スパの悪夢

作者:八幡

●スパ
 とある大型SPA施設。
 そのスパには女性専用のエリアもあり、幼女からお年を召した女性までがのびのびと温水に浸かったりマッサージ機的なもので身をほぐしたりクールダウンのために冷たく甘いものを飲んだりしていた。
 だが、そんなお楽しみ中の女性たちの真下……つまりは床から不意ににょろにょろしたものが生えてきて、
「げーはっはっは! オンナ! オンナァ!」
 にょろにょろしたものの先に在る本体、つまりはオークが下衆な笑いを上げながら20体ほど現れる。
 そしてオークたちは何が起きたのか理解できずに固まっている女性たちをにょろにょろした触手で捕まえ……ようやく事態を理解した女性たちは悲鳴を上げて逃げ始めた。
「キャッ……リリース!」
 だが、この状況で簡単に逃げ切れる訳もなく女性たちは次々とオークに捕まるが、触手で掴んだ女性が微妙に15歳以下に見えたのを確認したオークはそっとその子を置いて別の得物を探し出した。
 それからなんやかんやで若くて健康そうな女性を20名以上確保したオークたちは、
「サァ、野郎どもガンバってはんしょくはんしょくぅ」
 パンパンと手を叩くとハッスルハッスルしだしたのだった。

●悪夢
「大変だよ! 温泉施設にオークが現れるんだよ!」
 小金井・透子(シャドウエルフのヘリオライダー・en0227)はケルベロスたちの前に現れると、大変大変と主張する。
「オークたちは魔空回廊から現れて女の人たちを連れて行っちゃうんだよ!」
 そう言って、連れていかれた後どうなるかを想像したのか透子は身震いするように自分の体を抱える。
 連れていかれることが分かっているのならば、先に避難させておけば……と思うかもしれないが、
「オークは沢山女の人が居るところに出てくるから、先に避難してもらうと予知が変わっちゃうんだよ……だから、出て来たところを叩くしかないんだ」
 そんな目をしていたケルベロスの視線に気づいたのか、小さく身震いしながらも透子は答える。
「あと、戦いになった後に女の人が残っていたら、オークがその女の人にいたずらしようとするかもしれないから、オークが出てきた後に早く非難させてあげてね」
 悪戯と言うと文字通り悪戯だろうが……あの触手で触れられるのは嫌に違いないんだよと透子は首を振った。
 それから、いつまでも触手にいやいやしていても仕方がないと気を取り直した透子が説明を始める。
「温泉施設はとても広くて、50人くらいは入れるんだよ。でも女の人たちが最初に30人くらいいて、その後オークが20体出てくるから……」
 収容50人と言うとかなりの大きさだが……それでも施設もうパンパンのようだ。
 そこにさらにケルベロスたちが踏み込むとなると、結構なわちゃわちゃになるだろう。
「大きな出口が1つだけだから、逃げてもらうときはそこを通ってもらうしかないんだよ。だから……何とかがんばってね!」
 それは逃げてもらうときに体がぶつかるかもしれないなぁと考えていたケルベロスたちに透子は申し訳なさそうに付け加えた。
 急いで逃げてもらいたい状況で出口が1つはなかなかな状況だ。
 幸いオークの目的は女性をさらって繁殖することなので、一般人の女性に危害は加えないだろう。悪戯はするけど。
「このオークたちは強くは無いんだけど数が多いから注意してね。それと、みんながオークたちの前に立てばオークは先にみんなを狙ってくるんだよ」
 どうしたものかと思案するケルベロスたちに透子はケルベロスがオークたちの目に留まれば、オークたちは先にケルベロスを排除しようと付け加えた。
 後からゆっくり吟味したいから先に邪魔ものを始末しようとかそんな腹だろう。
「オークみたいなのはオンナのテキって言うんだよね! 絶対殲滅してきてね!」
 それから透子は両手の拳を握り締めてケルベロスたちに後のことを任せ、
「おう、きっちり女湯を覗……オークどもを倒してきてやるぜ!」
 藤守・大樹(灰狼・en0071)はニヒルに笑ってみせた。


参加者
深月・雨音(夜行性小熊猫・e00887)
片白・芙蓉(兎頂天・e02798)
アルレイナス・ビリーフニガル(ジャスティス力使い・e03764)
カテリーナ・ニクソン(忍んでない暴風忍者・e37272)
アイリス・ベルフェゴール(気まぐれ千変万化・e43275)
今波瀬・遥日(春雷・e43300)
胡桃・芽子(徹血儀行・e44423)
卯白・ムームー(初手求婚ラビダビバニー・e47899)

■リプレイ

●待機中
 大型スパ施設……それは温泉付きの遊戯施設のようなもの。
 温泉だけでなく、様々なゲームやくつろぎスペースなどもあるため家族連れや、仲間たちと連れ立って遊びに来ている人も多い。
「ジャスティスドライブ!」
 そんな中、アルレイナス・ビリーフニガル(ジャスティス力使い・e03764)がジャスティス力を加えた超回転の一撃を卓球台に放ち、それを受けたアルレイナスのメイドさんこと衝破弾烈・ペネトレイトが難なく角に弾き返してきた。
 渾身の一撃をあっさりいなされ膝をつくアルレイナスは、まだまだでございますよとペネトレイトから無表情に見下され、
「ぐぬぬぬ、このビッグにゃんこぬいぐるみが取れぬでござる」
 負けてなるものか! と顔を上げれば、その視線の先にはクレーンゲームに夢中になっている、カテリーナ・ニクソン(忍んでない暴風忍者・e37272)の姿……と言うより夢中になりすぎて前のめりになり、スカートの中が丸見えなカテリーナのパンツがあった。
「敵襲に気付かないようなミスはせぬので安心めされよHAHAHA!」
 なんて語っていたカテリーナだったが、敵襲には気づいてもパンツが丸見えなことには気づかなかったようだ。
 もう一勝負でござるよなんてクレーンゲームから目を離さないカテリーナのパンツを見たまま固まったアルレイナスにペネトレイトはやれやれでございますねと頭を振るのだった。

 アルレイナスとカテリーナの様子を眺めていた、藤守・大樹(灰狼・en0071)はまだまだ若いなと目を細めた後に、女湯の手前……更衣室の入り口を凝視する。
 想定では1人か2人くらいは女湯を覗きに行こうとする仲間がいる予定だったのだが、残念ながらそのような結果にはならなかったのだ……故に大樹は入口を眺めてどうするべきかを思案する。
「大樹のおじちゃんはなんかそわそわしてるにゃ?」
 おっふろだにゃと軽い足取りで更衣室へ向かっていた、深月・雨音(夜行性小熊猫・e00887) はそんな大樹の姿に気付き、視線の先を見て、
「なるほどー、もう春にゃ、そろそろ繁殖したいよにゃ」
 うんうんと頷いてから雨音は純真無垢な瞳で大樹を見つめてくる。
「タ……アライグマのお嬢ちゃん。女の子はもっとエレガががが」
 そんな雨音にエレガントさを説こうとする大樹だが……アライグマと言われた雨音は尻尾を膨らませて威嚇してきた。レッサーパンダのウェアライダーであることを大変誇りにしている雨音にタヌキとかアライグマと言うのは禁句らしい。
 しまったそっちだったかとアライグマとレッサーパンダがごっちゃになってる大樹が唸っていると、
「スーパー繁殖タイムかい? 大いに結構。張り切りたまえ。さて雨音ちゃんもそろそろ行こう」
 繁殖と言う言葉に反応した、卯白・ムームー(初手求婚ラビダビバニー・e47899)が無表情に大樹にサムズアップしてから、威嚇体制の雨音をひょいと担いで……そのまま更衣室へ向かったのだった。

「遅かったわね、何かあったのかしら?」
 ムームーと雨音が着替えを済ませて温泉へ入ると出入口に近いところでくつろいでいた、片白・芙蓉(兎頂天・e02798)が声をかけて来た。
「外は大丈夫そうだったにゃ」
 そんな芙蓉に雨音は一瞬外の様子を思い返してから答え、濡らしたくない耳と尻尾を隠してから温泉に浸かる。
「やっぱり温泉はいいですねー。お仕事のことなんて忘れそう……」
 温泉に浸かると同時にふにゃ~気持ちいいにゃと声を漏らす雨音に賛同するように、今波瀬・遥日(春雷・e43300)もふわふわした様子で呟き、
「うむ。温泉とは何とも落ち着くものだな」
 肩までしっかりと温泉に浸かりながら、胡桃・芽子(徹血儀行・e44423)もうんうんと頷いて……、
「……いやいや、駄目駄目。しっかり、私」
「いやしかし、これも、あれだ、戦略的措置だ……」
 それから遥日と芽子はお互いに顔を見合わせてから我に返り頬をぺちぺちと叩いく。これは仕事、そう仕事なのだから温泉を堪能している場合ではないとか、湯気と共に飛んでいきそうな緊張感を保とうとしているようだ。
「オー君まだかな~……」
 しかしそれも束の間のこと油断すると緩んでいく頬と体、何よりアイリス・ベルフェゴール(気まぐれ千変万化・e43275)が気怠そうに温泉の端に肘をついてまったりしているのにつられて、ふわふわしてしまう。
「フフフ作法は心得ていてよ? お耳が浸からないようにするのがうさぎマナーなのだわ」
「ふむ、こうかい?」
 そんな中、同じ兎同士で芙蓉とムームーが風呂場の作法的なものを共有していて2人揃ってお耳を頭の上にあげていると、温泉のルールなどを教えてもらおうと思っていた芽子が声を掛けようとするが……、
「げーはっはっは! オンナ! オンナァ!」
 丁度そこでオークたちが地面の中から生えて来た。

●避難
「さあキミたち、慌てずゆっくりいそいそと避難したまえ」
「大丈夫! 私たちはケルベロスなので! 焦らず出口へ逃げてください!」
 突然現れたオークに温泉内の空気が凍り付くが、スタイリッシュ変身しつつムームーが手を叩き遥日が温泉の出口を示すと、温泉内の一般人の女性たちの視線が出口へ向く。
「HAHAHA、こちらでござるよ」
 そしてそこにはいつの間にやら温泉に入ってきていたカテリーナが豪華絢爛アルティメットモードで人々を励ましつつ的確に避難誘導し、
「タオルを受け取って行ってくださいね」
 アルレイナスと雨音が出ていく女性たちにタオルを配る……水着を着ているし放っておいても問題は無かっただろうが、これも気遣いというやつだろう。
 流れるように避難を支持し、タオルを配る様は最早何かのイベント会場のようだが、ここは戦場。敵であるオークが居る。
「もう大丈夫! マウテンセクシー私よ!」
 そんなオークたちが女性たちに手を出さないようにと、仲間たちの中で唯一の成人女性たる芙蓉がオークの前に出て、その身を囮にしようとする。
 大人として良い感じに皆を守りたい。もしかしたらこの行為はとても危険かもしれないけど……オークなんかに絶対負けない! あいつが、あの場所で待っているんだから! と湯気の中にふわふわとした顔を思い浮かべる。ふわふわしてて誰だか分からなかったけど。
「15歳以下はそっと解放するなんて、随分紳士なオー君だねぇ~。さぁ、オー君。わたしではんしょく、してみなイ♪」
 芙蓉がほら、あれ、あのひとよとぐぬぬしている間に、アイリスもオークの前に立って豊満なお胸を強調してオークを誘ってみる。アイリスの水着はとても際どく、大樹が鼻血を噴くほどだが、
「オンナは大切、ヨウジョも大切、ケルベロスはコロす」
 オークはその誘いには乗らなかった。まともに思考ができる状態のオークなら当然の判断と言えるだろう。とはいえ本能的には女を求めるのか、オークの触手がアイリスと芙蓉へと伸びる。
「よくよく考えたらそんな人居なかったわ! でも大丈夫、私が可愛いから!」
 その汚らわしい触手は芙蓉のテレビウムである梓紗が受け止め、あの人を結局思い出せなかった芙蓉は手を叩いてから、兎の脚に力を篭めて飛び上がり梓紗を締め付けるオークの脳天に高速かつ重量のある蹴りを叩き込む。
「楽しい温泉を邪魔するとは愚かなオーク共め」
 そして脳天を蹴られたオークの頭が胴体にめり込むのを確認しつつ、芽子は祭壇から霊力を帯びた紙兵を大量散布し……散布された紙兵に仲間たちを守護させるのだった。

●戦闘
「避難は終わりま……したよ」
 頭が胴体に埋まったオークが倒れるのとほぼ同時に、アルレイナスが避難完了を告げる。直視できないほどに肌色の多いアイリスや何となく背徳感のある芽子のスクール水着を見て、視線を逸らせていたけれど。
「後はヤるだけだねぇ~……」
 アルレイナスの言葉を聞いたアイリスは気怠そうに頷いてから、魔力を秘めた瞳でオークたちを凝視する。
 オークを蹴った反動で再び宙を舞う芙蓉を追うように触手をうねらせていたオークたちはアイリスに凝視されて一瞬動きを止め、止まった瞬間に懐へ駆け込んだ雨音が透き通る氷のような刀身を持つ唐刀を非物質化して斬り付ける。
 斬り付けられたオークは白目をむいて倒れ、倒れるオークの横を駆け抜けたアルレイナスが体内の豊富なグラビティ・チェインを破壊力に変えバトルガントレットに乗せて別のオークの胸元に叩きつけると、オークの胸に大穴を穿った。
 倒れタークは微動だにせず、胸を貫かれたオークは血を噴き出しながら仰向けに倒れる。
 吹き出した血が飴のように降り注ぐ中、ようやく仲間たちの死に気付いたオークが怒り狂うように触手をアルレイナスと雨音へ叩きつけようとするが、雨音に向かった触手を遥日がケルベロスチェインで捕え、アルレイナスを打ち付けようとした触手はカテリーナがフェアリーブーツで蹴り飛ばす。
「お願い、風雷さん!」
 遥日のオルトロスである風雷は口に咥えた神器の剣で遥日が捉えていた触手を切り落とし、遥日は自由になったケルベロスチェインを床に展開させると仲間を守護する魔方陣を描く。
 それとほぼ同時に蹴り飛ばした触手の主であるオークの顔面を掴んだカテリーナは高速演算で構造的弱点を見抜き……手首をひねった。
「もっふりムームーパンチ」
 カテリーナの手の動きに併せるようにあらぬ方向へ捻じれたオークの頭を、重力を集中させた兎の手でムームーがぶん殴るとオークの頭は2回転ほどしてからねじ切れた。

「おおっと」
 朱色の雨が降る光景に良い色合いになったじゃないかとムームーが満足気に頷いていると、ぬめりに足を取られて体勢を崩す。ムームーが体勢を崩したのを好機ととったのかオークが触手を振るおうとするが、
「膝! 膝で何とかなるのよ!」
 舞い上がった勢いのままに天井を蹴って戻ってきた芙蓉が正座っぽい体勢をとって、触手を振るおうとしていたオークの後頭部に膝から突撃してきた。厄払いであり鬼祓いの儀式らしいその膝は命中しないという悪縁をスッパリ祓い、オークの後頭部に見事に的中した。
 ゴツーンと後頭部に膝を受けたオークは、ムームーの体を真横にホールドする形で倒れ、顔面を地面にぶつけてそのままグシャァした。
「飛沫あれ」
 グシャァしたオークを眺めつつ、芽子は自分の指先を小さく裂く。それからその指をオークへ向けると、傷口から滴る血が針のように紡がれてオークの体に吸い込まれていく。そしてその次の瞬間、真っ赤な楔がオークの体を内側から貫くように生えた。
「余所見しちゃやだよ~……?」
 体内に侵入した芽子の血がオークの血液を吸い上げて内側からオークを破壊したのだが、そのことを理解することもないままオークは地に伏して動かなくなり、倒れたオークを茫然と見つめる別のオークの真後ろ立ったアイリスが正確かつ舞うような動作で惨殺ナイフを振るうと、オークの四肢は見事に切断されていった。
「さくさく・くろー・すらっしゅ!」
 次々と血の海に沈んでいく仲間を前に一瞬たじろいだオークへ、雨音は獣化した両手の爪を長く伸ばし、鋭い爪で素早く引っかいて、相手に無数の傷を刻み込む。
「僕のジャスティス力が最大限に高まる時! 邪悪を滅する最強の剣が炸裂するのだ! 行くぞッ、正義完遂! 超絶! ジャスティス斬ッ!!」
 血の海を更に地で染める雨音に続き、アルレイナスが高く掲げた剣にジャスティス力を集め、その光り輝く刃でオークを十字に斬り付ける。正義を完遂するために編み出されたその技は、オークの体を十字に分断し雨音に刻まれたオークと仲良く屍を並べた。
「おおっと、動くなでござる。動いたら、お主のベッドの下の秘密のアレをバラすでござるよ?」
 真っ赤に染まるアルレイナスへ溶解液を放とうとしていたオークの背後に何時の間にか回り込んでいたカテリーナが何か栓的なものをチラつかせると、そのオークもまた血を吐いて倒れる……精神的、社会的に色々まずい物だったのだろう、ショック死である。
 何でござるかなこれはなんて首を傾げているカテリーナの横で遥日は、奇蹟を請願する外典の禁歌を歌い、
「さて、君たちで最後のようだ」
 のしかかる形で倒れていたオークを放り投げて立ち上がったムームーはオークの触手の根元を掴んで……尋常ならざる怪力によって触手の根元に在る背骨をオークの体からブチブチと引き抜いた。
「天国までイかせてあげる……♪」
 そして最後に残ったオークに、アイリスは口づけすると同時に口移しで莫大な快楽の魔力を相手に注入する。直接注ぎ込んだ快楽の魔力によってオークの意識は快楽に呑まれ……快楽に耐えきれなくなったオークは口から泡を吐きながら絶命したのだった。

●後始末
「これはまた……後片付けが大変そうです」
 全てのオークを倒した後、温泉の惨状をみてアルレイナスは溜息をつく。こちらの被害は全くなかったのだが、オークの肉片やら血だまりやらでお化け屋敷も真っ青な状況になっていたのだ。
「ちょっと物足りないなぁ~……ねぇ~わたしではんしょく、してみる~……?」
 どこから手を付けますかね。なんて真面目に後片付けの方法をアルレイナスが考えていると、色々と物足りなかったアイリスがアルレイナスを上目遣いに見てそんなことを言ってきた。
 アイリスとしてはちょっとしたオークジョークだったのだが、女性に免疫の無いアルレイナスには刺激が強すぎたのか、真っ赤になって固まってしまった。
 そんなアルレイナスに、あれ~……どうしたの~……とじりじりと距離を詰めるアイリスを恐ろしいなと大樹が観察していると、
「普通に勝ったわ! それで何をしているのかしら!」
 くっころも何もなかったわね! と胸を張っていた芙蓉が首を傾げる……何故かと言うと狼になった大樹が無言でレッサーパンダになった雨音の尻尾ビンタを食らっていたからだ。
「ご褒美というものだね?」
 そんな状態なのでしゃべることも出来ない大樹をみてムームーは的確に状況を言い当て、
「おおっと、動くなでござるよ? 動いたらお主の大事なモノが……こ、これはいわゆるローティーン着衣モノを蒐集したちっぱいフォルダ!?」
 何時の間にか後ろに来ていたカテリーナが大樹の足元から何かを拾い上げて、そんなことを言い始めた。
「なになに、大人にしか興味は無い。俺は無実だ? HAHAHA、では誰に興味があるでござるか」
 そんなものを落とした覚えは全くないが、このままでは社会的に抹殺されてしまう。そう考えた駄犬が大樹に頭を振るとカテリーナは朗らかに笑う。
「……何で今私のことを無視したのかな? 子供だと思っているのかな? ん?」
 何だこの流れと思いながらも大樹は遥日を見つめ……すっと視線を逸らすと、遥日は上から笑顔で覗きこんでくる。私も大人になったなーなんて思っていた遥日からすると大人扱いされないのは心外なのだろう。お年頃ってやつである。
「……もし万が一触ってきたら、全力で斬り落とすからな!」
 それから芽子へ視線を向けてみれば、芽子がくわっと威嚇してきた。お年頃ってやつだ。そして最後にカテリーナを見てみると、
「言っておくが拙者……15歳でござるよ!」
 衝撃の事実を突き付けられたのだった。

 八方ふさがりになった男たちを放置して、芽子たちは温泉のヒールを始める。
 とは言え芽子は温泉の造形などあまり詳しくなく、そこらへんは仲間たちに教えてもらおうと周囲を見回せば、
「少しもふもふになっても気~にし~にゃ~い♪」
 もふもふ命な雨音は取りあえずもふもふにしとけばいいにゃと言い、
「もふもふ、可愛いわね!」
 芙蓉もまたもふもふは可愛いと大きく頷いていた……どうやら結構適当で良いらしい。
「ちゃんと後片付けして帰ろうね、風雷さん!」
 それから芽子は、風雷と共に掃除を始めた遥日に目を細め……よしっと腕をまくると後片付けを始めたのだった。

作者:八幡 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2018年3月10日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 8
 あなたが購入した「複数ピンナップ(複数バトルピンナップ)」を、このシナリオの挿絵にして貰うよう、担当マスターに申請できます。
 シナリオの通常参加者は、掲載されている「自分の顔アイコン」を変更できます。