ミッション破壊作戦~地球を護る者達

作者:沙羅衝

「ラクシュミちゃんスーパー美人さんやなあ……。頼もしいな」
 宮元・絹(レプリカントのヘリオライダー・en0084)が、プラブータへのゲートへ向かうケルベロス達の中心にいるオウガの女神ラクシュミを見てそう呟き、視線を切った。
 彼女の傍らには8本の小剣。グラディウスがあった。そして、目の前に集まってくれたケルベロスを見る。
「皆、ええか。これから沢山のケルベロス達が惑星プラブータへ向かう。でも、皆は此処に残った。色々理由はあるやろから、詳しくは聞かへんけどな」
 目の前に集まってくれたケルベロス達は、その言葉を聞き、まあね、と答える。
「これ、もう見たら分かるかな。グラディウスや。皆にはミッション破壊作戦を決行してもらう。情勢はコロコロ動いとるけど、地球に残った皆には、皆の仕事がある。その一つ、エインヘリアルのミッション地域に向かってもらうで」
 そう言って、それぞれにグラディウスを手渡す。心なしか手が震えている。
 それに気がついたケルベロスが、どうかしたのかと尋ねると絹は、ごめんやで、と言いながら事情を話す。
「いっつも思ってるんやけど、うちが担当している地域は、無事に済んでない事が多いんや。でも、今、皆にこれを渡す。正直心配やねん」
 そう言う絹に、大丈夫だと答えるケルベロスもいた。
 最後の一人にグラディウスを渡した時、絹は意を決して口を開いた。
「知っていると思うけど、一応説明しとくで。
 グラディウスは普通の武器としては使われへんねんけど、魔空回廊が破壊できるんや。普通の魔空回廊は10分で消えてまうんやけど、固定型の魔空回廊っちゅうのがミッション地域にあるわけや。それが『強襲型魔空回廊』。グラディウスを使うとそいつが破壊できるっちゅうことや。
 グラディウスは一回使ったらグラビティ・チェインを吸収してまた使えるようになるまで、結構な時間が掛かるし数にも限りがある。せやから、ちゃんと持ち帰るっちゅうのも頭に入れといてな。
 で、目的は『強襲型魔空回廊』の破壊。青森県弘前市の弘前城、山口県最北端の見島、それと栃木県栃木市が今いける地域や。何処も難所や、頑張ってや」
 絹はそう言って、ケルベロス達の様子を見る。多くのケルベロスがオウガの星へ行く中、地球を護るケルベロス達には、頭が上がらなかった。
「とりあえず、『グラディウス』の使い方と突入方法の説明しとくで。
『強襲型魔空回廊』への突入は『ヘリオンを利用した高空からの降下作戦』や。ミッション地域の中枢、上空から飛び込む。
 強襲型魔空回廊の周囲は、半径30メートルくらいのドーム型のバリアで囲われてるから、このバリアにグラディウスを触れさせる。そこで、『グラディウス』の力を使うんや。
 グラディウスを使うと雷光と爆炎が出て、『グラディウスを所持している者以外に無差別に襲いかかる』から、皆はこの雷光と爆炎によって発生するスモークを利用して、攻撃。そんでその場からさっさと撤退するのが任務や。
 グラディウスの使い方は、前からとおんなじや。『グラビティを高める事』がその強さや。魂の叫び、熱いやつ頼むで。ずっと前から言うてるけど、ホンマに心から思う重大な事を叫びとしてグラビティに変換する。内容は何でもええ。熱い叫びやで。熱かったらな、正直なんでもええねん。『バレンタインなど、俺にはいらん行事だ……。うそだ! 本当はチョコ欲しいんだ!』とかでもええねんで。重要なのは本気度や。言葉決める前に、ホンマに自分が思っている事なんか、しっかり考えるんやで」
 魂の叫びは、いわば自分の心を表現する事だ。ひょっとすれば、地球に残った意味をしっかりと持っているケルベロスもいるかもしれない。そう言った想いは、立派な自分を表現する理由、即ち魂の叫びとなるはずだ。
「んで、護衛部隊はグラディウスの攻撃で、ある程度が無力化できる。でも、強力な敵との戦闘は絶対にある。幸いやけど、混乱する敵が連携をとって攻撃を行ってくる事はあらへんから、素早く目の前の強敵を倒してさっさととんずらするで。
 時間が掛かりすぎてしもたら、脱出する前に敵が態勢を整えてまうからな。そうなったら、降伏するか、最悪暴走して撤退するしか手が無くなるかもしれん。攻撃するミッション地域ごとに、現れる敵の特色があると思うから、行くとこ決めたら、ちょっと調べて備えるんや。情報は此方にある。しっかり考えたら、手も足も出えへんちゅうことは無い。でも、生半可な作戦やったら、ホンマあかん事になるから、皆で意識あわせて作戦練るんやで!」
 絹はそう言って説明を締め、プラブータに向かおうとしているケルベロス達を見る。
「あっちはあっちで別の星に行くわけや。そんな皆が安心して帰ってこれるように、うちらは地球を護る。大変な仕事やけど、絶対に帰ってくるんやで! ご馳走作って待ってるからな!」


参加者
レーグル・ノルベルト(ダーヴィド・e00079)
水無月・鬼人(重力の鬼・e00414)
エヴァンジェリン・エトワール(白きエウリュアレ・e00968)
シルフィディア・サザンクロス(ピースフルキーパー・e01257)
葛籠川・オルン(澆薄たる影月・e03127)
空鳴・無月(宵星の蒼・e04245)
黒住・舞彩(鶏竜拳士・e04871)
鈴木・犬太郎(超人・e05685)

■リプレイ

●堅牢なる回廊
「……厳しい戦いにはなろう。だが、これ以上は好きにさせぬ」
 レーグル・ノルベルト(ダーヴィド・e00079)はそう言ってグラディウスを構えた。
『何故にこの地に降り立ったのかはわからぬが、早晩、滅びた西の地と同じ事になろう!
 決してそれは見過ごす事は出来ぬ!
 汝が殺戮が光だとするならば、それは止めさせて貰おう!』
 レーグルが持つグラディウスから光が明滅し始めた。それを見た他のケルベロスも、グラディウスを手に思いの丈をぶつける。
「全く、デウスエクスが光の使徒気取り、か。一々、仰々しく言う割には、やってる事が小物臭いんだよ……」
「なんの罪もない人々へ恐怖を振りまくゴミ共め……。
 マン島の次はこの栃木ということですか、ふざけるな……! 貴様らのせいでどれだけの人が平穏を脅かされ苦しんできたか……。
 だから、与えた苦しみ以上の苦しみをここで与えてやる……!
 そんなただ苦しめるだけの光より、人々の尊い平穏な生活の光が何にも負けない力となる事を教えてやりますよ……」
 水無月・鬼人(重力の鬼・e00414)、シルフィディア・サザンクロス(ピースフルキーパー・e01257)は、眼下に広がる栃木市に潜む敵を憎む。
『そして、やってる事が番犬ってか? どこまでも小物臭い! 同じ犬でも地獄の番犬の恐ろしさ、まずはこの回廊をぶち壊して教えてやるぜ!
 我流剣術鬼砕き! ぶち壊れろぉ!』
『地獄に堕ちろ、このクソ野郎……!』
 そう、ケルベロス達は、栃木巨犬座領域を自らの戦地とした。現在在るエインヘリアルのミッション地域のうち、もっとも強固とされる地域。
「なるほど『モーザ・ドゥーグ』なんと不愉快な光だ。
 あなた方は光と闇を支配したなどと称し、さぞかし全能感に満たされていることだろう。
 だが、そう何度も地球を破壊させて堪るものか」
 葛籠川・オルン(澆薄たる影月・e03127)の言う『モーザ・ドゥーグ』とは、この地域を支配している「おおいぬ座」の力を持つ星霊甲冑を纏ったエインヘリアルである。その光は彼等の象徴とでも言うのだろうか。幾度と無くあちらこちらでその存在を示していた。
「傲慢ね。光も、闇も、支配するだなんて……。
 光は温かさ、闇は安らぎ。
 苦しさだけをまき散らすアナタたちには、その意味は、わからないでしょう。
 それにそこ、苺の産地なんですってね。好きな子も、楽しみにしてる子も、多いハズよ」
 エヴァンジェリン・エトワール(白きエウリュアレ・e00968)が呟き、空鳴・無月(宵星の蒼・e04245)が頷く。
「いつまでも栃木市を奪われたままには、しておけない。以前まで、ここに住んでいた人たちの為に。その人達が、帰って来られるように。
 ……お前たちの光は、たしかに強いのかもしれない。でも。そんな、ただ強いだけの光なんかに、わたし達は負けない」
 オルンとエヴァンジェリン、そして無月もグラディウスを輝かせ、叫ぶ。
『あなた方の覇道もここまでだ。その安っぽい鎧と光ごと散ればいい!
 この地は地球のもの、この街に住まう人々のものだ!』
『そろそろ返して貰いましょうか、エインヘリアル…!』
『わたし達の光で、ここで、絶対に、取り戻してみせる…!』
 バリバリバリ!!
 激しい雷光が5人から放出されると、一斉に魔空回廊を覆うバリアへと降り注ぎ、そのバリアを食い破るかのように襲い掛かる。
「私……。まだこういうの、ちょっと苦手なのかしら?」
 そう言っているのは、黒住・舞彩(鶏竜拳士・e04871)だ。彼女はこの地に対しての強い気持ちというのは、それ程持ち合わせていなかった。降下しながらグラディウスを見つめる。
「俺は、このグラディウスを手に取るのは久しぶりだ」
 舞彩の様子に、鈴木・犬太郎(超人・e05685)が少し答える。
「強襲型魔空回廊は地球にとってかなり迷惑な代物だ。そういう資料上の意味は理解しているんだけど、そこに気持ちを込めるのは、なかなか難しよなぁ」
 と、同意する。
(「強い思いに応えてくれる剣か……ならば、ただこの剣に込める思いは……」)
 犬太郎はそう言ってグラディウスを正眼に構え、自らの答えを導き出す。
『壊す、ただ壊す、徹底的に壊す、完膚なきまで壊す!
 単純なそんな思いで俺は戦場に行くとしよう!』
 それは純然たる『破壊する』という想い。それにグラディウスはものの見事に答えて見せた。
 バチッ! バチバチバチ!!
「そう、よね。なら私は……」
 舞彩は犬太郎の放つ激しい光を見て、何故かすとんと落ちた気がした。自分が素直に思っている事でいいのだ。すると、自然とグラディウスに想いを乗せることができた。
(「震えてた宮元。ご馳走作って待ってるって言った宮元。宮元担当最初の破壊作戦も……大丈夫。今度こそ」)
 震えながらこの剣を渡したヘリオライダーの事を考える。最初の時は、暴走者も出た。今となれば、その二人も無事に帰還した。それは、全力で事に当たった結果だ。それには自信がある。
「全員無事に帰るわよ。ご馳走は美味しいし、怒った宮元はこわいから……なんてね」
 そして眼を見開き、叫ぶ。
『私は、震えてた宮元を安心させたいから。大好きな宮元の笑顔がみたいから!』

●苛烈
 全員が揃って放った雷光は、バリアに幾度と無く襲い掛かり、爆音を上げる。
 ドドドドドドドォ!
 その何度も襲い掛かる光の激しさは、グラディウスを扱った事があるケルベロス達には、ほぼ最大級の物である事が分かった。
 ドゥン!!
 最後に激しく爆音をあげ、グラディウスの攻撃が終わった。
 ……だが、その魔空回廊は健在で、そのバリアの強度を際立たせるだけであった。
「流石に、一筋縄では行かぬな」
 地に降り立ったレーグルがその様子を見て踵を返す。
 そして全員が栃木市に下りた事を確認し、全員が頷き、走り出した。

 煙幕となったグラディウスの力は、まだ続いていた。
 所々で、モーザ・ドゥーグがその雷撃に倒れている姿が見えた。恐らくはそれ程戦闘力の無い者であろう。
 ケルベロス達は、その倒れている敵に見向きもせずに、戦闘区域外へと突き進む。
 グラディウスは確りと体にくくりつけ、落とさないように、そして来るべき戦闘に備えるべく、己の武器を握り締めた。
「海外で暴れてた奴が、こんな極東の一都市に、ねぇ?」
 最初に気がついたのは鬼人だった。ととっと、走っていた足をリズム良くステップを踏むようにして、目の前の光を見る。
「……やっぱり、その光。安っぽいですね」
 オルンは飄々と言いながらも、リボルバー銃をガチャリと構え、奥歯を握り締める。心の奥底からこみ上げる嫌悪感を、まだ見せる時じゃない。
「我等『モーザ・ドゥーグ』から逃げおおせるとでも思っているのではあるまいな」
 そう、声がした。
 一瞬の光。いや、闇だ。闇の雷が一瞬にして、前に居るエヴァンジェリンを貫いた。
「ぐ……!」
 それは圧倒的な貫通力だった。
 エヴァンジェリンは、一瞬何が起こったか分からずに、膝を付く。その攻撃に耐性を持った防具を装備していなければ、おそらく一撃で葬り去られた可能性が高い。
「……ほう。耐えたか。では、これでどうかな?」
 間髪居れず、距離を詰め、エヴァンジェリンに『おおいぬ座』の斧を叩き付けた。
 ドグ!!
「我は、守る。そう、守ればこそ、であろう?」
 レーグルがエヴァンジェリンを突き飛ばし、代わりにその巨大な一撃を受けると、体から炎を上げる。
「さあ、……参るぞ」
 意を決したレーグルが、両腕に纏わるている地獄の炎を呪詛として具現化する。
『ーー奏でよ、奪われしものの声を』
 だが、その呪詛は、光の鎧によって防がれる。
 分かってはいた。この地に居るこの目の前の敵が、かなりの強さを誇ることは。
(「行くしかない」)
 ケルベロス達は、その強さを見ても、怖気づくことは無かった。
「ご立派な鎧だか何だか本当にどうでもいいですが、ギラギラと目障りでムカつくんですよ……!」
 シルフィディアがフルフェイスで隠す顔の下から、地獄の炎をチラリと見せて、叫び、ドラゴニックハンマーから狙い済ませた竜砲弾を放つ。
 ドゥン!
 シルフィディアの放った砲撃が、一瞬モーザ・ドゥーグの足を止める。
『足元…注意…。……もう遅いけど』
 続けて、無月が敵の足元から数本の槍を召喚する。
「モーザ・ドゥーグだっけか? こんな極東くんだりの地方都市に左遷された気持ちはどんな感じだ?」
 鬼人が斬霊刀『無名刀』で、その足元の傷を広げていく。
 そして、犬太郎が鉄塊剣『ヒーロースレイヤー』で、力任せに叩き伏せる。
 ガィン!!
 激しい火花を散らし、その鎧に少しばかりの傷が入る。
「ほう……」
 ケルベロス達の勢いに、仮面の下から声が漏れ、犬太郎に視線が注がれる。
 その隙に、オルンが自らの得意な距離へと走り、エヴァンジェリンがヒールドローンを展開する。
「まだ、いける……わよね」
 舞彩がそう言いながら、まずはマインドリングでレーグルに光の盾を出現させる。
 それは、空中に浮かんだ細い糸を渡る綱渡りのような戦いになる事が分かっていたからだ。
 一つのミスも許されない。そんな緊張感を感じながらケルベロス達は作戦を決行していったのだ。

 ケルベロス達は連携する事により、その強大な敵にも立ち向かえるように作戦を立てていた。
 絹の言う通り、敵の攻撃の情報は此方にある。
 まずは、足を止める事。だが、モーザ・ドゥーグはその状態を回復させる手段を持っていた。おおいぬ座の力により、ケルベロス達が与えた効果を消し去る事ができるのだ。
 ケルベロス達は、ならば、それ以上傷を広げれば良いと考えた。
 しかし、その効果を十分に発揮させる為には、ある一定のダメージに耐える必要があった。

「ぐぉぉ……!」
 最前列にいるレーグルが、斧による一撃に切り伏せられた時、一つの壁が壊れた。
 彼はこれ以上の戦闘は無理の様であった。
 これで、前で立つ盾は犬太郎とエヴァンジェリンとなった。とは言え、盾である彼等は敵の攻撃に対応する耐性を持たせた装備で身を包んでいた。
 勿論、完全なる防御など存在しない。現にレーグルが倒れてしまった時、ケルベロス達に少しの焦りは生まれていたのだ。
 それは紙一重だったのだろう。この作戦の肝であるオルンの狙い済ませた一撃が、モーザ・ドゥーグを襲う。
『寄越してください、その存在を』
 万物の粒子を留めてしまうほどの凍えが、大量の氷を発生させた。
「ぐ……ぬぅ……」
 明らかにダメージを食らうモーザ・ドゥーグ。ケルベロス達はその眼力により、敵のダメージの状態を把握できた。
 一気に勝負を決めようと、全力の攻撃を加えるケルベロス達。
 鬼人と無月が鎧の隙間を的確に切り付け、シルフィディアが更に蹴り付ける。
 そして、舞彩が虹をまとう急降下蹴りを叩き付けた。
「さあ、来いよ!」
 確実なダメージを与える事が出来始めた。しかし犬太郎は焦らない。切迫の気合を上げ、おのれを昂ぶらせる。
 それは、苛烈な戦いを制するという全員の意識そのものだった。

●倒れない
 ケルベロス達の攻撃は、的確にダメージを与えていくことができた。だが、そのままでは終わらなかった。
「キサマ……目障りだ……!!」
 ケルベロス達の作戦の中心が、オルンである事を漸く見抜いたのか、目の前の犬太郎に意識を集中しすぎていた事に気付いたモーザ・ドゥーグは、闇の雷を拳に集め、オルンに向けて放った。
「まずい!」
 鬼人が叫ぶ。己の武装で守備に固めた者であったからこそ、ここまで耐えることが出来たのだが、中盤に位置するオルンではひとたまりも無いはずだ。その超速の雷は、まさに必殺であった。
 バリッ! ドゥン!
 それを、エヴァンジェリンが身体を投げ出し、庇う。
「あ……!」
「エヴァンジェリン!!」
 舞彩が叫ぶが、彼女は膝から崩れ落ちる。
 ガッ……!
 だが、エヴァンジェリンは一歩、踏みとどまった。モビールの『himmel』に手を触れ、立ち上がる。
「アナタたちみたいなのが、星座の名を冠するなんてね。星が泣いてしまうわ……。
 星の光は、こんなにも、優しくないものかしら」
 口から血を吐き出しながら、眼を煌かせる。
「単に押し退けられるなんて、思わないで、モーザ・ドゥーグ」
 エヴァンジェリンの魂が、肉体を凌駕する。
「こっちにも、譲れないものがある。アタシの胸に灯る、矜持のように。
 皆守って、帰らせてもらう」
 それを見たシルフィディアが、地獄の右腕を禍々しいドリルに変え、モーザ・ドゥーグの腹目掛けて打ち込む。
「いつも貴様らは、どいつもこいつも……! だから嫌いなんですよ、デウスエクス共め……!」
 その攻撃にあわせるように、無月がゲシュタルトグレイブ『星天鎗アザヤ』を構え、再度足元から槍を出現させる。
『バラバラに、砕け散れ……!』
 足元から槍がモーザ・ドゥーグを捉え、そのままシルフィディアのドリルが、鎧を砕く。
「おおおおおおお!!」
 オルンが守ってくれた想い、そして、ただ壊すのが生きがいとでも言うこの浅ましい敵に対しての、静かに燃える感情をこめて、弾丸を打ち放つ。
『魔人降臨、ドラゴンスレイヤー。ウェポン、オーバーロード。我、竜牙連斬!』
 舞彩が地獄化している左腕から、地獄を放ち『竜殺しの大剣』に変え、暴力的な炎を開放する。
 ドォォオォオオ!!
 舞彩の炎を受けたモーザ・ドゥーグは、完全に動きが停止する。
『無限発打ち込めば、くたばるだろ?』
 しかし、ケルベロス達は、攻撃を止める事は無かった。敵が倒れる、その時まで。
 ドグッ!
「うおおああああっ!」
 犬太郎の右拳が露になった腹に打ちこまれ、そして、左拳に渾身の力を込めてめり込ませた。
 ドゴッ!
 その鈍い音は徐々に連打となり、最後には顎を捉え、巨体を空中に吹き飛ばした。
『我流剣術「鬼砕き」、食らいやがれ!』
 その動きにあわせ、鬼人が宙に舞い、左から切り上げ、即座に右から薙ぐ。そして、最後に袈裟に斬り切る。
「ぶち壊れろぉ!」
 そして、その3つの切り口が交わる部分、即ちモーザ・ドゥーグの心臓を、『越後守国儔』の切っ先で正確に捉え、背中へと貫通させた。
「な、なんだ……と!?」
 それがモーザ・ドゥーグの最期の言葉となった。
 鬼人が刃を引き抜くと、霧散するように、消滅したのだった。

 こうして、栃木巨犬座領域に対しての最初のミッション破壊作戦は完了した。
 そのバリアの強度は、あれほどのダメージを与えたのにも関わらず健在であった。
 だが、この情報をまずは他のケルベロス達に持ち帰ることが出来た。倒れたレーグルもまた、何とか自力で立ち上がる事ができた。
 回廊を破壊する以外の、考え得る最高の結果を残したケルベロス達は、こうして帰還したのであった。

作者:沙羅衝 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2018年2月20日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 6/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 2
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