屋内プール防衛戦

作者:零風堂

「はい、それじゃー手足を大きく動かしてー」
 リズミカルな音楽に合わせて、力強い声が響き渡る。ぱしゃぱしゃと水に浸かった女性たちが、微かに息を荒げながらもエクササイズに励んでいた。
 とある室内温水プール。
 温水といってもお風呂のように温かいわけではなく、子供向けの水泳教室から今行われているエクササイズ、水泳競技の選手のトレーニングやリハビリなど、様々な目的で利用されるプールを、どんな季節であっても使用できるよう、水温・室温が管理された施設だった。
 今はちょうど女性向けのエクササイズが行われているらしく、トレーナーの指導の元で、多くの女性たちが身体を動かしている様子だ。
「ブヒヒ……、イイ女ノ、臭イガスルゾ!」
「頂キダ、ブヒッ!」
 そこに突如として魔空回廊が開き、次々にオークたちが這い出してきた!
「き、きゃああっ!?」
 逃げ惑う女性たちがオークの汚らわしい触手に掴まり、捕らえられていく。
「ブヒヒッ、イイ女、頂キッ!」
 オークは下卑た笑みを浮かべながら、触手で乱暴に、女性の胸をまさぐり始める。
「や、やめ……、やだ、痛い、痛いぃ!」
「ブヒッ、ブヒッ、タマラン!」
 女性の悲鳴を愉しむかのように、オークは涎を垂らしながら触手を振るう。
 そうして多くの女性たちが、オークの乱暴を受けながら、魔空回廊へと連れ去られてしまうのだった。

「お疲れさんです! それじゃあ早速、事件の話を始めますね」
 黒瀬・ダンテ(オラトリオのヘリオライダー・en0004)はそう言って、集まったケルベロスたちを労いつつ、予知の内容を話し始める。
「オークの奴らが、女性たちに襲いかかり、連れ去っていく事件が発生するのが予知されたっすよ。いつものように魔空回廊を使って現れた奴らは、女性の多くいる場所を狙って、略奪を企てているみたいっすね」
 そこでダンテは言葉を切り、横に並んだ少女に話を促した。
「私が妹と遊びに……、コホン。トレーニングに向かおうと考えていた屋内プールで、事件が起きてしまうみたいなんです」
 シャイン・セレスティア(光の勇者・e44504)の言葉にダンテも頷き、話を再開する。
「こちらのシャインさんの調査を元に予知を行った結果、女性向けのエクササイズ教室が行われているときにオークが現れて、女性たちを連れ去るって事件が察知できたっす。例によって襲われる女性を先に避難させてしまうと、オークたちは別の場所に出現してしまって、被害を防げなくなってしまうっす。ですんで女性たちの避難は、ちょっと大変っすけどオーク達が出現してから行わないといけないっす」
「現れるオークは15体、プールに居る女性は、トレーナーの人を合わせて20名弱ってところっすかね。触手を使って女性を捕まえたり、溶解液を出して攻撃して来るっす。あと胸の大きな女性を捕まえると、乱暴に胸を揉んできたりするみたいっす」
「胸を……、ですか?」
 シャインの表情が、僅かに曇ったような気がした。
「それは女性にとってみれば、かなり痛いみたいで……。酷いことするっす」
 ダンテも、もし女性が捕まってしまったらと思ったのか、気の毒そうに息を吐く。
「女性たちを、そんな酷い目に遭わせるわけにはいかないっすよね。皆さんで力を合わせて、女性たちを救ってあげて欲しいっす」
 ダンテの言葉に、話を聞いていたケルベロスたちは力強く頷くのだった。


参加者
ペトラ・クライシュテルス(血染めのバーベナ・e00334)
鳴神・猛(バーニングブレイカー・e01245)
分福・楽雲(笑うポンポコリン・e08036)
除・神月(猛拳・e16846)
楊・凛華(地球人の鎧装騎兵・e41474)
星乃宮・紫(スターパープル・e42472)
シャイン・セレスティア(光の勇者・e44504)
ガートルード・コロネーション(コロネじゃないもん・e45615)

■リプレイ

 濡れた身体が冷えないように、屋内プールは程よい暖気に満たされていた。
 明るい曲調の音楽が流れ、輝く水飛沫を上げながら女性たちはエクササイズに励んでいる。そんなどこにでもあるような平和な光景に、突如としてオークたちが雪崩れ込んで来た!
「ブヒヒッ、イイ女の臭イガスルナッ!」
 醜悪な外見と下品な笑み、異様に蠢く触手とそこから滲み出る白く濁った溶解液に、女性たちも嫌悪感から悲鳴を上げてしまっていた。
「落ち着いて、慌てずに逃げてちょうだい」
 プールサイドに座っていたひとりの女性が立ち上がり、勇ましき金の瞳で声を出していた。
「アタシたちケルベロスがいるわぁ。オークなんかやっつけちゃうんだからぁ」
 ペトラ・クライシュテルス(血染めのバーベナ・e00334)は大胆な水着でぷるるんっと余裕の笑みを振り撒き始める。それから女性たちが慌てないように注意しながら、オークたちとの位置を確認していた。
「女性たちがプールの外に逃げられるよう、誘導するぞ」
「はいっ!」
 分福・楽雲(笑うポンポコリン・e08036)が騒ぎを聞きつけ、ティニ・ローゼジィ(旋鋼の忍者・en0028)と共に男子更衣室から駆け出してきた。
「……にしても、こんな時期でも水着姿を拝めるんだもの。温水プールはどうしようもなく素晴らしいもんだよね」
「はいっ……、え? いや、その……」
 冗談交じりの楽雲の言葉に、ティニは多少うろたえながらも、女性たちのフォローに向かう。
「ブヒッ、女を逃ガスなんて、トンデモないブヒー!」
 女性を逃がそうとするケルベロスたちに、怒りながらオークたちが迫ってくる。中にはいきり立つ触手を伸ばしてきている者もいた。
「こっちだよ! 今のうちに逃げ……」
 鳴神・猛(バーニングブレイカー・e01245)が割り込んで、触手を腕で搦めとる。
「ふん! ……そんな雑なのじゃ、……全然平気!」
 猛の豊かな胸にオークの触手が巻き付いて、激しく乱暴に動き始めた。
「絞ったり挟んだりしても……、気持ちよくなんて……」
 ぎゅうぎゅうと扱われ、柔らかく形を変える胸だったが、猛は何とか平静を保っている様子だ。
「ふハッ、胸が好きなのは星を超えても共通らしーナァ?」
 除・神月(猛拳・e16846)が脇を締め、胸がより大きく見えるよーにすると、自然とオークが集まってくる。どうやらこのオークたちは、大きな胸が好みらしい。
「ッ、は……。もっと優しく、出来ねーのかヨ……!?」
 力任せに打ち付けるような触手の動きに、自然と息が吐き出される。神月は少しだけ顔をしかめながらも、敵の注意を引きつけることに集中していた。
「私が救出に向かうわ、パープルシェイキング!」
 女子更衣室から飛び出してきた星乃宮・紫(スターパープル・e42472)、もといスターパープルの放った重力波が、迫り来るオークを触手ごと弾き飛ばす。下からの突き上げるような衝撃に、先頭のオークが転んで敵の進行が止まった。
「心配しないで、もう大丈夫だから」
 ガートルード・コロネーション(コロネじゃないもん・e45615)はバトルクロスをアルティメットモードに変化させ、女性たちを励ましながら出口へと導く。
「これで最後ね。あとは任せて」
 女性たちの中に紛れ込んでいた楊・凛華(地球人の鎧装騎兵・e41474)は自然と最後尾につくようにして、逃げ遅れる人が出ないように配慮していた。全員が出ていったことを確認すると、扉の脇に隠しておいたアームドフォートを装着する。じゃきん、と砲口をオークに向けつつエアシューズを履き、太腿にカードホルダーを備える。取り出したシャーマンズカードを指で挟むと、念じるように、意志を固めるかのように、一瞬だけ目を閉じ……、素早く駆け出していた。
(「囮になってくれている人たちを、早く……!」)
 滑らないよう足元に注意しつつ、凛華は小型機を射出しながら目を細める。
「ブヒヒッ、イイ乳ダッ!」
「モット強クシテヤレッ!」
 耐える猛に無数の触手が絡み付き、胸が先端から脇の下まで、ぎゅうぎゅうと絞り上げるように強く捩じ上げられる。
 にちゃにちゃと滲み出て来た溶解液が細かく泡立って、白く濁った汚らわしい色と臭いを漂わせていた。
「……っ!」
 猛は鳴神不動流奥義の一つ『暁雲』を利用し、オークたちの意欲を煽り立てていたらしい。一人に対して多くのオークが触手を向けてきて、その執拗な攻めは胸だけでなく、全身にも広がっていく。
「ブフォ……、弄ル処ガ無イゾ。仕方ナイ、尻デモ揉ムカ」
 ぬるり、と触手の一本が、猛の臀部に伸ばされた。同時にびくん! と猛の背が跳ねる。
「!」
 次第に頬が紅潮し、口端から熱い吐息が漏れ始める。
「何ダ? コッチガ好ミカ?」
 ぐちゃり、ぐちゃり……。と、ゆっくりとした水音が耳につく。オークは下品な笑みを漏らしつつ、わざとゆっくりねちっこく、執拗に猛の身体を弄び続けた。
「オークのような雑魚デウスエクスは、勇者であるこの私が華麗に倒してみせます!」
 シャイン・セレスティア(光の勇者・e44504)が気合いと共に剣を抜き、オークへと斬りかかっていく。
「受けてください、必殺ブレイブスラッシュ!」
 激しい光が剣に宿り、派手な斬撃がオークたちに解き放たれる。これを受けて生き残れるオークはいないと思っていたシャインだったが……。
「……って、全員ピンピンしてますーっ?! それになんか怒ってるような!」
 オークたちは全く平気な様子で、先ほどの一撃に導かれるように、シャインのほうへと向かい始めていた。
「こうなったら本気を見せましょう」
 そう言ってリストウェイトを外そうとするシャインだったが、オークが待ってくれるはずもない。
「ち、ちょっと待って……きゃっ!」
 触手で四肢を絡め取られ、大の字にされてしまう。そこにべちゃべちゃと、乱暴に溶解液が噴きつけられていく。
「こん、なっ……。いやっ……」
「ブヒ、ブヒヒッ!」
「オ、オッ……。イクゾ、喰ラエッ!」
 シャインの眼前に突き出された触手が醜悪に蠢き、びくん、びくんと跳ねるようにして溶解液を吐き出してくる。両手を封じられたシャインは防ぐことができず、その青い目も金の髪も、白濁した粘液でどろどろに汚されていった。
「うぇぇ……、あっ、水着が……」
 オークの溶解液が水着を溶かし、無数の触手がシャインの胸に伸びてくる。にちゃにちゃと粘りを帯びた粘液でぬめる触手が這い回り、痛いほどに胸を擦り、絞るように力を加えて来た。
「い……、痛い!」
 皮膚を剥がれ、異物を擦り込まれるような激痛と、醜いオークの触手に弄ばれるという嫌悪感がシャインを傷つけていく。その屈辱に耐えながら、シャインの脳裏にはふとした考えが浮かぶ。
(「……け、けど、揉まれると大きくなるっていう噂、本当でしょうか? もしかしたらこれを耐えれば大きくなるかもっ?!」)
 ……ちょっとだけ、現実逃避気味なシャインであった。
「ブヒッ、ブヒッ!」
「オイ、俺ニモ触ラセロ!」
 神月に群がるオークたちが、鼻息を荒くしながら触手を昂ぶらせる。どぷっと顔面に吐き出された溶解液を軽く指先で払いつつ、神月はオーラを全身へと巡らせて気力を溜めていた。
「へへッ、ドンドン来いヨ?」
 触手の先端を指で掴み、ぐちゅりと引きながら神月は笑う。別のオークが興奮した様子で身体を揺らし、触手をぐちゃぐちゃと蠢かせ始めた。胸の締め付けが強くなり、リズミカルに脈動するように力を加えては緩めてが繰り返される。
「……ハッ、乱暴なのは初心者相手のつもりでガマンしてやんヨ」
 やれやれと言った様子の神月に妖艶な視線を送られて、オークは情けない表情で胸に絡めた触手から、溶解液をどくどくと垂れ流すのだった。

「痛ッ……。強引なのは好きじゃないわぁ!」
 オークの触手がペトラの豊かな胸に触れ、乱暴に揉み始めようとする。ペトラはそれを闇の中から取り出した『Necro Rod』で弾き、逆の手で宙に水星のシンボルを描き出した。
「熱いのいくわよぉ!」
 噴き出した超高温のガスが、オークたちを浮足立たせる。その隙にペトラは魔術回路に快楽エネルギーを走らせて、高速で呪力を組み上げた。
「……消えてもらうわねぇ」
 妖しいほどに艶を帯びた金色の瞳が、にこりと笑みの形を見せた。同時に放たれた不可視の球体がオークの身体を食い破るように抉り取り、虚無の底へと消滅させていった。

「そんな乱暴なやり方で何考えてるのよ、最っ低!」
 流星のような勢いで凛華が飛び込み、オークの腹を思いっきり蹴り飛ばす。
「っと! いけないいけない」
 そのタイミングで猛が臀部を執拗に攻めてきていた触手を振り払い、気合いを入れて体勢を立て直した。
「ぶ、ブヒ……。オマエモッ!」
 凛華に向けて触手が伸びてくるが、凛華はその軌道を見切り、手の甲で払うようにすると同時に身を捻って回避する。
「速攻で片付けるわよ」
 誰かを傷つけ、痛めつけるようなその力は許せないとばかりに凛華がダッシュをかける。触手を掻い潜って相手の懐まで潜り込み、高速演算によって狙いをつけた一点に、思い切り肘をめり込ませる!
「グエ……」
 倒れるオークの下敷きにならぬように下がってから、凛華は次の敵へと狙いを定めていった。
「よっ……、アルムテルム!」
 猛の魂に眠る力に呼応して、オウガメタルの『鎧輝煌アルムテルム』が変形し、水着の破れた部分をカバーする。同時に繰り出された鋭い蹴りがオークの延髄をかち割り、ずしんと倒した。
(「プールの水を汚さないようにっと」)
 猛はオークがプールに落ちないように蹴り飛ばして、直後に拳を握り締める。アルムテルムの一部がその拳に集まり、ぼっと激しい炎が灯る。
「正面からぶち抜く!」
 プールを背に、突き出された猛の拳はオークの腹をぶち抜いて、その身体を燃え上がらせた。拳に回った分だけ支えが薄くなったのか、猛の胸もぶるるんっ! と大きく魅力的に揺れてみせる。

「おっぱいを、乱暴に扱う、不埒な輩……」
 楽雲は戦場に広く視線を巡らせながらも、機巧竜槌『クランカー』で近づいてきたオークを叩き潰す。
 視線を走らせているのは、戦況を把握し、ピンチの仲間を助けるためである。決して水着のナイスバディを眺めるためだとか、オークに色々されている女性ケルベロスを眺めるためではない。断じてない!(大事なことなので2回否定しました)

「オークと戦うのははじめてですけど、人々を守ることに変わりはない」
 ガートルードがマインドリングから光の剣を生成し、オークの腹を深々と薙ぐ。
「グアアッ!?」
 苦しみながらも触手を伸ばしてくるオークだったが、ガートルードは左手の剣でその攻撃を払って防御する。
「なんかやたら一ヶ所を狙ってくるんで攻撃は読みやすいけど、私は囮役じゃないんですよ?」
 マインドリングの光剣を解除し、オウガメタルの鋼の拳で応戦するガートルードだったが、相手は攻撃を受けながらも触手を震わせ、勢いよく溶解液を発射してきていた。
「なんか服溶けるし……。なんですかこいつら!?」
 慌てて胸元を隠しつつ、オークの執念にガートルードが僅かに動揺する。この、自らが傷つくことよりも、胸を露わにし、揉むことに命を賭けるような動きは、確かに理解しがたいものだろう。……いや、理解したくもないのだが。
「っていうか、溶けかかった服が薄くなって、激しく動くと……。最悪破けそう」
 その僅かな隙を狙ってか、ガートルードの胸を狙って触手が伸びてくる!
「女性は、もっと優しく扱いやがれ」
 呪詛と怒りの力を込めた、楽雲の斬撃が触手を断つ。悲鳴を上げて苦しむオークに、ガートルードが踏み込んだ。
「……朝日のように、希望をもたらすために!」
 振り上げた剣の鍔に輝くは太陽の装飾。その一撃に祈りと力を込めて、ガートルードは触手の生える根元に向けて、思い切り一撃を叩き付ける!
「ガ……」
 バッキバキに触手(得物)を砕かれ、オークは白目を剥いて崩れ落ちるのだった。

「ッ、は……。痛いのモ、まあまあ……」
 にちゃり、にちゃりと強く激しいオークの攻めに、神月が微かに肌を赤らめ始め、艶を帯びた息を吐き出し始めた頃、激しい銃撃が降り注いできた。
「大丈夫ですか?」
「んッ……。ここまでカ」
 駆け付けたティニの前で触手を振りほどき、軽い動きで神月はオークを蹴り飛ばす。鍛え上げられた肌からは微かに汗が滲み、色濃い艶っぽさが漂っている。ティニは思わず顔を赤らめて、言葉を失っているようだ。
「ちょっと刺激が強ぇかも知んねーガ、最後までちゃんと立ってろヨー?」
 神月はそんなティニに気づき、軽くぺちんと尻を叩いて送り出す。それから自分も動くかと、すぐに視線を真剣なものへと変えていった。
「ティニさん、あっちに苦戦しているケルベロスがいるみたいです! ぜひ助けてあげてください!」
 ちょうどそんな声が聞こえてきて、ティニは示された方向へと駆け出す。はて、一般人は避難したはずだが……?
「……あっあっ、ふぁっ。いや……」
 シャインがオークに囲まれて、何本もの触手で弄ばれていた。あまりに執拗に胸ばかりを弄られて、痛みとかそうでないものが、強引に無理矢理に、身体へと刷り込まれているような状態だ。
「いけない!」
 ミサイルを発射し、オークを牽制するティニ。そのままダッシュで突っ込んで、シャインを触手から救い出した。
「うう……。えっ、ティニ君? やっ、見ないでっ!」
「あっ、す、すみません!」
 慌てて身体を隠すシャインから、あたふたしながらもティニは目を逸らす。それから自分のマフラーを渡し、少しでも身体を隠せるようにと促した。
「って、え、なんでオークがこっちにも? きゃ、きゃああっ!」
 一方では悲鳴が上がり、誰かがオークに襲われている様子であった。
「パープルアイスエイジ!」
 駆け付けた紫が、吹雪の力を召喚する! 氷に包まれながらも触手を繰り出してくるオークだったが、紫は怯まずにそれを掴んで引き、逆の手で『気』を指先に集中させる。
「パープルフィンガー!」
 紫の一撃はオークの眉間を突き穿ち、その歪んだ生に終焉を刻み付けた。一方悲鳴の起きた辺りでは、『お姉ちゃんに関わるとろくなことがありません』といった呟きが聞こえてきたとかなんとか。

 そんな感じで、一部大変な目に遭った人も居たものの、何とかオークたちを殲滅することができた。
「まだまだプールは室内のが気持ちいい時期だからね~。 地上でやるのとは具合も違うし、楽しんでトレーニングできそう!」
 猛はプールに溶解液が落ちていないか確認しつつ、無事に片付けることができて良かったと頷いている。
「ああいうのが湧いて来たら台無しだからな!」
 猛の言葉に凛華も頷いていたが、その表情は少々固い。
(「自分が囮になっていれば、仲間も痛がらずに済んだのかしら……?」)
 作戦上仕方なかったとは言え、そんな思いが彼女を悩ませているようだ。
「ま、そんな難しい顔してないで。せっかくだし遊んでいけないかな?」
 楽雲が心情を察してか、努めて気楽な様子で提案する。スターパープルからいつの間にか戻った紫も、おずおずとプールの水に手を触れる。
「エクササイズ……。やっていこうかな……?」
 水は程よい温かさで、身体を柔らかく包んでくれそうな気がした。

「…………」
 ガートルードは静かに、プールサイドから離れていた。何かから逃れるように、左手を庇うようにしながら――。
 それでもその表情には、僅かではあるが、事件を解決できた安堵が浮かんでいるように見えたのだった。

作者:零風堂 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2018年3月1日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 4/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 1
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