飛来せしその切欠は

作者:幾夜緋琉

●飛来せしその切欠は
 千葉県の大多喜町。
 多くのカントリークラブ等があり、自然も多い場所……そして、多くのゴルフ客も居る。
 ……そろそろ空が暮れゆく頃で、遅いスタートだったけど、もうそろそろ終わりという頃。
『……ナイスショットー!』
 と、拍手を送るキャディと、そのゴルフ客の男数人。
 ……その時、その夕焼けの色に紛れて、飛来してくる金色の花粉。
 その花粉は、コースの少し先にあったOBエリアの木に取り憑く。
 そして、次の瞬間……金色に輝いた樹。それに驚いたのか、ゴルフ客のスイングは大きく乱れ……木々の中へ。
『おおっと、やってしまったなぁ』
『ほら、どうする?』
『大丈夫、コレくらいなら出せるよ』
 等と言いながら、彼はそのまま木々の生い茂るOBエリアへ。
 ……次の瞬間。
『……うわああああ!!!』
 と、悲鳴が上がる。
 慌ててキャディやゴルフ客が其の場に向かうが……樹が姿を変え、攻性植物化した所へ捕らわれている彼の姿。
 その姿に驚き、彼を除き、全員……其の場から逃げ去っていくのであった。

「ケルベロスの皆さん、集まってくれたッスね! それじゃ、説明を始めるッスよ!」
 と、黒瀬・ダンテは、集まったケルベロス達へ一礼すると早速。
「どうも、千葉県のゴルフ場で、何らかの胞子をその樹内に取り入れてしまった攻性植物が発生した様なんっす!」
「この胞子を取り入れた攻性植物は、OBを出したごく普通のゴルフ客を襲い、胎内へと取り込み宿主化してしまった様なんッスよね」
「そこで、ケルベロスの皆さんには、急ぎ現場へと向かい、この攻性植物を退治してきて欲しいんッス!」
「一応、幸いな事は二点あって、攻性植物に捕らわれたのはこのゴルフ客一人のみで、その他のゴルフ客やキャディさん達はみんな逃げてしまった様なんッス」
「又、攻性植物化したのは花粉を取り込んだ一体だけで、他の攻性植物とかは居ない様なんッス。つまり、この攻性植物一体のみを倒せば問題無いんッスけど……ただ、普通に倒して仕舞うと、ゴルフ客も死んでしまうッス」
「でも、攻性植物へヒールを掛けながら戦う事によって、戦闘終了後、もしかしたら救出出来る可能性がある様なんッスよ。出来れば、罪も無いゴルフ客を救出してきて欲しいッス!」
 そしてダンテは拳をぎゅっと握りしめて。
「攻性植物に取り込まれてしまったこのゴルフ客を救うのは大変難しいと想うッス。でも、ケルベロスの皆さんの力で、どうか救い出して欲しいッスよ!!」
 と、力強く送り出すのであった。


参加者
加賀・マキナ(灰燼に帰す・e00837)
源・那岐(疾風の舞姫・e01215)
源・瑠璃(月光の貴公子・e05524)
黄檗・瓔珞(斬鬼の幻影・e13568)
黍乃津・桃太郎(桜前線上の侍・e17781)
湯川・麻亜弥(大海原の守護者・e20324)
キャロライン・アイスドール(スティールメイデン・e27717)
天瀬・水凪(仮晶氷獄・e44082)

■リプレイ

●命よりも
 千葉県大多喜町。
 多くの樹が生い茂り、その樹を縫う様にして乱立するゴルフ場。
 ……自然と共にプレイする事が出来る……という事も有り、土休日ともなれば多くの人達が訪れる事であろう。
 が……そんなスキー場に飛来せしは、花粉。
 それも普通の花粉とかではなく、人を死に追いやりかねない……攻性植物へと樹を変化させる、花粉。
「うーん……寄生する花粉。花粉症でも大変なのに、本当災難でしたね」
「そうだね。花粉症で人に悪さをする花粉だけど、人をも取り込む様になっちゃったか……」
 と源・那岐(疾風の舞姫・e01215)と源・瑠璃(月光の貴公子・e05524)の姉弟が溜息。
 まぁ……今回の男性が花粉症かどうかは解らないけれど、少なくともその花粉によって死の危機に貧していることは間違い無い。
 そして、この様な花粉が樹に取り憑いて、攻性植物へと変化させてしまう事件は今迄も度々起きている訳で……中々終わらないこの事態に。
「……ふむ。攻性植物も、なかなか元を断てぬな」
 と真摯な表情で天瀬・水凪(仮晶氷獄・e44082)がぽつりと呟くと、それに湯川・麻亜弥(大海原の守護者・e20324)と黍乃津・桃太郎(桜前線上の侍・e17781)も。
「そうですね。ゴルフで楽しんでいる最中にもかかわらず襲ってくるとは、本当迷惑な植物ですね」
「ええ。近頃は攻性植物の活動が激しい気がします。こういう事件を少しずつ解決して、敵の勢力を弱めて行かなければ……それに今回はいつもの通りに攻性植物を倒すだけには非ず、一般人が囚われてしまいましたし、気を抜かずに戦闘に望まないといけませんね」
 と、その言葉にキャロライン・アイスドール(スティールメイデン・e27717)が。
「……囚われの一般人ですか。彼を救う為には、攻性植物を活かさず殺さず……と。なるほど、同様の依頼は受けたことがります。ならば今回は私は友軍の回復に回りましょう。攻性植物へのヒールは皆様にお任せします」
 機械の如く、真摯に正対するキャロライン、それに黄檗・瓔珞(斬鬼の幻影・e13568)は。
「了解。しかしまったく旦那さんも運が無いねぇ。花粉も、ただでさえ花粉症が厄介なのに。更に厄介事を運ばないで欲しいもんだねぇ」
 肩を竦める瓔珞、そして瑠璃、那岐が。
「そうだね。でも、このままでは余りにも気の毒だし……まだまだゴルフを楽しんで貰いたいよ」
「ええ。そろそろ暖かくなる時期ですし、ゴルフをするにも最適の季節になるでしょう。ですから、被害者は必ず助け出します。瑠璃、頑張ろう?」
「うん、那岐姉さん、一緒に頑張ろう」
 何処か仲睦まじい二人の会話にくすくすっ、と笑う麻亜弥。
「そうですね……必ず、ゴルフ客を助けてあげましょう」
 と頷きつつも。
「あれ、そういえばマキナさんは?」
 見渡すが……加賀・マキナ(灰燼に帰す・e00837)が居ない事に気づく麻亜弥。
「ん……確かに見てはいないな」
「どうしたのでしょうね……」
 水凪にちょっと不安気な麻亜弥。
 と、そうしていると。
『うわああああ!!』
 悲鳴を上げて、逃げてくるゴルフ客達。
 ケルベロス達を見るも、恐怖に恐れ戦いている彼らは……最早この場に居たくないと言わんばかりに、其の場から逃げ去っていく。
「……全て潰して行くより他あるまい。さぁ、皆、行くとしよう」
 と水凪が促し、ケルベロス達は彼らが逃げてきた元の方向へと向かうのであった。

●祈りし心
 そして、ケルベロス達は……囚われの男性の下へ。
 向かって居る間は幾度となく悲鳴を上げて、抵抗している様だったが……段々とその声色は弱まり、ケルベロス達が到着した時には……うう、と呻き声を上げるので精一杯。
「……冒頭から疲弊している様だな。取りあえず……」
 と水凪が前衛にボディヒーリングでBS耐性を付与すると、併せて瑠璃も。
「月の光の守護を」
 と、『太古の月・新月』による、前衛陣への盾アップ。
 そしてキャロラインが。
「私の唄で救える命があるのならば……私は地獄の底でも歌い続けましょう」
 と、激しくギターを掻き鳴らしながら、「紅瞳覚醒」の盾アップを更に付与。
 全員が、前衛陣への多くの強化を付与し……いざ。
「さて、愚直に攻めていったら旦那さんを助けられないし、慎重に行きましょうか」
 と瓔珞の言葉に皆も頷き、いざ、攻撃を開始しようとした……その瞬間。
 ……木々の間から飛んで来たのは、美しい虹を纏った飛び蹴り。
「……っ、マキナさん!?」
 と驚きの表情を浮かべる那岐だが、表情一つ変えずに対峙するマキナ。
 ……決して狂気や暴走に陥っている……様ではないのだが、明らかに仲間達に対峙している。
「仕方ありません。私が足止めします」
 と那岐は取りあえず仲間達にスターサンクチュアリでBS耐性を付与為つつも、彼女の真っ正面へと対峙。
「すみません。宜しくお願いします」
 と瓔珞は軽く頭を下げつつ、猟犬縛鎖を放ち、攻性植物の動きを押さえ込むと、併せて桃太郎もゾディアックソードを抜き払いのゾディアックブレイクの一閃を叩き込む。
 スナイパー効果もあり、確実に一撃を命中させ、そして麻亜弥も。
「深海の碇剣よ、私にその力を貸して下さい」
 とグラビティブレイクの強力な一閃を叩きつけ、一気に体力を奪い去る。
 ……そんな攻性植物のダメージには、さほど興味を示さないマキナ。
 そのままマキナは、ドラゴンブレスで攻撃を仕掛けるが……那岐が対峙し、攻撃を完全にカバー。
 ただ、体力減をカバーする為、自己へ『風の舞姫・雛菊』を使い、戦線を維持するのに注力。
 そして、当然マキナの攻撃以外に、攻性植物の攻撃が。
「させませんよ」
 と瓔珞が笑みを浮かべて、襲い来る触手の一撃を月光斬で斬り払う。
 そして、対するケルベロス達の反撃は、キャロラインが後衛に更に「紅瞳覚醒」で盾アップを付与為防御を積み重ねる。
 一方、桃太郎は。
「我が剣技の真髄ここに有り」
 と『抜刀飛剣・華舞断』の一閃を、高命中力で以て仕掛けると、麻亜弥も。
「この蹴りを、避けられますか」
 と、高所からのスターゲイザーの一蹴で、足止めを付与。
 一方、ジャマーの瑠璃と水凪は……攻性植物と囚われの男性の状況を確認し。
「まだ疲弊が酷いな」
「ええ……回復を続けましょう」
 と、互いに声を掛け合い、攻性植物の体力状況を仲間達に報告しながら、攻性植物に回復の一手。
「気を強く持って下さい……必ず、助けますから」
 と瑠璃が強い口調で叫びを上げ、囚われの彼を元気付ける。
 ……だが、その声に対し目立った反応はない。
「……まだ疲弊が激しいようだな」
「ええ……」
 水凪の言葉に、唇を噛みしめる瑠璃。
 とは言え、回復をしなければ、彼に待つのは死あるのみ……それを、看過するわけにはいかない。
 しかし、全力を出してはオーバーキルに至りかねないという……難しい状況。
「事を急いではいけません。少しずつ、確実に」
 と那岐が仲間達に注意喚起し、他の仲間達は頷く。
 マキナの攻撃を抑えつつ、回復を多めに攻撃を継続。
 そして、戦闘開始から半刻程。
 少しずつ、少しずつ……回復不能なダメージを積み重ねていった結果……攻性植物の蔓や緑の体はズタボロになり行く。
「後少しの様だな」
 と瓔珞の言葉。
 それに解りました、と頷き……攻性植物の懐にまで接近すると。
「海の暴君よ、その牙で敵を食い散らせ……」
 と『暗器【鮫の牙】』による一閃を放ち、大ダメージを叩き込む。
 その一撃は、攻性植物の幹を食い千切り……触手を地面にビタンビタンと叩きつけ、苦しみの表現。
「今です」
 麻亜弥が促し、桃太郎が続き雷刃突の一閃、そしてキャロラインも。
「立ち上がる遊鬼を、思いやるやさしさと、戦い続ける意思を。運命の鎖を断ち切りし、その牙を今ここに咆哮を上げよ」
 と「幻影のリコレクション」の一閃で、更なる追撃。
 流石にその連携攻撃は、攻性植物の残り少ない体力を削り……その体に大きな亀裂を産む。
 そして、苦しむ彼へ瑠璃と水凪が回復を飛ばし、残り少ない体力を回復すると。
「これで終わりですよ」
 と、その頭上から振り薙ぐ月光斬の一閃。
 その一閃に攻性植物は崩れ墜ち、耳を劈く悲鳴を上げる/そしてその悲鳴をに、唇を噛みしめ、早々にまきあんは離脱していった。

●美しい心
 そして……どうにか無事に、攻性植物を倒したケルベロス。
「……ふぅ。何とか終わりましたか……」
 と汗を拭い、深く息を吐く那岐……対し、既にマキナは姿を消しており、影も形もないのを。
「……まぁ、色々ありましたけど、取りあえずは救出出来た事に一先ず安心、といった所でしょうか。と……一般人男性の状況は如何でしょうか……?」
 と、瑠璃を初めとした仲間達が其の場へと急ぎ、状況を確認。
「大丈夫ですか、意識ありますか?」
 と麻亜弥が肩を抱き上げ、声を掛けるが……う、うぅん……と唸るばかり。
「疲弊が大きい様だな。良し」
 と水凪は彼へ大自然の護りでヒールし、体力を回復。
 勿論回復しつつも、彼の状況は常に確認。
 数分後、意識を取り戻した彼に。
「大丈夫ですか? 突然攻性植物に襲われ、さぞや驚愕なされたでしょう」
「うん、大変だったよね? でも、もうそんな危険は無いから、大丈夫。また、ゴルフを楽しめるよ」
「そうですね。今後もゴルフを楽しめますよ?」
 と那岐、瑠璃が声を掛けると……彼は、え、う、ううん……と。
 ……突然声を掛けられ、ちょっと驚いてしまった様である。
 ともあれ、そんな彼の状態をもう一度、注意深く確認し。
「……大事があると大変だ。一応、救急車を呼んでおくとしよう」
 と救急車を要請しつつ、フロントに向かう彼女。
 そして救急車が来て、そちらへと引き渡した後。
「さて、終わりましたね。では……帰りましょうか」
 と麻亜弥の声に頷き、ケルベロス達は其の場を後にするのであった。

作者:幾夜緋琉 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2018年3月6日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 5
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