毒蛇、色香を喰らう

作者:のずみりん

 裏路地に踏み込んだ嶋田・麻代(レッサーデーモン・e28437)は瞬間、覚えある感覚に手を伸ばした。
「……アレですか」
 手袋越しにぬめる冷たい感触。掴ん子蛇をを振り向きざま、小柄な影に電光石火で投げ返す。
「すごいねぇ。よく動けるもんだ。空っぽな躯に……地獄だっけ? パンパンに詰め込んでさ」
「螺旋忍軍、真理華道(マリファナドウ)……ガキのしつけはなっとらんようで」
 言い捨てながら、慎重に麻代は間合いを図る。
 値踏みするように笑う敵は少年、子供と言っていい幼さ。しかし無数の蛇を絡ませて彼女に迫る姿は、ただの少年にしてはあまりに邪悪で、サディスティックだった。
「ボクの事なんかどうでもいいよ。キミのその身体をぶちまけ見たいんだ、無様な死に様をさ!」
「あいにくと……見られる方の趣味はないもんで!」
 二度目の間一髪。無拍子で撃たれた螺旋をかわし、麻代は路地から廃屋へと身を投げた。
「さて……アレだ。どう戦い抜きますかね」
 転がり込んだ先は潰れたバーラウンジ。獲物を追ってくる足音に、麻代は乾く唇を湿らせた。

「嶋田・麻代が襲われた……いや、襲われようとしている」
 集まったケルベロスにリリエ・グレッツェンド(シャドウエルフのヘリオライダー・en0127)は、予知された宿敵邂逅を駆け足で話した。
「麻代とは既に連絡がつかない……もはや一刻の猶予もない。予知されたポイントまで飛ばす、彼女を救援し宿敵を迎え撃ってくれ」

 予知から確認できたのは蛇を操る螺旋忍軍の者、追われる麻代が潰れた酒場の廃墟に飛び込むまで。
 集められた情報をリリエはケルベロスたちに伝えていく。
「麻代を襲った相手は螺旋忍軍、マクシミリアン……蛇使いの、ド変態だ」
 得意とする殺しは小型の蛇を体内に潜り込ませての食い破り。趣味と実益を兼ねた技は一般人ならほどなく悶死、ケルベロスにも油断できない痛手となるだろう。
「あくまで蛇による攻撃だが、性質としては『炎』が近いな。動くほどに傷が増え、蛇も勢いを増していく」
 また蛇を潜り込ませる術は食い破り以外に催眠、多彩な毒を使うものも確認され、異常への対処は攻略に必須といえる。
 これらと別に一般的な螺旋忍術も納めておりバランスよく使い分けてくる。少年のような見た目に反し、かなり狡猾でいやらしい敵だ。
「マクシミリアンにとって殺しは趣味も兼ねている……これまでの事件傾向から見て、お好みは妖艶な女性、特にサキュバス……まぁ麻代を狙っている今回、役に立つかはわからない情報だが」
 話が反れかけ、リリエは一度言葉を切る。
「これはピンチだが、麻代の宿敵を撃破する絶好のチャンスでもある……はずだ」
 彼女をよろしく頼む、ケルベロス。リリエは言って、場を締めた。


参加者
ソラネ・ハクアサウロ(暴竜突撃・e03737)
皇・絶華(影月・e04491)
樒・レン(夜鳴鶯・e05621)
ロディ・マーシャル(ホットロッド・e09476)
嶋田・麻代(レッサーデーモン・e28437)
雁・藍奈(ハートビートスタンピード・e31002)
エリン・ウェントゥス(クローザーズフェイト・e38033)
紗・緋華(不羇の糸・e44155)

■リプレイ

●宿敵強襲
 現場に降り立った七人のケルベロスは、息もつかずに駆けだした。降下から予知された裏路地、そして廃墟へと急ぐ。
「杞憂だと、良いのだけど……」
「過剰な自信が何よりの毒で、蝕まれていたのは自分自身だった……そんな、笑い話にでもなればいいんだけど。真理華道とやら」
 情報を気にした様子のエリン・ウェントゥス(クローザーズフェイト・e38033)に、紗・緋華(不羇の糸・e44155)が同意する。
 敵は得体の知れない螺旋忍軍、それも女ばかりを狙う蛇使いのド変態となれば猶更だ。
「つまり女の敵なんだね? よーし、やっつけじゃうぞー……で、麻代さんはどこにいるんだろ?」
 一方で同じ心配しながらも雁・藍奈(ハートビートスタンピード・e31002)は前向きに闘志を滾らせ路地を駆けた……一直線すぎるのが玉に瑕ではあるけれど、そこは仲間たちがフォローしてくれる。
「こっちだ、急ぐぞ!」
「そっちだね、おっけー!」
 辺りを付けたロディ・マーシャル(ホットロッド・e09476)の声に彼女と仲間たちは廃墟へと全速力で駆けた。

「まぁアレだ。素直に私を狙ってきたことは不幸中の幸いってことにしときましょっか……」
 廃屋のカウンターに身を隠し、嶋田・麻代(レッサーデーモン・e28437)は息を整える。小さな足音のリズムがゆっくりなのは、警戒しているのか、ただ焦らしているだけなのか。
 少なくとも自分なら戦える。忌々しい鬼ごっこもそろそろ攻守交替の時間だ。
「絶体絶命だけど、またとない好機とも。楽しませてもらいましょう……そぉい!」
 手始めに気合一喝、彼女はめくりあげた健康的な肌へと『気合をぶち込む一撃』を叩き込む。切腹のように日本刀が裂いた腹から溢れる地獄、その高熱に廃屋が揺らめく。
「あーあ、気づかれちゃったか。自分から腹裂くとか引くなぁ」
「チンタラしてるって時点で、そんなだろうと思いましたよ。クソガキ」
 嘲笑うマクシミリアンめがけ、激痛をこらえ、麻は腹から引きずり出した蛇を叩きつけた。
 それはケルベロスだから可能な荒療治。激痛さえ堪えれば、地獄を顕然させることは癒しですらあり、作戦にすら組み込める。
「ふん、このまま勝手に萎まれたらつまんないからね。そらっ、次はどうする!?」
 マクシミリアンがそれの意図に気づいたのは、放った蛇たちが彼女と思われた『もの』を貫いた後だ。
「摩利支天の真言、破る事能わず。夜鳴鶯、只今推参」
 背後からの気配にマクシミリアンが飛び退く後、突き立つは漆黒の手裏剣の如き黒影弾。その先に立つは追いついた樒・レン(夜鳴鶯・e05621)たちの姿。
「油断しちゃったよ……既に合流してたなんてね」
 吹き上げた地獄は誘い込む罠、仲間への合図。強かな敵に幼い螺旋忍軍の一員は舌打ちする。
「追い詰められたのはボク、ってワケ? いいね、より取り見取りじゃない」
 皇・絶華(影月・e04491)の黒のゴスロリドレス姿を少年がねめつける。細身の体を淑やかに彩る装束と、覗く肢体を這いまわる視線は、外見と似つかわぬイヤらしさだ。
「そのすまし顔は何色に染まるかな? 楽しみだね」
「螺旋忍軍ならば相手にとって不足なしだ、悪趣味な輩目め。貴様の行為は虫唾が走る」
 隠す気もない下劣な問いに、絶華の答えは武力行使。流星の奇跡を描く『斬狼』の隠し刃に、マクシミリアンはわざとらしい悲鳴でテーブルへと後ずさる。
 瞬間、できた空隙をボクスドラゴン『ギルティラ』の火花めいたブレスが焼いた。
「アレと麻代さんがどのような関係かは存じ上げませんが、因縁の程は麻代さんの目を見て分かりました」
「えぇまぁ……見ての通りのアレです。都合よく来てくれたのなら手助け、利用させてもらいますよ」
 仕込み大太刀『強化型振動剣『逆鱗』』を逆手に気咬弾を撃ち込みながら、ソラネ・ハクアサウロ(暴竜突撃・e03737)が並び立つ。
 麻代の宿敵と聞くが、熱くなりすぎてはいないだろうか。自分も、彼女も。敵の本質、邪悪さを存分に見た後だけにソラネは余計そう思う。
「ちょっとびっくりしたけど……ははっ、いいね。お色気美人が並び立って」
「それはどうも……まったく嬉しくもありませんけれどっ」
 わざとらしい、花魁めいた着崩しの着物は彼のお気に召したか、逆鱗に触れたようだ。ソラネの振るった横凪がマクシミリアンの影を裂くが、手ごたえはない。こちらも分身か。
「っと、そちらもアレですか! いやーしかし嬉しいです!こんな小さくて可愛い男の子が鼻息荒くしてこのお姉さん! を求めに来るなんて!」
 口早な煽りと共に振るった麻代の剣は宙を切り、振り切って激突。螺旋忍軍の手ごたえはそこにあった。
「なので……凄惨に……望むがままに……ぶち殺す!!」
「やってみろよぉ、チビ女ァ!」

●真理華道の蛇
 ぶつかりあい、押し返される。
「チビ言うなガキ。私の方が上……のはずですよ!」
「じゃあ教えてあげるよ、そらッ!」
 見た目からは想像もつかぬ力で麻代の身体が跳ね飛ばされる。態勢の不利もあれど、恐るべきは螺旋の力。
「悔しいが、業は向こうが上か……!」
「蛇だけとでも思った? 残念!」
 木の葉のように紙兵を撒き、レンは素早く飛び退く。突っ込んでくる螺旋掌が彼の場所を大きくえぐった。
「同じケルベロスとして放っておけない。手を貸すよ……でも、私と同じ年くらいのようなのに」
「見た目に騙されると痛い目見ますよ。ていうか、もう既に……!」
 庇い立つエリンと麻代、双方から血しぶきがあがった。地獄や紙兵で身を守っても小さな刺客は一瞬のスキに食らいついてくる。
「交代だ、前は任せろ!」
 床に壁に、迫る蛇を振り払って絶華は飛び込み、回し蹴る。受けられた反動で更に反転、『三重臨界』のカタール刃がマクシミリアンの取り出す蛇を切り裂いた。
「悪趣味な輩だが……螺旋忍軍ならば相手にとって不足なしだ」
「なかなかボク好みだよ、お姉さんもね……けど蛇もブチまけるだけじゃないのさっ」
「あ……っ」
 打ち合いながら嘲笑するマクシミリアン。それに釣られるようにエリンのドラゴニックハンマーが標的を変える。狙いは後衛、後方四十度。
「催眠か! 緋華、かわ……っ」
 絶華の声も間に合わず、今まさにエリンが護殻装殻術を展開させた緋華へ轟竜砲が放たれる。
「あぁ……わ、私……!?」
「……大丈夫、大事じゃない」
 ブラックスライムを広げて受け流すも、施された御業の護りはごっそりと持っていかれた。
 平静を装う緋華へ、必死に頭を振り蛇を引き離すエリン。蛇使いの猛攻は止まらない。
「次は誰にしようかなぁ……キミだ!」
「きゃーっ、いやぁーッ!?」
 混乱を嘲い投げつける小蛇が今度は藍奈に食らいつく。スタイルも露なアンダーウェアを食い破り、皮膚へと食らいつく蛇の凹凸は蠱惑的にも痛々しい。
 血と笑いはますます広がり、惨事はどんどんと広がっていく。
「そんな格好してるからそうなるんだ、ハハッ! 次は……」
「汚ねぇ攻め方しやがって! いい加減にしろ!」
 断ち切る銃声。下劣な笑いをロディの叩きつける連射は遂に捕らえた。
「ははっ、ガキなのはどっちなんだか! 忍者は汚くエゲつないのさッ」
「へっ、大当たりだ。オレは大人げないんでな、子供相手でも容赦しないぜ!」
 叫びと共に左右の『モビルディフェンサー』ユニットを叩きつけ、合体。放たれる必殺の全力砲撃モード『マキシマグナム』はマクシミリアンも真顔になる。
「ぶちかます!」
 かすめる砲撃。間一髪の背後、壁が外までもぶち抜ける。
「ロ、ロディくん……あ、ありがと」
 涙目になりながらも何とか抜け出す藍奈。マクシミリアン自身の傷は浅いが、手にした蛇はごっそりと消し飛ばされている。一瞬だが、操る力も断ち切れたのだろうか。
「ふん……なんだ、そんなものか……火力だけは一人前だけど」
 少なくとも、その声には少なからずダメージがあり、その心身の僅かな隙をソラネは見逃さない。
「その割には随分と怖気図いて見えますよ?」
 マクシミリアンの声を切り裂く、流星の一撃。短パンから伸びる生足に切り傷が一筋。
「ち……何が言いたいのかな?」
「別に何も……ただやはり蛇も子供ですね。あと十年年経てば、太くて立派になるのでしょうか?」
 上から下へ、ソラネの暗喩的な視線の動きに螺旋忍軍の少年の顔が赤く染まる。感情を乗せて叩きつけられる蛇を引きずり、大型振動剣が一閃。惑わす分身ごとに叩き切った。
「王には冠を、剣には牙を――」
 牙や稲妻の如き変則軌道『人竜一体・冠竜王剣』、交わすことは螺旋忍軍といえど能わない。
 螺旋を帯びた手が刃を叩くも、浅くない一撃。
「な、あっ……」
「優位にあったつもりだろうが、此処からが地獄の番犬の本領発揮だ……行けるな?」
 最後は庇い立った麻代へ。レンは再びの分身を渡すと共に、彼女に突き立った蛇をずるりと引き抜く。常人なら重傷と言える傷孔だが、ケルベロスの自分たちならどうという事はない。
 呼びかけに麻代と分身が、血塗れの唇で答えた。
「勿論。教育の時間だコラ」

●食らうは蛇か、猟犬か
「ボクのことはどうでもいいって言ったろ? このガキ」
「ふん、だから何だってんだい?!」
 苛立たしげな指弾きにあわせ、麻代の背が爆ぜる。打ち込まれた蛇は一匹だけではない、既にかわしきれぬ相当数が潜んでいるのだろう。
「なら私があなたを斬って焼いて構わんでしょ……ってぇ事ですよオラァ!」
 ほつれる上着を掴み、蛇ごと焼き捨てながらのフレイムグリード。突っ込みながらの地獄の炎弾は、さながら燃える鉄拳だ。
「ガッ、げっ!?」
 狙いは遠慮なく腹。ソラネが刻んだ傷痕へ、地獄の炎を抉り込む。
「たっぷり贈り物いただきましたからね! お返ししなきゃ、アレでしょ……ッ」
「無茶ですよ、麻代さん!? 治癒の気泡にてかの者に癒しを……!」
 膝をつく麻代へ、すかさずエリンが『海神の癒泡』を傷痕へと埋め込んでいく。彼女の天魔の力の一端、治癒の気泡が弾ける似合わせ、更に数匹の蛇が這いずり出た。
「がぁっ……畜生」
 二度目の打ち合いは手数でケルベロスに軍配が上がった。開幕直後なら、ここで不利を悟って退く判断も、マクシミリアンにはあったかもしれない。
「ぶちまけて、やる……っ!」
 だがその目は既に宿敵を追わずにはいられない。炎の激痛と蓄積された怒りに、彼の判断力は完全に奪われていた。
「其処までぶちまけたいなら、貴様自身がぶちまければいいだろう。身体の内の蛇でもな……我が身、唯一つの凶獣なり」
「露払いは任された。今こそ忍務、成し遂げん」
 逸れてしまった側方への注意、その死角に絶華とレンが食らいつく。
「この世を照らす光あらば、この世を斬る影もあると知れ――森花、分霊」
 突如増した圧力に振り向いたマクシミリアンが見たのは沈丁花、寒緋桜……分身と花弁。螺旋を帯びた森花の為す分身が包囲攻撃する中を絶華が駆けた。
「四凶門……『窮奇』……開門……! ……ぐ……ガァアアアアアア!」
 側方からのかく乱に広がった隙をつく、古代の魔獣の力を宿した斬撃。言葉もなく蛇を放とうとするマクシミリアンだが、その一撃は神速。
「っ、くそがァッ! どいつも! こいつもぉーッ!」
 黒風へと変わるゴシックドレスにマクシミリアンが叫ぶ。
 裂けようが、裂かれようがお構いなし。家伝のカタールが少年の腕をボロキレに変え、自身もろとも赤黒く染めていく。
「同情はしないぜ? 食らいつく相手が悪かったな!」
「これは、お返しっ!」
 ロディの言葉に偽りはなく、力の限り叩き込まれるファイヤーボルトの銃床。更に重ね撃たれた藍奈の破鎧衝も乗せ、グラビティ・チェインが炸裂した。

●あがき、喰らえ
「やったな……よくも……っ!」
 壁へと受け身も取れず叩きつけられ、マクシミリアンが激しく息を吐いた。印を結び分身を生むも、ぼやける姿はいかにも精彩を欠いていた。
「如何に毒蛇とはいえ、番犬に手を出せば無事では済まない」
 ケルベロスもまた、毒蛇の牙をもつ。言い放つ緋華の指先から伸びた、その瞳と同じ色の血糸が鞭のように振るわれる。
「私が成る。私が求む。運命を断つ、赤い糸」
 望むがまま、今は戦友の縁を断ち切るために切り裂く『糸の如く』。今生まれた分身が一瞬にして霧散する。全て跡形もなく。
「……奴は?」
 壁際のも本体ではない。ではどこに? 答えは背後から痛みとしてやってきた。
「僕が狩られる側? フザけるなよ……アバズレた色惚けがァ!」
 パンッ、と音を立てて緋華の胸が爆ぜた。月下美人の花を模した『繃曄』が赤く染まる。
「まだ、これほど……っ」
「成程……なるほど、ある意味お子様という事か」
 振り向きざまの射撃にマクシミリアンがまたも霧散する。本音と挑発を混ぜたエリンの呟きに呼応し、オウガメタルがメタリックバーストを放つ。
 逃げる敵は手負いの獣、だが奴はどこにいる?
「ん……そこだぁッ!」
 覚醒するする感覚の中、真っ先に気づいたのは螺旋忍者たち。藍奈の低い視点が死角を這い動く姿をとらえ、跳躍。三角飛びからのヴァルキュリアブラストがマクシミリアンを跳ね飛ばす。
「こんなっ、このボクが……!」
「これ以上犠牲者は出させねぇ、今日がお前の最後の日だ!」
「我らが涅槃へ送り届けてやる。覚悟」
 螺旋の掌で迎撃するも、レンがばらまいた紙兵が即座に受け流し、更にロディの怒りの追撃。もはや少年に手札はない。
「まぁ宣言通り、ずいぶんとブチまけてくれちゃって……私一人じゃ死んでましたよ」
「……っ!」
 這いずるマクシミリアンの前には、ギルティラから属性を託された麻代。非物質化し、燃えるように揺らめく斬霊刀を彼女は迷いなく眼下へ突き刺した。
「ボクが狩られる……イヤだっ、……ボクは!」
「あぁ教育するっていいましたけど……これだけ拗らせてちゃあ、手遅れだ」
 念入りに。満遍なく。言い表せぬ悲鳴が消えるまで、念入りに。

「ここで倒せたのは、幸いだったな」
「あぁ、俺たちはもっと俺達はもっと強くならなければならんな」
 戦いは相応に死闘だった。守るべきものをもつ絶華の不安の声にレンは頷きつつ、ソラネに支えられた勝利者、倒された宿敵へと祈りをささげる。
「お疲れだ。大事ないか?」
「えぇ少々血と肉が足りないくらいで……助太刀ありがとうございます」
「そう言わないでください。貴方は一人で戦っているのではありませんから」
 素直な言葉がこそばゆく、手を振るソラネに麻代も笑う。いつもの顔で。
「お礼に何か奢っちゃいますよ! 動ける範囲で」
「おっ、いいな! 麻代への労いも兼ねてさ……頑張った、藍奈も、俺も、みんなよく頑張った!」
 緊張が解けて泣き出す藍奈を撫でるロディ。そのよく通る声は、勝鬨のように廃墟へ響き渡った。

作者:のずみりん 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2018年3月4日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 5/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 2
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