●至高の音
漣が響く冬の海。
波が寄せては返す浜辺にて、かのビルシャナは力強く語っていた。
「海が奏でる音を用いたヒーリング音楽こそ最高! 波の音と音楽の融合なのだ!」
爽やかな蒼い翼を広げて主張するのは音楽についての事柄。ビルシャナの周囲には八人ほどの男女が集っており、紡がれていく音楽教義に耳を傾けていた。
「そう言われてみれば……」
「確かに真理かもしれない!」
さざめくような波の音。其処に重なっていくのは決して海の音色を邪魔しないピアノや弦楽器の響き。あくまで漣が主であり、音は海を引き立てるだけのもの。
そう語ったビルシャナは冬の海が広がる方向に向き直り、高らかに叫ぶ。
「母なる海の音色、これぞ世界の真理!」
●海は謳う
「――ということで、皆さま。お仕事でございます」
ビルシャナが出現する未来が視えたと告げ、雨森・リルリカ(花雫のヘリオライダー・en0030)は事件の概要をケルベロス達に説明していく。
今回の敵は、海の音色用いたヒーリング音楽を至高のするビルシャナ。
彼は『クロエディーヴァ』という音楽による救済を教義とする敵の信者が変化して生まれたらしい。つまりこれはビルシャナの信者だった者が独立し、新たに信者を集めるという厄介な事件だ。
「このビルシャナさんはまだ普通に音楽の主張をしているだけで何もしていません。ですが、問題はその場に集められた信者さん達なのです」
まだ一般人である彼らはこのままだと完全な信者にされてしまう。
そうなれば後はビルシャナの言いなり。音楽を理解しない輩を排除しに行くという名目で悪の加担をさせられるかもしれず、第二第三のビルシャナとなってしまう可能性もある。
「どうか皆さま。信者さんを助けて、それから敵も倒してきてくださいです!」
だが、救出は一筋縄ではいかない。
ビルシャナの言葉には強い説得力があるからだ。それを覆すようなインパクトのある主張を行えば、信者が完全な配下になることを防ぐことができる。
しかし、決して彼らの主張を否定してはいけない。かといって肯定してしまうとビルシャナの言葉を後押しすることになるので難しい。
「いいですか皆さま。とにかくインパクトです。言葉で長く説明するよりも、勢いで主張を掻き消すくらいがいいです」
例えば違う音楽を演奏する、虚をつく言葉を告げるなど。
細かな内容はケルベロス達次第であり、どのような行動が実を結ぶかは分からないが、相手が衝撃を受けるような事柄であればいい。
万が一に配下となってしまった場合、信者はビルシャナが撃破されるまでの間はサーヴァントのような扱いとなって戦闘に参加する。大元さえ倒せば元に戻るので救出は可能だが、配下が多くなればそれだけケルベロスが不利になってしまうだろう。
「信者さんは倒すと死んでしまいます。敵も彼らを利用したり、盾にして逃げたりするかもしれないので気を付けてください」
件のビルシャナ自体は比較的弱い個体ではあるが、信者を説得できなかった場合は非常に戦い辛くなる。それゆえに出来る限り信者を戦わせないようにして欲しいと願い、リルリカはぐっと掌を握った。
「海の音はリカもすてきだと思います。でもでも、だからって人を巻き込んで事件を起こそうとするなら……それは許してはいけないことでございます」
ビルシャナ化した敵は救うことは出来ないが、これ以上被害が大きくならないように止めることは出来る。ケルベロス達には新たな未来を創る力があると信じ、リルリカは闘いに赴く者達の背を見送った。
参加者 | |
---|---|
シュゼット・オルミラン(桜瑤・e00356) |
ニケ・セン(六花ノ空・e02547) |
藍染・夜(蒼風聲・e20064) |
薬師・怜奈(薬と魔法と呪符が融合・e23154) |
レピーダ・アタラクニフタ(窮鼠舌を噛む・e24744) |
ダンサー・ニコラウス(クラップミー・e32678) |
多鍵・記(アヤ・e40195) |
レシタティフ・ジュブワ(フェアリー・e45184) |
●癒しの音
海は凪ぎ、穏やかな波の音が響き渡る海岸線。
自然が奏でる音に耳を傾けるビルシャナ達の影を捉え、多鍵・記(アヤ・e40195)は仲間と頷きを交わす。
何の音にも邪魔されない母なる海のおと。それこそ真理なのだろう。
けれど、それひとつきりでは世界はすこし寂しい。
「ねえ、あなたたち」
記が信者達に向けて声をかけると、敵が警戒した様子を見せた。しかし記は相手に様子には構わず、自分達の話を聞いて欲しいと呼びかける。
シュゼット・オルミラン(桜瑤・e00356)も静かな眼差しを向けて語り掛けてゆく。
「海の音も確かに素敵ね。でも、皆さん、毎日いつも同じ気分なのかしら」
私なら朝には鳥たちの囀りが聴きたい。そう告げたシュゼットに同意を示し、ミミックを伴ったニケ・セン(六花ノ空・e02547)も一歩踏み出す。
「静かな冬の海だけが、真の海の音色じゃないよ!」
「貴様ら、何を言い出すのだ!」
異形鳥はニケ達の言葉に敵意を見せた。相手が襲い掛かって来ないと見たニケは更なる言葉を続ける。
「海の音色はどこから来ているのか、それを見極めてこそ、世界の真理! それは、ずばり、風の音! 荒れ狂う嵐、そして、全く無風の凪」
自然の音楽を全身で感じてこそ究極のヒーリングだ。ばばーん、と効果音が鳴るような勢いで語ったニケの意見にひとりの男性信者がはっとする。
薬師・怜奈(薬と魔法と呪符が融合・e23154)は敵に視線を向け、溜息を吐く。
「冬の海ってこんな穏やかな漣ばかりの日なんて稀ですのに……」
荒れた海も受け入れるのか、という旨を問うた怜奈は何処か挑戦的ににこりと笑った。しかし、敵はさも当然という風に胸を張っている。
すると藍染・夜(蒼風聲・e20064)が双眸を緩く細め、近くにいた女性信者に歩み寄った。そして、肩へストールを掛けてやる。
「冬の海は冷えるね。凍えていない?」
「はっ、はい……」
隣人力を駆使した夜の極上の微笑みに女性信者が恥ずかしそうに俯いた。
その様子を見遣ったレシタティフ・ジュブワ(フェアリー・e45184)は、わたしも、と手近な信者の側に寄った。優しく包み込むようにハグをしたレシタティフは自分の呼吸音と心拍を聴かせる狙いで、落ち着くであろう、と語り掛ける。
「覚えて居ないか? ムッティに抱き締められ、あやされていたことを」
「ああ……」
「おいお前達。何をかどわかされているんだ!」
夜とレシタティフによって気を逸らされている信者を異形鳥が怒鳴りつけた。
レピーダ・アタラクニフタ(窮鼠舌を噛む・e24744)は残る者達を一気に目覚めさせようと考える。
「キュッキュリーン☆ 歌います、聞いてください!」
寄せては返す波の音も大変結構。それも風情があるが音楽の効能は癒し以外にもたくさんあるはず。そういった全てをひっくるめてレピーダが歌い出したのは生命力を感じさせるヴァルキュリソングだ。
キュッキュリ、キュッキュリリーン。
ギターに見立てた傘を爪引き、魂を躍動させる曲を歌いあげるレピーダ。
「ギュー!!??」
だが、彼女が突如として悲鳴をあげた。海辺のステイジ。熱唱するアイドル。サビに入るという一番良いところで理不尽な襲撃がレピーダを脅かす。
驚いた信者達が振り返ると、何と其処には――。
「がおー」
浅瀬からサメ、もといサメの着ぐるみを着たダンサー・ニコラウス(クラップミー・e32678)の姿があった。彼女は隙を見て背後に回り込み、一緒に隠れていたシャーマンズゴーストの狂ったストーカーを踏み台にして、波と共に跳躍したのだ。
まるでそれはアザラシを狙って浜辺に乗り上げるシャチの動き。つまり、海に潜む恐ろしさを伝えにかかったということだ。
「サメが!?」
「うわああ、サメだ!」
突っ込み所は多いがこれはインパクト絶大。海の音が良いとか悪いとか、そのようなことを置いてきぼりにして信者達は蜘蛛の子を散らしたように逃げ出していく。
「ええと、これは……」
「結果良ければ全てよし、というところかな」
記は取り残された敵を見遣り、ニケがそっと頷いた。あまりの出来事にぽかんと口をあけている敵は事態を把握できていないようだ。
シュゼットはサメダンサーにがじがじと噛まれているレピーダを見遣り、微笑ましさを感じる。そして、オカリナを取り出して穏やかな曲の一節を吹く。
「――♪」
音色に合わせて夜が唄を重ねた。するとビルシャナが我に返り、忌々しげな眼差しをケルベロス達に向ける。
「おのれ、許さぬ!」
戦闘態勢を取った相手を見つめ返し、記も身構えた。
「母なる海がいて、雄大な父なる大地もいて、そうして音の子供たちはたくさんの音を一緒に奏でるの。自然の音もアイドルソングも、みんな違ってみんないいんです!」
だから、信者を洗脳するような方法はいけない。記に続いてシュゼットも思いを言葉へと変えていく。
「世界は沢山の音で満ちているもの。ひとつだけなんて、勿体ないわ」
他を否定し、世界に仇成すのならば屠るしか道は残っていない。
そして――海辺の戦いが幕を開けた。
●世界に満ちる音
「さて、残りはアナタだけですわね。鳥モドキさん♪」
怜奈は緑の瞳に敵の姿を映し、挑発的に小さく笑む。すると相手は怒りに震えながら羽を広げ、氷輪の一閃をケルベロス達に向けて放った。
「よくも我が同志達を……! 貴様らを海の藻屑にしてやるわ!」
ダンサーは砂浜を蹴り、記達に向けられた一撃を受け止めた。同時にお付きのストーカーがニケを守る中、ダンサーは光輝く粒子を放出する。
「海辺でのんびり癒されてたりしてたら、ヒョウアザラシを前にしたペンギンも同じ。たとえば、こんなふうに」
無表情のまま敵に告げたダンサーが身を引いた。その瞬間、レピーダが空いた射線に飛び込む形で電光石火の一撃を見舞う。
「美少女だからサメには負けません。もちろんビルシャナにもですよ!」
先程にダンサー鮫に齧られた頭を擦ったレピーダは華麗にキュッキュリーン、とポーズを決めてみせた。彼女が敵の気を引いている間に、夜は元信者達が無事に浜辺から去っていったことを確認する。
「ときめきの鼓動を感じて貰えたら、それもまた音楽だよね。さて、と」
自分がストールを渡した女性の背を見送った後、夜は敵に向き直った。そして、夜は容赦のない一撃をくらわせに駆ける。
速翼の鳥が獲物に喰らいつくが如く、その一閃は敵を貫く。
桐箱めいたミミックが標的に喰らい付いたその隙に、怜奈は雷壁を広げて仲間に耐性を施していった。更に身構えたシュゼットも守りを固めてゆく。
構築された守護の力が巡っていく様を見つめながらシュゼットは思う。
自分達は沢山の音に囲まれている。時として煩わしくなることもあるが、思い返してみれば様々な音はどれもが興味深い。
されど海の音以外を否定する目の前の敵に賛同は出来ない。
更に其処へ、記が禁縛の呪を発動させた。
「海の真理を掲げることは否定しませんけれど、教祖さまがビルシャナなのは、流石にダメ出しものですよね!」
御業が手を広げてビルシャナに掴みかかり、動きを阻害していく。記に続いてレシタティフがリボルバー銃を構えて追撃に向かった。
「海も良いが、山もいいぞ。優しい木漏れ日を浴びて、木々のざわめきに身を委ねる、なんて言っても通じはしないか」
最早、敵に何を言っても考えを改めることはないだろう。距離を詰めたレシタティフは卓越した銃捌きで以て標的を撃ち貫く。
「海こそ至高! それが分からない者は屑だ」
ビルシャナは怯まず閃光魔法を放ち返してきた。しかし、ニケはそれを華麗に躱して竜槌を振りあげ、反撃に移った。
「海の音が落ち着くのはよくわかるよ。でも、そればかりが全てじゃない」
轟竜の砲撃で敵の力を削ったニケは双眸を鋭く細める。
しかし、今の一撃で記に大きな痛みが齎された。重圧が彼女を苦しめていると悟り、シュゼットが優しい雨を降らせる。少し回復が足りないと感じたダンサーは狂ったストーカーに癒しを願った。
「ダンといっしょにヒールをおねがい。後はわかるよね」
普段は付き纏われて悩まされる時もあるが、戦いとなればストーカーも立派な戦力。複雑で妙な思いを抱きつつダンサーは自らも癒しの力を顕現させた。
――与えん、すべての子羊へ。
天秤は高く火をともし、仲間の背を支えるものとなっていく。
夜は敵が繰り出す次の一撃を警戒しながら、浜辺を蹴って跳躍する。真昼の流星を思わせる蹴撃が敵を貫き、体勢を僅かに揺らがせた。
「人は原初の楽器だから、血潮の流れも、鼓動も、歌声も人そのものが音楽なんだ」
去っていった信者には伝わっただろうか。全てが尊く比べられるものではないと目の前の相手にも教えてやりたいが、叶わぬことだと夜は知っている。
そして怜奈は片目を眇め、手にした刃を天に掲げた。
「教えを説いて下さったクロエディーヴァさまは助けてもくれませんわね」
刃に映し出されたのは惨劇の鏡像。怜奈は敵を作り出した元凶であるビルシャナの名を口にして敵の反応を見る。
「小癪な奴らめ」
敵は憎々しげに呟く。その声を聞いたレピーダは少しだけ敵が可哀想に思え、小さく肩を落とした。だが、敵である以上は容赦はできない。
「静かな冬の海に映えるのは、レピちゃんという綺羅星! どんどん行きますよ!」
旋刃の蹴りで敵を貫くレピーダの姿は、その言葉通り一陣の流れ星のように見えた。救うことが無理ならばせめて美しく、少しでも楽しく。
レピーダに続いた記は指揮棒の杖をくるりと回し、黄金の融合竜を召喚する。
「満足する曲が奏でられるかはわかりませんが、これがわたし達の思いです」
指揮者兼狙撃手として自分の役目を演じよう。そう決めた記が放った竜は五線譜の上を走るかのように舞い躍った。
ニケも其処に生まれた好機を逃さず、ミミックと共に攻勢に出る。
「もう少しって所だね。気を抜かずにね」
注意を呼び掛けつつも、この分ならば自分が癒しに回らずとも済むだろう。戦況をしかと把握したニケは氷の一閃で敵を穿った。
「さぁ、遠慮はしないぞ。惨めに死にさらせ」
「残念だけどね」
不遜な物言いかつ凛と告げたレシタティフの銃撃に続いて夜が凍撃を重ねる。ビルシャナも炎を撃ち返してくるが、夜がそれを受け止めていなした。
ダンサーと怜奈もその間に攻撃を放ち、敵を弱らせていく。
シュゼットは痛みを受けた仲間の姿を見つめ、ミアプラキドゥスの冱導を発動させる。
「海音に心惹かれる事もあるのでしょう。けれど――」
首を横に振ったシュゼットは敢えてその先の言葉を紡がず、ひかりを放つ。其は星のいらえ。天に皓々たるひかりの抜殻、沫のよに弾け降るふる雨が蔽うは疵、澄ますは眸。
そして、戦いは終局に向かってゆく。
巡る攻防は激しく、されど番犬達の有利に進んでいた。
「海も大地も花も嵐も奏でる大舞台。さあご堪能くださいな!」
記は杖を振り、幾度めかの禁呪を解き放つ。敵の身を縛る痛みは徐々にではあるが着実に力を削っていた。
今です、と告げた記の声を聞き、レシタティフは頷きを返す。
「わたしは攻撃の要。倒れるわけにも、攻撃の手を緩めるわけにもいかないからな」
それゆえに最後まで戦い続ける。少女は不屈の志が宿った眼差しを敵に向け、光の翼を暴走させた。途端にレシタティフの身体が光の粒子となり、ビルシャナを真正面から穿つ。
ダンサーはストーカーに続くように告げ、仲間達に声をかけた。
「そろそろトドメ、いけるかも」
「そうだね、終わりが近い。全力で屠ろうか」
ニケは少女の言葉に応え、ミミックに指示を送る。原初の炎と放たれた武装が敵に襲い掛かっていく中、ニケは幻影竜の焔を解放した。
ダンサーもサメの着ぐるみを翻し、構えた銃口から連弾を撃ち放ってゆく。
更に怜奈が秘薬を用いて電気石の能力を解放する。
「凪の海を思い浮かべて眠りなさい……」
突風に乗せた静電気が迸り、穿紅嵐となって猛威を振るった。夜は其処に宵隼歌を重ね、終曲を飾りたいと願う。
「其の命の音を海へ還してやろう」
母なる海に抱かれて眠れ。そう告げた言葉と共に黄泉路が拓かれていく。
シュゼットはあと一撃で敵が倒れると察し、生命を賦活する力をレピーダに施した。自分は無音の部屋で目覚めた。だからこそ、世界に音が満ちていることは幸福に思える。
「後はお願いします」
「お任せください! 光のヴァルキュリア……その輝きの真髄を、今!」
最期の音を奏でて欲しいという願いを込めたシュゼットの思いにレピーダは笑顔で以て応えた。つぎの瞬間、翼が光刃となって迸る。
「そんな――!?」
そして、衝撃を受け止めきれなかった敵は驚きの表情を浮かべたまま散った。
●波の音
羽が周囲に舞い、小波に浚われてゆく。
倒れたビルシャナが消えていく様を見送りながら、シュゼットは両手を重ねる。彼もまたひとつの命だった。冥福を願うシュゼットに倣い、怜奈とレピーダも祈りを捧げた。
ニケは顔をあげ、羽が沈んでいった海を見遣る。
彼は海に還ったのだろうか。
そうであるのならば本望だったのかもしれないと考え、ダンサーはサメの着ぐるみを脱皮、もとい脱いでいつものトナカイに戻る。
「着ぐるみが海水を吸って重かったかも」
「ふふ、よく頑張ってくれましたわね」
ダンサーがふるふると首を振って水分を飛ばす中、怜奈は優しく微笑んだ。
そんな中でレシタティフは吹きつける海風に軽く首を振り、冬の海の寒さを実感する。自分は寒くないが、と呟いた後に少女は仲間に問うた。
「皆は寒くないのか? 早く帰って暖かいコーヒーでも飲みたい気分だ」
「大丈夫。……ほら静かに余韻に浸るのも良いでしょう?」
記は薄く笑み、水面の音に耳を傾ける。確かに、と答えたレシタティフは記の隣に佇み、海辺の景色を瞳に映した。
海風は凍れるけれど、不思議と感覚をクリアにしてくれるような気がする。
夜は足元の貝殻を拾って耳に当て、瞳を閉じた。
波音、そして皆の笑い声や話し声までもが音楽のようで心地良く思える。瞼を開いた夜は手にしていた貝殻をポケットへ入れ、海のしるしとして仕舞い込んだ。
「さあ、帰ろうか」
「キュッキュリーン☆ 温かいコーヒーでも飲みに行きましょうか」
夜の呼び掛けにレピーダが明るく答え、冷えた体を温めに行こうと提案する。レシタティフは仲間が自分の思いを組んでくれたのだと察し、嬉しげに目を細めた。
「うむ、好きな飲み物も、リラックス出来る身近なアイテムだしな」
安らぎをくれる海のように、と口にした少女はもう一度だけ水面に目を向ける。
冬の海は厳しく冷たい。けれど、寄せては返す波は、まるで番犬達を見送ってくれているかのように優しい音を響かせ続けていた。
作者:犬塚ひなこ |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2018年2月18日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 4/キャラが大事にされていた 0
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