絶対正義な少女愛

作者:雷紋寺音弥

●幼き天啓
 東京、秋葉原。
 オタクの街としても有名な電気街の一角を、雑踏に紛れて歩く男が一人。
 背中に背負った巨大なザックと、可愛らしい少女のプリントされたカラフルな衣服が、彼の趣味を暗示している。そんな男が、通り掛かった者と擦れ違い様に肩をぶつけた矢先、唐突に後ろから声をかけられた。
「あ、あの……すみません!」
 どこか幼さの残る、甲高い声。思わず男が振り返ると、そこに立っていたのは定期入れを握り締めた小柄な少女。
「む……拙者に何か、用でござるか?」
「こ、これ……落としましたよ」
 少しばかり緊張した様子で、少女が男の手に拾った定期入れを渡す。その細く小さな指先が、男の太く脂ぎった手に触れた瞬間、男は全身に電気が走ったような感銘を受けて叫び声を上げた。
「ふぉぼぉぉぉぉっ!! キタァァァッ!! 可憐な少女の指先ゲッチュゥゥゥッ!! ツルペタ最高! ロリ万歳ぃぃぃっ!!」
 鼻息荒く叫ぶ男の服が弾け飛び、中から現れたのは羽毛に包まれた鳥頭の怪人。そう、幼女に触れられたことで感銘を受けた男は、その瞬間にビルシャナへと変貌してしまったのだ。
「あ……ぁぁ……」
 たじろぐ少女に不気味な……もっとも、本人的には最高に紳士的と思っているスマイルで答え、ビルシャナと化した男はパニックになり逃げ惑う人々に向かって叫ぶ。
「ふはははっ! やはり、この世はロリこそ大正義! お主らも、ビッチな大人の女どもなど見限り、可憐な少女を崇め奉るでござるぅぅぅっ!!」
 幼い女の子こそが大正義。メタボな鶏のような姿と化した男は、自らの同志を増やすべく、己の主義を声高に主張するのだった。

●可憐な少女こそ大正義?
「うぅ……最近、動きが活発になっていたから心配していたら、やっぱり変なビルシャナが……」
 その日、ケルベロス達の前に現れた笹島・ねむ(ウェアライダーのヘリオライダー・en0003)は、のっけから脅えた様子で自らの垣間見た予知について語り始めた。
「えっと……個人的な趣味趣向の『大正義』を見た一般人が、その場でビルシャナ化してしまう事件が発生しそうです。その……ビルシャナになっちゃう人の『大正義』なんですけど……お、大人の女の人じゃなくて、小さな女の子が大正義っていうもので……」
 具体的には、12歳までの少女がストライクゾーン。無論、体型も幼いままが最高であり、年齢に分不相応な発育の良さなど論外であるとのことらしい。
 なんというか、相も変わらず頭の痛くなるような主張だった。だが、このままビルシャナを放っておけば、今に周囲の一般人達を巻き込んで、配下にしたり新たなビルシャナを誕生させたりしてしまう。
「大正義ビルシャナになった人は、戦いになると強い光とか怪しい経文とか、後は鐘の音なんかで攻撃して来ます。それと、周りにいる人達を逃がすときは、グラビティとか特殊な能力を使わないようにしてください」
 幸い、大正義ビルシャナはケルベロスが戦闘行動を取らない……具体的にはグラビティや、それに準ずる特殊な能力を使用しない限り、自分の大正義に対しての意見を言われると、問答無用でそれに反応してしまうようだ。意見の内容は賛同でも反論でも構わないので、この性質を利用して議論を挑みつつ、一般人の避難を行うことが望ましい。
 なお、賛成意見にしろ反対意見にしろ、本気の意見を叩きつけなければビルシャナの意識をこちらに向けることは不可能である。一般人を速やかに避難させるためにも、議論を挑む場合には、本気で挑まねば意味はない。
「もし、こんなビルシャナがたくさん増えたら……も、もう、安心してお外を歩けません!」
 思わず涙目になり、ねむはケルベロス達に訴えた。そんな彼女の叫びを聞いて、立ち上がったのは成谷・理奈(ウェアライダーの鹵獲術士・en0107)。
「うわぁ……。あんまり気が進まないけど……でも、こんなビルシャナ、放っておくわけにもいかないし……」
 できることなら、さっさと避難誘導を済ませ、早々に殲滅してやりたい。今までに関わって来た数々の変態鳥頭どものことを思い出し、理奈は何故か殺る気満々で拳を握り締めていた。


参加者
エルネスタ・クロイツァー(下着屋の小さな夢魔・e02216)
エメラルド・アルカディア(雷鳴の戦士・e24441)
ヴィクトリカ・ブランロワ(碧緑の竜姫・e32130)
近衛・如月(魔法使いのお姉ちゃん・e32308)
アルーシャ・ファリクルス(ドワーフの妖剣士・e32409)
香月・渚(群青聖女・e35380)
ナナリア・クレセント(フルムーンシンガー・e37925)
琥玖蘭・祀璃(サキュバスのブラックウィザード・e44204)

■リプレイ

●ロリコン明王、爆誕!
 東京、秋葉原の通りにて。
 道を行き交う人々の中に、一際目立つ恰幅の良い男。背中に背負った巨大なザックからは丸めたアニメのポスターが飛び出し、着ている服には可愛らしい少女がカラフルな色でプリントされている。
 誰がどう見ても、筋金入りのオタクだった。だが、それ故に他の人間と見間違えることもないのは幸いだった。
「あ、あの……」
 通行人と擦れ違った際に定期入れを落とした男へ、思わず一人の少女が声を掛けようと近づいて行く。だが、そんな彼女が定期入れを拾おうとした瞬間、すかさずエメラルド・アルカディア(雷鳴の戦士・e24441)が声を掛けた。
「すまない、道を聞きたいのだが……良いだろうか。この街は初めてで、勝手が分からなくてな」
「えっ……わ、私に、ですか? えっと……お姉さん、どこに行きたいんですか?」
 どうやら、上手く少女がオタク男に接触することは避けられたようだ。後は、オタク男がビルシャナとなるタイミングで、一気呵成に仕掛けるのみ。
「お兄さん、ちょっと待ってー!」
「あの……これ落としました、よ?」
 道端に転がった定期入れを拾い、エルネスタ・クロイツァー(下着屋の小さな夢魔・e02216)と近衛・如月(魔法使いのお姉ちゃん・e32308)の二人が声を掛けた。そんな彼女達の声に反応し、振り返った男が定期入れを受け取った瞬間。
「む……これは忝いでござ……ふぉぼぉぉぉぉっ!! キタァァァッ!! 可憐な少女のダブル役満!! ツルペタ最高! 義妹こそ至高! この世の頂点、ロリ万歳ぃぃぃっ!!」
 額から大量の脂汗を撒き散らし、凄まじく荒い鼻息を上げながら、オタク男の衣服が弾け飛んで行く。その中から現れた肉体は、果たして既に人のものではなく。
「ふはははっ! やはり、この世はロリこそ大正義! さあ、お前達も未来永劫、可憐な少女を崇めるのだ! 今、直ぐに!!」
 自分好みの少女に触れられたことで、男は完全にビルシャナへと覚醒を遂げてしまった。
「こんなビルシャナもいるのね……。私も気をつけないと」
「あー、まー、はい、いつものなんですね。いつもの頭が悪いというか決めちゃってる系ビルシャナなのですね」
 あまりにキモいビルシャナの言動に、ナナリア・クレセント(フルムーンシンガー・e37925)は、早々にドン引きして距離を取っていた。アルーシャ・ファリクルス(ドワーフの妖剣士・e32409)に至っては、既にどこか達観した様子で、完全に頭のネジが吹っ飛んでしまったビルシャナへ冷めた視線を送っている。
「……っていうか、こんなビルシャナばっかりな気がするんだけど、気のせいかな?」
 そんな中、今までに戦ってきた数々の変態取頭のことを思い出し、成谷・理奈(ウェアライダーの鹵獲術士・en0107)が軽い溜息を吐いていたが、それはそれ。
「ボクももう少し若かったら、囮役として間近で戦う事が出来たのだけど……まあ、いいか」
「こやつは我らケルベロスが引き受けた! 落ち着いて離れるのじゃ!」
 唖然とした様子で硬直している人々へ、香月・渚(群青聖女・e35380)やヴィクトリカ・ブランロワ(碧緑の竜姫・e32130)が避難を促す。万が一、こんなビルシャナの言葉に耳を傾けた結果、危険なロリコンに増殖されたら堪らない。
「あ、こら! お前達、どこへ行くでござる! まずは拙者の話を……」
 周囲から人々が去って行くのを見て、慌ててビルシャナが引き留めを始めた。半ば強引にケルベロス達を掻き分けて進もうとするが、そこは琥玖蘭・祀璃(サキュバスのブラックウィザード・e44204)がさせなかった。
「あらぁ、確かに小さい女の子は可愛いけど、男の子だってその年頃だと可愛いわよぉ?どっちも守ってあげたくなるくらい♪」
 それほどロリが好きなのであれば、まずは自分達を論破してみるがいい。まずは第一ラウンド。幼い少女こそ大正義と語るビルシャナ相手に、謎の舌戦が開始された。

●至高の少女愛
 幼い少女を愛でることを趣味としていた、とても解り易いオタクの男。だが、今や彼は自らの大正義に触れたことで、危険なビルシャナと化してしまった。
「いきなりびっくりするじゃない! 子供を脅かすような真似をする大人はサイテーよ?」
 目の前で変身されたことに対して如月が説教をかますが、ビルシャナは何ら動じない。ともすれば不気味な笑みを浮かべ、彼女の頭を撫でようとする始末。
「でゅふふふ……。心配しなくても、拙者は幼い女の子に乱暴などしないでござるよ。ただ、少しだけぺロぺロくんかくんかさせてくれると、とても嬉しいでござる♪」
 お巡りさん、こいつです。ビルシャナの姿になっていなければ、誰もがそう叫んでいたことだろう。イエス・ロリータ、ノー・タッチという言葉は、この鳥頭の中には存在していないらしい。
「うわぁ……。もう、このまま倒しちゃっていいよね、これ……」
 完全に怯えた様子で、理奈が杖を握り締めながらビルシャナに狙いを定めて言った。
 だが、ここで戦いを始めれば、人々が戦闘に巻き込まれてしまう。まずは少しでもビルシャナの意識をこちらに引き付け、避難の時間を稼がねば。
「まぁそれよりもぉ、いきなり変化しちゃったら子供によっては驚いちゃうでしょぉ!? 教義とかどうこうの前にそこは反省しなさぁいっ!」
 如月に代わり、今度は祀璃が説教をかますが、その瞬間にビルシャナの顔が、まるで汚物を見たような表情に変化した。
「やっかましい! 貴様のようなババアはお呼びでないでござる!」
 なお、念のため断っておくが、祀璃はまだ18歳である。20歳にもなっていない少女をババア扱いとか、失礼にも程があるだろう。
 正真正銘、こいつは筋金入りのロリコンだ。しかし、そんなに幼い少女が大好きなのであれば、それを逆に利用させてもらうまで。
「どうじゃ? お主の好きな可憐な少女9人に囲まれた感想は?」
 改めてビルシャナを取り囲み、ヴィクトリカが探るような視線を向けて尋ねる。そんな彼女は13歳。ビルシャナのストライクゾーンに当てはまる者は、実際には9名もいないわけでして。
「自慢ではないが、我のスタイルも気の持ち様も12の頃と全くと言っていいほど変わっておらぬ! ……が、我を崇め奉る気にはならぬか? その気あらば信者として、鶏小屋で飼ってやるぞ?」
「何をぬかすでござるか! 拙者、ババアに飼われる趣味はないでござる!」
 ヴィクトリカの頼みを、ビルシャナは真っ向から否定した。体型的にはギリギリセーフのような気もしたが、このビルシャナは妙なところで妥協を嫌う性格だった。
「散々崇め奉っておきながら、12歳を超えたら見限るのか? 薄情な輩じゃな」
「ふん! 婆さんになった雌になど、拙者は興味ないでござる。拙者を置いて大人になってしまうような少女など、こっちから願い下げでござるよ!」
 軽蔑の視線を送るヴィクトリカに対し、ビルシャナも真っ向から屁理屈を持ち出して反論してきた。なんというか、その内容が内容だけに、もはや救いようのないレベルで頭のネジが吹っ飛んでいるとしか言えなかったが。
「なんか、幼女にそうとう夢を持ってるみたいだけど、あなたが思うほどそんな可愛いものでもないわよ? 中にはいじめだってするし、普通にやんちゃで言うことなんて聞かない子だっているわ。それに、私達だって成長したいわよ。それを止める権利なんてあなたにはないわ。ロリコンうんぬん差し引いても気持ち悪いわよ……」
 成長することが裏切りというのであれば、まさか幼女を蝋人形にでもして鑑賞するつもりか。あまりに非現実的なビルシャナの思想に、ナナリアは完全なる拒絶の意を示すが。
「でゅふふふ……。そういう悪い子には、ちょ~っとお仕置きするだけでござるよ♪ あ、心配しなくても、拙者、痛いことはしないから大丈夫♪」
 完全に何かを勘違いし、ビルシャナは翼の先を震わせながら、気色悪い笑みを浮かべてナナリアの方へと近づいて行った。
 これはヤバい。このビルシャナ、お仕置きにかこつけて絶対に変なことをするつもりだ。
「いや、叫んだ内容が変態的にしか聞こえないからね? それに、大きくなった姿ってのは憧れでもあるの。背が高い人って羨ましいのよね……」
 可憐な少女を愛するというなら、その少女達が持つ夢を否定するのはどうなのか。個人の欲望で他人の夢を、ましてや成長までをも否定するなど、もはや正義でもなんでもないとアルーシャが告げ。
「そもそも、いかに年端も行かぬ少女といえど成長はする。そして本人もより良い女性になろうと努力をする。貴様はその努力も夢も否定し、傷付けるつもりなのか?」
「あなたにとってはそのままが正義かもしれないけど、少女のみんなは成長して綺麗な女性になりたいんだよ。大正義たる少女の意見を無視するとか、それむしろ少女を蔑ろにしてない?」
 痛いことをしないと言っておきながら、おもいきり心を傷つけているではないか。そう言って、エメラルドやエルネスタもまたビルシャナの正義を全否定!
「ぬぉぉぉっ! 何故……何故、拙者の大正義を否定するでござるか! ……ハッ! これはきっと、大人になったクソビッチババアどもの陰謀でござるな! 幼い少女を洗脳して、悪の手先にしようとは言語道断!」
 完全に論破されてしまったビルシャナは、とうとう現実逃避をした挙句、問題をすり替えることしにしたようだ。
「でゅふふふ……。と、いうわけで、今から拙者が君達の洗脳を解いてあげるでござるよ~♪ 洗脳を解くと言えば……やっぱり、王子様のキスが定番でござろう?」
 そういうわけで、今から君達の唇をいただきます。もはや、何の躊躇いもなくなったビルシャナが、12歳以下の者達に狙いを定めて薄気味の悪い笑みを浮かべ。
「避難、終わったよ……って、何これ? 何があったの?」
 恍惚とした表情になっているビルシャナを目撃し、避難誘導から戻ってきた渚が、思わず唖然とした様子で硬直した。
「あまり、気にしない方がいいんだよ……」
 もはや説明するのも面倒臭いと、そっと呟くようにして告げる理奈。人々の避難が終わった以上、下らぬ茶番はこれまでだ。
 こいつは色々な意味で危険な存在。これ以上、野放しにしてはならないと、ケルベロス達は少女の唇を狙うビルシャナ目掛け、一斉に攻撃を開始した。

●不純な大正義
 人々の立ち去った大通りで、繰り広げられる激しい戦い。場所が場所だけに、何も知らない者が見ればコスプレイヤー達のパフォーマンスにも見えたことだろう。
 だが、これは夢でもなければショーでもない。ビルシャナの繰り出す炎が街を焼き、戦いの余波でアニメキャラの描かれた店の看板が吹っ飛んだ。
「はぁ……はぁ……。ま、まさか、洗脳だけでなく戦闘力まで強化されているとは思わなかったでござる……」
 そんな状況の中、ビルシャナは早くも満身創痍。まあ、無理もない。元より信者の1人もいない上に、1対多数という多勢に無勢な状況なのだから。
「か弱い者を愛する心って大切だけど……押しつけはよくないわよぉ」
「……というか、これ以上こっちに近づかないで欲しいわ」
 祀璃がビルシャナの顔面を蹴り跳ばし、その隙にナナリアが敵の時間さえも凍結させる、絶対零度の弾丸を叩き込んで行く。しかし、それらの猛攻を食らってもなお、ビルシャナは少女に触れることを諦めようとはせず。
「うぐぐ……せ、せめて、その指先にもう一度……ひゅでぶっ!?」
 邪な視線を向けてナナリアの方へと翼の先を伸ばすが、その瞬間にテレビウムのシングによって、凶器で脳天をカチ割られた。
「こぉらっ! 自分だって行き成り色んな事押し付けられたら嫌でしょう? ちゃんとこっち向く!」
 あまりに酷いビルシャナの態度に、業を煮やした如月が虹色の蹴りを食らわせる。その結果、今度はビルシャナの狙いが彼女の方へと向くが、それもまた作戦の一環であり。
「そうはさせぬぞ。貴様のような変態には、縛りプレイがお似合いじゃ」
 半透明の御業を解き放ち、ビルシャナを鷲掴みにするヴィクトリカ。喉元や脇腹を締め付けられたまま、ビルシャナの身体が宙に浮いて行き。
「うぎゅぎゅ……ぐ、る、じ、い……」
「うわぁ……。ホラー映画より気持ち悪いかも……」
 両目をひん剥き、涎を垂らしながら苦しむビルシャナの姿に、理奈は思わず口元を押さえ、込み上げる吐き気に抗っていた。
「これ以上は、貴様の好き勝手になどさせん!」
「さあ、受けてみろ! 成長した少女の真の力を!」
 完全に動きを封じられたビルシャナへ、追い撃ちとばかりにエメラルドとエルネスタの二人が仕掛けて行く。そんなエルネスタの格好は、18歳の大人バージョン。戦闘直前に変身したことで、言葉だけでなく視覚からも、ビルシャナの大正義を真っ向から破壊する作戦だ。
「な、なんということを! 可憐な少女の姿を自ら捨てるとは、そんな暴挙が……はぅぁぁぁぁっ!?」
 残念ながら、その反論は最後まで紡ぐことさえ許してもらえなかった。
 エメラルドの繰り出す雷撃を纏った槍先がビルシャナの尻に突き刺さり、エルネスタの放った特大の針が、ビルシャナの股間にクリティカルヒット! 前後からの急所同時攻めを受けて、もはやビルシャナは虫の息。
「邪悪な思想は世の中から駆逐しなきゃならないよね……」
 悶絶するビルシャナに、アルーシャが死んだ魚を見るような視線を送りつつ、無数の霊体を憑依させた刃で斬り掛かる。チェーンソー剣が振動する度に紡がれるのは、非情なる機械の音か、それとも怨霊達の呻き声か。
「それが厭らしい視線を浴びる幼い子の気持ちだよ……」
「あばばばっ! や、やめるでござる! お主達は、悪い大人に洗脳されて……」
 猛毒に侵食されて行くビルシャナへ、アルーシャは冷たい視線を向けるだけ。そろそろ潮時だと察したのか、最後は渚がボクスドラゴンのドラちゃんと共に狙いを定め。
「さぁ、行くよドラちゃん、頼りにしているからね」
 大きく脚を振り被って蹴りを繰り出せば、その先から繰り出されるのは紅蓮の炎。そこに、強烈なブレス攻撃も加わって、それらは容赦なくビルシャナの身体を包み込み。
「さぁ、焼き鳥にしてあげるよ!」
「ちょっ……! せ、拙者は食べても美味くな……ひょぼぉぉぉっ!?」
 大通りの真ん中で立ち昇る火柱。それに飲み込まれるようにして、ロリコン大正義を語るビルシャナは、自らの正義に殉じて昇天した。

●探索、オタク街
 戦いの終わった街の中。壊れた建物や道路のヒールを終えたところで、ナナリアは改めて大きな溜息を吐いた。
「はあ……。この前のエッチな水着着せる奴といい、ビルシャナってこんなのしかいないのかしら……」
「うん……。でも、パンツを被ったり、無理やり服を脱がせたりして来るのよりは、マシだと思うよ……」
 脳裏を掠める数々の変態鳥頭達の姿を前に、理奈が賛同と同情の意を示す。彼女からすれば、今回のロリコンビルシャナなど、まだ可愛い方に思えて仕方がないようで。
「ああいうお兄さんたちでも、節度守った対応なら……私としては好ましく思えるのだけど、ね」
「何とか救う方法は無いのじゃろうか……。強すぎる欲望は身を滅ぼす……ということなのじゃろうかの……」
 邪な欲望なしに、普通に小さい子を可愛がっている分には問題ないはず。そんなことを思いつつ、如月やヴィクトリカはどこか遠い目をして、ビルシャナの焼かれた跡を見つめていた。
「私はずっと、このままなのかなぁ?」
 そんな中、アルーシャが自分の胸に手を置いて、悲しげな表情を浮かべていたが、それはそれ。
「まあまあ。女の子は直ぐに成長するし、まだまだ解らないものよ~」
 もしかすると、これから先の数年間で、セクシーな大人の女性に成長するかもしれない。そう言って、祀璃がフォローを入れたところで、エメラルドが改めて街を見回して言った。
「ふむ、それにしても変わった街だ。ある意味ではビルシャナのような主張や欲望が溢れているが、同時に前向きな熱気もある……良い街だ」
 どんな街であれ、人々の活気が溢れているのは良いことである。中には少々マニアックな店もあるようだが、それがまた面白いところでもあるわけで。
「秋葉原と言えば、メイド喫茶かドカ盛りのお店。私はドカ盛りなんて食べられないから、帰りに何か食べてくならメイド喫茶かな?」
 どうせなら、一緒に寄って行かないか。そんなエルネスタの誘いに頷いて、大通りを後にするケルベロス達だった。

作者:雷紋寺音弥 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2018年2月10日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 4
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