ヒーリングバレンタイン2018~アニマルチョコ作り

作者:あかつき

「みんなの活躍により、これまでミッション地域になっていた複数地域の奪還に成功した。この取り戻した地域の復興も兼ねて、バレンタインのチョコレートを作ってみよう……という話になってだな……」
 雪村・葵(ウェアライダーのヘリオライダー・en0249)は普段あまりこういう話をしたことが無いから、と何やら言い訳をしつつ、難しそうに眉間に皺を寄せ、続ける。
「つまりだ……今現在この地域には住人はいないが、これから引っ越してきたり、戻ってきたりという人は多い。まだ綺麗とは言い難い片付き具合ではあるが、その地域の破損などを補修して、一般の人たちが参加できるようなイベントをすれば……地域のイメージアップにもなるだろう、と言うことだ」
 葵は用意しておいた資料を確認しながら、イベント概要を説明し始める。
「千葉県市川市だが、東京とのアクセスが良く、動植物園や大学などがある地域だな。今回は動植物園の駐車場をヒールし、イベントを行うことになる」
 そう言ってから、葵は少し考えてから、もう一度口を開いた。
「で、イベントは……少し考えたんだがな。動物の型を使った、動物型のチョコレートを作るといった感じにしようと思う。型は色々用意できるから、変わった形のチョコレートも作ることができるぞ。ハシビロコウとか、レッサーパンダとか」
 チョコレートは型に流し込むだけなので、余程の事がなければ失敗する人も居ない筈、と葵は呟き、続ける。
「みんなには、イベント会場のヒールと、机やチョコレート、型の搬入、それからイベントの進行、参加者の手伝いをしてもらいたい。チョコレートはミルク、ビター、イチゴを用意する予定だ。勿論、自分の分も作ってもらって大丈夫だぞ。その場で食べても、もって帰っても良い」
 慣れない説明を終え、葵は一つ小さく咳払いをして、ケルベロス達に目を向ける。
「世間はバレンタインだからな……楽しんでくれれば、それが一番だ。じゃあ、よろしく頼んだぞ」


■リプレイ


 ヒールを終えた駐車場。綺麗に並べた机で、みんなで賑やかにアニマルチョコレート作り。
 ヒール作業に勤しんでいたシアと風花、サーヴァントのなの美。周囲を見渡すが、今のところ待機中の一般人は居ないらしい。
 葵から必要なものを受け取り、礼を言ってから空いている机へと移動する。
「風花様は動物が好き……ですの?」
 風花が机の上に並べた動物型を見つつ、尋ねるシア。
「うん、好きだよー。動物園とか一日いても飽きないし。それに、近年の動物友達的なアニメも良かった」
 答えながらも風花はチョコを湯煎する。
「みゃんみゃんみゃん……みんみー」
 真剣そうにイチゴチョコをサーバル型に流し込みながら、呟く風花。続いてミルクチョコをアライグマ型に、フェネック型にビターチョコを。
(「みんみって何かしら」)
 疑問に思ったが、取り敢えずシアは自分の作業に取りかかる事に。
「いろんな動物の型にチョコを流し込んでいけば出来ますのね。何の動物を作ろうかしら」
 いくつか取ってきた型を見つめながら、シアは悩んだ末に3つを選ぶ。
「何にしたのー?」
 シアが悩んでいる内に自分の作業が終わった風花が、シアの手元を覗き込む。
「ライオンさん、ゾウさん、カバさんにしましたわ」
 ふんす、と気合いを入れるシアは、それぞれ3つずつ、全部で9個を作成していく。
「動物園の花形だと思いますの」
 笑うシアを見て、風花はやっぱりかーいいなー、と思うのだった。

 ヒールを終え、型を選び始めるルヴィル、スバル、降夜の三人。
「動物チョコ作るぞ〜〜〜!」
 気合いを入れるルヴィルの隣では、スバルが目を輝かせていた。
「ウサギにサルに、犬だけでもたくさん……折角だから強そうなやつがいいかな」
 楽しそうに型を選ぶ二人を見つつ、降夜は小さく呟く。
「男3人そろってチョコレートづくりってのもシュールだが……こういうのもまァ、偶にはいいか」
 二人の横に並び、一緒に選び始める降夜。
「オオカミとかトラとかライオンとか、ドラゴンとかないのかな!」
「ドラゴンは動物に含まれるのか? 確かに格好良いけど」
 思わずツッコミを入れた降夜だが、対してルヴィルは案外乗り気だった。
「ドラゴンか~きっとあるある」
 がさがさと探していると、でっかいトカゲみたいな型を見つけ、スバルが首を傾げた。
「これなんだろ?」
 それはコモドドラゴンです。
「俺、オオカミ型にしよ! ルヴィは? どうする?」
 尋ねるスバルに、ルヴィルはうーん、と唸る。
「ラッコとか……ぷかぷか楽しそうだ。でも、カバとかものんびりしてそうでいいな……。あれだ、日向ぼっこしながらぷかぷかしながらひと眠りしたいよな~……」
「ルヴィ、そういえばカバって実はかなり強いらしいよ!」
 じゃあカバを、と取ろうとしたルヴィルだが、手を伸ばした瞬間、手前のペンギン型に目がとまる。
「このペンギンのやつとかなごむ気がするな~。のんびり日々を過ごせそうだ……よし、ペンギンにしよう」
 二人が型を選んで机に行くと、降夜はもう既に作業に取り掛かっていた。
「師匠はどんなの作った? この中で一番手先器用だもんね」
「俺はチーターだ」
 気泡が入らないよう、丁寧に作ったチーターのチョコ。
「ルヴィルは……兎に角ぷかぷかしたい熱意が伝わるな」
 二人の作業を眺めつつ、降夜は頷き、出来上がったチョコをラッピングするのだった。

「この面々では、なんか引率みたいですね~」
 出来上がったチョコを眺めたり、見せ合ったり、まだ作っていたりする【エブリデイ】のメンバー達を眺めて呟いた公子は、上皿天秤に視線を落とす。
「メアリうさぎさん作ったの! 白くてふわもこでお耳が長くて、ぴょんぴょんはねるのよ」
 出来上がったミルクチョコレートで出来た三匹目のうさぎを見て、メアリベルは笑う。
「世界一可愛いうさぎさんよ」
「メアリさん、そちらは手早く作ってるんですね。そういうのもいいんじゃないですか?」
 そう言うアルフレッドが作ってるのは、お腹の所だけ色が違うペンギン型のチョコ。手元を覗くメアリベルに、アルフレッドは暫く考えて、口を開く。
「贈る相手は」
 決まっているので、と言おうとしたアルフレッドの目の前に差し出されたのは、うさぎのチョコ。
「真心いっぱい込めたの!」
「え、ぼくにもくれるんです? ありがとうございます」
 本物のうさぎじゃないし、食べても良いか。そう思って一口。
「うん、濃厚で美味しいですね。アッサムのミルクティが欲しくなります」
「わたしはシカさんのチョコですよ!」
 じゃん、とみんなにセレネテアルがシカを見せる。初心者だけど、型を使えば案外なんとかなるもんだと満足気。
「ほら、特にこのツノなんか良い感じに」
 人差し指を向けた瞬間、根本から、ポキリ。
「……メスです!」
 誤魔化すように口笛を吹くセレネテアルの横で、テディベア風のくまさんの頭を量産しているのはシェリン。ちらりと手元を覗き込んだ和奈に、シェリンはサムズアップ。
「うん、かわいらしいクマさんだね」
 ふふふ、と笑う自信満々のシェリンに、和奈はやっぱり熊はやめといて良かったと思いつつ、手元のチョコに視線を向ける。エブリデイのエンブレムを意識した小屋型のチョコ。
 ミルクチョコレートの板に、ビターチョコレートの星を描き、ふぅと一つ息を吐く。
 そこで和奈はふと、両手の人差し指と中指でフレームを作ってみる。そこに写るのは、エブリデイでの楽しい日常の一幕。
「出来ました! ジオラマっぽくしてみたんですよ」
 公子は立木や、切り株といった背景用チョコを並べる。
「やっぱり化学の教師ってこういう時ダメですね〜」
 言いながら電子温度計を片付ける公子に、エドワウは作ったねこ型チョコを並べながら、目を輝かせる。
「みんなかわいいです! 並べると童話のワンシーンみたいです」
「森の動物達のお家みたいですね!」
 頷くとシェリンは、みんなにプレゼントする用にまだまだくまさんを作成していく。
「せっかくなので、写真に残しておきましょー!」
 パシャリ。並べたチョコを撮影するセレネテアル。
「はい、うさぎさんよ! メアリの大切なお友達、みんなの為に作ったのよ! 食べて!」
「あ、メアリベルさん、ありがとうございます」
 一つうさぎを受けとるエドワウの横、メアリベルは和奈にもうさぎを手渡す。
「ありがとう」
 そう言ってうさぎを受けとれば、自身もその楽しい日常の一幕、その一部なのだと思い直し、和奈は僅かに目を細めた。

(「ミルク、ホワイト、ビター……か。とりあえず苦味は苦手そぉだし、ミルクとホワイトを混ぜておくか」)
 事前に仕入れておいた知識に基づきチョコを湯煎し始める遊鬼。数ある中から選んだ型は、フェレットだった。
「天にまします邪法少女の女神様……我は求め訴えたり……うふふふ」
 その隣で全部混ぜた所為で何色と形容すれば良いのかわからなくなったチョコをかき混ぜながら、何やら唱えるのは涼葉。
「リョウハ……それは何の呪文なのだ?」
 眉を下げて尋ねる遊鬼に、涼葉は目を瞬く。込めているのはその字面からは察し難いが、間違いなく感謝の気持ち。用意した型を眺めつつ、涼葉はにこりと笑った。


 おそろいのひよこエプロンを着用し、チョコ作りに勤しむのは麻実子と双牙。最初はひよこエプロンを渋っていた双牙だが、もう慣れた様子。
 麻実子は施設の方で借りたレンジでチョコを溶かし、砕いたビスケットと混ぜる。混ぜて狼型に流し込めば、黄金色の毛並みに見えなくもない、狼型チョコの出来上がり。毛並がフサフサしてて雄々しい、けどどっか可愛らしい狼。
「あなたはどんな子を作ったの?」
 覗き込む双牙の手元には、麻実子の工夫に感心しながら双牙が作った垂れ耳の兎。テンパリングもしっかりと。隣で奮闘する麻実子と、どこか重なる寂しがりの兎。
「見た目も可愛らしくて良いが、何やら気恥ずかしい、な」
 そう呟く双牙に、麻実子は狼チョコを持ち、双牙の口へ。
「はい、あーん」
 促されるまま、ぱくりと一口かじる双牙。彼女の手から直接口に運ばれるチョコは、とても刺激的で、甘い、幸せの味。
「あなたのお味はどうですか……?」
 耳許で囁いた麻実子は、楽しそうに目を細めた。

「50度で湯煎をして、ボウルにはお湯が入らないように……ウエン、ここまでオッケー?」
 【鮮血】メンバーの先生役を買って出たクラリスは、ウエンに尋ねる。
「成程、お湯で溶かすんですね」
 その横では、エヴァンジェリンがチョコをお湯の中に突っ込もうとしている。
「エヴァンジェリン、今チョコを直接お湯に入れようとしなかった?」
 それを見逃すようなクラリスではなく。
「ちっ違うの?!」
 慌てるエヴァンジェリンと、もう既にお湯にチョコを突っ込んでしまったウエンがびくりと肩を跳ねさせる。
「え。違う……?!」
 ウエンは慌ててチョコを掬い取る。少しでろっとしてるけど、まだ大丈夫。
「ほうほう、お湯が、ボウルに、入らないように」
 真面目に話を聞いていたヨハンだが、真剣すぎて眉間に皺が寄っていた。慎重に溶かしたミルクチョコレートは、猫と熊、それから微妙に可愛くないチベットスナギツネの型へと流し込む。
 アウレリアは、ビターチョコで小鳥のチョコを作成していた。
「大丈夫?」
 ちらりと苦戦するメンバーに目をやると、なんだか物凄い顔を向けられる。クラリスに視線を向けると、なら手伝ってあげてと頷かれ。
「でも、チョコさえ溶かせばあとは簡単よ?」
 言いながらも、少しだけ手を貸してあげる事にした。
「ピンクの猫も、作ってみたら案外イケるな」
 今日来ない団長の分も、と三種類のチョコを使い小さい猫を量産する智十瀬。チョコペンで柄と顔を描き、みんな違う猫にする。
「半分くらいサビ猫になってしまった。何故だ……」
 愕然とした顔で完成した小さいチョコ猫を見つめるリューデ。白猫も黒猫もあるならと下宿先にいるような三毛猫を目指した筈。三色使ったのに、何故サビ柄に。まぁこれはこれで愛らしいか、と納得しつつ、みんなに配る用に比較的綺麗な三毛猫を選別し始める。
「かわいくできました」
 満足そうな夕衣の前には、ホワイトチョコで出来た数個の猫と、旅団用のお土産とみんなで食べる用のカモノハシ。当たり用に、いくつかラムレーズンを仕込んである。
 夕衣は記念撮影の為にみんなにレンズを向けつつ、ウエンの元へ。
「はい、白猫です」
 ふふ、と笑って、ホワイトチョコの猫をウエンへと手渡す。
「ありがとうございます」
 柔らかに笑うウエンと手元の猫型チョコを写真に納め、夕衣は他の仲間達へとレンズを向ける。
「慣れないけど、かっこよく撮ってくれよ!」
 そう言ってピンと耳を立てる智十瀬の隣で、ヨハンの後ろに隠れようとするリューデだが、はみ出し気味。
「いや、そんな。隠れなくても良いのでは……?」
 目を瞬くヨハンと、リューデをくいくいと手招きするアウレリア。団長へのお土産に白黒兎のチョコを一箱ラッピングしているエヴァンジェリンは、レンズに照れて肩を竦める。
 いつもありがとうと、これからもよろしく。心を込めて作ったチョコを、みんなで分けていく、楽しくて、幸せな時間。
 今日来れなかった団長や他のみんなへのお土産は、楽しい思い出と、それからそれぞれ作ったチョコレートを。

「ふぅー何とか出来たネ。チョコ分けてくれてアリガトウアル」
 つまみ食いをしていたらチョコが足らなくなったリンだが、他の【ハロプロ】メンバーにチョコを貰ってなんとかパンダチョコを作りきる。
「マルコ、イチゴのマルコチョコ、出来たよ」
 ニュニルがマルコに出来たチョコを見せれば、こくこくと頷く。ビターチョコで作った黒猫は、こっそりと荷物の中へ。
「俺てっぺんにこのトラチョコを置きたいじゃ!」
 ぱぱっと作ったトラ型のチョコを持ち、ふんふんふんとご機嫌な小鉄。目の前にはメンバーが作ったチョコが積まれたタワー。今なおパティが亀と蝙蝠のチョコを重ねている。そんなパティの手元を、シエルが心配そうに見つめる。
「あ、あ、パティ様! そんなに亀を重ねては他の動物が乗りませんわ!」
「ハロプロらしく動物タワーを作って、イベントで目立って、町の人達を驚かすのだ♪」
 現在、18段。ハロプロのかぼちゃつむつむよりも高く、積み上げたいらしい。
「では、ここでキリンの出番ですわ! 葵様、手伝って下さいませ!」
 呼ばれた葵は驚いて目を瞬く。
「つ、積むのか?!」
「背ぇ高いし、丁度良いじゃ!」
 シエルにキリンを手渡され、小鉄に応援され、真剣な顔でチョコを積む葵。
「これも積んじゃうアル!」
「ボクのマルコチョコも……ううん、バランス悪いね」
 パンダとマルコのチョコも、タワーの仲間入り。
「そろそろ限界だと思うぞ」
 葵が手を伸ばして届く範囲も、かれこれ限界。現在、23……いや、蝙蝠一匹分で、24段。
「ささ、小鉄様、トラさんを置いてくださいませ!」
「じゃあ、行くじゃ!」
 特大脚立に上り、タワーの天辺にトラチョコを。その瞬間、いつの間にか増えていたギャラリーが拍手を送る。
「じゃあ記念撮影……輝かしい結果の一枚なのだ!」
 パシャリ。無理やり小鉄の上をパティが撮影した瞬間。
「危ないのだ!」
 揺れるタワー、走るパティ、口許を押さえるギャラリーの面々。慌てて全員でタワーを支えるのだった。

「湯煎てこれ、こないクソめんどいもんなんか……水分入らないようせんと固まるてめっちゃ神経使う」
 ぶつぶつ文句を垂れながらも、初めてのチョコ作りに挑戦するアイビス。ホワイトチョコで猫、鳩、蛇を。
 チョコ三点セットは、好きな女性の為。普段の笑顔、拗ねた顔、照れた顔。思い浮かべて作ったチョコは、我ながら良くできたと思う。想定外だったのは、蛇が思いの外微妙という事くらい。それでも可愛い、と固まったチョコに赤のチョコペンでまあるく目を描く。
 はい、可愛くできました! そんなわけで、包装する。まぁ上手く出来たかはわからないが、大丈夫だろう。アイビスは包装したチョコを大切に仕舞いこんだのだ。

 一般人が帰り、そろそろお開き。一人、二人とケルベロス達も帰っていく。
 さて、どうしたものか。手の中の包みを眺めつつ、悩んでいた遊鬼の肩が軽く叩かれる。振り向いた遊鬼に、涼葉は丁寧にラッピングしたチョコを差し出した。
「今日は一緒に来てくれてありがとう。これからも一緒に頑張ろうね!」
 驚いた遊鬼はそのままチョコを受け取る。
「荒ぶるネズミキツネザルのカタチなの!」
「そんな型あったのか……」
 小さく笑い、遊鬼は黄色い包みを差し出した。
「ありがとう、リョウハ。俺からも感謝の気持ちとして受け取ってくれ。此方こそよろしくな」
 そんな遊鬼に涼葉は目を瞬いて、それからにっこり嬉しそうに笑うのだった。

作者:あかつき 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2018年2月13日
難度:易しい
参加:30人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 8/キャラが大事にされていた 1
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