳を放ち、敵の胸を思い切り打ち抜いた。だが猫はそのまま後方へ宙返りして足の肉球を放つ。
「猫のように軽やかですね。でも、まがいものの技は通用しません」
 先読みしたようにほのかは空中に砲撃を行い、爆発の衝撃で敵の体をよろめかせ攻撃をさせない。
「これでもくらうニャ!」
 猫拳士は腕をふりふりと振って、まるで猫じゃらしのように視線を集め、ゆらゆらと心を惑わし飛び掛かりたいと思わせる。
「猫が人間に猫じゃらしか、使う相手を間違っているな」
 すぐに灰は戦場を駆け抜け、オーラの花びらが舞い散り、仲間達の仲間の心を正常に戻してゆく。夜朱も羽ばたいて清らかな風でその手伝いをした。
「掛かってくるといい、拳で勝負」
「にゃ!!」
 堂々とファルゼンが敵に立ち向かう。だが敵が間合に入った瞬間、またも煙を吐いて眠りに誘う。猫拳士は眠ってしまう前にその脚力で後ろに大きく飛び退く。
「スピードならこっちも負けないよ!」
 ガントレットから放たれるジェットエンジンで涼子は一気に間合いを詰め、重い拳の一撃を胸に叩き込んで敵を地面に転がした。

●猫の如く
「にゃかにゃかやるニャ! だがここからが本番ニャ! うみゃみゃーー!」
 素早く動き回る猫拳士は死角から涼子に襲い掛かり背中と腕を爪で切り裂き、そのまま駆け抜けて次の獲物を探す。
「追い駆けっこなら負けませんのです!」
 ハンマーのロケット噴射で飛ぶように加速したまゆは、その勢いのままハンマーを振り抜き敵の脇腹を打ち抜き木に叩きつけた。
「烈火の如く」
 赤いインラインスケートで加速したほのかは、燃え上がる蹴りを放って木に押し付けその衝撃で木が折れずずんと地面に倒れる。
「にゃーー!」
 バネ仕掛けのように飛び上がった猫拳士はほのかに肉球を振り下ろす。それを横からフレイヤが体当たりして敵の攻撃を逸らす。
「もっと遊びましょう、猫ならこれくらい躱せるわよね?」
 着地したところへ美衣子が拳を打ち込むが、敵はすぐに跳躍して上から爪で引っ掻く。美衣子は咄嗟に屈んでその一撃を躱した。
「猫の素早さ、気まぐれで軽快な動きはよく知っているんだ。そうそう遅れは取らないぜ」
 それを予測していたように灰は影の弾丸を撃ち出し、空中で太腿に命中し傷口から影が黒く侵食していく。
「猫そっくりになっているなら、弱点も猫と同じはず!」
 敵の前に出た涼子は、無造作に両手を相手に向けて強く掌を合わせ叩き猫騙しを行う。
「にゃ!?」
 すると敵はビクッと身を怯ませた。そこへ涼子は拳を腹に叩き込んだ。続いてヘザーは敵を金縛りに掛け、僅かな間動きを止める。
「敵も傷ついてる。動きが鈍っている間に倒してしまうよ」
 その間にエリカはオウガ粒子で仲間達を包み込み、体の傷を癒していく。
「好奇心の強い猫はこの罠に抗えない」
 ファルゼンは鼠を小鳥へと姿を変えさせ、敵の視界でうろちょろさせて気を引く。じっと耐えていた猫拳士はもう我慢できないと飛び掛かった。
「猫の本能も真似してるのね、隙だらけよ」
 そこへ眠兎は刀を横一閃に振るい胴を斬りつけると、傷つけると同時に魂を喰らい己が傷を癒す。
「猫拳は最強の拳法ニャ! 負けるはずがないニャ!」
 よろめきながらも猫拳士は眠兎の顔に肉球を叩き込む。ぷにっとした感触が伝わり、その気持ち良さに動きたくなくなる。それに対して夜朱は癒しの風を送って対抗する。
「一撃必砕! 全・力・全・開っ!」
 全力ダッシュで近づいたまゆは、ぐるりと回転してハンマーを振り回して打ち抜き、敵の体をボールのように叩き飛ばした。
「空中ならすばしっこくても動き回れないわよねっ!」
 着地地点に先回りした美衣子は、下から飛び上がるようにアッパーを叩き込み、敵を打ち上げると更に拳で追撃して空中コンボを決める。
「そろそろ幕引きですにゃん」
 ほのか祈るように古代語の詠唱を行う。すると無数の流星の如き光線が敵の『罪』を撃ち抜き、バランスを崩して地面に叩き落とす。だが敵は何とか四つん這いに着地し、振り返って後ろに移動しようとする。
「猫そのままの動きを取り入れたのがお前の敗因だ!」
 猫の動きはよく知っていると灰は背後から突っ込み、真っ直ぐに黒鉄の拳を打ち出し顔を殴りつけた。
「うみゃー!」
 お返しにと猫拳士は身を低くして足に力を溜める。
「また拳で勝負しようか」
 その前に立ち塞がったファルゼンはまた格闘の構えを取る。
「にゃにゃ!!」
 すると警戒した敵は息を止め猫のように身を屈めて突っ込んで来る。するとファルゼンは手足に炎を纏わせ、敵を蹴り上げて拳を腹に打ち込んだ。
「まだニャ!」
 後ろに引かずに猫拳士が弾丸のように駆け出す。だがその動きが前から吹く突風によって止められる。
「南風よ、吹き荒れて嵐をこの場に誘え!」
 エリカは風を起こして敵に放ち、その一陣の風が嵐を呼び強風が吹き荒れ敵の足を完全に止めていた。
「個で強くとも勝てない、戦いは数なのよ」
 続いて眠兎は刀を振り下ろし、右肩から綺麗な切り口で胸まで刃を走らせた。
「ニャ―――!!!」
 毛を逆立てた猫拳士は眠兎を蹴り飛ばして刀を止め、大きく跳躍してケルベロスとの間合いを空ける。
「どれだけ素早くても着地を狙われれば避けられない、地摺り焔鮫!」
 離れた位置から涼子が回し蹴りを放つと、炎のグラビティが地を這う鮫の如く飛び出し敵の着地を狙い体を噛み砕いた。下半身を失い、ドリームイーターは幻のように消滅した。

●猫は可愛い
「うーん、あれ? ボク修行をしてて……」
 目覚めた少年が周囲を見渡しケルベロス達に気付く。
「意識が戻ったか、怪我はないようだな」
 ファルゼンが目覚めた少年に尋ねる。そして起きた事件の簡単な説明をした。
「うわー! そうだったんだ! ……それで猫拳士は強かった?」
 気になると少年は目を輝かせて感想を聞く。
「猫の拳法なかなか強かったよ。よく一人で考えたものだね」
 戦った感想を言ってエリカが独学で思いついたのは凄いと褒める。
「猫拳ってどうして猫を選んだの?」
「猫は可愛いし、すっごい高く跳んだり動きが超速いからだよ!」
 涼子の質問に少年は笑顔で猫のここが凄いと語る。
「猫の動きで戦う発想は悪くないと思うぞ、もっと鍛えて強くなれよ」
 自分の力で強くなってほしいと願い、灰は少年を励ます。
「猫耳に肉球とか三毛のボディペイントなんて猫っぽい恰好をしたらもっと猫の気持ちが分かるかもです」
 ドリームイーターのしていた猫の恰好が可愛かったと思い返しながらまゆがアドバイスを送る。
「それは良いアイデアだわ! ぜひそうするべきよ!」
 その案を絶賛した美衣子は早速その姿を想像して興奮する。
「恰好から猫にするのはいいかも! は……くしゅっ」
 今さら薄着に気付いたように、体操服姿の少年が寒そうにクシャミをした。
「それでは風邪をひく前に帰るにゃん」
 気に入ったのか猫耳パーカーを揺らしながらほのかが振り返る。
「さあ、帰って美味しいお菓子を沢山食べましょう」
 にこやかに眠兎は笑みを浮かべ、少年を促して歩き出す。
「うん、おにーちゃんおねーちゃん。助けてくれてありがとー!」
 少年が笑顔で感謝の言葉を告げ、猫の話題でケルベロス達と盛り上がりながら学校へと戻っていく。そんな騒動など関係なく歩いてきた野良猫は顔を掻くとのんびり日向ぼっこを始めた。

作者:天木一 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2018年3月12日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 4
 あなたが購入した「複数ピンナップ(複数バトルピンナップ)」を、このシナリオの挿絵にして貰うよう、担当マスターに申請できます。
 シナリオの通常参加者は、掲載されている「自分の顔アイコン」を変更できます。