ヒーリングバレンタイン2018~文化は作るモノ!?

作者:久澄零太

「皆お疲れ様」
 集まった番犬にコポコポとお茶を淹れる大神・ユキ(元気印のヘリオライダー・en0168)。今回はのほほんとした雰囲気で、番犬達も自然と警戒せずに耳を傾けた。
「今回のお仕事は皆が取り返してくれたミッション地域のヒールなの。それで、折角だからヒールしながらバレンタインのチョコを作るのもどうかな?」
 なんでそんな話に? と首を傾げる番犬も少なくない。そこでユキはコロコロと地図を広げて、とある地域を示す。
「皆に向かってもらうのは、福岡県福岡市なんだけど、ここには赤煉瓦文化館ていう建物があってね? これを見た凶が燃え始めちゃって……」
 で、件の四夜・凶(生きてる暖房器具・en0169)が地獄とは違う意味で燃えてた理由がこちら。
「これ、チョコで作りませんか?」
 何を言ってるんだこいつは? という顔をする番犬もいるが、凶は気にしない。
「福岡県は苺をはじめとして、複数の果物の特産品があります。これらを使ってジャムとチョコをうまく活用すれば、完全再現も……」
 ヘケケケケ……悪魔染みた笑みを浮かべる凶だが、要はチョコとジャムで建物を再現しようとしてるらしい。
「もちろん皆は普通のチョコを作っていいからね? 凶がジャムをたくさん用意すると思うから、あまーいのが作れると思うよ!」
 既にできあがるチョコを想像しているのか、頬を両手で押さえて幸せそうな微笑みを浮かべるユキは、ハッとしてキリッと表情を引き締める。
「今回のお仕事は現地のヒールと人によってはチョコ作りで、一見簡単そうに見えるけど、取り返した地域のイメージアップ、ていう大切な意味があるからね」
 真面目な顔をしようとしてるんだろうけど、微妙にほにゃん、とした雰囲気が抜けきらないユキなのだった。


■リプレイ


「ここに来ると思い出します」
 法華の脳裏に蘇るのは、モヒーによる座布団手裏剣とカリキリ手裏剣の対決とアトミックスイッチの攻防に全米が泣いたあの日……という妄想。
「ふふ、今となってはいい思い出です」
 実の所、思い出になるほどの因縁はなかったことは秘密だ!
「しっかりヒールしないと……って、隠れモヒー……!?」
 モヒー印の悪趣味な髑髏が物陰にさりげなくたたずんでいる。
「これはしっかり綺麗にしないといけませんね!」
 法華はヒールを行うと、『No more モヒー』のシールを他人様の家の壁に貼るのだった。

 真白は小熊と手を握り合い、凶の下へ。
「去年のお礼を言いに来ました。あれから私達無事付き合うことになって……今日でちょうど一年になります」
「あのアドバイスが無ければ、わたしたちはお互いの気持ちに気づかず、すれ違ったままでした……だから、凶さんには凄く感謝しているんです。あの時は本当にありがとうございました」
 小熊が言い終えると、二人は揃って会釈。
「んなことより付き合う前後と今の心境を詳しく!」
 しかし食いついた瞬間、凶は作ってたものを握り潰しサーっと青くなる。その様子に小熊と真白は顔を見合わせて、くすり。
「手伝いますよ。私、旅館で働いてますから、調理はお任せください!」
「今日は去年のお礼ですから、手伝わせてください」
 グッと手を握る小熊と、やんわり微笑む真白に、凶はそんな事より恋バナが聞きたそうな顔をしていた。

「やってしまった……」
 ソルは頭を抱えて作品を見つめる。
「ミニスケールルナールチョコっ!!」
 サイズ十分の一にして、体型から服装まで完全再現……お前何してんの?
「わっ、わあっ!すごい、すごいですのっ!」
 ルナール本人ははしゃいだ様子で、デフォルメされた陸戦機と空戦機を並べてにっこり。
「手作りですから、早めに食べないと、ですわね……!」
「食べ……?」
 ふと、ソルはルナールチョコと目が合う。
「チョコとはいえ、ルナールを食べ……っ!?」
「ど、どうか致しましたか?」
 ルナールがじっと見上げ、ソルの視線が彼女の唇に……。
「いやいやいや、不埒な考えとかは一切なくだなっ!!」
 首をブンブン振るソルだが、ルナールは困ったように小首を傾げ、ブレスレットからため息と声が。
『気にしないで、要はこのアホはあなたを可愛いって思ったのよ』
「まぁ……」
 ほんのり頬を染めるルナールに、相棒は不思議そうに。
『こんなアホのどこがいいのかしら?』
「それは勿論、全部ですわっ!」
 堂々とした返答に、長い、長いため息。
『まぁ、アタシとしてはこのアホの支えになってくれるなら大歓迎よ』
「ふふ、大歓迎して頂いて、嬉しいですのっ」

 乙女は顔に赤い飛沫を浴びて、ニタリ。同様に真っ赤に染まるソルとリディア。【月桜】に何があったのか?それは数秒前の事。
「あれ、結構硬い……」
 乙女はジャムの瓶が開けられずにいた。そしたらほら、力入れるやん?パァンするやん?全員ジャム塗れになって今に至る。
「失敗失敗……てへ」
「てへじゃねーよ!大丈夫か?」
「大丈夫……あれ、こんな所にもジャムが。勿体ない勿体ない」
「くすぐったいですよー」
 リディアは乙女に首元についていたジャムを指先で拭われ、こそばゆいのを我慢。
「そういえば乙女さん、どんなチョコを作るですか?私はナノナノ型に模ったチョコレート!中には苺ジャムを入れて、ハートなお腹を再現するでぃすよ!」
「それは楽しみだ」
「あ、ソルさんには、まだあげないよ?こんな時くらい私の腕前を存分に披露してあげるんだから、楽しみに待っているよーに!」
 渋々諦めるソルを乙女がじー。
「こんなところにも……」
 チュッ。頬の柔らかな感触に、ソルの顔が赤くなっていく。
「乙女もついてるぞ!」
 ソルは乙女の肩を抱き、額に口づけた。
「リディアも拭き切れてないな」
「え……」
 そっと二人の影が重なって、離れた時にはリディアが頬を押さえてやや紅潮……そんな一幕を挟みつつ、ソルはチョコケーキに生クリームで『愛してる 乙女 リディア』と二人の名を刻み、乙女に腕を組まれた。
「ユキちゃーん!」
「なーにー?」
 近づいてくるユキに、乙女がドヤァ。
「君もきっといつか大人になるさ」
「……あ、うん」
 ふんぞり返るからとある部位が強調され、ユキのメンタルが即死。
「うちのがすまん……」
「ダイジョウブダヨ」
 ソルが謝罪しても、ユキの瞳に光が戻ることはなかった。

「スノーとうずまきが二人でチョコを作っちゃったみたいだねぇ……」
「ああ、手作りね。良いんじゃないかな、女の子っぽくて……ほぅ、手作りとな」
 奏はピタと硬直し、グレイシアは天を仰いで両目を手で覆った。
「あー……惨劇が見える……寧ろ惨劇しか見えない……」
 しかし、惨劇はあなたのすぐ後ろに。
「どう今回のは?自信作よ」
「実は手作りは最近自信が無くて……でもね!今回は!料理上手(っぽい)スノーさんと一緒♪だから大丈夫!えへへ☆」
 スノーの物は雪の結晶のようなチョコで、うずまきの方は貝や魚を象ったチョコ。
「変な色とか匂いもしないように注意して作ったし美味しそうよね!!食べたい?」
 それを意識する時点で手遅れとか、某鳥オバケに魚の鱗タルトを作った時は自信があったのかとか、奏はその全てを飲み込んでスノーから視線を逸らす。
「……もう、しょうがないわね」
 何かを察したスノーは一つ、グレイシアの口元へ。
「ほら、アーン?」
「!?」
 スッと消えようとした奏を、グレイシアが掴んだ。
「スノーにあんなこと言われたら食べないワケないよねぇ?ほら、スノーに『あーん』して貰えるんだから幸せの境地でしょ?」
「何で俺まで食べる方向に持って行くのグレイシアっ」
 振り返った時、グレイシアの目は道連れを求める亡骸のような、深い闇をたたえていたという。
「凶!助けっ……!」
「どうしました?」
 ノコノコと寄ってきた凶にもスノーがチョコを差し出した。
「はいアーン?」
「ふむ、コレは香り高い……」
「あれ?」
 凶が味わい、油断した奏にチョコが……。
「止めスにょっ……」
 もきゅもきゅ、ちーん。彼の指先は『敗因は味見をしない事……百点満点中、五点』と遺していた。
「はい、グレイもアーン?」
「なっ……いつもより殺人的なんだけどぉ……」
 崩れ落ちる刹那、視界に入ったのは紳士的な猫にソッポを向かれたうずまきの姿。
「うず……まっき……めし……ま……ず……」
「あれ……?」
 スノーはグレイシアをむにむに、ニコッ。
「気絶するほど美味しかったのね?」
「なんだよぉ……美味しいのに!」
 ねこさんに拒まれてむくれるうずまきに、スノーがチョコを差し出し。
「どうせなら互いに食べさせあってみる?」
「わぁ♪うん!するする~!」
 互いにあーん……二人の記憶は、ここで途切れている。

「どう……かな?」
 ユキにチョコワッフルサンドを食べさせたネリシアが感想を待つ。
「凄く美味しい!これ、何が入ってるの?」
「キウイとチョコだよ……種とプチチョコで……ダブルプチプチ……」
「ほへー……こっちは?」
「柿ジャムと……カスタードクリームだね……この二つ意外とあうの……出来れば凶くんにも感想……聞きたいけど」
「あ、それはちょっと待ってあげて。今、味覚がおかしいんだって」
 男性二人にトドメを刺したチョコは、今なお凶を苦しめていた……。


「いつ始める?僕はもう準備ができている」
 ヴィルフレッドはジャムインチョコをもぐもぐ。
「細かい作業は昔鉄砲火器扱ってたからそこそこ得意なのさ」
「はい、あーん」
 作業に集中するヴィルフレッドの為に、ペルフェクティは材料チョコを彼の口元へ。
「ペル様も手伝ってくれよモグ、あとでザッハトルテあげるからさモグ。湯煎でチョコ溶かしてもらえるだけでもありがたいんだけどモグモグ」
「そういえば、旅団の皆にあげる分を用意しようと思ってたんだった。さて……おや?」
 ペルフェクティが振り返ると、そこには。
「材料がほとんどないね、不思議な事があるものだ」
「なん……だって!?」
 ヴィルフレッドが振り向き、ハッとする。
「口の中が甘い……これは、事件だ。ペル様、ここにあったチョコを知らないかい?」
「知っているよ。ボクの愛と共に君の中に届けてあげたのさ……」
 その瞬間、ヴィルフレッドは気づいた。
「犯人僕じゃないか……」

「……福岡県って果物が有名だったのじゃな」
「ひーちゃん、資料見てないの?」
 どこか不思議そうな顔をするケルンを、ユキがじー。
「妾は一番上の姉様と一緒にやった億単位のお金がポンポン出たり入ったりする鉄道のゲームでしっかり学んできたからな!」
 苦笑するユキへ、ケルンはチョコを差し出し。
「そうそう、今回のチョコなんじゃが、いちごジャムにゼラチンを入れて、ゼリーにしてみたのじゃけどどうじゃろ?ユキちゃん味見してくれぬかの?」
「もらっていいの!?」
 喜んで頬張るユキがほにゃん。
「ジャムと違って甘さが強くなくて、チョコと合うね。美味しい!」
 安堵のため息をこぼすケルンが、ふと凶を見て。
「しかし凶兄様……すごくプロっぽい感じの手つきなのじゃ」
「あれ、ひーちゃんには話したことなかったっけ?私はグーで、凶はパーで武術を教わってたって話。その影響で、凶は変に器用なの」
「ほほう……」

 パティを先頭に、小鉄とユキは物陰を移動。
「今なのだー!」
 チョコを狙って走るのだが、頭を押さえられて進めなくなる。
「何やってんですか……」
「チョコを貰いにきたのだ!」
 ドヤァなパティに、凶はため息。
「これは文化館の再現に使うもので……」
「この煉瓦色とか不思議じゃ。何味なん?」
 ぱきょ、ぽりぽり……。
「ふぁー!?」
「何じゃ!?」
 凶の絶叫に小鉄がビクゥ!?しかし食うのはやめない。
「そっちは使うんだよ!」
「一枚くらいいいでしょ?」
「ユキまで食ってんじゃねぇ!」
「小鉄とユキだけずるいのだー!」
 パティが文化館本体に手を出そうとすると、凶がその手首を掴み。
「パ テ ィ ?」
 般若の幻影を背負う凶は代わりに、ジャックオランタン型のチョコを差し出し。
「これやるからこっちには手ェ出すなよ?」
「はーい、なのだ!」
 パティがチョコをかじっている間に、凶は食われたパーツを復元する作業に入った。
「凶ー、チョコチップクッキーとか欲しいじゃ」
 小鉄が背中に乗っかると、凶は死んだ目。
「今日はコレしかねぇぞ……?」
「これ俺?俺なん?」
 今日のお菓子はホワイトチョコで作った虎にミルクチョコで模様を入れた、チョ小鉄。
「仕方ないからこれで許してやるじゃ」
 小鉄はパティへ見せびらかしに行くのだった。

「私としては是非こちらも使いたいですね」
 ビスマスが並べた物に、凶は見覚えが。
「梅味噌ですか……」
「凶さんご存じなのですか?」
「また珍しいご飯?」
「あ、ユキさん」
 顔を出したユキに、ビスマスが梅ジャム味噌インチョコをずいっと。
「どうぞ。酸味と甘味と塩味の重なる調味料をチョコで包むことで、より甘味を引き出すのです……!」
「へ、へぇ……」
 地雷を踏んだがユキが犠牲になった為、凶は作業を進める。
「……というわけで、梅味噌のジャムとなめろうへの転用を……あ、そういえば凶さん、どうやって組み立てるんですか?」
 ユキの目が虚になった頃、凶の前には立方体のチョコ?
「ケーキをベースにして、そこにパーツを貼りつけていこうかと」
 凶が一例に見せたのは、チョコでできた窓。
「表面にキウイジャムを薄く塗って、ガラスに見立ててあるんですね」
「ここに梅ジャム味噌を細く絞ってですね……」
「味噌の色合いを木枠にするんですか!」
 二つのジャムが重なり、リアルな窓が完成するのだった。

「凶さんを囲むのは忘れちゃいけないよね……」
 藍励を筆頭に【緋色蜂師団】番犬がジリジリ……。
『ヒャッハー!!』
「おぅ!?」
 凶が驚いた拍子に部品を落としそうになるも、セーフ。
「えへへ、それじゃチョコを作ろうか!」
 和は細工を施したチョコをこね、伸ばし、丸いチップを作るとそれを何枚も重ねては下部にリンゴジャムを塗って絞り、薔薇の形を作っていく。
「おいしっくな~れ~♪っと、できたー!」
 花弁の内に秘めたジャムが光るはバラチョコ。特に美しい一輪をラッピングし、優しく抱きしめて瞳を閉じる。
「喜んでくれるといいな……」

「……ん?」
 陸也は七割ほど完成した赤煉瓦チョコを前に首を傾げる。
「あ、間違って札幌の赤煉瓦庁舎作っちまったわ。凶ー、これどっかに置くスペースねーか?」
「なんですかソレ!?」
 ホワイトチョコで白い石材を作成していた凶が二度見。
「藍励、なんかいい案ねぇ?」
「ふぇっ!?」
 急に振られた藍励がビクゥ!?その隣にはユキもいて、二人の手にはジャムチョコが……。
「お隣さんにしてみる、とか……?あ、でもそれだと邪魔になっちゃうかな……?えっと……お向かいさん?」
「追加の台を持ってこないと……ユキ?」
「もぐもぐ……ん!」
「テメェさっきも食ってなかったか?」
 口にチョコを詰めたユキがダッシュで逃げていく。
「まぁまぁ、食べるのもイベントの内って事で」
 鍋でジャムを混ぜる達也に宥められて、凶は作業に戻る。
「えーっと……これってここでいいんですか?」
「違います、もうちょい右……そこ!」
 和奏が扱うのは大きい部品にして重要箇所、屋根。
「うぅ、大きい部分なら簡単だと思ったのに……」
「何故簡単だと思ってしまったのですか」
「こ、細かいところは分からなかったんですっ!!」
 ややむくれる和奏を見て、達也は思う。
(材料の量産に徹しておいてよかった……)
「再現作戦の進行具合はどう?」
 鉄鍋の陰から湧いたわかなに、その鍋を示す凶。
「達也さんのジャムを屋根に塗ったら、後は窓を貼り、装飾を彫って完成ですよ」
「ふーん……ところでぇ、私チョコが食べたいなー食べていいチョコはどこかなー?」
「そこの白猫二匹が食べてるやつです」
「「うにゃん!?」」
 藍励とユキが同時に跳ねた。
「わーい、いただきまーす♪」
 わかなも混じって一つ口に放り込むと、陸也の下へ。
「陸也くんは何作って……また凝った物を……」
 一瞬遠い目をするわかなだが、ふと思い至り。
「そうだ陸也くんはジャムインチョコ食べた?」
「あー、まだ食ってな……」
 言い終える前に、わかなが陸也の口元に一つ。
「はい、あーん♪」
「……とても、甘ぇ」
 この甘い空気の中現れたのは。
「わかなちゃーん!友チョコだよー」
 バラチョコ抱えた和である。
「陸也くんもはい、あーん」
「うぉ、和、上書きやめ……」
 和に味を書き換えられる陸也だったが、わかなの方はジャムインチョコを手に。
「じゃあ私からも、あーん♪」
「あーん!」
 姉妹にしか見えないが、和は男だ。
「わかな」
「んー?」
 振り向けば、陸也が赤煉瓦チョコの一部を差し出し。
「……あーん、だ」
「……あーん」
 やや頬を染めて、目を逸らしながら頬張るわかな。そんな彼女の様子に表情を緩める陸也……だが。
「凶、おめぇ、なに見てんだ、はっきり言えよ……!!」
 ニタァ。意味深な笑みで見つめられていた。
「藍励ちゃんもー、戀ちゃんにも!ユキちゃんも食べて!」
「へっ? え、あ、あーん……?」
「にゃーん!」
 白猫二匹がそのまま受け取るのに対して、戀は一味違う。
「ふむ、頂くとしようかの。ほれ、お返しじゃ、あーん」
「あーん!」
 戀が差し出したのは下半分はビターチョコで作り、上半分は苺ジャムを織り交ぜたホワイトチョコで重ねたもの。光沢を放ちどこか透明感すらあるそれは、もはや装飾品のようだった。
「我ながらなかなかの出来栄えじゃと思うのじゃが……」
「美味しいー!」
 どこか幼い和の笑顔に、戀はそうか、と満足げに頷くのだった。
「達也くん、和奏ちゃん、よつやーん、あーん!」
「サンキュー」
「わ、綺麗……」
「ありがとうございます」
 口で受け取る達也と、普通に手で受け取る和奏と凶。食べてから達也は思う。
(手が塞がってるのを気遣ってくれただけだよな?)
「妾のもあるぞ。皆、食して欲しいのじゃ」
「わ、これ食べづらいですよ……!」
 戀の宝石のようなチョコと和のバラチョコを並べて、見惚れる和奏に対して達也はちょっと戸惑い。
「ま、まぁ、義理なら……?」

「チョコで建物を作るのか……よし、私も力を貸そう」
 そう意気込んでいた頃が、沙葉にもありました。
「くっ……」
 割れたチョコに沙葉は歯噛みする。
「装飾品と同じ要領ならそう難しくはないと思ったのだが……」
 隣でサラッと仕上げる凶を見て、沙葉は疑問符。
「凶、私とお前で何が違うんだ?」
「力加減だろ。チョコは人の体温で溶けるんだぞ?装飾品と同じ感覚でやってっと割れるって」
「む、強度の問題を失念していたか……」
 一度コツさえ知ってしまえば、元は器用な彼女の事だ。必要な分はさっさと仕上げ、もう一つに取り掛かる。
「なんだそれ?」
「こ、これはまだ秘密だ……!」
 沙葉に隠されてしまい、覗こうとした凶から庇うように隠す沙葉。凶は大人しく作業に戻り……。
「頑張った甲斐があったな……!」
 完成したチョコ版赤煉瓦文化館を前に、沙葉は感動に震える。
「作った皆で記念写真でも撮ろうか」
 沙葉の一言により、番犬達の創作の記録が残されるのだった。

作者:久澄零太 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2018年2月13日
難度:易しい
参加:27人
結果:成功!
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