病魔根絶計画~俺がやらなくちゃ駄目だから

作者:陸野蛍

●俺が行かなきゃ
 都内の入院病棟の一室、1人の青年が苦しそうな声を出しながら、横たわるベッドから身体を起こそうとしていた。
「……ううっ、俺が学校に行かなきゃ。3年生の……卒業式があるのにゲホッ! グッ! ……ハア……ハア……」
「駄目よ! そんな身体じゃ、すぐに息が続くなくなって、動けなくなるわ。それに、先生から一時外泊の許可も出てないわ。まずは、あなたが身体を治すことを考えなきゃ。学校のことは、学校の友達がやってくれるわ」
 傍らで看護師が難しそうな顔で、青年に言い聞かせようとする。
「駄目なんだ……それじゃ。……俺は、生徒会長なんだから。学校のみんなの為に、俺が……頑張らなきゃ。その為に……俺は居るんだからっ! ウッ!! グハッ! ……ハアハア……学校に行かなきゃ」
 青年の言葉は息苦しさがほんの少し和らぎ、荒い息使いながらも浅い眠りに着くまで続いた。
 眠る青年の首には黒い手形の様な痣が浮かび上がっていた……青年の首元に手をかけるように……。

●人は1人では無いと言うこと
「みんな、病魔根絶計画については知ってるよな?」
 ヘリポートに現れると、大淀・雄大(太陽の花のヘリオライダー・en0056)は、ケルベロス達に尋ねる。
「知っての通り、ウィッチドクターが同種の病魔を同時に『病魔召喚』し一斉討伐する事で、その種の病魔を地球から完全根絶するって言うのが、『病魔根絶』儀式なんだけど。現代医学では根絶困難とされている病魔についても、この手段なら根絶できるって訳だ」
 既に『結核』等の死亡率が高い病魔の根絶すら出来ている。
 デウスエクスとは全く別種の人類の脅威を無くせると言うことは人々の希望にも繋がる。
「そして今回、『残火病』という病気を根絶する準備が整った。残火病は首を絞められている様な息苦しさを強く感じ、呼吸困難に陥る病気だ。現在、残火病の罹患者達を大病院に集め、病魔との戦闘準備を行っている。皆には、この中でも特に強い、『重病患者の病魔』を倒して貰いたい。今、重病患者の病魔を一体残らず倒す事ができれば、残火病は根絶され、もう、新たな患者が現れる事も無くなるらしい。勿論、敗北すれば残火病は根絶されないから、今後も新たな患者が現れてしまう。デウスエクスとの戦闘に比べれば、緊急性の高い依頼とは言えないかもだけど、残火病に苦しむ人を無くす為にみんなの力を貸してほしい」
 雄大が真摯な眼差しでケルベロス達に頭を下げる。
「みんなに討伐をお願いする病魔の個体説明とその罹患者について説明するな。残火病の戦闘手段は、断末魔の悲鳴にも似た音波攻撃による複数人を巻き込める攻撃、直接その両腕で首を締めあげる攻撃、そして気味の悪い嗤い声をあげることでの回復手段も持ってる。討伐対象の特徴としては、中学生や高校生と言った学生を優先的に攻撃する傾向があるっぽいな。該当者は、覚悟しておいてくれ」
 討伐個体は、制服等の外見と共に実年齢を感じ取り、狙ってくるとのことだ。
「罹患者の説明に移るけど、残火病討伐に於いて重要なことだから、しっかり聞いてほしい。罹患者は、工藤道明。都内の高校に通う高校2年生で生徒会長をしている。運動、成績共に平均以上ってくらいなんだけど、何よりも真面目で責任感が凄く強い男子らしい。で、残火病は、真面目で責任感が強く、自分1人で何でも仕事を抱えがちな人間が、心身共に弱った時に発症することが多いから、道明が発症したのもなんとなく分かるんだよな」
 資料を見ながら、雄大は頭をわしわし掻く。
「で、今回は、この残火病への『個別耐性』を得られると、戦闘を有利に運ぶことができるんだ。その個別耐性は、患者の……つまり道明だな。彼を看病をしたり、話し相手になったり、慰問し元気づける事で、一時的に得られる。個別耐性を得ると『残火病』から受けるダメージが減少するから、戦闘を有利に進める事が可能になる。けど、道明が残火病の重病患者になった理由は、その大き過ぎる責任感だ。その考え方を少しでも、より良い方向へ導くことが出来れば、『個別耐性』を得られる可能性はぐっと上がると思う」
 人は誰しも、1人では無い。
 誰かが全てを背負う必要も無い。
 そのことをケルベロス達が伝えることが出来れば、病魔根絶が現実的なものになると言うことだ。
「道明……いや、残火病で苦しんでる人々全てを救う為にみんなの力を貸してほしい。残火病の根絶は、これから先の未来にも繋がることだから……頼んだぜ、みんな!」
 寒空の中、雄大の強い言葉がヘリポートに響いた。


参加者
ゼルガディス・グレイヴォード(白馬師団平団員・e02880)
マヒナ・マオリ(カミサマガタリ・e26402)
リティ・ニクソン(沈黙の魔女・e29710)
水瀬・和奏(火力系女子・e34101)
陽山・人機(見習いヒーローのレプリカント・e41259)
惟任・真琴奈(白昼独り百鬼夜行・e42120)
コスモ・ストークス(光り輝くホワイトウィザード・e44449)
ナイチンゲール・マークフォー(レプリカントのウィッチドクター・e45677)

■リプレイ

●大切なこと
 難病『残火病』根絶の為に集ったケルベロス、重病罹患者『工藤道明』を救う為に集まったメンバーは、病院に着くと数人ずつに分かれた。
 ヘリオン内部で相談した手筈通りだ。
『病魔根絶』儀式をより確実に、成功させる為に……道明を必ず助け、彼の重荷を少しでも軽くする為に。
 道明の病室に直接向かったメンバーは、病室の扉越しに『グホッ! グハッ!』と言う声を耳にする。
「『残火病』耳にする機会が少なくても重い病気もあるんだね」
 リティ・ニクソン(沈黙の魔女・e29710)が呟いた通り、『残火病』は、先日根絶された『結核』等に比べれば重病化しやすい割に、世間での認知度は高くない。
 だからこそ、治療法の開発が遅れていたとも言える。
 どんな、重病だったとしても発症患者が少ない場合、医療研究費が出ず何時まで経っても特効薬が出来ないと言うのも良くある話で、薬があっても高額になるケースも多い。
「……まだまだ、いろんな病魔がいるんだね」
 ウイッチドクターであり、こと戦闘に於いても後方回復に徹することの多い、リティとしては苦しんでいる人がいること自体が辛い。
「まず、私から、工藤さんとお話しさせて頂いていいですか?」
 そう、仲間に言うのは、学生服に身を包んだ、水瀬・和奏(火力系女子・e34101)だ。
 和奏は、現役の高校二年生、そして道明と同じ生徒会長と言う役職にある。
 今回のメンバーの中で一番道明と立場が近いと言ってよかった。
 だからこそ、伝えたい想いもあれば、道明の想いも聞いてみたいと思っていた……その上で道明を必ず救いたいと。
 仲間達が頷く中、和奏が扉を開ける。
「グホッ……! はあはあ……誰?」
 苦しげに息をしながらも、和奏と後ろに居並ぶケルベロス達を見る、道明の瞳にはすぐにでも退院したいと言う意志の炎が垣間見える。
 病気の進行が抑えられている訳ではないが。
「工藤さん初めまして、水瀬和奏と申します。貴方と同じく、ある高校で生徒会長をしています」
「……生徒会長? なら、お願いがあるんだ。病院の先生に頼んでくれないか? 俺をすぐに退院させるように。ゲホッ! 生徒会長なら分かるだろ? 学校は、はぁはぁ……生徒会長が居なくちゃ駄目なんだっ!」
 道明の言葉は本心なのだろうと和奏にも分かる。
 だからこそ道明に理解してもらいたい……いや、気付いてほしい事もある。
「私、いえ私達ケルベロスが貴方の中の病魔を必ず倒します。だから、その前に少し貴方の気がかりを教えていただけませんか?」
 和奏が目線をベッドの道明と同じ位置で聞けば、道明も途切れ途切れに話だす。
 卒業していく先輩達を不安なく送りだしたいこと、今一年生の新生徒会役員にしっかりと仕事を教えなければならないこと、春に入学してくる新入生をちゃんと生徒会長として迎えたいこと……どれも道明にとっては普通のことで、それでいてとても大切なことだと言うことは、必死に話す彼の姿からケルベロス達にもしっかりと伝わる。
(「強い思いですね。人の性分に口出しするのは苦手ですが、それでもボクに出来ることはやりましょう」)
 話を聞いている間も、道明の額の汗を拭い手を握っていた、惟任・真琴奈(白昼独り百鬼夜行・e42120)は隠した表情の中にも決意を込める。
「道明とやら、貴方の考えは分かった。それを聞いた上で、こちらの事情も説明してよいかな?」
 そう言葉を切り出したのは、竜派ドラゴニアンのゼルガディス・グレイヴォード(白馬師団平団員・e02880)だ。
「我等は今回、病魔『残火病』の退治を目的に来ておる。我等が貴方の中の『残火病』を討伐出来なければ、即ち根絶失敗となり、多くの犠牲者が今後も増える事となろう」
 ゼルガディスが告げた言葉はケルベロスの目的が道明1人の救済ではなく、世界規模での作戦であるという事実を道明に刻み込む。
「卒業式は、他の生徒会役員という頼もしい仲間が準備を進めてくれるだろうが、この残火病根絶には、貴方の協力が必要不可欠……他の苦しむ患者達や貴方自身を『救う為の手助け』を頼みたい」
 ゼルガディスからの申し出は、ただ道明を助けると言うものではなく、道明に『協力』して欲しいと言うものだ。
「病気のまま学校へ赴けば、責任を果たすどころか逆に迷惑を掛け、多大なる心配を周囲にかける事にもなろう。万全の状態で送り出せるよう、是非とも我らに残火病の病魔退治を任せては貰えないだろうか?」
 道明は責任感のある青年と聞いていた。
 彼にしか出来ないこと、それはケルベロス達の残火病根絶への協力に他ならない。
 けれど、頭では理解しても気持ちが追いつかない……自分がやらなければならないことが増えただけのようにも思える。
(「うむ、病を推してまで邁進する気概は素晴らしく思うが、それが周りの迷惑になるとは思い至らず……か。一人で何でも熟してしまうのは、ある意味、周りを信頼せず、周りに経験を積ませぬ様にしている、とも言えるからな……この機会に周りを頼る事の重要さを説き知るのもいいだろう」)
 その思いに至ると、自身が仲間にバトンを手渡す番だと、ゼルガディスは一歩下がる。
「責任感自体は悪いことじゃないから、なかなか難しいね」
 表情を変えずに口を開くリティ。
「だけど、責任感には誰かを信じ委ね任せる責任もあると思う。冷たい言い方かもしれないけど、任せられないってことは、言い替えると信じられないってこと……違う?」
 違うと言いたい、けれど自分が居なければ駄目だと思う、それはやはり信じられていないと言うことなのか……道明は右手を額に当て、俯く。
「自分がやらないとって、焦っちゃう気持ちは分かる気がするな」
 それまで紫の大きな瞳で道明を見つめ、何も言わずにいた褐色肌の女性、マヒナ・マオリ(カミサマガタリ・e26402)が口を開いた。
「ワタシも前に、大規模な作戦の依頼であれもこれもやらなきゃ! ……って一人で抱え込んで、いっぱいいっぱいになっちゃったことがあって……」
 マヒナの言葉は続く……。

●信じること
 昨年の11月、ケルベロスとしても大きな作戦、ドリームイーター『王子様』との大規模戦闘。
 攻略の難しい作戦に、マヒナ自身緊張もしていたし、少し前のめりになっていた。
 だからこそ自分が出来ることは自分がやらなければならないと思った……抱えて、抱えてパンク寸前になっていたのかもしれない。
 けれど……。
「でも、ケルベロスのお仕事って、絶対一人じゃできないの。チームで頑張るから乗り越えられるんだよ」
 ふわりと笑うマヒナ。
 一緒に相談する仲間が居た、作戦の中で背中を任せられた仲間が居た、帰りを待っていてくれたヒトが居た。
 1人じゃ無かった……作戦の成功で胸が熱くなった、仲間達と同じように。
 だから、今も仲間達と目の前の彼と困難を乗り越えたいと思う。
「もし、ミチアキクンの大切な友達が明らかに大変そうなのに、少しも頼ってくれなかったらどう思う? きっと寂しいんじゃないかな……。頼るって『信じてる』ってメッセージでもあると思うの」
 マヒナの言葉、口にこそ出さなかったがリティも、道明に『自分以外の誰か』を信じてもらいたいと思っていた。
「ボク達の力で残火病を治せるんです」
 真琴奈が、その事実をもう一度口にする。
「貴方が頑張っていることは皆が知っているはず。その上で、だからこそ貴方の力になりたいという人が沢山いる。頑張っているからこそ、たまには甘えてもいいんです。……ボク達も、他の生徒の皆さんも、貴方の力になれますよ?」
 口元だけでも伝わる優しい真琴奈の笑みに、道明の瞳に涙がにじむ。
「学校に行かなきゃ、っていう気持ちはよく分かるんです」
 長い髪を軽く掻き上げ、和奏が続ける。
「でも、こういう時ぐらい、他のメンバーを頼ってもいいと思うんです。生徒会だって1つのチームですから、困った時はお互い様でしょう? 私達と同じです」
 その時、廊下を駆ける足音が複数聞こえる。
「遅くなった! 動画届いたぜ!」
「ボクが受信出来たから、投影するから……。はあはあ」
「絶対道明の心に届くぜ!」
 病室に駆けこんで来たのは、コスモ・ストークス(光り輝くホワイトウィザード・e44449) と陽山・人機(見習いヒーローのレプリカント・e41259) 、そして少し遅れて、ナイチンゲール・マークフォー(レプリカントのウィッチドクター・e45677) と相棒のテレビウム『ドクター』が入って来る。
 彼ら3人は、それこそ自分達以外の協力者を募っていたのだ。
 道明が本当に信じなければならない相手、彼の学校の生徒会のメンバー、そして生徒達のことだ。
 ヘリオンは直接病院に向かっていたし、作戦の相談も空の上であった為、病院に着くや否や、道明の学校と連絡を取ったのだ。
 電話越しであってもケルベロスである彼等の言葉はすぐに聞き入れられ、まず人機が道明の仲間達に残火病の説明をした。
『残火病って酷い病気なんだ! デウスエクスと同じくらい! こんな病気……絶対、根絶しないと! 道明君も帰って来ないんだよ!』
 強く熱く訴えた。
(「見習いヒーローのボクとしては、誰かに頼られてる、責任感を感じてる彼の気持ちも少しは分かってる……と思う。だけど、自分だけ褒められたいだけって気持ちもあるかもしれない。それだと、頼られて頼られて、寄りかかられて何時か倒れちゃうよ」)
 自分を認められたい気持ちはあってもいい、自分にもそれはある。
 けれど、仲間の功績が認められるのも喜べるのがヒーローじゃないかと人機は思う。
 時間さえあれば、道明の仲間達に直接言葉を送ってほしいと思っていたのは、コスモだ。
 けれど『病魔根絶計画』は地球規模の同時作戦である。
 その時間を用意することは出来なかった。
(「俺たちは1人じゃない、辛い時は誰かに頼ったっていいんだ! 当たり前だけど大事な事……道明にわかってもらわないとな!」)
「ドクター準備出来たであります。道明殿の仲間、生徒会メンバーの応援動画投影するであります」
 ナイチンゲールの言葉と共にドクターに映しだされたのは、道明がよく知る生徒会の面々。
 みんな、ただ『道明に早く元気になってほしい』と言う思いを声にし、『戻って来るまで頑張る』『心配いらない』『みんな仲間だから』『頼りにしてるけど、俺達も頼れるぜ』飾らない、高校生の言葉を口にしていた。
 けれど、道明は涙があふれて止まらなかった。
「生徒会長という立場にあるからこそ、自分で抱え込まずに『人に任せる』ということも大事だと、自分は思うでありますよ」
 ウサミミを揺らしながらナイチンゲールが言葉を紡ぐ。
「俺が……俺が……。元気にならなきゃ……」
「絶対に病魔を倒します、その為に私達はここに来たんですから」
 道明の肩に手を置き和奏がそう強く言葉にした。

●信じ抜くこと
「病魔召喚後……敵戦力確認……データベース照合……火器管制システム、アップデート移行。最新パッチ、配信します」
「同時病魔召喚発動であります。『残火病』根絶開始であります!」
 リティとナイチンゲール、前後からの病魔召喚……グラビティの流れと共に道明の身体から、黒き死神の様な病魔『残火病』が姿を現す。
「残火病! お前は邪魔だよ、消えてもらうからね! ハガイショー!」
 軽くステップを踏むように俊敏に動く、人機の鎧をも打ち砕く痛烈な一撃が決まれば、続くようにフィルムスーツを纏った和奏が『試製30mm重狙撃砲『神送り』を構え魔法光線を放つ。
 残火病が聴覚すら意味をなさない叫びで、癒し手達を苦しめようとすれば、すかさずマヒナとナイチンゲールがカバーに入る。
 攻撃がヒットしたと思われた瞬間、2人の身体を薄らと淡い緑の光が覆った気がした。
 いや、強弱があれど、他のメンバーの身体も淡い光に包まれている。
 その輝きに、マヒナとナイチンゲールは頷き合うと、自身のグラビティを高めていく。
「ミチアキクンがいるべき場所に帰れるように、お休みしてもらうよ。アロアロもお願いだよ! 頭上注意、だよ?」
「ドクター! 同時攻撃であります」
 突如生まれたヤシの木の幻影から放たれる聖なるココナッツが残火病の体勢を崩し、シャーマンズゴーストの『アロアロ』の爪が黒衣を切り裂けば、電と閃光が合わさり更にダメージを与える。
 繰り返される、ケルベロスと残火病の攻撃の最中、コスモの首を残火病が締めあげる。
 だが、低い声と香の香りが漂えば、コスモの苦しみも次第に止んでいく。
「巡り廻れ、癒しの力。捉え捕らえよ、敵方の姿」
 集中力をも研ぎ澄ませる、ゼルガディスの香の風。
 風に混じりて真琴奈の口から語られるは、古の逸話の再現。
「誘いを断ち、袂を分かつ。これは、その為の徽です」
 虚空から現れた呪印の刻まれた小隕石が、質量を持って残火病を押し潰す。
「本来の使い方だとお部屋を壊してしまうので……少々威力は落ちますが、でも……足止めには、これで十分です」
「火器管制システム、再アップデート完了……戦闘開始から……5分経過。残火病撃破可能……」
 ヒールドローンを飛ばしながらリティが宣言すれば、和奏がグラビティを込めた右足で床を蹴る。
「……塵さえ残さず、焼き尽くしてあげます」
 呟くと高速突撃で残火病に接近し、炎を纏わせたパイルバンカーを和奏は叩き込む。
「よっしゃあ! 俺の、俺たちの力、見せてやるぜええええ!!」
 コスモが叫ぶと彼の全身を光が包む。
 それはやがて一条の光の矢となる。
「スーパー青春大☆爆☆発フラッシュ!!」
 戦場が……いや、病室が光で満たされ、やがて光は収束した。
 その場には、残火病の存在した痕跡は一切無かった。
 道明の……戦場から離された、道明の首からは黒い手形の様な痣は、消えていた……。

●これからのこと
「ふむ……今回の件で彼が周りを頼る事というか、手持ちの仕事をより得意な誰かに割り振る事を覚えれば、今後の成長と活躍がとても楽しみかもしれんな」
 金の瞳に笑みの色を湛えゼルガディスが言えば、人機は学校に行けると喜んだ彼を思い出す。
 本当に嬉しそうだった……ただ『病み上がりが一番危ないんだよ? 俺達を信頼して病魔退治を手助けしてくれたんだから、今度は道明君が仲間を信頼する番だよ!』と告げるのは忘れなかったけれど。
「学校に行ったこと無いから、その分ミチアキクンには楽しんで欲しいんだよ」
 病院を返り見ながら呟いたマヒナの言葉が、現実になるのは一週間後のこと。
 仲間を信頼する生徒会長が笑顔で学校に戻ったのだった。

『ケルベロスへ通達』
『――残火病根絶完了――』

作者:陸野蛍 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2018年2月13日
難度:やや易
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 5/キャラが大事にされていた 0
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