目覚める歯車

作者:長谷部兼光

●終わる日常
 地が軋み、揺れる。
 すわ大地震の前兆かと人々が予期したその刹那、敷き詰められたアスファルトが隆起して、大量の土砂を吐き出した。
 もうもうと立ち込める土煙の奥に見えるのは、人の形であり、しかし人ならざるスケールの大きなシルエット。
 人々がその正体に気付いた時には、最早全てが手遅れだった。
 土煙を破り、現れたのは漆黒の殺戮機械。
 砲と一体化した両腕が火炎を放射すると、ビルは蝋の如く溶解し、脚部より噴霧された瓦斯が瞬く間に人命を奪い去る。
 そして仕上げとばかりに機械の背部(バックパック)より発射された無数のミサイルが都市に降り注ぎ、

 しばらく後。機械はぴたりと殺戮を止める。
 焦土と化したその場所に、命を一つも見出すことが出来なくなったからだ。

●染み出す過去
「数こそ力、なのかもな」
 大戦末期、オラトリオにより封印されたダモクレス達の位置と総数は此方でも把握しきれてはいないのだと、ザイフリート王子(エインヘリアルのヘリオライダー)は言う。
「予知にかかった端から潰していくしかないだろう。幸い、大型が出現する前に、一般人が退避する時間は十分ある。そちらの対応は警察・消防に任せ、お前たちはダモクレスの撃破に専念してくれ」
 目覚めたばかりのダモクレスは、グラビティ・チェインが枯渇している為、戦闘力が大きく低下している。
 それ故エネルギーの補給を行うために多くの人間を殺戮しようと目論むのだ。
「このダモクレスは巨大な兵器であると同時に動く生産拠点でもある。一度往時の力を取り戻せば、ロボ型やアンドロイド型の量産に着手するだろう。見過ごす道理は無いな」
 今回の戦場となるのは東海地方の某市。
 大型は海にほど近い都市の端より現れ、グラビティ・チェイン目当てに暴れ回る。
「両腕に火炎放射器、脚部に毒ガス、バックパックには大量のミサイル……全身兵器だな。デウスエクスが人を殺めるのは必定の事とはいえ、よくもまぁ、ここまで殺意に溢れた武装を詰め込んだものだ」
 それらの武装のみならず、戦闘中一度だけ、自身にも大きな負荷のかかるフルパワーの攻撃を仕掛けてくると言う。
 その巨体と火力から、都市の破壊を防ぐのは難しい。
 が、ケルベロスが大型と相対するときには既に住民の避難は完了しているし、派手に破壊されたとしてもヒールグラビティがある。そう気にする話でもないだろう。後顧の憂いなく、思い切りぶつかればいい。
 戦闘開始から七分経つと、魔空回廊が開き、大型は撤退してしまう。
 そうなれば、撃破は不可能だ。
 魔空回廊が開く前に敵を仕留める必要がある。
「かつて封印するしか手段の無かった相手でも、今のお前達なら撃破できる筈だ。任せたぞ」


参加者
アイラノレ・ビスッチカ(飛行船乗りの蒸気医師・e00770)
綾小路・鼓太郎(見習い神官・e03749)
アバン・バナーブ(過去から繋ぐ絆・e04036)
イッパイアッテナ・ルドルフ(ドワーフの鎧装騎兵・e10770)
九十九折・かだん(自然律・e18614)
クララ・リンドヴァル(鉄錆魔女・e18856)
詠沫・雫(海色アリア・e27940)

■リプレイ

●起動
 波の音。風の音。
 都市に人の姿無く、静寂だけが詠沫・雫(海色アリア・e27940)の耳を打つ。
 死をばら撒く演奏会の聴衆は、ケルベロスだけで充分だろう。
 ……やがて、静寂に混じり始める歯車(ギヤ)の音。それが大きくなるにつれ、地もまた大きく軋み、遂には爆ぜる。
「こちらが自由に使える時間は長くありません。出し惜しみ無しで行きましょう」
 敵の行動を待つ道理も無い。雫のボクスドラゴン・メルもそう判断したか、即座自身の属性を彼女にインストールし、ドラゴニックハンマーを大砲に変えた雫は土煙の奥の影(シルエット)に狙いを定める。
 メルの属性を帯びた砲弾が、宙に舞う土砂など物ともせずに影へ命中すると、それを認めたアバン・バナーブ(過去から繋ぐ絆・e04036)は跳躍し、速度を付けて自ら砂塵のベールへ突入する。
(「こっちとしてはこんなおっかない兵器には一生眠ってて欲しいもんだけど……!」)
 土くれ砂粒かき分けて、橙の両眼が捉えたのは、血も涙も無い、機械仕掛けの巨躯の姿。
 仮に放置したとして、こちらの益になるような事は一切あるまい。
「目覚めて早々で悪いが、撃ち落とさせてもらうぜ!」
 空を跳び、重力を味方につけたアバンの蹴撃が機械の顔を掠め右脚を射抜き、機動力を奪うと、間髪入れずにクララ・リンドヴァル(鉄錆魔女・e18856)は達人の手捌きでルーンアックスを振るう。
「……。実際のところ、寝心地、悪くなかったでしょう。地球」
 クララの問いに、ダモクレスは答えない。言葉を交わす意思がないのか、それとも思考すらないのか。
「……もう一度、叩き込んで差し上げます」
 いずれにせよ、寝起きの機嫌はすこぶる悪いらしい。
「『不変』のリンドヴァル、参ります……」
 自身が一陣の風に変じたかの如く、クララが軽やかな身のこなしで翻弄しつつ黒のボディに傷を刻めば、そこより冷気が生じ躯体を蝕む。が、何するものぞと機械は両腕より火を吐く。
 中衛――九十九折・かだん(自然律・e18614)に伸びる炎を、イッパイアッテナ・ルドルフ(ドワーフの鎧装騎兵・e10770)の『相箱』・ザラキが自身の蓋を盾代わりに受け止める。多少蓋が煤けたが、問題ない。
「許せませんね。罪なき人々の命と平和な街を脅かすとは……!」
 イッパイアッテナはドローンを展開し前衛の防御を固めながら、土煙が晴れて露になった敵を見上げる。
 身長だけで語るなら彼我の差は数倍以上あるが、問題はない。
 ジャイアントキリングは、ケルベロスの専門分野だ。
「よく来てくれたな、鈍間。此処で壊れていけ」
 かだんは威圧する態度を決して崩さず、そう言い捨てると、彼女の身を守るオウガメタルは呼応するように瞬く粒子を放出し、前衛の超感覚を呼び覚ます。
「戦う為だけに、ですか……」
 黒の機械の身の上に、ふと、綾小路・鼓太郎(見習い神官・e03749)の脳裏を過るのは。
「……いいえ、思う所などありません。此方は万全です。参りましょう」
 鼓太郎は幽か首を横に振り、前衛に紙兵を巡らせ、冷静に、精妙に役目を果たそうとする。
「祓え給え、清め給え」
 眼前の敵には宿縁も無ければ、因縁も無い。ならばただ、そう、機械のように。
「殺すための武装オンパレード……昔を思い出しますね」
 アイラノレ・ビスッチカ(飛行船乗りの蒸気医師・e00770)は、定命化前は彼と同じ目的を持つダモクレスだった。
 即ち。人を……。
「だが、今は違う。そうだろう?」
 カジミェシュ・タルノフスキー(機巧之翼・e17834)は曇りの無い、澄んだ瞳でアイラノレを見る。
「一緒に、護ろう。願わくば、私達の後ろにいる全ての人々を」
 今のアイラノレは、命を慈しみ犠牲を厭うレプリカント。
 カジミェシュはその事を誰よりも――あるいは、本人よりも――良く知っている。
「……ええ。近くて遠いかつての同類。だからこそ……ここで必ず止めます」
 アイラノレがアンティークステッキ・classyを投擲すると、施された装飾が金色の軌跡を描き、同時、カジミェシュは銀光の名を冠するオウガメタルを縛霊手・Rekawica Swietego Stanislawaに纏わせる。
 金の一閃と銀の破鎧が交差して、漆黒の機械は溜らず悲鳴を張り上げた。

●駆動
 殺戮機械が一度攻撃する度にその余波で都市が壊れ、瓦礫の山がうず高く。戦闘開始三分でこの有様だ。
 実はこの都市全てが砂で出来ているのではないか。そう錯覚するほどに何もかもが容易く崩れる。
「……野次馬一人、居ませんね」
 それでも人的被害一つ無い事に、イッパイアッテナはほっと胸を撫で下ろす。
「警察・消防には感謝の言葉もありません。最善を尽くしてくれた彼らのためにも、今度は私達が全力を尽くしましょう!」
 イッパイアッテナが念じれば、その意を察した攻性植物が言われずとも形を変えて金の果実を作り出す。果実の光は後衛を癒し、毒や熱に負けぬ耐性をも付与する。
「そうですね。建物も気にしなくていいとはいえ、やっぱりちょっと気になる気持ちもありますが……」
 雫がちらりと敵を見る。黒き機械は、いまだ健在。
「……気にしている余裕はなさそうですね」
 ならばと雫は、水を起こす、詠を紡ぐ。それは『あのお方』へ献上する祈り。願うは仇なす者を縛る大蛇の水流。
 オケアノスがダモクレスを縛り付けるは古い手術台。それから伸びる革のベルトが、黒の機械を異常とも言える力で締め付けて、離さない。
「黙って大人しくなさい」
 アイラノレが一本のメスで機械に小さな傷をつけると、あらゆる手術道具達はその傷を目印とばかりに機械へ殺到し、容赦なく穿つ。
 手術台から解放された穴だらけの殺戮機械は、脚部装甲を展開し、前衛目掛け紫色の瓦斯を噴射する。
 アイラノレは咄嗟、全てを侵す毒より指輪とペンダントを守ろうとするが、相手が気体では分が悪い。
 瓦斯が隙間を見つけ、小さな護りを蝕もうとした刹那。鼓太郎の心臓付近より顕現した光球がアイラノレを包み、癒し、邪気を払う。
 鼓太郎は一旦、冷静な仮面を脱いで、大切な友人へ柔和な表情を見せた。
「遍く日影降り注ぎ、かくも美し御国を護らんが為、吾等が命を守り給え、吾等が力を寿ぎ給え――何の、これしき。御役目を、果たすまで。穢れは全て祓いましょう、後方支援はお任せを」
 鼓太郎の唱えるそれは、心照御霊ノ祝詞。彼が日常的に使う癒しの業。
 その言葉を聞いて発奮したザラキは機械へがぶりと噛み付き、メルは自身の属性を分け与え、クララを癒す。
「ボハテルを思い出しますね……」
 そんな二体を見て鼓太郎が呟いたのは、カジミェシュの過日の相棒。
 カジミェシュもふ、と思い出す。
 ともあれ今の相棒とて大したものだ。ナノナノ・シュピタル・ポロウィは二体に負けじと勢いよく羽搏いた。
 カジミェシュは軽く口元を綻ばせ、
「わかっている。魔空回廊に逃げられてはこちらの手出しはできないからな。七分以内にケリをつけるとも。行こうか、相棒」
 チェーンソー剣を起動すると、シュピタル・ポロウィの尾撃と共にダモクレスを散々に引き裂いた。
「広範囲のガス攻撃……大味ですが、効果的ではありますね」
 クララがぽつりと分析する。ケルベロスだからこそ毒に満ちた空間でも立っていられるが、一般人なら数十秒と持たずに意識と命を失うだろう。
 果実の様な甘ったるい臭い。聊か古本に綴られたインクの匂いが恋しくなってくる。
 クララがブーストを最大限に噴かした超高速のハンマーで漆黒の装甲を叩けば、戦場に滞留していたガスが霧散し、視界が晴れる。
 そこにあったのは崩れかけた街並みと、瓦斯の影響で枯れた緑たち。
「……てめぇ」
 かだんの地獄が燃える。
 瞬間。思い切り蹴られた地はくっきりと足の跡を残し、回転するチェーンソー剣の切っ先はアスファルトを刻み火花を散らす。
 一歩。二歩。三歩。しっかりと。確実に。機械へ肉薄したかだんは命無き地面もろとも逆袈裟にその装甲を断ちきる。
 殺戮機械はぐらりと傾いて、一つ、二つの部品が脱落し始めるが、それでも奥の手を出し惜しむ。
 アバンの見立てでも、敵が負ったダメージは決して少なくないはずだが……このまま出さないつもりだろうか。
「そのまま大人しく白旗上げてくれたら万々歳だけど、そうはいかないよな」
 バスターライフルにエネルギーを溜めたまま、アバンはかだんが機械に付けた傷を辿る。
 右の脛から腰、胴を伝って瞬く間によじ登り、アバンが砲口を突きつけた先は機械の首根。
 機械の腕が両方銃なら、振り払われる前に事は済む。
 限界まで貯めたエネルギーが、仄かにそこを照らしていた。
「殺意しかない武装をした相手に容赦なんてしないぜ?」
 かちりと、引き金を引く。
 地を裂くほどの強烈なエネルギーが零距離で瞬き、その輝きと反比例するかのように、機械の足取りはさらに鈍った。

●鳴動
 残り一分。
 アイラノレが皆にそう告げた直後、それまで攻撃一辺倒だった機械の巨体は数歩後退る。撤退路があることを知っているのだ。
 ……この一分で決着をつけなくてはならない。
 黒の機械は未だ奥の手を出し切っていない。間違いなく、来るだろう。
 皆、覚悟を決め、アイラノレは愛銃・ディアに全てを託す。
 放たれた弾丸は瓦礫の荒れ野を跳ね回り、そして空へ飛ぶ。
 弾が目指すは輝く蒼玉。
 空の先、鼓太郎が携える日本刀・虚蒼月の刀身に接触した弾丸は軌道を修正し、機械の眉間を正確に貫いた。
 ……バックパックより、二十、いや、三十ほどの弾頭が顔を覗かせる。
「斬り、断つ!」
 回復を抑え攻撃に転じた鼓太郎はそのまま虚蒼月にありったけのグラビティを疾らせ、叩きつける。
 もはや使い物にならぬ脚部の装甲がパージされ、ガスの噴射口が剥き出しになった。「復活したてで悪いが……」
 退避する鼓太郎の援護をシュピタル・ポロウィのハート光線に任せ、カジミェシュは攻め手を緩めない。
「今度は永久の眠りについてくれ!」
 ヴァヴェルの丘の朱き龍。
 突撃槍の如き一撃は、胴部を庇った機械の両腕に深刻なダメージを負わせた。
 機械の銃型腕が赤熱化する。銃身全体が溶融し始め、黒い機械がうすぼんやりと揺らめいてみえる。
 クララは少し考えながら、ぱちん、と指を鳴らす。
 指を鳴らして現れたのは図書運搬用の荷台。
 年季の入った車体には数々の魔導書から滲出した魔力がたっぷりと染み込んでおり、随所に物理的な金属補強も施されている。これを敵にぶつければ、到底無傷では済まないだろう。
 但し荷台だ。普通はこんな使い方はしない。ある種、奥の手中の奥の手だ。
「汝に木の壁を与え給う」
 そう唱えると、蹂躙の駄馬は武器に非ざる破天荒な軌道を描いてダモクレスにぶつかる。
 荷台に轢かれた機械の顔がめくれ、
「……えっと」
 胸部が割れる。
 腕・足・背中。クララは、奥の手は使われてない部位……頭か腕かと予想したが。
「もしやこれは全部、ですね?」
  ひらりと、クララの帽子が舞う。
 火炎・毒・ミサイル・弾雨・光線。
 あらゆる火力が降り注いだ。

 全てを吐き出した機械は死に体で、しかし、それでも、かだんは砂塵と残光を従えて、彼の眼前に立っていた。
「末路だな……作って、殺して、地球を蹂躙する為に生まれたんだろうが」
 かだんが強く、拳を握る。
「生憎、グラビティチェインはもうやらねえし。てめえも星には、返さねえよ」
 樹氷の如き豪腕を振るい、みしり、みしりと芯から抉る、鉛の様に重い打撃の先にあるものは、触れるものを凍てつかせる絶冬(アブソル)だ。
「潰えて、終え」
 六花が散り、かだんは風に漂うクララの帽子に手を伸ばす。
 傷は無い。前衛も中衛同様フル出力の攻撃を受けていないという事だ。
 とすると……。

●律動
 砲火が終わる。
 寸前、アバンの代わりに全てを受け止めたイッパイアッテナは最大出力の爆圧に吹っ飛ばされて地に伏せるが、程無くけろりと立ち上がる。
 ダメージはある。だが、後数十秒、後一歩、前に進めぬ痛みではない。
 エアシューズ・常立を装着した両の足で大地を踏みしめ、イッパイアッテナは相箱のザラキと共に怒涛の回転攻撃を機械へ見舞う。
 イッパイアッテナが作り出した僅かな間隙、アバンはゾディアックソードの刀身を、グラビティ・チェインを宿した指でなぞる。すでに霊力を極限まで集約した刀身は、グラビティ・チェインを得て更に励起する。
「撃滅のォォ……」
 両手でしかと武器を構え、力を集中する。励起の際、周囲に飛散した霊力を、戦域に漂う僅かな力ごと巻き込んで刀身に再収束させ、
「スピリット!! ストリィィィム!!」
 イッパイアッテナの連撃が終わった刹那、裂帛の気合と共に光を放つ。
 光は奔流となってすべてを飲み込み、不規則的な歯車の音だけが世界にはあった。
 ……否。雫の耳に届くその音には怒りも、嘆きも、歓喜の色も無く、ただただ不規則的な不協和音を奏でるだけで、いっそ無音に等しい。
「絶対に逃がしはしません、ここで終わらせます……!」
 弓を引き絞る。砲煙弾雨を凌ぎ切った雫は、光の奔流の中で、終の一矢を放った。

「時間制限あるのは精神的に来るものあるよなぁ」
 戦闘終わったし、しばらく休憩したいもんだぜ……とアバンは嘆息し、バタンと仰向けに倒れ込む。
「良ければヒール、かけましょうか?」
「イッパイアッテナさん、元気だなぁ……」
「盾役ですから。兎も角、生産機能を備える敵を撃破できてよかったです」
 イッパイアッテナはファミリアロッドを地に突き立て、疑似的にこの場と『龍穴』の次元を繋げ、大地に眠る清浄な力を呼び覚ます。即ち都市へのヒールだ。
 アイラノレは鼓太郎とカジミェシュに、
「大丈夫ですか?」
 と問いかけると、二人ともいつもの調子で問題ない、と返す。
 しかし、アバンが鼓太郎の足を軽く引っ張ると、鼓太郎はあっさり地に転ぶ。
 彼もフル出力の攻撃を受けたのだ。ダメージは蓄積しているだろう。
「本当に大丈夫か?」
 ドローンを街に飛ばしながらカジミェシュが再び訊くと、それでも鼓太郎は大丈夫です、と、屈託無く笑ってみせた。
 釣られて、アイラノレも笑う。全員、大きな怪我も無い様だ。
「……まあ! ヒールを持ってくるのを忘れたわ。敵の残骸でも片付けようかしら」
「そうだな。そうなると後はもう……肉体労働しかないな」
 長手袋をふわりと戦場跡へ落とすクララの頭に、かだんは眠たげに帽子を戻した。
 かだんのヒールで、再び緑が息を吹き返す。
「それなら私も手伝います」
 雫はヒールをメルに任せ、アクティブな手際でダモクレスの残骸を集め始める。

 皆が安心して戻れるように。
 そんな想いで復興作業を続けるケルベロス達の元へ人々が駆けつけたのは、それからすぐ後の事だった。

作者:長谷部兼光 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2018年2月14日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 4/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 1
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