●解放された市川駅
「皆さんのご活躍により、去年のバレンタイン以降から今までにも、以前はミッション地域となっていた多くの地域の奪還に成功しているてあります」
小檻・かけら(清霜ヘリオライダー・en0031)が、にこにこと楽しそうに説明を始める。
「それで、これらの取り戻した地域の復興も兼ねて、バレンタインのプレゼントを一緒に作りませんか?」
解放したミッション地域には住民がまず居ないのだが、引越しを考えている人などが下見に来ていたり、ミッション地域周辺の住民が見学に来る事は充分あるという。
「そんな一般の方にもご参加頂けるようなイベントにすれば、解放したミッション地域のイメージアップにもなるかと思うでありますよ♪」
かけらは笑顔で補足した。
「皆さんにヒールして頂きたい場所は、千葉県は市川市にある市川駅の周辺地域であります♪」
市川駅では、ずっとオークが勝手にアジトを作っていたせいで、地域住民は奴らの恐怖に脅かされ、避難を余儀なくされてきた。
「ですので、市川駅が無事に解放された事を記念して、皆で『ちょこれーとれいん』を作りましょう!!」
ちょこれーとれいん……トレインはtrain、即ち電車の形をしたチョコという事らしい。
電車型チョコにも色々あるが、簡単なのは直方体に作ったトリュフや生チョコ、チョコケーキへ、ペン型チョコで窓や扉をデコレーションする作り方だ。
拘る場合は、車輪用のチョコを別に作って埋め込んでも良いし、車両同士を連結させても良い。まるで玩具のように電車チョコを乗せる線路まで作ったら完璧だ。
「これからは安心して電車——ひいては女性専用車両にも乗れる! というのをチョコでアピールすれば、きっとお客さんがいっぱい来て下さいますよ♪」
自信を持って請け負うかけら。
「皆さんには、駅の構内や線路などをヒールで修復して頂いた後に、特設イベント会場にて電車型チョコ作りを楽しんで頂けたらと思います」
ちょこれーとれいん作りのモデルとして使える電車の模型や写真集も、イベント会場に沢山用意してあるそうだ。
勿論、バレンタイン用のチョコならば、電車型チョコ以外でも好きに作って構わない。
「それでは、皆さんのご参加を楽しみにお待ち致しております。素敵なバレンタインのプレゼントができますように♪」
注意事項は未成年者の飲酒喫煙の禁止のみである。
●七彩甘味
パラディオンであるゲリンは、『スカイクリーパー』の唄を歌って、市川市の街中をヒールして回っていた。
純白に輝く光の翼3対と橙水晶の瞳が特徴的な、ヴァルキュリアの青年。
言動が幼く、落ち着きのないせいか翼を羽ばたかせ飛び回って、壁や人にぶつかるのも日常茶飯事だそうな。
「街中チョコレートだらけになったらおもしろいなー! チョコ町!」
天真爛漫な彼らしい発想だが、実際、駅の一部は美味しそうなチョコレート色になっている。
藁葺きならぬ板チョコを葺いた屋根、可愛らしいストロベリーチョコで飾られた掲示板、ソーダ味のゼリーが薄く巡らされた仕切り板……。
もっとも、幾ら幻想が混じろうと幸いにもチョコがけ屋根は見た目だけで、夏の酷暑だろうとドロドロに溶けはしないのが救いか。
「さーて、ヒールの後は、電車型チョコ作りだ!」
まるでお菓子の家が現実になったような改札口を満足そうに眺めてから、ゲリンはイベントの為に用意された調理場へと向かった。
「えーっと、最初はホワイトチョコレートの板で車体を作ってー」
丁寧にホワイトチョコを湯煎で溶かし、冷蔵庫に入れて程良く冷え固まらせるゲリン。
滑らかな表面かつ、まだ固まり切っていない車体へは、
「銀のアラザンと、オレンジピールをたくさんくっつけてー」
楽しそうに飾りつけを施した。
「あとは……」
加えて、車両の頭にペン型チョコを使って恋人の名前と自分の名前を書きつける。
「できあがりっ! 女の子にも優しいボクのちょこれーとれいん!」
ゲリン自身のイメージにも当て嵌まる、明るく賑やかな見た目の車両型チョコを眺めて、
「気に入るといいなあ!」
ゲリンが思い浮かべるのは、美しい金髪を持った恋人の顔だった。
「電車のチョコを作るのだな!」
元気にチョコ作りへ取り組むのはパティ。
「くふふっ、たくさんお菓子が食べたいので長い電車を作るのだ!」
元よりお菓子が大好きなパティにとって、今回のバレンタインイベントは殊更嬉しいものに違いない。
「長い電車って何だろう……」
ふと疑問に思ったパティは、早速電車の図鑑で調べたり、携帯電話のブラウザを使って検索を試みる。
「ふむふむ、コレにするのだ♪」
すぐに27両編成の貨物列車を見つけて、パティは瞳を輝かせた。
それでも昔の話や海外にまで目を向けるなら、驚異の66両編成や100両超え、更に上を行く304両編成なる貨物列車もあるらしいが。
流石に1日仕事としても完成まで何日かかるか判らない為に、今回は国内線を走る列車限定として候補からは除外した。
ともあれ、並々ならぬ気合いを滾らせて、26両もの貨物列車チョコを完成させたパティ。
「かけらー! 協力をよーせーしたいのだ♪ お願いなのだ!」
と、かけらを手招きするや、チョコレートでできた貨物台の蓋を、ぱかっと外してみせた。
「わぁ凄い、本物みたいに物を積めるのでありますね」
「実は貨物台が全部、空なのだ!」
1台は普通にマーブルチョコにしようと思うのだ。でも、他の貨物に積むお菓子が無いのだ♪
「だからお菓子ぷりーずなのだ♪」
パティは満面の笑みを浮かべて、貨物に載せるお菓子をせがんだ。
「今持ってるお菓子……あ、これなら」
かけらが貨物台へざらざらと入れたのは、コーヒー豆を包んだビターチョコとホワイトチョコ。
「ふむ、わしはひと口サイズのマシュマロを詰めてあげようかのう」
「……じゃあ俺はジンジャークッキーでも」
ガイバーンと衣もお菓子をカンパしてくれた。
「2人ともホワイトデーの先取りでありますか?」
「そうか。キャンディも追加してやろう」
「ありがとなのだー♪」
かくて、パティはお菓子でいっぱいになった貨物列車チョコを地元の子ども達に振る舞って、一緒に楽しく食べる事にした。
「ああ!? その貨物に乗ってるのはパティが食べようと!?」
大きなジンジャークッキーを子どもに横取りされて、パティが悲鳴を上げる様からも、楽しそうな空気が伝わってくる。
●力と猫
「チョコと列車か! つまり大いなる高みへと押し上げる為の列車という事だな!」
キラキラと瞳を輝かせて、ちょこれーとれいん作りに取り掛かるのは絶華。
駅構内のヒールは分身の術で恙なく済ませた、螺旋忍者の少年だ。
もはや趣味と言えるぐらいに料理好きだが、何故か栄養価だけを重視する為、ないがしろにされた味へ耐えられる者は決して多くない。
しかし本人の認識としては、地獄への片道切符になりかねない物を作ってる自覚など皆無であるから、全くもってタチが悪かった。
ちなみに好きな調味料は漢方薬。好きな食材はカカオ1000%濃縮チョコレート。
「ほう、絶華はまた、対ビルシャナ用のグラビティでも苦心しているのかのう? 感心感心」
それ故、通りすがったガイバーンが絶華の手元を眺めてそう勘違いするのも無理はないのだ。
「ビルシャナ? デウスエクスにはちょっと毒なだけだろうきっと多分」
しれっと嘯く絶華は、例のカカオを1000%に極限濃縮したチョコの塊を用いて極めて精巧に漆黒の列車をガリガリと彫り進めていく。
ただでさえカカオが圧縮されただけでも耐え難い苦味を湛えているのに、そこへパワー系の漢方薬をこれでもかと混ぜ込んだのだから、もはや味の想像もつかない悪魔の物体の完成。
てらてらと黒く輝く恐るべき列車チョコと化していた。
「……一体どうしてチョコレートと漢方薬を混ぜようと思ったのじゃ……」
「ん? チョコと漢方の組み合わせはおかしいか? ……知っているかガイバーン? 漢方薬用のゼリーオブラートってチョコ味なんだぞ」
それは漢方薬の風味を消し去る為の方策であり、決して両方の味を同時に楽しむ訳ではないのだが。
「…………」
今までにも絶華のお手製スイーツを何度か食べているガイバーンに、わざわざツッコミを入れる勇気はなかった。
「つまりチョコと漢方のパワーが合わさり無敵だ」
そう信じてやまない絶華は、意気揚々と黒列車チョコを配り始める。
「……人間の食べる物では無いのじゃ……げふっ」
「カカオは究極の滋養強壮だ。故に皆疲れてるのだろう」
いの一番に食べさせられたガイバーンが地面に沈むのを見ても、ポジティブな勘違いをする絶華だ。
「列車チョコか……面白い事考えるわよね」
フレックは、手際よくチョコをレンジで加熱し、列車の車両型へせっせと流し込んでいく。
「バレンタインはあたしらヴァルキュリアが定命化した記念の日でもあるのだし……」
何両でも連結できるよう多めに用意した型それぞれへ、違う種類のチョコを注ぐ辺り、フレックの信念が垣間見える。
「それなら……なら皆に恩返しもありよね」
ホワイトチョコや抹茶チョコと言ったいかにも列車らしい色のチョコ以外にも、ミルクチョコにビターなカカオ70%含有チョコなど手間を惜しまず溶かす辺り、フレックは調理過程をも楽しめる真の料理好きなのだろう。
更には成人用にウィスキーボンボンを入れた『大人チョコ』を作る気配りも忘れなかった。
「基本は、皆でおいしく食べられるようにね」
それこそが、フレックの手料理を振る舞う際におけるポリシーであろう。
「折角連結できるなら、こういう風にバリエーション豊かにすると、色々と楽しめていいわよね」
しかも、相当な凝り性の彼女だから、製作は車両だけに留まらない。
「うん、綺麗に固まってくれたわ」
と、大型冷蔵庫へ予め線路チョコも冷やしていた。
流石に長いまま冷やすのはいかに大型でも入りきらない為、幾つかのパーツに分けて作ったのだが。
「これ、色の濃いチョコから順番に繋げたら、グラデーションみたいになって綺麗かもね」
予想外の楽しみ方も発見して、大満足のフレックである。
ちなみに、列車チョコの中にはカカオ薄めの甘いきなこチョコを使った猫型列車もあって。
「はい、ガイバーン。さっきは大変だったわね」
「うぅ、いつもすまないねぇ……なのじゃ。かたじけない」
未だカカオ1000%の圧倒的パワーチョコから立ち直れないガイバーン用に、フレックは用意してくれた。
●乳と帝王の旅路
「今回もチョコレート作りですね」
「あいっ、今回は真面目なチョコレート作りであります♪」
「前回は真面目じゃなかったんですね……」
奏星は駅構内のヒールを終えてから、かけらを誘って調理場へやってきた。
「形がトレインなので少し大きめになるかもですが、頑張って作りましょうか」
お菓子作りが趣味なだけに、奏星は慣れた手つきでビターチョコを湯煎、溶かしたものを型へ流し込んで冷蔵庫へ収める。
「今のが?」
「トレインのボディですね。程よく固まったら窓や車輪、ランプを嵌めていきましょう」
「ランプも! 凄いでありますね、かけらランプの存在すっかり忘れてたでありますよ~」
ランプの部分はホワイトチョコを用いて、窓枠はストロベリーチョコを使った。
ビターチョコへそれらを嵌めると、想像以上に大人っぽい雰囲気に仕上がった。
最後は、屋根の部分に抹茶チョコの粉末を振り掛ければ完成である。
「かけらさんの方はどんな感じでしょうか?」
「ええ、何とかできたでありますよ。今回も奏星殿の手際の良さを観察しつつ、真似る努力をしました故!」
かけらが作ったのは、ホワイトチョコとストロベリーチョコの線路だった。
「奏星殿の電車を走らせてあげようと思いまして♪」
「ふふ、では今回もよかったら食べ比べしましょうか」
「喜んで」
「フォークで食べさせ合うのもいいかもですね」
「あ~ん、って? じゃあ、あ~ん♪」
線路の一部をフォークで掬って、奏星の口元へ差し出そうと前傾姿勢になるかけら。
「あ」
「きゃっ!?」
すると、何を思ったか奏星は、目の前で揺れるかけらの下乳を両手で受け止めるように持ち上げた。
「お胸が線路チョコについてしまいそうでしたよ」
「あ……ありがとございます、うっかりしてました」
むにむにむにむに。
「あ……あの、奏星殿? そんなに揉まれると恥ずかしい……」
電車チョコや線路チョコよりも先にまさか食べられてしまわないかと、顔を赤くするかけらだった。
「電車かぁ……俺、乗り物にはそれほど造詣深くないんだよなぁ……」
ルイスは珍しく頭を悩ませていた。
「線路引っ張って模型を走らせるのは楽しそうだけど、姉貴の部屋まで線路を引いて、爆竹乗せたちょこれーとれいんを『無人在来線爆弾』っつーて突撃させるくらいしか思いつかねーわ……」
特に冗談のつもりでもないのか、真顔で呟くルイスの後ろから、
「わざわざ市川まで来て、なんでヒールそっちのけでお姉ちゃん倒す作戦練ってんだよ!!!」
マリオンの怒号が飛んでくるのは、もはや日常の光景と化していた。
「お姉ちゃん倒してどうすんだ!!! 意味分かんない事すんな!!」
前世で私に親でも殺されたんですかね……、と青筋を立てるマリオン。
「アホかお前は!! 知ってたけど!!!」
ゴゴゴゴゴ——と地響きでも起こしそうな雰囲気で激怒するのだが、ルイスはちっとも聞いていない。これもいつもの事だった。
「うむうむ、今日もマリオンは元気じゃのう。わしゃぁあの怒声を月に一度は聞かないと安眠できる気がせんでのう」
「ほんとでありますねぇ。今日もご姉弟仲が麗しくて何よりでありますよ♪」
そして、密かにガイバーンとかけらが見世物と勘違いしているのも定番となりつつある。
「一応フィギュア作る要領で設計図描いてみっかなー……」
ともあれ、外界の一切を自分の中から遮断して、マイペースにパソコンへ向かい始めるルイス。
「……これ、火薬量によっては、えげつない破壊力が出るな……」
ふと洩らした呟きの不穏さは、実際マリオンの平衡感覚を奪うには充分な破壊力であった。
「全く、油断も隙も……オォオオイ!?? なに火薬量の計算してるんだよ!!!」
それでも我が身が危険に晒されているのだから、マリオンは目眩を我慢してでも怒鳴らなければならない。
「部屋吹っ飛ぶだろ! あそこ借家なんだよ! バカな真似はやめろ!!」
ただ、ケルベロス故にグラビティでさえなければ死なない自分を差し置いて、真っ先に部屋の心配をしてしまうのが哀しい。
「……ちょっと真面目に計算してみるか……」
そして黙々と作業に没頭するルイスの耳には届かないのが切ない。
「……しかしBGMがうるせぇな……」
届いたところでそれぐらいにしか思わないのだが。
「……ほんとこんなポンコツ拾うんじゃなかった……」
がっくりマリオンは項垂れた。胃がシクシク痛むのも気のせいではあるまい。
「元居た場所に戻して来ようとしたら、『拾ってきたときにちゃんと面倒見ますってゆったでしょ? 最後まで責任もって育てなさい!』って怒られるし……」
『ララティア乳業・ケルブレ支店』旅団長の口ぶりを真似して、溜め息をつく。
「団長とはいえ、9歳児に割とガチで説教される私って……トホホ……」
勉強を断固拒否して未だ足し算すら危ういと評判の幼女に説教されたら、確かに落ち込みたくもなるだろう。
さて、マリオンが怒り疲れて落胆する一方。
「……ダメージ塗装を施して抹茶パウダーを散らしたら、思いのほか味わいのある作品になってしまった。さすが俺」
ルイスは、試作した電車型チョコを前に鼻高々だった。
「遺構に残された廃電車をイメージして、細部を作り込んでみるか……」
ますますやる気を出して改良に取り掛かると、
「わぁ、レトロな雰囲気の電車……暗黒街の帝王の一人旅を彩るにはぴったりでありますね」
「うむ、人生の頂から転落して己を見つめ直そうとする帝王の侘しさをよく表しているのう」
何故だか一部からは大好評を博した。
●一年ぶりの再訪
「ここを解放してからもう1年近くになるな」
柚月は感慨深く呟きながら、市川市の街並みを丹念にヒールしていく。
「こうして無事イベントが開催されるくらいまで復興したのは、ケルベロスはもちろん、地元の人たちの努力もあってこそだ」
元より真面目な性格の柚月だから、地元を追われていた一般人の苦労を慮って、彼らに深い感謝の念を抱く。
「……決して自分達だけの成果とは思わないけど、己の手で魔空回廊をバリアごと破壊出来たと思うと、やっぱり気分の良いものだね」
微かに明るい声で柚月が語りかければ、
「そうですね。オークに悩まされていた人たちをお助けできたのですから、本当に良かったと思います」
イピナも、花のような笑顔を見せて頷いた。
だが。
「……オーク……」
市川駅で相見えた種族の名をもう一度口にするや、見る見るうちに顔色を失うイピナ。
かの魔空回廊を破壊した後、バリアの重圧を感じる事なくグラディウスの生み続ける爆炎の中を歩き出して、そして。
触手のぬめりが5パーセント増しだと自称するオークアサシンに、嫌らしい目で睨め付けられた挙句、触手で嬲られかけたのだ。
幸い、仲間が庇ってくれたお陰で、肉慾溢れた触手の餌食にはならずに済んだイピナだが。
(「……さっさと気持ちを切り替えましょう」)
突き出された触手を間近に見ただけでも、拭えぬ嫌悪感に当時は全身を震わせたものだ。
「この駅を訪れる人、この駅から旅立つ人。みんなが自然な笑顔でいられるようになるといいですね」
何とか気持ちを切り替えたイピナは、市川駅の未来について思いを馳せる。
ともあれ、ちょこれーとれいん作りである。
「少し派手すぎでしょうか……柚月さんはどう思いますか?」
イピナが冷蔵庫から取り出したのは、オレンジピール入りのマーマレードを混ぜた、鮮やかなマーブル模様が目を引くホワイトチョコ。
「年に一度のお祭りだ。派手なくらいが丁度いいさ」
そう励ました柚月は、少し小さめの車両をたくさん作っている。
と言うのも、渡す相手によって味・色合い・雰囲気などに変化をつけ、相手のイメージのチョコを贈りたいと思い立ったからだ。
(「いつも世話になっている人たちへのお礼の意味で……」)
少しでも感謝の気持ちが伝われば、とまずは土台をなる車体の色を拘る柚月。
上半分をビターチョコ、下半分をバナナチョコ、車窓はホイップクリーム、車輪をストロベリーチョコにして、プリンアラモード風。
また、ストロベリーチョコの車体に漉し餡の車窓、抹茶チョコの車輪をつけて桜餅風などなど。
「普段伝える機会がないんで、こういうところで少しは頑張っておかないとな」
一方のイピナは、それを見た誰もが明るい気分になれるような、色とりどりのデコレーションをホワイトチョコの車体に施していく。
車輪は色味が浮かないようにブロンドチョコを使い、車窓へは敢えて濃い抹茶チョコをひとつひとつ埋め込んで。
更にその上から、パステルカラーのアラザンをふんだんに散りばめて、カラフルながらも派手過ぎないファンシーな見た目に仕上げた。
旅団の仲間達や、いつもお世話になっている人々へ喜んで貰いたいと、味にもデザインにも心を砕いたのがよく判る出来栄えだ。
「皆さん、よろこんでくれるでしょうか」
まるで宝石みたいに華々しくも可愛らしい電車型チョコを見やって、微かな不安を滲ませるイピナ。
「心を込めて作ったものだ、ちゃんと相手に伝わるよ」
柚月は、そんな彼女を励ますべく、クールな表情と裏腹に優しく請け負った。
作者:質種剰 |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2018年2月13日
難度:易しい
参加:9人
結果:成功!
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