●オグン・ソード・ミリシャ
見上げるばかりの、巨大なもの。それの名はオグン・ソード・ミリシャという。
その周囲には身体より多数の角を生やした者達――オウガが八人程集っていた。
オウガ達は戦士であり、その姿は傷を負って満身創痍。しかし、その戦意に衰えは見えず果敢に巨大なものへと向かっていく。
雄たけびをあげ、激しい戦いの末にオグン・ソード・ミリシャは倒されたのだ。
それに喜ぶオウガの戦士達。
しかし――オグン・ソード・ミリシャは絶えてはいなかった。
ぐちゅり。ぐちゃり。ぐちょり。
ぐちゅぐちゅ、ぐちゃぐちゃ。
不快な音が響き始める。倒れたはずのオグン・ソード・ミリシャはその身を溶かすように解き、そしてまた再構成を始める。
オウガの戦士達はまだ立ち上がるのかと態勢を整え、敵が立ち上がるのを待った。
くちゅり、ぐちゃり、ぐしゃりと歪な音を立てて立ち上がったそれは――先ほどよりも大きさを増している。
倒せば復活して、強くなる。
そんな相手に戦闘好きのオウガ達は、強敵だと士気を上げ、再生しなくなるまで戦えば良い、いつかは勝てると考えて対していた。
しかしそれは終わりがない。そして先に果てたのはオウガ達の方だった。
復活したオグン・ソード・ミリシャの攻撃により、ひとり、ふたりと果ててコギトエルゴスムへとその姿を変えていくオウガの戦士達。
最後に残ったのはオグン・ソード・ミリシャだった。
『おぐん そーど ほろわろ りむがんと みりしゃ なうぐりふ!』
それは勝利を喜ぶように声をあげる。
『みあ みあ おぐん そーど! みあ みあ おぐん そーど!』
楽しげなその鳴き声は、コギトエルゴスムと化したオウガ達の上へと響き渡るのだった。
●ラクシュミよりの
オウガ遭遇戦、お疲れ様と夜浪・イチ(蘇芳のヘリオライダー・en0047)はケルベロス達を労う。けれど、また動きがあるのだと言葉続ける。
ステイン・カツオ(剛拳・e04948)が予期していたのだが、クルウルク勢力がオウガの主星『プラブータ』を襲撃し、オウガの戦士達を蹂躙しているようなのだと。
「現れたオウガ達はこの襲撃から逃れて地球にやってきたみたいなんだよね……詳しい話は彼女にお願いしようと思う」
そう言って、イチは新たにケルベロスとなった、オウガのラクシュミを示した。
「こんにちは、ラクシュミです。
このたび、定命化によってケルベロスとなる事ができたので、皆さんの仲間になる事ができました。
オウガの女神としての、強大な力は失ってしまいましたが、これからまた、成長して強くなる事が出来ると思うと、とてもワクワクしています。
オウガ種族は戦闘を繰り返し成長限界に達していた戦士も多かったですので、ケルベロスになる事ができれば、きっと、私と同じように感じてくれる事でしょう。
皆さんに確保して頂いた、コギトエルゴスム化したオウガも、復活すればケルベロスになるのは確実だと思います。
ここからが本題なのですが、オウガの主星だったプラブータは、邪神クルウルクの眷属である『オグン・ソード・ミリシャ』に蹂躙されて、全てのオウガ達がコギトエルゴスム化させられてしまいました。
オグン・ソード・ミリシャの戦闘力は、初期時点ではそれほど高くないのですが、『撃破されると周囲のグラビティ・チェインを奪い、より強力な姿で再生する』という能力を持つ為、オウガの戦士にとって致命的に相性の悪い敵だったのです。
とにかく殴って倒す。再生しても殴って倒す。より強くなっても殴って倒す……を繰り返した結果、地球に脱出したオウガ以外のオウガは全て敗北してコギトエルゴスム化してしまったのですから。
地球に脱出したオウガも、逃走したわけではなく、オグン・ソード・ミリシャにグラビティ・チェインを略奪された為に飢餓状態となり理性を失い、食欲に導かれるまま地球にやってきたのです。
彼らも、理性さえ残っていれば、最後まで戦い続けて、コギトエルゴスム化した事でしょう。
このように、オウガとオグン・ソード・ミリシャの相性は最悪でしたが、ケルベロスとオグン・ソード・ミリシャの相性は最高に良いものになっています。
ケルベロスの攻撃で撃破されたオグン・ソード・ミリシャは、再生する事も出来ずに消滅してしまうのです。
オウガの戦士との戦いで強大化した、オグン・ソード・ミリシャも、今頃は力を失って元の姿に戻っていると思います。
オウガのゲートが、岡山県の巨石遺跡に隠されている事も判明しましたので、一緒にプラブータに向かいましょう」
「ということで、ちょっと惑星『プラブータ』に足を延ばしてほしいんだ」
ラクシュミがケルベロスとなった事から、コギトエルゴスム化しているオウガ達がケルベロスとなる可能性は非常に高い。
つまりこの戦いはデウスエクスとしてのオウガを救出する為の戦いではなく――同胞であるケルベロスを救出する戦いとなるのだ。
「それに、プラブータを邪神クルウルク勢力の制圧下においたままにしておくと、邪神が復活して地球に攻め込む、なんてこともあるかもしれない」
同胞を救い、地球の危機を未然に防ぐ為にも、この戦いは重要となるとイチは続けた。
そして、相手となるオグン・ソード・ミリシャについての話を始める。
「オグン・ソード・ミリシャの多くは、体長2メートル程度の初期状態に戻っているみたい。それは、そんなに強敵じゃない」
オグン・ソード・ミリシャの外見は、非常に冒涜的。長く見続けていると狂気に陥りそうになるので気を付けて欲しいとイチは言う。
戦闘に影響は出ないだろうが、軽い錯乱状態となりおかしな行動を取ってしまう場合もあるかもしれないと。そういった場合は、フォローをしあって持たせるしかないようだ。
「オグン・ソード・ミリシャは攻性植物に近い戦闘方法と、触手を利用した攻撃をしてくるみたい。基本的には2メートル級だけど……」
その中には3m級や、最大7m級のオグン・ソード・ミリシャも存在する可能性がある。
「このまま放置しておけば、後々大変なことになるかもしれないし……何より、新しい仲間が増えるならそれは歓迎したいよね」
だから、よろしく頼むよとイチはケルベロス達を送り出した。
参加者 | |
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シル・ウィンディア(蒼風の精霊術士・e00695) |
御門・心(オリエンタリス・e00849) |
ミスティアン・マクローリン(レプリカントの鎧装騎兵・e05683) |
笹ヶ根・鐐(白壁の護熊・e10049) |
四方・千里(妖刀憑きの少女・e11129) |
ラズリア・クレイン(天穹のミュルグレス・e19050) |
上里・藤(黎明の光を探せ・e27726) |
シャンツェリッゼ・イニクロニク(速さの無駄遣い・e30061) |
●荒れた星で
生命の息吹があるかと言えば、無いとしか感じられない。
「ここが、オウガさんたちの母星……ですか。今までここでたくさんの人が暮らしていたでしょうに、何だか哀しいですね」
青の瞳を細めラズリア・クレイン(天穹のミュルグレス・e19050)はぽつりと呟く。
どこを見ても荒野が続くばかり。この地に鼻にもないのだ。
自分の知っている大自然とはまた違うものだと、シャンツェリッゼ・イニクロニク(速さの無駄遣い・e30061)も思う。
けれど、これもまた趣の異なる大自然と言える。
遮るもののない世界に一同は視線を巡らせていた。
「マッピングするにも、これといった物がないからほとんど真っ白なままだね」
シル・ウィンディア(蒼風の精霊術士・e00695)は唸りつつ、まだ書き込みの少ない地図を畳む。
惑星プラブータ。
ケルベロス達が歩むのは荒地だ。
固い大地に真っ直ぐな地平線。多少、岩などもあったりするが目を引く程の大きさというわけでもない。
本当に、何もないような場所だった。
「文字通り、雲をつかむような状況だからね」
そう零したミスティアン・マクローリン(レプリカントの鎧装騎兵・e05683)からは糸が続いている。
それは出発点となった場所とをつなぐ糸。途切れることなく、存在する手綱でもある。 周囲の音に耳を澄ませていた四方・千里(妖刀憑きの少女・e11129)は何も変わったものがないと視線を巡らせる。
時折聞こえるのはひゅうと、鳴くような風の音くらいだ。
探索を続け、やがて夜は来る。
安全地帯を探すものの、開けた荒野に隠れる場所はない。
上里・藤(黎明の光を探せ・e27726)は休息可能な場所を探してみるもののここといった場所がない。
しかし休まなければ探索ペースも落ちてしまう。
夜営では見張りを交代で立て、食事と睡眠はしっかりと。
それはメンタルの保持にもつながる。
「フリーズドライ品は便利だねぇ……シチュー出来たぞ」
縦走登山食も参考に食事は準備されていた。笹ヶ根・鐐(白壁の護熊・e10049)はしっかり心を休めて次に備えるのだと言う。
「手伝うよ……どーやってそんなにうまく作れるんだろ?」
とシルが零す声に鐐は笑って。
「不謹慎かもしれんが、他惑星探査というのに浪漫を感じざるを得ないな。他種生命居住地への上陸なぞ歴史上初じゃないか?」
笹ヶ根・鐐(白壁の護熊・e10049)はそう言って手にしていた酒を一口。
「火酒の香は人が作った芸術品だねぇ……」
それはどんな場所であっても変わらずの味だ。
「飲み物だ」
と、シャンツェリッゼが取り出した栄養ドリンク。それは休憩毎に渡される大自然を愛する味のものだ。
そしてそれは皆の栄養を保つための力となっている。
食事は皆でとり、身体を休めるのは二班に分かれて。
夜を無事に過ごしコギトエルゴスムの捜索は続く。
戦闘は数度あったが、2メートル級の敵ばかりとの遭遇で一斉に攻撃をかけすぐに決着はついていた。
そして、そこでみつけたコギトエルゴスムも回収してある。
ケルベロス達が今までと変わらず、周囲を見つつ進んでいると――遠くでひとつ、影が動いていた。
「あちらに……敵の姿が」
真っすぐその姿を捉えないようにしつつ御門・心(オリエンタリス・e00849)は何か蠢くものを見つけ示す。
「御門さん、どこ?」
と、藤が問えば指を指して示す。
その方向を双眼鏡で確認すればオグン・ソード・ミリシャだった。
ゆるりと動く。逆にそれが不穏。
その姿に目を奪われ、気を付けてはいたものの藤の心に狂気が宿りかける――逃げたい、と。
双眼鏡を持つ手が震え、それに気づいた心はその手に触れ名を呼ぶ。
それに引き戻され、藤はふるりと頭をふった。
それから、それぞれその姿を確認する。
オグン・ソード・ミリシャ――今まで出会ったそれより、大きな個体だった。
●遭遇
今まで2メートル前後の、少し見上げる程度の敵との戦いばかりだったが今回の個体はその倍以上はある。
5メートル、あるいは6メートル近いものだろう。
しかし幸運なことに、それを先に発見したのはケルベロス達だ。
隠れる場所はない荒野、敵はまだこちらには気づいていない。
身を隠しやり過ごすことができるような場所がなく、回避の可能性は低い。見つかるのも時間の問題だろう。
となれば――先に仕掛け優位性を作るのが有効な手だ。
何せ、長い間その姿を見ていると狂気に侵されるというのだから短期決戦で仕留めたい所。
ケルベロス達は息を合わせ、敵へと一気に距離を詰めた。
(「いつでも一緒だよ……」)
左手薬指の約束の指輪。それに意識を向けながら、シルは敵の懐へと走り込んだ。
「先手必勝だよ!」
決して、一撃で倒せる相手ではないとシルはわかっていた。
それは2メートル級との戦いを幾度か経ているからだ。
近づけば、一層その巨大さがわかる。大きな翼の意匠を持つ白銀で装飾された空靴が纏うのは流星の煌めきと重力の力。
その力を思い切り、シルは敵へと叩き込む。すると、その身はぐにゃりと歪むように衝撃を受け止めた。
手応えはある――しかし、それ一撃では敵の体力を多少削っただけ。
続けて詰めたのは藤だ。
大きく振りかぶったAbstracter。その刃に虚の力を纏わせ数度斬りつけた。
ぐにょりと、切った感覚はあるが気持ち悪さがある。
うわ、と零すと影が落ちる。
「藤さん、下がってください」
と、頭上から響いた声に藤は転がって下がる。
金の装飾加えた黒いブーツ。それに纏うは美しい虹だ。
高く飛びあがった心は急降下の蹴りを敵へと見舞った。
「……なんて冒涜的な生物。本当に、見ていると気が遠くなりそう」
今まで、すぐに倒していた相手なのでよく見るのはこれが初めてになる。
ラズリアはでも、と言葉続け。
「皆さまのお背中は私がお守り致します。存分に戦ってくださいませ!」
そのためにまず前列の仲間達の、守りの力を高めていく。
銀のガムランボールが清廉な音を響かせ、ラズリアはその音に気持ち落ち着かせる。
そこでふと、鐐の後ろ姿が目に入って。
「……笹ヶ根様を、もふもふしたら正気に戻るかも、なんて」
狂気――それがどのように現れてくるかはまだ分からない所。
「ここで、倒す」
千里は超巨大ぬぐるみ型ハンマーを振り下ろせば竜砲撃が敵を襲う。
竜撃砲の一撃に敵の動きが鈍った。
「些少ではあるが、援護させてもらうとしよう」
その間に鐐が吼歌に乗せ送るは勇気の賛歌だ。
今一歩、深い踏み込みを。一息長い狙いの間を生み出し、勝利へと繋がる絶対的な差を仲間達へ。
それに続けてボクスドラゴンの明燦も仲間達へその属性を貰たし助けとなる。
ミスティアンの放ったエネルギー光線も敵を貫いた。
仲間を失う事を恐れているミスティアンは出来るだけ皆を守りたいと思っていた。
枯れた大地に走るケルベロスチェイン。それはシャンツェリッゼが伸ばしたものだ。
描く魔法陣は守りとなる一手。
それは戦いの中で後々、助けになってくるものだ。
遭遇と共に先手を打てた事もあり、敵の初動を抑え込むことができた。
敵の一撃は重いが、守りと回復。それは尽きる事なく続けられ確実に敵の力を削っていく。
攻撃を重ね、守り。
敵も目の前に現れた自分を害する者に対応してくる。
『おぐん そーど ほろわろ りむがんと みりしゃ なうぐりふ!』
敵はその身を溶かすように、ぶしゃりと何かを吐き出してきた。
その液体を受けて、意識に霞がかかるような感覚をシルは感じた。それに確実にダメージも負わされている。
「っ! 負けないよ!」
「大丈夫です――シャンツェリッゼさん」
「ああ、わかった」
その声に反応するように、ラズリアが、そしてシャンツェリッゼが対応する。
ラズリアとシャンツェリッゼの二人が前列の仲間達へと癒しの力を。
癒しの恩恵を受ける二人は、受けた阻害を払う力も含め癒す。
敵の能力は今までで一番高いが、力合わせば引けを取る相手ではない。
だが、敵は短期で削りきれるほどのものではなかった。
そして長く戦っていれば狂気に浸される。 それもまた懸念の一つだった。
●狂気
戦いの最中、異変があった。
「あ、っ……」
視界全体で捉えないようにしていたものの、心の視界が揺れた。
その感覚は初めてのもの。
心の様子の変化に気付いた藤はすぐさま、傍に駆けようとした。
『みりしゃ かるする ぷらぶーた なうぐりふ!』
そこへ敵の鳴き声と共に攻撃が向く。唸る触手が薙ぎ払うような動きを見せたのだ。
しかし――それを鐐が受け止め、行けと示す。
「……確かに精神にくるな。なぁに、いざとなれば私の後ろにいれば見えないさ!」
その声に頷いて、藤は心の手を取った。
「心さん!」
その瞬間、心は瞬いて引き戻される。
大丈夫かと声かければ繋いだ手を心は見て、固まる。
手をとってぎゅっと握られている。それが途端に恥ずかしくなり、心は藤へとぼそりと紡いだ。
「……手」
「あっ、はい!」
その声に慌てて藤は手を離す。
何故手を取ったのか――藤はまだ、その意味に気付いていない。無自覚に惹かれているところだ。
「あと少しだ、やろう」
「言われなくても」
互いに頷き合って、再度攻撃に走る。
「畏れろ」
藤が紡いだのは畏怖だ。
河川の氾濫への恐怖。大豪雨への不安――人類が抱く河川と雨への畏怖。 それらを核にし水神ヤマタノオロチの畏れを、グラビティをもって形成する。
膨張してゆく水の塊。その巨大な質量で押し流すように藤は叩きつけた。
その水圧にぐじゅりと歪に敵の姿は崩れ、触手の一本を抑えていた鐐からそれが離れた。
間近にその姿見れば冒涜的でおぞましく。ぞわりとした感覚に鐐は頭をふる。
大丈夫かというように傍らで一声、明燦が呼びかければ鐐は頷いて返した。
「明燦は……大丈夫なんだな」
勿論と言うように傍らにある。それが、鐐にとっては何よりも、狂気から離れるものかもしれない。
「星よ、切り裂け! スターショット!」
五芒星の形をした光の大きな手裏剣をミスティアンも続けて投げた。
放たれた手裏剣は真っすぐ敵へと突き刺さる。
「これが、常(いま)という時間すら絶つ光!」
続けて、シャンツェリッゼが一瞬で距離を詰めた。
光結晶やグラビティチェインと共に圧縮した右腕を後ろに引けば、炸裂した魔力で推進力を得る。
その右の拳が、当たると同時に圧縮された全ての力が一条の太い光線となって敵を貫いた。
心が揺れた様を見て、千里はそうならぬように親友の姿をしたぬいぐるみをぎゅっと抱きしめ、息を吸う。
(「彼女ならきっと最後まで仲間を信じぬいて戦うはず……なら私は……」)
私も、ここでと千里は敵を真っすぐ見据え、自分を狂わせるものと向き合った。
それは憎悪、憤怒、不信と自己愛といったもの。
他者を拒絶するような気持が起き上がるのを叩き伏せ、本当に向かい合うべき敵へと走りこむ。
千の鬼を屠ったとも、千の鬼が宿るとも言われる名刀――らしいその刀を右手に。
弓を引き絞るように引いて千里は構えた。
『みりしゃ みあ おぐん そーど ぬい くるうるく!』
鳴き声をあげながら、敵はぎょろぎょろと周囲に視線巡らせる。
その、敵のぎょろりとした目と千里の視線がかち合う。
「気づいたときにはもう遅い……さよなら」
攻撃を、防ごうとしたのだろうか。
敵が動かした触手、それを切っ先は貫き潰しその身まで届く。
その瞬間、反発する重力エネルギー塊を叩き込んで敵の身が爆ぜた。
だがやられた分の返しだというように別方向からしなる触手がその身を打つ。
ぐ、とその一撃の重さにうめいたが、すぐにそれが和らいでいく。
ラズリアが溜めた気力。それを千里に向けて放ったのだ。
最初に紡いだ通り、皆が存分に戦えるように、支えるために。
触手を落とし、その身を削っていく。
ケルベロス達の攻撃は確実に敵を弱らせ追い詰めていた。
低い姿勢から組み付き、鐐は自分へと敵の意識を向けさせる。
戦いの中、意識が揺れるような感覚。
「うん、大丈夫だから」
左手薬指の約束の指輪。それに意識を向けながら、シルはその両手を敵へと向けた。
「闇夜を照らす炎よ、命育む水よ、悠久を舞う風よ、母なる大地よ……混じりて力となり、全てを撃ち抜きし光となれっ!!」
火・水・風・土の属性エネルギーを一点に収束させて放つ精霊魔術が敵を貫くように走る。
その一閃に敵の身の一部が掻き消えるように途切れた。
ぐらりと、その身が傾いだ。
狂気を払った心は、こちらですよと敵へ呼びかける。
それと同時にワイルドスペースから射出された黒鎖が敵を絡めとる。
崩れていく敵の身体。
しかし最後の力を振り絞るように触手が振り上げられた。
『みあ みあ おぐん そーど! みあ みあ おぐん そーど!』
だがそれが、間近にいた心に向く前に。
「始原の楽園を崩壊させし蒼光の弓矢よ。我が求めるは力なり。混沌を破壊せし星となりて敵を討て!」
ラズリアの召喚した、魔力を込めた輝く弓矢がその触手を貫いた。
その一撃に触手は跳ね、消えていく。
ぐちゅりとその身を解くように、潰れるように敵は――オグン・ソード・ミリシャは滅びたのだった。
終った、とほっと一息つく。
そこでふと、崩れて消えた中に輝くものがあった。
それはオウガ達のコギトエルゴスムだ。
オグン・ソード・ミリシャの身体にでもくっついていたのか。倒されたことによってでてきたようだ。
それらを回収し、ケルベロス達の歩みは続く。
帰還の期限まで探索を続け、ケルベロス達は地球へと帰る。
その手にコギトエルゴスムとなって眠るオウガ達を抱いて。
作者:志羽 |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2018年2月20日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 7
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