ちょこれいと・とらっぷ

作者:志羽

●ちょこれいと・とらっぷ
 朝早い河原にて。
 握りこぶし程の大きさのコギトエルゴスムに、機械で出来た蜘蛛の足のようなものがついた小型ダモクレスががさがさと動いていたが、あるものを見つける。
 そしてそれは見つけたものへと飛びついた。
 それは周囲に捨てられていたものを巻き込んで肥大化して不格好な手足を得て立ち上がる。
「ちょー! こー!」
 家庭用チョコファウンテン――それは今、チョコではなく周囲から得たごみを垂れ流すのだった。

●予知
 ダモクレスが現れる。そういう予知をしたので対処してほしいんだと夜浪・イチ(蘇芳のヘリオライダー・en0047)は集ったケルベロス達へと紡いだ。
「とある河原に捨てられてた家庭用のチョコファウンテンがダモクレス化しちゃったんだ。まだ被害はでてないけど放っておいたらというところ」
 ということで、行って倒してきてほしいのだと言う。
 敵のダモクレスは家庭用チョコファウンテンだったものだ。
 身体は肥大化し、それに手足がついてチョコではなくごみを垂れ流しているのだという。
「ごみを……それは嬉しくもなんともない」
 むむ、と唸りながらザザ・コドラ(鴇色・en0050)はその話を聞いて唸る。
 イチはそうだねと頷いて、敵の攻撃方法について説明を始めた。
 敵のダモクレスはのびたコンセントでの攻撃。それからチョコ――ではなくごみを飛ばしていくと言う。
「ということで、無事に敵を倒してくれたらそのあとに」
「その後に」
「そのまま行ける、近くにある素敵なショコラティエのお店を教えてあげようと」
「行くー!!」
 ザザが食いついたお店。
 そこは持ち帰りのみの店なのだがショーケースにはチョコがいろいろと並んでいる。
 それから、チョコレートを使ったケーキも何種か。
「これは……とても楽しいお店に違いないわ……あああ、可愛い箱に綺麗につめてもらうとプレゼントにもよさそう。箱に詰め放題はちょっとお値段高いけど!」
 ということで。
 戦闘のあとのお楽しみも得つつ、ケルベロス達は現地へ向かう。
 終わった後は、楽しんできてねとイチは声をかけ彼らを送り出した。


参加者
疎影・ヒコ(吉兆の百花魁・e00998)
オペレッタ・アルマ(オイド・e01617)
蓮水・志苑(六出花・e14436)
ジルカ・ゼルカ(ショコラブルース・e14673)
ティスキィ・イェル(ひとひら・e17392)
影守・吾連(影護・e38006)
風鈴・羽菜(シャドウエルフの巫術士・e39832)
ジルベルタ・ラメンタツィオーネ(宵月が照らす白・e44190)

■リプレイ

●チョコファウンテン、動く
 それは朝早くの事。
「チョコファウンテンってチョコレートを噴水のようにしてくれる機械ですよね。私、はじめて見ますので楽しみです」
 そう言って、風鈴・羽菜(シャドウエルフの巫術士・e39832)にザザ・コドラ(鴇色・en0050)は、敵は偽物なのだけどねと紡ぐ。
「嘗ては人々を喜ばせていたチョコレートファウンテン。役目を終えたとはいえ河原に廃棄されたのは悲しいですね」
 蓮水・志苑(六出花・e14436)はそもそも、河原はゴミ捨て場ではありませんと零す。
 けれど、何より人を襲う殺戮機となるのはもっと悲しい事と思うのだ。
 動き始めたダモクレスは周囲のごみを零しながら立ち上がる。
「チョコファウンテンならまだ夢があんのにゴミって」
 そう零す疎影・ヒコ(吉兆の百花魁・e00998)はふと傍らに視線向ける。
「ジルカとは良く逢うな。頼りにしてんぜ」
 そう声かけられ、ジルカ・ゼルカ(ショコラブルース・e14673)は瞬き、うんと頷いた。
「甘い罠……じゃないね、アレは。なんて、変わり果てた姿に……絶対許してやんない!」
 ジルカの声にペコラも一声鳴いて共に向かう。
「これが……チョコレイト・ファウンテン」
 オペレッタ・アルマ(オイド・e01617)はその姿を見上げ。
 しかし、拭きあがる者を見てしゅんと肩落とす。
「……チョコレイトが、まっています」
 けれどふるふるとかぶりを振ってオペレッタはその姿を見据えた。
「家族へ甘く楽しい時間をくれたものがこんな形に変わってしまうのは悲しい、ね」
 あなたのこと、綺麗にするからとティスキィ・イェル(ひとひら・e17392)は待ってて、と構える。
「散らかされちゃ困るし、早めに片付けよう」
 買い物の時間も欲しいしね! と影守・吾連(影護・e38006)は笑って羽ばたき一つ。
 買い物は楽しみだけど、それはそれとして、とジルベルタ・ラメンタツィオーネ(宵月が照らす白・e44190)は零す。
「まずは、この役目を捻じ曲げられた、不憫なチョコファウンテンを眠らせてあげようか」
 人々に笑顔を齎していたはずのもの。
 それがこの先、人々のすべてを奪わぬように――ダモクレスとの戦いが始まる。

●ゴミはお断り
 ゆっくりと動くダモクレス。それはチョコレートファウンテンの姿をしつつも今はもう、人々を楽しませるものでは無い。
 それへと向かって最初に一歩踏み出したのは志苑だった。
 白雪の桜が刻まれた、刀身から全てが真白い刀の切っ先を敵へ向ける。
 志苑はその手にある白雪で緩やかに弧を描いて敵を斬りつける。
 丁度足の継ぎ目を捉えた一撃に敵の身体は傾いた。
 そこへ花羽纏う脚に、流星の煌めきと重力をもってティスキィは蹴り一つ。クラーレも合わせて、攻撃を仕掛けた。
 傾いた身体はその衝撃で真っすぐに。
「さぁさ、お楽しみの為にもさっさと片を付けてやるよ」
 そう言ってヒコは竜槌を振り上げ、叩き潰すように振り下ろす。
 オペレッタは前衛の仲間へ向け、全身の装甲から光輝くオウガ粒子を生み出し力貸す。
「きみに、あげる」
 ジルカが差し伸べた手に、ベニトアイトの煌き宿した幻影の大鎌。
 輝く刃の切っ先を振り下ろせば敵の身に一閃走る。
「チョコファウンテンマシン、俺も欲しかったのにー!」
 こんなダモクレスではなく、皆で楽しめるものを。
 ジルカはきっと、ダモクレスを睨みつける。
 もう一つ、おまけと言うように吾連もその脚に流星の煌めきと重力を。
 飛び蹴れば敵はぐぎぎと鈍い音を立てていた。
 けれどやられっぱなしではなく、敵も攻撃を仕掛けてくる。
 その攻撃は一撃で倒れてしまう程、というものではないが大事をとるのが一番。
「ダモクレスさんが撒くのがチョコレートでなくてゴミなのがすごく残念です」
 後でお掃除しなければ、と思いながら羽菜は紙兵を皆へと向ける。
 それは敵から飛ばしてくるゴミを払ってくれるようにと。
 後方からジルベルタが放ったのは呪い。それは土蔵篭りであるが故のものだ。
 どろっと吐き出すようにごみを飛ばしてくる。
 それはこの周辺のものを飲み込んだからだ。
 吐き出されたものを守り手に立つ者達が庇いだてる。しかし、攻撃に押されることもなく確実に敵を削り、決着がつくのは早かった。
 これでもか、というほどゴミを飛ばしてくる敵。
 それの与える阻害を取り払うべく、羽菜はフェアリーブーツ履く足で舞い踊り、仲間達を癒やす花びらのオーラを降らせてゆく。
「東風ふかば にほひをこせよ 梅の花――……忘れるな、この一撃」
 羽ばたき起こした辻風と共に敵への一蹴。どこか懐かしい甘い薫りを敵は感じてはいないが衝撃は鋭い。
 敵の攻撃をペコラが弾き、道を開けたところへジルカは走る。
「俺たちは、そうそう簡単には溶けないからね!」
 その脚に流星の煌めきと重力を載せ滑るように飛び蹴れば動きは鈍くなる。
 ジルベルタもまた脚に、それとは違う力を纏って敵へ向かう。
 星型のオーラ纏い、一撃入れれば敵はよたりと鈍い動き。
「『人形劇』を『はじめ』ます」
 オペレッタは紡ぐ。それと同時にグラビティを変換することで具現化した、無数の0と1の数列が敵に絡みつき『苦痛』を増幅する。
 オペレッタがもたざる左手をひらりふるえば、踊るのは敵の方だ。
 クラーレ、と声かければ花飾り揺らし応える。
 クラーレは竜の吐息を吐きティスキィは魔力を体内で生み出す。
「終わりを告げる鐘の音を聴いて。檻の寝台で、――おやすみ」
 その魔力が生み出すのは敵を閉じ込める檻。その檻に飾られた鐘は永遠の夢へと誘うように鳴り響き圧し潰す。
「散り行く命の花、刹那の終焉へお連れします。逝く先は安らかであれ」
 ひらりと、虚空より舞い落ちる雪花。清浄なる白き世界に咲き誇る氷雪の花は斬撃となる。
 志苑の一撃は確実に入り、敵の身の一部はぼろりと崩れた。
「――常夜で眠れ」
 そこへ襲い掛かったのはフクロウの幻影だ。
 吾連の形成したフクロウたちは一斉に音も無く襲い掛かる。
 死へと誘う呪いをその爪で。
 その一撃受けて、ダモクレスはその身を崩していく。
 ゴミをまき散らすのを止め、そしてその活動すべてを終えたのだった。

●ちょこれぇとぱらだいす
 ダモクレスの後片付けと河原の掃除も終え、身綺麗にしたならばいざ向かうのは――チョコレートショップだ。
 バレンタインを経てチョコレートが好きになったジルベルタ。
 それは単純に美味しいお菓子への興味からだった。
「そう言えば、14日、テオには何もあげてなかったっけ」
「そういえば、バレンタインには何もくれなかったっけ」
 そんな声が、二人でチョコレート見ながら零れたのは同時。
 からかい半分にジト目で紡いだテオドールは言葉続ける。
「『外』で初めてのバレンタインで、楽しみにしていたのに」
 と、傍らのボクスドラゴン、アルフに同意を求めるテオドール。
 それを見て、ジルベルタはそれならと笑う。
「せっかくだし。アルフも一緒に、皆で食べよう」
 何のことは無い、互いに抱く感情は家族の、兄妹の持つ物に近いような、親愛。
 今はその感情だけれど、それがこれからどうなるかは誰にもわからないのだろう。
「あ、これにしようテオ」
 大きいから皆で分けられるからと少し大きめのチョコケーキを選んでジルベルタは嬉しそうにする。
 その様子にテオドールも笑み零しながらアルフを撫でていた。
「あの、ダモクレスさんではないチョコレートファウンテンはありますか?」
 と、羽菜は尋ねる。残念ながらそれはこの店にはないとのこと。
 チョコレートが流れる様子を見てみたいですと零す羽菜に店員はそれはスイーツバイキングに行かなきゃないかなと笑って答える。
 羽菜は笑って、小さなチョコレートの詰め合わせをとお願いする。
 それは家で分けられるようにと思ってだ。
「チョコの旅、楽しもうね!」
「いざ、チョコの旅なのだー!」
 えいえいおーと吾連と千はポーズを。
 そして吾連が最初に向かったのは動物チョコ。
「オオカミにウサギ、フクロウの夫婦、ちびドラゴン。それから……このパンダチョコは千へ!」
 千の家族みんなへ。吾連は贈る相手を思って選ぶ。
「千も素敵なチョコ、見つかった?」
 そう言って見に行くと、千が選んでいたのはニューヨークカップケーキ。
「クリームがバラの形で、色んな形のクッキー乗ってるのだ」
 吾連のは流れ星のクッキーと千は言う。それを選んだのにはちゃんと理由がある。
「瞳の色、お星さまみたいでキレイだからな」
「俺にも? ありがとう! 星のモチーフ、すごく好きだよ!」
 そう言って、千は吾連につられて笑う。
「吾連はいいのあったか? ふぉ! 動物チョコ、どれもとっても可愛い!」
 千にはパンダと言うとありがと! と一言。
「パンダさん大好きなのだ。きっと皆も喜んでくれるな」
「ね、この巨大ゴリラチョコも買って行こうか。皆きっとびっくりするよ!」
「ふむ? 巨大ごり……おおお! すごいゴリラチョコ! 本物みたい!」
 楽しく笑いあって、皆とわけっこする楽しみも。
「へぇ、ほんっとにオシャレだよなあ」
 どうにも場違いな『オシャレで可愛い』店。しかし、そこも同行者が居るなら怖くない。
「――……いいだろ。俺だって美味いチョコ喰いてえんだよ」
「ほれほれまだ何も言ってねぇだろい?」
 自分用だよ、悪いかとヒコは市松へ言う。
「自分用でもなんでもうまけりゃあ良いってな! 恥ずかしがらずにどーんっと構えてろよ!」
 オレも自分用に買うかねと笑って市松はショーケースの前に。
 そこに立てば、様々なチョコレートが並んでいて。
「目移りするばかりだな……知ってはいたがこう山ほどあると悩ましいモンだな」
 さぁて、と。と、ヒコは右から左、ショーケースの中を見つつ。
「どーれーにーする、かねぇ」
 指指し迷うは悪い癖。
 参考迄にと市松の品定めを拝見。
 その視線に気づいて、オレかい? と市松は少し考え。
「そうだなー、このビターとか中々洒落ててよくね? 中にオレンジとかイチゴの……なんかね……何か入ってるみてーだぜ! これぜってーうめぇ」
「ほお。確かに美味そうだ。中に何が入ってるかはお楽しみってのがまた良い」
「そう言うヒコはどうよ。まーだ迷ってんのかい?」
「俺は慎重派なんだよ」
「ほれほれ、オレのチョコやるからお前さんもくれない。折角だからよわけっこしよーぜー」
 笑って、市松は早速店員を呼ぶ。
 その姿に苦笑し、ヒコはそうだなと視線を戻す。
「――……うし、分けんならコレにすっか」
 迷い迷った指先が示したのは艶やかな、大きなザッハトルテ。
「1人じゃ喰えねぇが2人ならいけんだろ。戦力として期待してんぜ」
 もちろんと笑う。その御供は茶か酒か。
 そんな話をする横で並んで楽しそうに、幸せそうに。
「お花が描かれたチョコかわいい……」
 そう零すと、クラーレも覗き込みティスキィは興味津々ねと笑う。
「お高いチョコも気になる……! 見た目がカワイイし、キレイだし……」
 そして、隣で瞳輝かせるゼロアリエ。その姿を見るのが好きなティスキィは自然と笑み零れていた。
「でもせっかくならリーズナブルなチョコをお腹いっぱい食べる方が良いかな?」
 どうする? と問われティスキィはまず、おサイフと睨めっこ。
「……色々、買っちゃいましょう」
 それで喜んでもらえるなら幸せ。ティスキィはどれにしますと一緒にケースを眺める。
 無事に帰ってきたゼロアリエとこうして過ごせば離れていた時間の淋しさも癒される。
 そして、これとゼロアリエが示したのをティスキィも目で追うと。
「キィにはこういう花とかリボンとか、カワイイチョコがスゴく似合う!」
 その言葉に、ティスキィの頬は染まり、笑顔をゼロアリエだけに向ける。
 その笑顔をコッソリ録画できないかなと思いつつ、ゼロアリエは二人で大切に食べようと紡ぐ。
 でも。
「でもホントはね、キミの手作りがどんなチョコより最高に美味しいんだよ」
 小声でそっと、ティスキィだけに紡がれた言葉。
 買ったチョコの甘さと一緒に、手をとって大好きを伝えるべくティスキィは笑む。
「今日は大人のセレクト、伝授してよ。そう、女の子に選ぶならどのチョコ? 一応結婚経験、あるんでしょ」
「してたけど、僕じゃ世代とか乙女心とかさあ……」
 ケースを眺め思案顔のゼレフに悪戯するように笑いかけるジルカ。
 ジルカ君があげたいものでいいじゃん、と誤魔化せるわけもないしゼレフはわかったと覚悟を決める。
 楽しみと笑うジルカはケースに目を向ける。
「赤いハートの一粒チョコ、それともプラリネ? チョコレートキャラメルも美味しそう」
 どれにしようかと迷うジルカ。
 その様子に思わず眦緩めふと、ゼレフは気付く。
 嘗て低い所にあった宝石の角。それが随分と近い。
 そう思っていると、決まった? と問われ。
「そうだなぁ……これなんてどう?
 見た目こそ控えめなフォンダンショコラケーキ」
 こんな季節だものとゼレフは笑う。
「一緒に温めて、一緒に切って食べられるなら、きっといい時間になるだろう?」
 その選択にジルカは唸るけれど、ちょっと悔しい所もある。
「……ロマンチストだね」
 そう言いながら、ジルカが選ぶのはチョコマカロン。
 マカロン生地はチョコで、クリームは柚やイチゴ、抹茶と色々ある。
 迷いながら選んだそれを宝物運ぶようにジルカは捧げ持つ。
 その反応にドヤ顔決めるも素直に褒めてくれないものかと苦笑交じり。
 けれどそれも、予想の内。
「これ、ひとつ下さい――この子に」
 そう言って、選んだ一粒。それに瞬いて、ジルカは呟く。
「一緒に、か。修行が足りないや、ウーン……まだ盗めないかなぁ」
 その手には勉強代わりにコッソリ買った、たった一粒がある。
 ミルク色したチョコレート・ボンボンを後ろ手に隠して――ホントに、甘いんだからとジルカは零す。
 一人なら絶対に訪れないであろう雰囲気、と蓮は店内を見回す。
 明らかな人選ミス、何故俺なんだと蓮は思いつつ、ガラスケース覗く志苑へと視線向ける。
 ガラスケースに並ぶ物に目を輝かせていた志苑は蓮へとどうしましょうかと向き直った。
「これだけありますと悩みますね。どういった物が良いでしょうか」
 二人共がお世話になっている人への贈物。それを選びにきたのだ。
「……確かに俺も世話になっているがしかし適材適所という言葉もあるだろ。こういうの男目線必要か?」
「男性目線ではまた違うのでは?」
 そう問われ、慣れない店内の雰囲気に落ち着かず視線巡らせればふと目についたもの。
 細工の施された華やかな一口サイズの惑星チョコが宝石のように並べられ詰め合わせになったものだ。
「……これとかか?」
「まあ、とても素敵な惑星ガナッシュの詰め合わせですね」
 それを示せば志苑は頷き、では、これをとお願いしながら暖かで優しい友の笑顔を思う。
 包んでもらった物を受け取って志苑は蓮へと笑みを。
「お付き合いありがとうございます」
「別に。あんたにも世話になってるしな」
 志苑が選んだのは甘さ控えめのもの。
 それを取り出し、いつもありがとうございますと蓮の手に乗せる。
「……俺に? あんた本当律儀だな」
 それを見て、志苑を見て、
 蓮は小さく笑い零し、ありがとうと答えた。
『これ』はしっています、とオペレッタはその瞳を瞬かせる。
 チョコレイト――それがおいしいこと。
 口にしたみなさまが、やわらかなおかおをなさること。
 日本茶といただくチョコレイトが、よりおいしいこと。
 けれど、もう一つ、今日知ることができた。
 それはこの場にいる皆の横顔さえもキラキラと輝いて、楽しそうな事だ。
「ごらんくださいギヨチネ。チョコレイトが、たくさんあります」
 知らず知らずにはずむ声色。人形さながらの面立ちは頬のみ期待にほんのりと染まっていた。
 ギヨチネは並ぶそれに瞳細め。
「普段買うことの出来るショコラも美味しゅうございますけれども、斯様にひと粒ひと粒を選び取りながら、ゆっくりと味わうことの出来る機会をいただけるのはなんとも有難いこと」
 その礼をオペレッタに紡ぐさて、と視線巡らせる。
 異なるものを数粒ずつ選ぶのはオペレッタにもと思って。
「後ほど、お茶の時間に参りましょう」
 香り高く、味わいの違いを感じながら、穏やかに過ごす時間が如何に贅沢であることか――無論、此処で過ごす時間も、ですけれどもとギヨチネは笑む。
「! ごらんください、ギヨチネ。お酒がはいったものもあるそうです」
 どのようなおあじがしたのか、どのようなココロがともったのか――『これ』にも、おしえてくださいとオペレッタは紡ぐ。
 ギヨチネはええと頷き逆に問う。
「オペレッタはご興味がおありのショコラはございますでしょうか」
 そして、オペレッタ自身も悩んだ末選び取ったのは――ココロ象った赤い一粒。

作者:志羽 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2018年3月12日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 2/キャラが大事にされていた 2
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