私のチョコだけをあの人に

作者:秋津透

「さて、あとは冷やして固めるだけ」
 千葉県千葉市郊外にある、主として学生向けのアパートの一室。
 この部屋に一人住まいしている大学生の美奈子は、意中の彼に渡すための手作りバレンタインデーチョコを型に流し込んで、ふっと溜息をついた。
「でも、どうせ……その他大勢チョコなんだろうなぁ……」
 美奈子がチョコを渡そうと思っている人は、ある授業を受け持つ若い講師なのだが、学生に人気があり、毎年バレンタインデーには多くのチョコを受け取っている。彼にとっては、美奈子は教え子の一人にすぎないし、手作りだろうが本命だろうが、彼女が渡すチョコは多くの女子学生が差し出すチョコの一つに過ぎない。それを承知で、渡すつもりでいたのだが。
「あー、あの人に、私のチョコだけを受け取ってもらいたい。私のチョコだけを食べてもらいたい。誰か、何とかしてくれないかしら?」
 溜息まじりの独り言に、思いもかけない反応が返る。
「その願い、叶えましょう」
「えっ!?」
 振り返った美奈子の前に出現するのは、孔雀のような鳥人間、ビルシャナの幻影。
「私は、諸人の願いを叶えるビルシャナ菩薩、大願天女。あなたに、願いを叶える力を与えます。この力を使えば、意中の男性にあなたのチョコだけを受け取ってもらうなど、容易なこと。彼にチョコを渡そうとする他の女を、皆殺しにしてしまえばいいだけですから」
「ライバル皆殺し……その手があったかあっ!」
 別人のように猛々しく叫ぶ美奈子は、既に人間の姿をしていない。大願天女の幻影に似た、鳥人間ビルシャナと化している。
「やるわ! やってやるわ! ライバルを皆殺しにして、私のチョコだけを彼に受け取ってもらうのよ!」
 羽と化した手をぐっと握りしめて叫ぶビルシャナ美奈子の前から、いつの間にか大願天女の幻影は消えていた。

「千葉県千葉市のアパートで、一人暮らしの女子大生さんが、ビルシャナ菩薩『大願天女』にたぶらかされてビルシャナ化してしまう、という予知がありました」
 ヘリオライダーの高御倉・康が、緊張した口調で告げる。
「彼女は、意中の男性にバレンタインデーチョコを渡すつもりでいますが、ライバルが多くて自分のチョコだけを受け取ってもらえる見込みがない。誰か何とかしてよ、と願ったところを、大願天女に付け込まれたようですね。それにしても、ビルシャナの力を与えるからライバルを皆殺しにしてしまえ、なんてそそのかす菩薩が、いったいどこの世界にいるんでしょう?」
 呆れてものも言えません、と言いながらも、康は言葉を続ける。
「残念ながら、全速で急行しても、彼女のビルシャナ化自体は防ぐことができず、大願天女を捕捉することもできません。しかし、彼女が自室から出てライバルの女性を殺して回るより前には、着くことができます。説得して、ライバル皆殺し計画を放棄させることができれば、ビルシャナ化した女性を助けることができるはずなので、何とかやってみてもらえれば、と思います」
 そう言って、康はプロジェクターに地図と画像を出す。
「現場はここです。ビルシャナ化した女性がいる部屋は105号室、一階の東隅ですね。幸い、他の入居者は全員留守なので、事前の避難などは要りませんが、帰ってきた入居者が戦場に踏み込んでしまわないよう、何か配慮する必要があると思います」
 そう言って、康は一同を見回す。
「ビルシャナ化した女性の能力やポジションはわかりませんが、それほど手ごわい相手ではないでしょう。ただ、説得が巧く通じて女性がビルシャナの力を拒んだ場合、彼女の意識は眠らされてビルシャナは戦闘マシンのように戦うので、多少注意が必要かもしれません。とはいえ、彼女の意識を眠らせるためビルシャナは自己攻撃をしてダメージを負うようなので、戦闘するにしても、説得しておくに越したことはありません」
 そして康は、一同に頭を下げる。
「私が言うのも何ですが、前途ある若い女性が、他愛もない願いにつけこまれて、ビルシャナと化して死んでしまうなんて、さすがにあんまりだと思います。どうか、説得して助けてあげてください。よろしくお願いいたします」


参加者
倉田・柚子(サキュバスアーマリー・e00552)
シィカ・セィカ(デッドオアライブ・e00612)
日柳・蒼眞(落ちる男・e00793)
スノーエル・トリフォリウム(四つの白翼・e02161)
エンデ・シェーネヴェルト(フェイタルブルー・e02668)
皇・絶華(影月・e04491)
ディオニクス・ウィガルフ(ダモクレスの黒剣・e17530)
絡・丁(天蓋花・e21729)

■リプレイ

●そもそも……何がしたかったんだ?
「大願天女とやらは随分と回りくどいやり方で願いを叶えようとするみたいだな……」
 ヘリオンから降下する寸前、日柳・蒼眞(落ちる男・e00793)が複雑な表情で呟いた。
「善し悪しは別にすれば、意中の男性を催眠で操るとか拉致監禁でもするか、極論であれば殺して独り占めしろ、なんて方が余程簡単だし効果的なように思えるけど……」
「聞いた話で、しかも推測の域を出ませんが、大願天女の目的は、人の願いを叶えることではなくて『殺人によるグラビティチェインの収奪』だそうです」
 倉田・柚子(サキュバスアーマリー・e00552)が、淡々としているが、強い憤りを秘めた口調で応じる。
「ですから、ビルシャナ化されてしまった人は、大願天女の妖力によって『願いを叶える為には本来必要ではないどころか、実行すれば願いを叶えられなくなる他者の殺害』を『願いを叶える為の最も素晴らしい方法』であると思い込んで実行しようとするわけです」
「ったく、胸糞悪い話だぜ」
 ディオニクス・ウィガルフ(ダモクレスの黒剣・e17530)が吐き捨てるように言い放ち、スノーエル・トリフォリウム(四つの白翼・e02161)がぐっと拳を握る。
「大切に思う人に振り向いて欲しい、自分が特別になりたいその気持ちは痛いほどよくわかるんだよ。それでもこんなことしたら駄目、絶対に止めなきゃ」
「……好きとか、自分だけをとか、分っかんねぇ感情」
 こんなん説得って言ったってなぁ……と、軽く頭を左右に振り、エンデ・シェーネヴェルト(フェイタルブルー・e02668)は小さく溜息をつくと、そのままヘリオンから飛び出す。
 続いて皇・絶華(影月・e04491)が降下、柚子と彼女のサーヴァントであるウイングキャット『カイロ』、スノーエルとサーヴァントのボクスドラゴン『マシュ』と続く。
「邪悪なビルシャナの呪縛を打ち破るには、何よりもロックデス! 今日もロックに! ケルベロスライブ、スタートデス! イェーイ!」
 陽気に言い放って、シィカ・セィカ(デッドオアライブ・e00612)がギターを掻き鳴らしながら宙へ飛ぶ。
(「本当に正直なとこを言えば、そのチョコを沢山貰えそうな意中の講師とやらを先に爆破すれば、問題は根本から解決しそうに思えるんだが……やっぱりそうもいかんか」)
 言葉には出さずに呟いて、蒼眞もヘリオンから飛ぶ。ディオニクスが続き、しんがりを絡・丁(天蓋花・e21729)とサーヴァントのミミック『お供』が務める。
「このアパートか」
 ヘリオライダーが提示した地図と画像を照らし合わせ、エンデが呟く。
「殺界使って人払いするけど、問答無用で喧嘩売ってると思われてもまずいんで、俺は後から行くよ」
 うまく説得する自信もないしな、と足を止め肩をすくめるエンデにうなずき、絶華が最初に室内へ飛び込む。
 そして、驚いて振り返る異形の鳥人間に対して、絶華は力強く言い放つ。
「チョコを渡すのに強い想いを抱く。その気持ちはわからないでもない!」
「え……?」
 というか、そもそも、あなた誰? と目を丸くするビルシャナに、絶華は委細構わず渾身の説得を開始する。
「しかし! チョコを与えるというのであれば、ちゃんとそのチョコにパワーはあるか? チョコとは滋養強壮に効く窮極(原文ママ)のスィーツ! 誰もが受け取らざるを得ないような、そんな素晴らしいチョコを作る事こそが、本当に必要で大事な事ではないのかっ!」
「そ、そんなこと言ったって……私、チョコ職人でも何でもないし、そんな凄いチョコなんか作れないわよ」
 意表を突かれたせいか、極めて常識的に返答するビルシャナに対し、絶華はにっこりと笑って告げる。
「もしもよければ、私が自作した窮極のチョコレートのレシピを伝授しよう! このチョコレートを差し出されれば、誰もが他の凡百のチョコなど見向きもせず、虜になること必定!」
「……あなた、そんな凄いチョコ作れるの? 今、そのチョコ持ってる?」
 懐疑的な調子で訊ねるビルシャナに、絶華は自作のチョコレート『心が篭もったバレンタインチョコレート(ジゴクヘミチビクコントントヤミノカタマリ)』を差し出す。
「これだ! 良ければ味見してみるかね?」
「……ちょっと待って。何、この臭い?」
 とても食べ物とは思えない臭いがするんですけど、と、ビルシャナは絶華を睨みつける。
「もしも食べて美味しいとしても……とてもそうは思えないけど、いずれにしても、こんな酷い臭いのチョコ、そもそも受け取ってもらえるわけないわよ!」
「いや、そんなはずは……」
 怪訝そうに首を傾げる絶華を、柚子がずいと横へ押しのける。
「ごめんなさい、皇さん。ちょっと、先に話をさせてくださいね」
 ああ、危なかった、と、声に出さずに呟き、柚子はあっけにとられているビルシャナに向け、誠意を籠めて告げる。
「思い出してください。チョコを受け取ってもらって、どうしたかったのですか? 本来の目的はチョコを受け取ってもらうことではなく、相手に好きになってもらうことでしょう?」
「いいえ、そこまでは望んでないわ」
 そう言ってビルシャナは首を横に振り、柚子の目が点になる。
「え? だって、バレンタインデーのチョコレート……」
「もちろん、好きになってくれればラッキーだけど、水野先生が私を恋人にするなんて……ありえないもの」
 そう言ってビルシャナは、どことなく醒めた口調で続ける。
「水野先生は堅物でね。恋人と言えるような交際をするなら、いずれ結婚することを前提にしなくては無責任だって、真顔で言うのよ。逆に、そういう人だから、皆がこぞってチョコレート差し出しても修羅場にもならずに済んでるんだけど。でも……私は欲が出ちゃったのかなあ」
「ですよね。恋人になれなくても、先生が、美奈子さんはいい人だね、と思ってくれなくちゃ、意味ないですよね」
 態勢を立て直し、柚子は説得を続ける。
「ライバルを力づくで排除しようとする考え方……先生に受け入れられると思いますか?」
「そりゃ、正面から訊けばNOと言われるに決まってるわ。でも、ライバルを皆殺しにしたところで、犯人が私だと先生にわからなければ、問題ないと思う」
 そう言って、ビルシャナは柚子を見やる。
「先生にチョコを渡してる先輩の中には、物凄く性格悪い人もいるわ。でも、その性格の悪さを先生には隠してるから、問題なくチョコを受け取ってもらえてる。以前、トラブルメイカーで悪名高い先輩がチョコ渡した時も、これは義理チョコだね、と念押しはしたものの受取った」
「でも……」
 言いかかる柚子に、ビルシャナは語調を変えて訊ねる。
「ところで、そもそも、あなたたちは何なの? なぜ私が、ライバルを皆殺しにして自分のチョコだけを水野先生に受け取ってもらおう、と決意したことを知ってるの?」
「それは、ボクたちがケルベロスだからなのデース!」
 言葉に詰まった柚子に代わり、シィカが敢然と突っ込む。
「アナタが言う通り、他に渡す人が居ないからといって受け取ってくれるとは限らないデース! 気に入らない人に手をあげる人はきっとモテないデス! 女ならまずは自分をロックに磨くとこから始めるデス!」
「はあ?」
 理解不能、という表情で、ビルシャナはシィカを見やる。
「悪いけど、私はロックは嫌いなの。水野先生も、ロックが好きという話は聞いたことないわ」
「Oh! No!」
 ロックがキライなんて、そんな悲しいこと言わないでほしいデース、と、シィカは大仰に嘆くが、ビルシャナは彼女を無視して柚子に訊ねる。
「ケルベロスって、地球を守っているというケルベロス? それが何で、私に干渉するの?」
「それは……貴女がデウスエクスに惑わされているからです」
 柚子が躊躇気味に応じ、スノーエルが前に出て続ける。
「本当に殺しちゃっていいのかな? 自分の周りの女性ばかり殺された、なんてなったらチョコ受け取ってる場合じゃないんじゃないかな?」
「どうかしら。先生にとっては、バレンタインデーに女子生徒が私以外全員欠席した、というだけでしょ? 家族でもないし……ああ、でも、確かに刑事とか押しかけてくるかもしれないわね」
 そう言って、ビルシャナは軽くうなずく。
「だったら、あからさまに人前で殺さずに、人のいないところで殺せばいいわね。殺人とはっきりしてれば、すぐに警察が動くけど、失踪しただけなら、そんなにすぐに騒ぎにはならない。警察が動かなければ、講義に出てこない女生徒が何人いても、インフルエンザかな、ぐらいで済んじゃうわ」
「でも、あなた一人だけがチョコ持ってきたら、やっぱり変だと思うかも、なんだよ?」
 懸命に、スノーエルは言葉を続ける。
「勇気を出して渡そう、例えその他大勢でもいいって決めて作ったんでしょう? 受け取ってもらえないなんて、まさに本末転倒だよ!」
「いいえ、受け取ってはくれるわ。たとえ変だと思ってもね。そこで断って、相手を傷つけるようなことはしない。水野先生は、優しいもの」
 確信ありげなビルシャナの言葉に、ディオニクスが憮然とした口調で応じる。
「お前はそれでいいのかもしれねぇが、そのお優しい先生は、あとで心底傷つくぜ。自分が原因で、受講生に人死にだの、失踪事件だのが起こったとあっちゃなぁ。大学の職も、続けられめぇ……本当に、それでいいのかよ?」
「えっ?」
 この指摘は意表を突いたらしく、ビルシャナは愕然とした声を出す。
「水野先生が……傷つく? 大学を追われる?」
「そうさ。性格悪い先輩とか、トラブルメイカーの先輩とかも、他の女を排除しようとかしねぇで、先生の前では猫かぶってんだろ? そりゃ良く思われたいってのもあるだろうが、問題起こしたら先生に迷惑かかるってのもあるはずだ。お前は、その女たちに劣るんだよ」
 けっ、胸糞悪ぃ、と、戦闘態勢に入りかかったディオニクスを、柚子とスノーエルが急いで止める。
 そして丁が、しみじみとした口調で告げる。
「結局、あんたは先生が好きなんだね。だったら、チョコがどうのとか、結婚前提がどうのとか細かいこと言ってないで、真正面からぶつかっていきな。もちろん、他の女を殺すなんていう馬鹿な真似はナシだよ。たとえ、その場でバレなくても、天知る地知る我知るだ」
「でも……でも……」
 ビルシャナが口籠るところへ、殺界を形成したエンデと、アパート入口にキープアウトテープを貼ってきた蒼眞が連れ立って踏み込んでくる。
「……まだ、説得終わってないのか?」
 エンデが面倒くさそうに唸り、蒼眞は小さく溜息をついて、ビルシャナに告げる。
「ああ、俺も彼女の言う通り、チョコなんかすっ飛ばして、意中の先生に告白するのを勧める。それでうまくいきゃ、他の女性からはチョコ受け取らないで、と頼むことだってできるだろ?」
 うまくいかなきゃ、その時はその時だが、と、蒼眞は言葉には出さずに続けたが、丁があっけらかんと言い放つ。
「もし振られたら、自棄酒ぐらいつきあってあげるわ」
「……私は未成年です。お酒は飲めません」
 硬い口調でビルシャナが応じ、蒼眞は内心、あっちゃーと唸る。
 するとエンデが、堪忍袋の緒が切れたような感じで、乱暴に言い放つ。
「お前、本気で周りの奴ら皆殺しにしたら自分だけがチョコ受け取って貰えるとか思ってんの? お前の想い人は大量殺人者からのチョコを受け取って喜ぶような奴なの? 自分自身の姿も見下ろしてみろよ、その鳥でどうやって愛だの恋だの成就させる気なんだよ」
(「うわ、言った……」)
 言葉には出さなかったものの、蒼眞は内心蒼ざめる。彼も、その点……鳥人間の姿でチョコを渡せるはずがない、というのを最後には指摘する気でいたが、それは破局覚悟の最後の手段のつもりだった。
 ところが、ビルシャナは棒立ちになって呻く。
「私自身の……姿?」、
「鏡で確認、してないのか?」
 慎重な口調で蒼眞が訊ねると、ビルシャナは部屋を横切って洗面台の前に立ち、鏡を見やって悲鳴をあげた。
「な、なにこれ!? 怪物じゃないの!? こんな姿じゃ、チョコなんて渡せない! 人前に出られない! こんな姿にしてくれなんて、一言も頼んでないのに! 騙された! 騙された! 力なんか要らないから、今すぐ元へ戻してよ! ……ぎゃあっ!」
 不意にビルシャナが卒倒、その全身が光り、羽毛が飛び散り焼け焦げる。
「……これは?」
「美奈子さんがビルシャナ菩薩『大願天女』の力を拒絶し、罵倒したので、自己攻撃を受けたようですね」
 柚子が、抑えた口調で告げる。
「『大願天女』からすれば、天罰なのでしょうが……こちらからすれば、『大願天女』の力だけを潰し、美奈子さんを助ける好機です!」

●憑き物落としは容赦なく
「クアッ!」
 倒れていたビルシャナが、鳥そのものの叫びをあげて起き上がる。
 そこへすかさず、絶華が突撃する。
「之は先ほど話した、私が全力で作った、圧倒的なパワーを秘めたチョコレイトだ! まず食べてみてくれ! 話はそれからだ!」
 言いながら、絶華はグラビティで圧縮したカカオ10000%チョコレートに更にグラビティ強化した漢方薬を添えた、独特の異臭を放つ狂気の産物『心が篭もったバレンタインチョコレート(ジゴクヘミチビクコントントヤミノカタマリ)』を相手の口に押し込む。
「グエエエエ!」
 ビルシャナは、まず凄まじい苦味に血反吐を吐いた上、内側から膨れ上がる圧倒的なパワーによって肉体を破壊され全身から血の華を咲かせる。
「……あれぇ?」
「これは、さっさと潰してやった方がよさそうだな」
 呟いて、エンデがオリジナルグラビティ『Auf Nimmerwiedersehen(エイエンノケツベツヲキミニ)』を発動させる。
「さようなら、美しい世界にお別れを」
 血みどろのビルシャナが容赦ない斬撃を受けて寸断された、と見えた瞬間、爆発的な光が放たれる。光が収まった時、そこには気絶しているものの、無傷でしっかり呼吸している女性……美奈子が倒れていた。
「……おい、もう終わりかよ?」
 さァ、狩りの始まりだ、と舌なめずりをして、オリジナルグラビティ『魘獄煉爪夢(オモイダセ) 』を用意していたディオニクスが、心底憮然とした声を出す。
「……まあ、自己攻撃で半分死んでたようなもんだからな」
 そこへ皇印の殺人チョコ食らっちゃたまるまい、と、蒼眞は呟く。彼もオリジナルグラビティ『情人節破壊者の拳(ブリット・シャルムーンブレイカー!)』を用意していたが、女性の前で使うと顰蹙を買う技なので、使わずに済んでよかったと思っている。
(「まったく、人の意識があるうちに、彼女があのチョコを口にしなかったのは僥倖だった」)
 絶華以外の全員が、内心、そう呟いていた。

作者:秋津透 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2018年2月25日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 2
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