●
ズシーン……!
天を衝くような巨体が地に沈んだ。
巨木の幹のような腹に風穴を開けられ、茶色い触手の先端を何本もぶったぎられ、水のような体液を派手に撒き散らして。
「へっ、ざまあみやがれ!」
「何度復活したって無駄だ! オウガの強靭さを甘くみたな!」
巨体と戦っていたオウガ達が嘯くも、彼らとて口先ほど余裕な訳ではない。
「ハァ……ハァ……」
と、肩で息をしている者が少なくなかった。
それでも、強がってしまうのがオウガの戦士である。
すると、
ブリュブリュブリュ……!
確かにオウガが貫いたはずの巨体の腹が、奇妙な音を立てて風穴を埋め始めた。
ズニュッ!!
更には、切断された触手らの断面から、新たにライトグリーンの先端が生えて、ぶらりと垂れ下がった。
さっきまではピクリともしなかった何本もの足が活発に蠢き始めて、巨体はすっくと立ち上がった。
「おぐん そーど ほろわろ りむがんと みりしゃ なうぐりふ!」
こうして巨体——オグン・ソード・ミリシャは、一回り大きくなって復活したのである。
「また復活したのかよ? なら、復活しなくなるまで倒し尽くすまでだ!」
「倒す度に強くなる? 望む所だぜ! 強敵と戦えるチャンスじゃねーか!」
オウガ達は威勢良く啖呵を切って、戦闘を再開したが。
——コロン。コロコロコロコロ……!
「みりしゃ みあ おぐん そーど ぬい くるうるく!」
幾ら多勢とは言え、ひたすら真正面から殴り合い続けた結果、オウガ達は30、40、50mと何度も蘇るオグン・ソード・ミリシャに敵わず、負けてコギトエルゴスムになってしまった。
●
「ステイン・カツオ(剛拳・e04948)殿が予期してらした事態が現実となり……クルウルク勢力がオウガの主星『プラブータ』を襲撃し、オウガの戦士達を蹂躙しているでありますよ」
小檻・かけら(清霜ヘリオライダー・en0031)が説明を始める。
「オウガ遭遇戦で現れたオウガ達は、この襲撃から逃れて地球にやってきていたそうであります」
そこまで言うと、かけらは隣に立つ人物を手で示して、
「詳しくは、新たにケルベロスとなった、オウガのラクシュミ殿から説明をして頂きますので、どうぞお聞きくださいませ」
バトンタッチされたラクシュミは、まずは律儀に挨拶をした。
「こんにちは、ラクシュミです。このたび、定命化によってケルベロスとなる事ができたので、皆さんの仲間になる事ができました」
静かに彼女の話へ耳を傾けるケルベロス達。
「オウガの女神としての、強大な力は失ってしまいましたが、これからまた、成長して強くなる事が出来ると思うと、とてもワクワクしています」
ラクシュミの声音は感謝と期待に弾んでいた。
「オウガ種族は戦闘を繰り返し成長限界に達していた戦士も多かったですので、ケルベロスになる事ができれば、きっと、私と同じように感じてくれる事でしょう」
皆さんに確保して頂いた、コギトエルゴスム化したオウガも、復活すればケルベロスになるのは確実だと思います。
そうラクシュミは請け負ってくれた。
「ここからが本題なのですが、オウガの主星だったプラブータは、邪神クルウルクの眷属である『オグン・ソード・ミリシャ』に蹂躙されて、全てのオウガ達がコギトエルゴスム化させられてしまいました」
辛そうに表情を曇らせるラクシュミ。
「オグン・ソード・ミリシャの戦闘力は、初期時点ではそれほど高くないのですが、『撃破されると周囲のグラビティ・チェインを奪い、より強力な姿で再生する』という能力を持つ為、オウガの戦士にとって致命的に相性の悪い敵だったのです」
それと言うのも、オウガの戦闘スタイルが、ただただ猪突猛進に攻撃を続けるというものだからだ。
「とにかく殴って倒す。再生しても殴って倒す。より強くなっても殴って倒す……を繰り返した結果、地球に脱出したオウガ以外のオウガは全て敗北してコギトエルゴスム化してしまったのですから」
ラクシュミは続ける。
「地球に脱出したオウガも、逃走したわけではなく、オグン・ソード・ミリシャにグラビティ・チェインを略奪された為に飢餓状態となり理性を失い、食欲に導かれるまま地球にやってきたのです」
彼らも、理性さえ残っていれば、最後まで戦い続けて、コギトエルゴスム化した事でしょう——と。
「このように、オウガとオグン・ソード・ミリシャの相性は最悪でしたが、ケルベロスとオグン・ソード・ミリシャの相性は最高に良いものになっています」
——ケルベロスの攻撃で撃破されたオグン・ソード・ミリシャは、再生する事も出来ずに消滅してしまうのです。
「オウガの戦士との戦いで強大化した、オグン・ソード・ミリシャも、今頃は力を失って元の姿に戻っていると思います。オウガのゲートが、岡山県の巨石遺跡に隠されている事も判明しましたので、一緒にプラブータに向かいましょう」
と、ラクシュミはケルベロス達へ誘いをかけた。
再び説明役がかけらに戻る。
「ラクシュミ殿がケルベロスとなった事から、コギトエルゴスム化しているオウガ達がケルベロスとなる可能性は非常に高いであります」
即ちこの戦いは、デウスエクスとしてのオウガを救出する為の戦いでは無く、同胞であるケルベロスを救出する戦いとなるだろう。
「また、プラブータを邪神クルウルク勢力の制圧下においたままですと、いつ邪神が復活して地球に攻め込むかわかったものではありません」
同胞たるケルベロスを救い、地球の危機を未然に防ぐ為にも、この戦いは重要である。
「オグン・ソード・ミリシャの多くは、体長2m程度の初期状態に戻っていて、それほど強敵じゃないであります」
オグン・ソード・ミリシャの外見は、非常に冒涜的で、長く見続けてると狂気へ陥りそうになる為気をつけて欲しい。
戦闘に影響は出ない筈だが、軽い錯乱状態となり、おかしな行動をとってしまう可能性もあるようだ。
「その場合は、周りの仲間がフォローして差し上げられたら良いですね」
オグン・ソード・ミリシャは、攻性植物に近い戦闘方法と触手を利用した攻撃等を繰り出してくる。
基本は2m級だが、中には、3~4m級や最大7m級のオグン・ソード・ミリシャも存在するらしいので、注意が必要だ。
「このまま放置して、邪神クルウルクの復活みたいな事件が起これば大変でありますから、今の内に対処しておくのが間違いないであります。宜しくお願い致しますね♪」
かけらは最後、彼女なりに皆を激励して説明を締めた。
参加者 | |
---|---|
久我・航(誓剣の紋章剣士・e00163) |
篁・メノウ(紫天の華・e00903) |
レクス・ウィーゼ(ライトニングバレット・e01346) |
テレサ・コール(黒白の双輪・e04242) |
大首・領(秘密結社オリュンポスの大首領・e05082) |
氷霄・かぐら(地球人の鎧装騎兵・e05716) |
白石・明日香(愛に飢え愛に狂い愛を貪る・e19516) |
マヒナ・マオリ(カミサマガタリ・e26402) |
●
惑星プラブータ。
「く、苦し……くはないな」
女神ラクシュミの導きでオウガのゲートを抜けた久我・航(誓剣の紋章剣士・e00163)は、プラブータの大気を肺いっぱいに吸い込んで、
「さっむ! ちょっと気温は低めっぽいな」
思わず両手で自分を抱くように脇腹を摩りつつも、安堵の息をついた。
「いやぁ、外宇宙とか初めてだし『グラビティと寿命以外で死なない』とは知ってても、『外宇宙でも苦しくない』とかは聞いた事無かったしな。いやぁ良かった良かった」
初めての外宇宙探索にいささかハイになっているのだろう、紙や筆記具を出して地図を書こうと歩き出す航の声は、ウキウキ弾んでいた。
「スマフォはここで、予備のバッテリーはここ……気づかない内にどっかで落としてたとか大変だからね」
篁・メノウ(紫天の華・e00903)も、声こそ至極冷静だが、やはり内心では海外旅行どころではない騒ぎな現状に、若干ワクワクしている。
「よし、確認オッケー。そんじゃいこっか!」
コギトエルゴスムを収納する為のリュックに、懐中電灯や携帯食料、飲料水を詰め込んで、意気揚々と歩き出すメノウ。
期待に満ちたその足取りは力強い。
そして。
「まずは拠点にできそうな場所を見つけたいですね。敵に見つかりにくい場所があればよいのですが……」
航やメノウ以上に大興奮して前日一睡も出来なかったのが、テレサ・コール(黒白の双輪・e04242)であった。
色素のみならず幸まで薄い、アンニュイ無表情のメイドさんで、眼鏡とメイド服をこよなく愛する敬虔な眼鏡教信者だ。
「あと、いっぱい写真撮りたいです。私、宇宙旅行は初めてなので。あと、石や草とか持って帰りたいです。あと、あと……」
例によって表情に出ないせいで判りづらいが、実のところ相当ハイテンションになっているテレサは、眼鏡の曇りを綺麗に拭って探索を始めた。
一方。
「それにしてもラクシュミさん、嬉しそうだったわね~」
氷霄・かぐら(地球人の鎧装騎兵・e05716)は、ヘリポートでのラクシュミの様子を思い出し、微笑ましそうに頰を緩めた。
(「理由は『あ、そういうこと』って感じだったけど……」)
「うんうん。修行し直せるのを喜ぶって、本当に戦いが好きでないと言えないよなぁ」
かぐらの呆れが伝播した訳でもあるまいが、師団仲間の航も苦笑した。
「そうよね……さて、地球外での活動ってどうなるのか分からないけど、頑張っていきましょう」
笑顔になるかぐらの所持品の中で特筆すべきは、コンパスや望遠鏡、後は入る限り詰め込んだ食料であろうか。
「ここが、プラブータ……」
マヒナ・マオリ(カミサマガタリ・e26402)は、初めて訪れたデウスエクスの主星に興味深々で辺りを見回していた。
「アロアロ。ワタシが一緒だから、ね」
彼女の背中にくっつきっぱなしのアロアロは、どこでもふるふる震えているのが常ながら、やはり初めての土地ならぬ初めての星とあって不安が募るようだ。
ちなみにマヒナの鞄は、戦場食と糖分補給用のチョコがパンパンになるまで詰め込まれている。
「異星に進出、なあ。まさか、俺が生きてる内にそんな事になるたあ思ってもみなかったぜ」
と、感慨深そうに呟くのはレクス・ウィーゼ(ライトニングバレット・e01346)。
「ま、異星の相手と戦うだけが能じゃねえんだ。こうして手を取り合える道が有るのなら全力で其れを勝ち取らねえとガキ達に合わせる顔がねえしな」
アイテムポケットを使えるレクスは、それに合わせた1立方mの箱を持参、見つけたコギトエルゴスムの運搬に使うつもりらしい。
他方。
「ふむ……世界征服前に、宇宙征服の下見も必要か……」
相変わらずの壮大な野望を更にグレードアップさせているのは、大首・領(秘密結社オリュンポスの大首領・e05082)。
「地球は遠いな……無事帰れるか……? それに探索か……フフッ」
本当は気の小さい領が今回の任務で期待に胸を膨らませる自体、非常に珍しい事だった。
「大首領様、頑張りましょうねー。征服しても何も無さそうな場所に見えますけど……」
白石・明日香(愛に飢え愛に狂い愛を貪る・e19516)は、領へ笑顔を向けてから、前方を見渡した。
「森があれば、隠された森の小道も役に立ったでしょうけど、まさかここまでだだっ広い荒野だとは思わなかったわねー」
彼女が驚くのももっともで、オグン・ソード・ミリシャにグラビティ・チェインを奪い尽くされたプラブータの大地は、草一本生えない荒れ野と化していた。
要するに、オグン・ソード・ミリシャを探し出して奴に倒されたオウガ達のコギトエルゴスムを回収する為には、只管荒野を進む必要があり——僅かにでも生活感の残る場所は用が無い事になる。
暗い空の下、荒涼とした同じ風景ばかりを往く探索……精神的に過酷な行軍になりそうだ。
●
夜——プラブータの昼夜の区別を赤黒い空から感じ取るのは困難だが、時計さえあれば1日の探索時間に制限をつける事はできる。
8人は荒野の中に野営地を定めて、火を焚き、食事を摂った。
マヒナが巣作りを用いた為、飲食は実際に体力をつけるよりも精神安定の意味合いが大きい。
「今日の成果はこの角が取れた石ころです! 後は2mのミリシャと戦いましたが、難なく倒せましたね」
テレサがきゅっきゅと石を予備のメガネ拭きで拭きつつ、探索の報告をする。
「ああ、俺が駆けつけた時にはもう……って敵より石の方が優先かよ!?」
皆の持ち寄った携帯食料を摘みながら、航がツッコんだ。
「……月かな、あれ。月とは呼ばないのかもしれないけど……」
束の間の休息の中、マヒナの関心は空に一際大きく見える丸い星——惑星プラブータの周りを回る名も知らぬ衛星にあって、ずっと飽きずに眺めていた。
「ここまで視界が開けていると、殊更隠密気流が有難く感じる気もするわ」
「障害物は無い分、空の暗さがなあ……双眼鏡の出番は余り無いかもしれん」
かぐらとレクスもそれぞれ1日歩き回った感想を述べる。
「ぷは~っ、やっぱり1日中動き回ったら喉渇くね! あたしも敵と交戦したからさ、2mのヤツ!」
ごくごくと飲料水を飲んで大きく息をつくのはメノウだ。
「フハハハ……オグン・ソード・ミリシャとやら、どうやら我の強さに恐れをなして、姿を隠していると見える」
領が相変わらず傲岸不遜に嘯いた。探索の成果の無さも物は言い様である。
「コギトエルゴスムも見つかりませんでしたねー」
一緒に行動していた明日香も頷く。
報告会を終え、見張り役の領と明日香、レクスにソフィアを残して、皆が寝ようとした——その時。
「みりしゃ かるする ぷらぶーた なうぐりふ!」
悠に4mはあるオグン・ソード・ミリシャが、その触手をうぞうぞと振るって襲いかかってきた。
●
「みあ みあ おぐん そーど! みあ みあ おぐん そーど!」
グラビティ・チェインの枯れ果てた大地を我が物顔で闊歩するオグン・ソード・ミリシャは、成る程ずっと眺めていると知らなくても良い深淵に引き摺り込まれそうな外見をしていた。
「フハハハハ……この謝肉祭こそ、我が内なる中学2年生に導かれし者たちに送るホトトギス!」
日頃のアホさ加減故か、それとも地球への哀愁と旅行気分が心を占めていた為か、敵を見るなという注意をすっかり忘れて叫ぶのは領。
それに、見るなと言われれば見てしまうのが人情である。
「さぁ、進め! 集まれ! 我こそは世界の大将軍!!」
例え言ってる事はおかしくても、ゾディアックソードを地に突き立てて描いた守護星座が前衛陣を守護する辺り、決して狂気には飲み込まれていなかったりする。
密かに発光する緑色の実の強打を喰らって、毒に冒されてはいたが。
「大首さん、大丈夫……っぽいね?」
メノウは領の動きを見て安心しつつ、自分も狂気対策にと首から提げたお守り“勿失勿忘願”を握り締める。
「……ん。必ずオウガのコギトエルゴスムを取り戻すよ」
己が何の為にここへ居るかを再認識した後、空の霊力帯びた斬霊黒刀 夜一文字で、オグン・ソード・ミリシャへ一太刀を浴びせた。
異星でも変わらず精錬された身のこなしは、幼い外見に反して立派な武芸者のそれである。
「当たれっ!!」
ジャイロフラフープ・オルトロスの内部から弾丸を打ち出すのはテレサ。敵の撃破を優先してバイオガスを噴出するのは後回しだ。
高威力ではあるものの、反動が大きいせいか命中にやや難があるのだが、幸いにも弾は命中、オグン・ソード・ミリシャに多大なダメージを与えた。
ライドキャリバーのテレーゼは炎を纏って突撃をぶちかまし、主との息の合ったコンビネーションを見せた。
「それにしても、人類初の外宇宙活動か~。旅行や遠足じゃないのは分かってるが、やっぱりちょっとワクワクするな」
と、航は1日経っても未だ興奮冷めやらぬ様子。
「まぁ何にせよ、戦闘時の環境の違いとかも分からないし、気を引き締めないとな」
すらりと抜き払った日本刀で緩やかな弧を描いて、オグン・ソード・ミリシャの太い触手の根元をズブッと的確に斬り裂いた。
「聞きしに勝る凄まじい見た目をしているわね……ドローン起動」
かぐらは小型治療無人機の群れを展開して、前衛陣を防護する。
「さっきまで寒かったけれど、何だか少し暑いような……?」
と、突然服の裾に手をかけて一気に脱ごうとした時は、男性陣の中でも年若い航を動揺させた。
「落ち着け氷霄さん、狂気に支配されかかってるぞ!!」
だが、そこは手慣れたツッコミ役、すぐに大喝を発してかぐらを我に返らせる。
「頭上注意、だよ?」
目には目を、植物には植物を——という訳でも無いだろうが、ヤシの木の幻影を作るのはマヒナ。
オグン・ソード・ミリシャの遥かな頭上へとココナッツを落下させ、硬そうな見た目通りの激痛を齎した。
そして、必死に顔を背けて奴を視界に入れぬようにしながら、神霊撃を見舞うのがアロアロだった。その脅えっぷりは微笑ましさ通り越して気の毒ですらある。
「……っ! 落ち着け、俺……」
レクスは、オグン・ソード・ミリシャの蠢く触手達が織り成す揺らめきを眺めて、ふと意識が我知らず騒つくのへ戦慄する。
「此処でこんなもんに飲まれて、惚れた女を守り切れなかった時と同じ轍を踏む気かってんだ……!」
懸命に自らを叱咤して気合いを入れるや、最愛の妻の残滓である結婚指輪を触って奮起、オグン・ソード・ミリシャへ重い飛び蹴りを食らわせた。
ソフィアは安心した様子で、念の篭った小石を飛ばしている。
「大首領様、ちょーっとチクッとズキッとグサッと……しませんよー」
「迅速なヒールに感謝する、白石は脅かすのが好きだな……」
(「び、びっくりしたぁッ!!?」)
明日香はナチュラルに領をビビらせつつも、禁断の断章を紐解いて詠唱し、彼の脳細胞に常軌を逸した強化を施すや、体力を回復させた。
●
「みあ みあ!」
オグン・ソード・ミリシャは、幾ら触手を伐採されても痛がる様子を見せず、むしろ傷口から噴き出す水のような粘液を撒き散らして攻撃してきた。
「痛っ……!」
メノウの代わりに液体に斬られたかぐらが、思わず呻く。その後方では明日香をテレーゼが庇っていた。
「始原より出ずる我が内なる混沌よ! 今こそ其の力を示せ!! エターナルフォースワイルドケイオスーーーーー!!!!」
ともあれ、いつもの調子を取り戻した領は、『永遠なる始原の混沌』をオグン・ソード・ミリシャへぶちかます。
それは『敵は混沌に飲み込まれて死ぬ』が謳い文句の——彼の内なる中学2年生によって生み出され、余りにも名称などが痛々しい為に封印されたというグラビティ。
領の召喚したブラックホールモドキは、しっかとオグン・ソード・ミリシャを丸呑みして、見事に激痛を齎した。
「清き風、邪悪を断て! ——回復術、”禍魔癒太刀”!!」
メノウは連光を振り抜いて、真空の刃を発生させる。
妖怪『鎌鼬』の性質に準えて生み出された技故か、目に見えぬ風圧はパッと霧散してかぐらの傷を浄化、治癒した。
「世界に眼鏡を!! 眼鏡に光を!!」
突如として、大音声を発するのはテレサ。
「コールさん……大丈夫かしら……」
思わずかぐらが狂気に陥ったのではと心配するのも尤もだが、何の事はない、シャウトで自己回復に努めただけである。
「はっ、すみません大丈夫です! 私の唯一にして絶対神はいついかなる時も眼鏡様にございますから!!」
慌てて弁明するテレサの傍らでは、テレーゼが内蔵ガトリング砲を掃射してオグン・ソード・ミリシャへ言い知れぬ圧迫感を与えていた。
「それ大丈夫な状態なんだ……」
航は苦笑しつつ日本刀を構えて、オグン・ソード・ミリシャへと突撃を敢行。
「貫け! 流星牙!」
エンブレムミーティアよりヒントを得て会得したという、紋章の力借りし神速の突きを、奴の胴体に容赦なく浴びせ掛けた。
「ラクシュミさんが仲間になった今だからこそ言える事かもしれないけど……こんな風になる前のオウガの主星、どんな景色か見たかったわね……」
そんな風に失われた自然へ思いを馳せつつ、ドラゴニックハンマーを振り下ろすのはかぐら。
砲撃形態に変化したハンマーの砲口から竜砲弾が射出され、オグン・ソード・ミリシャの足元——根元と言うには土の上で動き回り過ぎだ——を容赦無く撃ち貫いた。
「うーん……まだ、大丈夫」
マヒナは小指に嵌めたstella regiaを眺めて心を落ち着けるや、自信に満ちた瞳でオグン・ソード・ミリシャを見据え、照準を定めた。
Ho’oponoponoから放たれた矢がオグン・ソード・ミリシャの喉元に突き刺さって、そのまま奴に流れる時間を凍結、動きを制めた。
アロアロは必死に物言わぬ祈りを捧げて、テレーゼを癒している。
「喰らいなさい!」
理力を籠めた星型のオーラを、オグン・ソード・ミリシャの胴体に蹴り込むのは明日香。
「どんな装甲も何度も攻撃を喰らえば傷の一つ位負うし、体の中はどんな奴だって鍛えられねえさ。さあ弾丸のフルコースご馳走してやるぜ?」
レクスは身軽に跳び上がってオグン・ソード・ミリシャへ肉薄すると、奴の一点へ銃弾を集中させて撃ち込む。
尚も銃創へ銃を突っ込むや、体内にまで銃弾を何発も連射して、遂に全長4メートルを誇るオグン・ソード・ミリシャを絶命させた。
「地球もキレイなところだから、気にいってくれたら嬉しいな」
マヒナが、遺骸の側に転がっていたオウガのコギトエルゴスムに向かって語りかける。
「そして、いつかまたここに帰ってこれたらいいね……」
その後も8人は、2mや3m級のオグン・ソード・ミリシャを6体撃破して、先の3体と合わせて約60個のコギトエルゴスムを集めたのだった。
作者:質種剰 |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2018年2月20日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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