ミッション破壊作戦～潮風はオークの香

■リプレイ

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「普通のオークでさえ十分ノーサンキューな相手なのに、今回の敵はさらに厄介な相手みたいねー」
「そーだな」
　神宮・翼（聖翼光震・e15906）がお団子に纏めた藍色の髪を揺らして振り返ると、ファーヤーボルトの調子を確認していたロディ・マーシャル（ホットロッド・e09476）が、視線を落としたまま応じて銃を仕舞うと、上げた顔を翼に向ける。
「人が少ない離島だからと、後回しにはできないしね」
「……今回も裏たァやれやれだな。賭け事には攻め時ってのがあるが……さて、今回の攻撃重視は吉と出るか凶と出るか」
　その２人の後ろで、長いピンク色の髪を降下の邪魔にならない様に括りながらガートルード・コロネーション（コロネじゃないもん・e45615）が決意を口にし、親指で弾いたコインを確認した卜部・泰孝（ジャンクチップ・e27412）は、前回受けた傷の跡を撫で、次からはこっちでやる事にしようと、ポケットに入っている両表の記念硬貨をまさぐる。
「頼りにしている。だが無茶はするなよ」
　青紫の瞳を向けその泰孝の肩を叩いたナザク・ジェイド（美味しいは正義・e46641）が飛び出し、泰孝もナザクとガートルードに続いてヘリオンの縁を蹴る。
「良し！　勝利の法則は決まった！　待っていろよ外道禍津衆！」
　続いて、バトルガントレットの拳同士を打ち鳴らした鳴神・猛（バーニングブレイカー・e01245）が飛び出し、
「行くぞ、翼！」
「行こう、ロディくん！」
　翼とロディもそれに続く。

　瀬戸内海を吹く風が降下するケルベロス達の髪を棚引かせ、雲の隙間から覗く女木島に吸い込まれる様に落ちてゆく。
（「他のオークとは一線を画する様で侮れません。こいつらは必ずここで倒しましょう！」）
　白い鬣を風に靡かせ島の形を確認した結城・レオナルド（弱虫ヘラクレス・e00032）がその目を細め、そのレオナルドより遥かに高い位置を降下する夢幻・天々奈（封印されし禁忌の少女・e36912）が、
（「鬼が島に女神が降臨して人々が救われる……ふふ、悪くないわね。そうね、お義兄様が世界を統一した暁には、この島にアテネ様の像を建てる事にしましょう。それから……」）
　謎の妄想を脳内に展開しながら、その銀髪を風に踊らせていた。

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「女性を連れ去る時に、家族や恋人も一緒に連れ去り共に嬲り者にする外道――禍津衆。　奴らが新たな被害を生む前に魔空回廊を破壊し、オーク達にもここで引導を渡して見せます！」
　最初に『それ』に到達したのはレオナルド。
　グラディウスの切先が『それ』に触れると、『それ』の表面に亀裂が入る様に雷光が迸り、そこから漏れる様に雷撃が落ち白煙を上げる。
「女性を蹂躙し、魂をも侮辱する下劣な豚供を許しておくわけにはいかない。それにな……」
　続くナザクがそこまで言って大きく息を吸い込むと、
「可愛くもない美味しくもないそんな豚は地球上には要らん！ アグー豚とかイベリコ豚とか見習え！　無理ならさっさと帰れ！　地球の平和と私の胃袋の平和の為にな！」
　突き付けたグラディウスから、レオナルドの穿った雷筋をなぞる様に雷光が迸り、冷静さを取り戻したのかすまし顔で落ちてゆくナザク。
「オーク供は命を奪うだけでは飽き足らず、命を弄び尊厳を踏み躙る。人が少ない島だとしても、そこで暮らし生きる人々が危険に晒されることには変わらない。被害を拡大させないためにも、ここで食い止め殲滅する！」
　カッ！　と灰色の瞳を見開いたガートルードは、
「一兵たりと逃がさない」
　決意と共に『それ』にグラディウスを叩きつけ、
「……第二ラウンドの始まりだ。女攫って目の前で近しい相手を惨殺たぁ中々に良い趣味してんな、まったく反吐が出る……それに三度目は無ぇ、これで終わりにしてやんぜ！」
　空中で思いっきりえび反りになった泰孝が、思いっきりグラディウスを叩き付けると、先の３人より大きな雷鳴が轟き、雷撃が五月雨落ちて女木島に降り注ぐ。
「いくつもの営み、いくつもの明日、不安を抱えながらも未来を信じて暮らす人々の想いをぶち壊しにする奴は、相応の報いとしてブッ飛ばす！」
　燃える様に赤いポニーテールが、怒りを表す様に風に舞い、
「ドラゴンの奉仕種族というだけで個人的な因縁も充分！　喰らって砕けて灰燼となって消えろや──！」
　裂帛の気合いと共に猛のグラディウスが叩き付けられ、
「お前達の非道については聞いている」
「その非道にみんな不安に怯えている」
　ロディの言葉に並んで降下する翼が続け、
「だから、オレ達『あたし達』はここに来た」
　２人の声がシンクロする。
「お前達をここで食い止め」
「この島をあなた達の手から取り戻す為に！」
　そのまま言葉を紡ぐロディと翼。
「そして悲劇を終わらせ」
「みんなの安らぎを取り戻す為に！　あたし達のビートで、ハートもカラダもシビレさせてあげる！」
「オレ達の全力！　ぶちかます！」
　２人のグラディウスが同時に『それ』を叩き、迸る雷撃が島の各所を撃って更なる白煙が島を覆う中、
「その……そもそも……栄誉と言う……いくわよ！」
　かなり上の方から喋り続けていた天々奈が『それ』に到達した。
「このアテナ様だけほとんど聞き取れてないじゃないの！　……その怒りも全てこの一撃に込め、必殺！　グレートロイヤルアルティメットファナティックスーパーギガインフェニティエキセントリックスラッシュアルファーお徳用！」
　最後に突き入れた天々奈のグラディウスの切っ先から、皆の雷撃を追う様に雷光が奔り、女木島に居るであろうオーク達に降り注ぐ。
　だが『それ』は割れず広がる白煙をその縁の中へ押し留めたままだ。
　歯噛みして見上げた天々奈の姿は、同じ様に見上げたウイングキャットの『聖天使猫姫』と共に、仲間を追う形でその白煙の中へと消えていった。

●
　着地したケルベロス達は、それぞれの方法でグラディウスを固定すると、仲間との合流及び脱出に向かって動きは始める。
「どちらからもオーク供の悲鳴が聞こえます」
「ガートルードがそっちの方に降りたはずだ。先ずは合流するのがいいだろう」
　ナザクが翼を広げてレオナルドを追った為、幸先よく合流できた２人は、自分達に続いて降下してきたガートルードと合流すべく、白煙に視界を遮られる中、彼女が降りた方に向かって歩を進める。
「割れなかったのね。……オークの声も反響しているのかな？　ッ！」
　白煙に遮られた空を見上げたガートルードは、四方から木霊する様に聞こえる不快な悲鳴に対しそう呟き、小首を傾げて思案した瞬間、彼女の右後方で枝を踏み割る音。……に即座に反応してサンライズブリンガーを振るう。
「っとあぶねぇ。オレだ。ちゃんと確認してから得物を振るってくれ」
「ごめんなのよ。オークが相手なんでちょっと過剰反応してしまったの」
　的確に顔を狙って薙がれた刃を如意棒で受け止めたのは泰孝。その姿を認め慌てて謝るガートルードだったが、次の瞬間、地を這う様に伸びて来た触手が襲い掛かって来た。
「ブヒ……何度来ても同じだ禍津を崇めぬ者よ……」
「出たわね。外道の進軍はここで終わらせてあげる！」
　マインドシールドを展開して触手の突きを捌き、手首の動きだけでサンライズブリンガーを一回転させたガートルードが、雷撃に撃たれ血塗れとなった禍津衆に向き直り、
「抵抗しながら４時の方向に退くぜ。あっちにナザクらが居るはずだ」
　落ちた位置関係から、あちらもこっちに向かっている筈と算段を付けた泰孝が、向けた掌からドラゴンの幻影を出し、オークの声が聞こえた辺りの白煙を焼き払いながらガートルードと共に右後方へと下がる。
　３合ほど打ち合ったところで、
「元よりただで帰るつもりはありません。お前らはここで一匹でも多く倒していく」
　白煙を突き破って現れたレオナルドが、泰孝を触手で貫いたオークに突き掛り、
「こいつは一気に屠ってしまった方がいいだろう」
　ナザクの投じた殺神ウイルスのカプセルが爆ぜると、口元を綻ばせたガートルードと泰孝も攻勢に転じ、オークに攻撃を集中してゆく。
「ブ、ブヒィ……この傷がなければ……禍津よ……」
　禍津を崇め回復を図るオークに、晴れてきた白煙から人影。
「燃えろ拳よ！　僕の魂よりも熱く！」
　疾走する猛がその勢いを殺さず巨大化した赤い拳を叩き込む！
「ブヒ……」
　その一撃が致命傷となり崩れ落ちるオーク。
「助かりました。他の皆さんは……」
　礼を述べるレオナルドをチラ見した猛は、そのまま踵を返すと自身が来た方向に向かって拳を構える。その意味は直ぐにわかった。翼の奏でるメロディと剣戟の音が響き、
「ロディくんこっちっ！　もう、調子に乗らないでよ、ねっ！」
　飛び出してきた翼が仲間達の姿を認めて振り返り、思いっきり蹴り抜くと星型のオーラがオークに爆ぜ、続いて現れたロディが振り向き様、
「ぶちかます！」
　砲撃モードになったモビルディフェンサーの砲口を向けて放つ、マキシマグナムの一撃に空気が振るえ、白煙の向こうで悲鳴が上がり、オークの放つ不快な音が途絶える。
「前より脆いな」
「傷が癒えてないのだろう。泰孝も完治したとはいっても日が浅い、あまり無理をしない事だ」
　その手応えに前回も参加した泰孝が感想を洩らすと、少し真剣な目をしたナザクが応じる。
　確かに次々と現れる禍津衆の前に、這う這うの体で撤退する事になった前回に比べれば、敵のもろさを感じケルベロス達の間に少し余裕が感じられた。
　だがその余裕も束の間、木々を薙ぎ倒す様な音がだんだんと大きくなり、得物を構えて警戒するケルベロス達の前に、
「神に小突かれ只今参上！　真打は最後に登場よ！」
　と、聖天使猫姫を連れた天々奈の後ろから、
「禍津にその血で贖うブヒ……」
「オレの触手に貫かれるブヒ！」
　血塗れの姿で怒号を上げ、触手を振乱す２０体以上のオーク……禍津衆たち。真打とかではなくむしろ大迷惑である。
「ここは逃げの一手ですね」
「じゃあ鼻先に一撃を見舞って一気に引こうぜ！」
　レオナルドの言葉にロディが応じると、
「じゃあ最後の花火だよ！　これが浄化の炎だ、罪業ごと燃え尽きろ！」
「テメーを蝕む一本場。さあ、どこまで伸びるかね？」
　突き延ばされた触手を紙一重でかわしポニーテールを躍らせた猛が、地獄の炎を纏う烈煌拳を叩き付け、泰孝が投じた麻雀の百点棒がオークの膝に突き刺さってつんのめったところに、
「お前の悪事もここまでよ！　どこまでも追い詰める地の果て、天までも届け！　ワイルドアーム！」
　ガートルードの左手が飛び、そのオークの足を貫いて縫い止めると、膝から崩れたそのオークに、後続のオーク達が次々と躓き体勢を崩す。
「幸せな嘘を。偽りの愛を。有り触れた絶望を。───貴方に、幻の幸せに彩られた夢を」
　畳み掛ける様にナザクの飛ばす無数の花弁。其れに紛れて見舞われる斬撃に先頭のオークが絶命する。
「今此処に、封じられし闇の王、奉られし光の王、相容れぬ光と闇の牢獄に捕らわれし、禁忌の封印を解き放つわ！　このアテナ様に敵対したその身を、哀れみ慄き後悔することね！　さぁ封印より解き放たれし我が騎士よ、その得物を以ってイザ敵を貫きなさい！」
「ウニャ！」
　天々奈と聖天使猫姫も、体勢を立て直そうとするオークに向かって次々と攻撃を放ち、
「心静かに──恐怖よ、今だけは静まれ！」
　レオナルドの振るう稻羽白兎の刃が、怨嗟の瞳を向けるオークを斬り刻む。
「あなたにもあたしのビートを響かせて、ハートもカラダもシビレさせてあげる！」
　蠱惑的な笑みを浮かべた翼が喉を震わせ言の葉を紡ぐと、オーク達の体が雷に撃たれたかの如く震え、
「チャージＭＡＸ！　思いっきりぶちかます！」
　ロディのモビルディフェンサーの砲口に奔る赤い閃光。
　次の瞬間、満身創痍だった先頭のオークの体が爆ぜ、飛び散った肉片がオーク達に叩きつけられる。
「戦いとギャンブルはやめ時が肝要だよな？　一気に走れ！」
　泰孝の声に全員が全力で駆け、女木島から離脱した。
　白煙晴れつつある島影を見て思うは、次こそ割って見せるという想いであった。

作者：刑部	重傷：なし 死亡：なし 暴走：なし
種類： 公開：2018年3月16日 難度：普通 参加：8人 結果：成功！
得票：格好よかった 6／感動した 0／素敵だった 0／キャラが大事にされていた 0
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