●ヒーリングバレンタイン2018
岡山県倉敷市――そこはつい先日までデウスエクスに占領されていたがケルベロス達が奪還した場所だ。
取り戻した地域はいくつもあり、その場所の復興も兼ねてバレンタインのチョコレート作りのイベントが企画される。
「と、毎年お馴染みになってきたイベントが今年もやってきました」
夜浪・イチ(蘇芳のヘリオライダー・en0047)は今年は岡山県倉敷市で行うと告げた。
倉敷市はかつての町並みの保全している地区がある。それからいくつかの美術館等もあり観光客も多く訪れる場所だ。
「ヒールをお願いしたいのはある公民館なんだ。美観地区付近だから、観光客とかも近くを通ったりすると思うんだよね」
公民館はデウスエクスの襲撃により荒れている。そこをヒールしてチョコを作るイベントをしようとイチは続けた。
「今年はね! 生チョコでどうかなと思うのよ」
でもただの生チョコじゃないのよとザザ・コドラ(鴇色・en0050)は言う。
「私は飲めないけど……地酒があるらしいのよ。だからそれを加えてお酒香るチョコとかどうかなって思って。お酒に限らず、好きな香りを加える感じの!」
と、提案したザザは材料の生クリームを温めるときに、紅茶の茶葉を加えれば紅茶の香りも加わるしと言う。
つまり、生チョコを作る工程の途中で、紅茶の茶葉や酒などをちょっと加えて作るという事なのだ。
「基本的な材料はこっちで用意するね」
「うんうん。私はキャラメルとチョコの香りついたアッサムにしようかなぁ。濃いめにしてしっかり味も出したいし」
「それじゃあ俺は、周囲の地酒をちょっとずつ提供してもらえるようにお願いしておくかなぁ」
もちろん、未成年はそれらを飲むことはできない。が、大人は味見と称してちょっと試してみるのもいいかもねとイチは笑う。
手慣れた人は、もちろん生チョコからアレンジして、トリュフや、周囲をチョコレートでさらにコーティングしたり。できる範囲で自由にアレンジして大丈夫だと続けた。
「お酒のチョコは大人の楽しみよね……香りづけ程度なら私も大丈夫よね」
ザザは皆で楽しみながら、作りましょうねと言う。
大切な人に想いを伝えるために、心こめて。
●想い込めて
ホテル客のウェルカムスイーツに、とマクスウェルは多めに作れるように色々と用意を。
酒はまだ飲めないけれど、その香りだけでも気持ちが沸き立つと光咲は笑う。
生クリームに柚皮の砂糖漬け。チョコと混じれば柑橘香る生チョコだ。
「生チョコ作りはあんまりやったことないな。頑張ろう」
那岐は瑠璃と一緒に和チョコに挑戦。餡子を入れたり柚を入れたり。
那岐の危なっかしさもだいぶん軽減されたなと思いつつ瑠璃は自分の作業に集中。
そうして作っていると皆のも気になって。
「味見していいですか?」
「おぅ、こっちのは酒入ってねぇぜ」
差し出されたマクスウェルのをひとくち。
ロジオンはミルクチョコに重厚な味の赤ワイン。ビターチョコにはフレッシュな白ワインを合わせていく。
それを見てマクスウェルは。
「どっちも高そーなワインだな」
「ワインは家のセラーから持ってまいりました、あとで味見されます?」
味見できんなら、ぜひと興味津々だ。
リィンは自分で作るのは初めてと言って。
ビターチョコにすり潰したペパーミントのクラッキングキャンディを。そこにライム果汁も加えてノンアルコールモヒート風に。
そのキャンディは炭酸をイメージしてのもの。
「リィンちゃんと光咲ちゃんのよさそうよねー、アイディアもらってもいーい?」
「ああ、皆が喜んでくれるなら大歓迎だ」
「よければ使って、材料は少し余裕をもって用意してきたわよ」
天音の言葉に二人はもちろんと頷き、天音はありがとと言ってうちの店の子達もきっと喜んでくれるわと笑む。
地酒のチョコ、ワインやウイスキーも行けそうと天音はうきうきと作業を続けた。
「彩瑠さん、上機嫌だな。中々楽しそうな組み合わせじゃん」
「まーくんのウーロンハイもおっしゃれー♪」
そんな会話を皆でしつつ。
あとの試食もお楽しみ。
「ところで……記。それ、分量多すぎじゃねぇか?」
「だって沢山作って沢山味見したいじゃないですか。美味しい物はみんなのために」
チョコは特に自分のために! って言いません? と記は笑む。
それならば、作るしかない。
スマホ片手にレシピ見つつ、ミルクティチョコを。
「ルリカはどんな風味付けに――と、柚ピールとは洒落てんな」
「柚ピール刻んでまぶしたら相性よさそうだと思うんだ」
香りづけはお酒。けどメインは紅茶とルリカは作業を。
ヒコは皆のを見様見真似でチョコを作る。
「おっと、サヤ」
つまみ食いは程々にしねぇと無くなっちまうぞとヒコが笑う。
「……な、なくなるほど食べませんよう、だいじょうぶですよ」
と、味見の一口をしていたサヤはその手を止める。
その隣、ちょっとお腹すいてるしと一緒につまみ食いをしていたルリカも。
「えへへ、許してね☆」
甘さは控えめに、大人っぽく、香りは華やかに広がるお酒。
「ヒコさんはやっぱりお酒に合うチョコ作りかな?」
それは食べる時迄のお楽しみとヒコが告げると記は。
「あら、ヒコさんは秘密のチョコなの? 乙女ですね!」
「――……ゴホン、乙女かどうかは兎も角!」
さて、出来上がったら本番前の茶会の始まり。
ルリカがチョコ作りと並行して用意していた飲み物も一緒に。
初めての、ということでヴィクトリカは。
「アリッサム殿と由佳殿はどのようなものを作るのかの……?」
とちらっと見つつ、ホワイトチョコでトリュフを。
「私はひとつ、思い浮かんだことがありまして」
そう言ってアリッサムは紅茶とホワイトチョコでロイヤルミルクティーのような生チョコを作る。
「ゆかはフルーツの香りをつけて、チョコの中にドライフルーツを入れて固めようかしら」
由佳は、二人はどんな香りを付けたのかしらと興味もある。
ちょっと難しくはあるけれど模様をつけ完成し一つ味見。
「ふむ……初めてにしては上出来かの?」
と、味見するのは同じタイミング。
あとは出来上がったものをラッピングしてプレゼント。
感謝の気持ちとこれからもよろしくをこめて。
「イチ、甘やかして貰いに来たわよ!」
と、香り選びながら軽口かわし、けれどとオルテンシアはカトルを抱え上げ、イチに渡す。
「やっぱり私を甘やかす前にカトルをお願い」
足元で跳ね回られると危なくて、と笑う。
無難なブランデーと折角だから地酒。
味見をして作り上げた少々いびつな石畳。
「さあふたりとも、出来立ての栄誉よ」
「その栄誉は俺が甘やかされてる感もあるけど、ありがたく」
笑いながら口に運んだその味は満足いくもの。
折角成人したのだからと今日はお酒で。
一緒に作るのは楽しくて、話も弾む。手際の良さに感心しつつ、エフレムは瞳細め。
「貴女の故郷の料理なども是非口にしてみたいものだ。……ふふ、」
「――私の? お口に合うか分かりませんが腕を振るって作りますね」
そう言って、ふと思いつき、レミリアはエフレムの袖をひっぱって口を開ける。
それは食べさせての意思表示。
「――貴女からのお願いなら、いつでも」
愛おしさを滲ませてエフレムはその唇にそっとチョコを寄せる。
「あぽろさん、上手!」
私も頑張らなきゃとロゼは笑み零し、苺入りの白チョコとほろ苦いチョコを。
作りながら思い浮かべるのは大好きな彼の笑顔。
あぽろも、大好きな、いつも無表情なアイツの顔を思い浮かべて。
そして二人で出来上がったチョコを前に。
「ロゼのチョコは……やっぱり凄い出来、美味そうだ!」
そう言ってアポロはチョコをお裾分けとその口に。
そのお裾分けに、お返し。
チョコを一つ口に放り込みあえば甘く蕩ける味。
「やっぱりこの地酒の豊かな香りが一番合いそうですね。フローネはどう思います?」
酒に強いミチェーリは香り付けの酒を飲み比べ。それは使う酒を選んでいるのだ。
その間にフローネは下ごしらえを完了して差し出されたそれを少し味見。
「ではちょっとだけ……うん、いい香り。チョコレートに合いそう。ふふ、流石ミチェーリ」
それから、続きの作業を二人で。
料理はあまり得意ではないけれど、製薬に通じるような気がする。
メイザースはアールグレイと、それから地酒のチョコも。
その地酒をちょっと味見。
好みとか相性もあるのだから、それは不可欠な事だ。
「うん、上出来上出来」
これと言って送る相手はいないが、せっかくだから日頃の感謝を込めて旅団の皆でと。
それに興味を示すキルケに駄目だよと笑う。
あとでにぼしを約束して。
「つづるん、知ってる? バニラはむかし惚れ薬として使われてたらしいよ」
「知らないけど、知りたくなかった知識なんだけど」
ふふーと無邪気に微笑む棗に綴は瞳細めてみせる。
そして真剣な顔でせっせと。
出来上がりも間近、棗がその手元覗き込めば市松模様のように並ぶチョコ。
「おいしそう! ……じゅるり。いま食べちゃだめ?」
「駄目。当日までおあずけだよ」
「俺のは見せてあげないよっ」
当日のお楽しみ! と笑う棗にその時は珈琲入れてねと綴はため息交じりの返事の後に小さく笑む。
「なあ、兎夜。兎夜はどんなの作っているんだ?」
気になってベルンハルトは味見をおねだり。
兎夜は二種類のチョコを作っていた。
「ん、食べてみるかい?」
「ん~、ほんのり苦くて……美味しいな」
端の不揃いなものを口に運べばぱくりと。
その様子に苦いの平気だったかと兎夜は苦笑する。
兎夜は料理も上手だなぁとベルンハルトは思う。
そしてこういうのも楽しいと笑みを。
最愛の旦那様への贈物。
彼が喜んでくれる美味しいチョコをとリリアは地酒を使う。
愛情たっぷりのチョコができるはずと自然と笑顔に。
そして出来上がった後には紅茶の香りのものも。
それをひとつ、口に運べば笑みが零れる。
「これはわたしの分、なんて。うふふ!」
それは自分の分。たくさんできたら、友達へのお土産にも。
まだ時間はある、他にも紅茶の香りを試しつつ、リリアはチョコを作る。
楽しみのためにお互いの手元はあまり見ず。
泪生の好きな味はなんだろうと考えながら黎和は手を動かす。
アッサムの香りに、白ワインの深み。
泪生は甘くてふわっとした口溶けにしたくてマシュマロ並べて。 チョコを流しアーモンドスライス、仕上げに苺のハート。
「できた?」
「うん!」
これからの大好きも沢山込めた泪生。
黎和はこれからも一緒に居られるように。
それから沢山の感謝を込めて。
一昨年と去年でチョコ作りのコツも掴めてきたし、生チョコに挑戦とカナネは気合をいれ。
「ドルフィンくん喜んでくれるかしら? ちょっと大人なチョコで雰囲気づくり、良いわよね! もちろんその後は私の事も……なんてね!」
と、想い馳せながら本命はお酒入り、友達用にはキャラメルを作っていく。
皆は誰に贈るのか、そんな話を聞きつつ。
味見係のつもりが、と言いつつもユタカもレオンと一緒に。
レオンはミルクチョコ。ユタカはホワイトチョコを柑橘系の酒にあわせて。
「ほら、色がレオン殿っぽいし」
そう言いながらちょっとつまみ食いすれば。
「………調理前のを食べるのはルール違反ではないかと思うんだけど」
「……あっ、バレた! えへへ、レオン殿もいりまするか? はいあーん!」
それをレオンはもらいつつ。
「あとで出来上がったのも、おんなじように食べさせてほしいね?」
貴女の紡ぐ言葉と歌を愛する一ファンとして――けれど、口が裂けてもそう打ち明けるのはと志輝は思う。
一緒につくりながら、渡す時まで相手は内緒に。
「……あ、固めたりする加減にはお気をつけて。生クリームなどの分量は見ておきますから」
その言葉にイブはありがとうと笑む。
折角だから誘ってくれた志輝の為に。
きみにあげる、って言ったらどんな顔をするんだろうね――楽しみだ、とイブは出来上がった生チョコを見て思う。
それはレモン風味の白い生チョコ。
ジエロのほっぺたを落としてみせましょう……! とクィルは抹茶風味のチョコを。
張り切っている様子に可愛らしいなあとジエロは笑む。
クィルはできあがった物にもパウダーを散らせば。
「ふふふ。見た目は凄く美味しそうにできました」
それをひとつ摘まんでひとくち味見、とジエロの口元へ。
それを断るはずなく食べて。
「ん、おいしい」
素直な感想一つ零し、私の分は後のお楽しみとジエロは笑う。
地酒。それを味見と占は口にすれば笑み零れる。
「少しだけですよ、シメル……ああ、たしかに抜ける香りが心地よい」
けれど引き込んでしまえと勧めればその尻尾は揺れて占はニヤリとする。
「悪くないねぇ、さぞ好い香になるだろう」「占さんとダルさんと、お酒の違いも楽しめそうですねぇ」
その香りに気付いてルリは笑む。
その手にはできたばかりのキャラメル。
「レターレさんは紅茶を使うのですね」
「ふふ、ボクも酒だと思ったかい?」
酔い潰れては示しが付かないからねとレターレは笑い、これでいいかいとルリの手ほどきを受ける。
「ハジメは上手ですね」
「え、上手でしたか? いやいや、先生の教え方がよかったんです」
型に流してほっと一息ついていた弌はその言葉に笑む。
私はどうにも……とダルタニアンは言って。
「剣を振るうよりも大変です。ルリの手は小さくとも素晴らしいですね」
「皆さんとってもお上手ですよ♪」
笑みながら作って。
後の試食は皆でのお楽しみだ。
作業に集中していると、不意に後ろからの温もり。
甘えん坊な旦那様、冬真が可愛くて微笑みを向ける。
「……味見したいな」
その我儘にしょうがないなぁと有理は一かけ掬って。
「召し上がれ」
それは蕩けるような香りを纏う甘さ。
「病みつきになるくらい美味しい」
笑顔浮かべ、もっと欲しくなるけれどもう少しだけの我慢。
出来上がればチョコも、甘い時間も全部ふたりのもの。
出来上がった最初の一粒をアイヴォリーは掴んで、朝希の唇へ。
「……お、おたわむれをー」
「ふふふ、無駄な抵抗ですよ。この美味の前には忽ち降伏してしまう筈。朝希の為の特別製ですもの!」
気まぐれか本性か。気恥ずかしく思いつつ味わった金色の芳醇さ。
次はこちらと、さあさあ早くと開いた口に飛び込んだ不格好なトリュフはつめたい口どけのミントがナッシュ。
そこでふと、相対して今更気付いたのは、とうにこされた背。
まだ、何にも気付かないふりで舌に蕩ける青い甘さ――いとけない少年の貴方をあと少しだけ、と。
その表情に、長く過ごしてきたけれど、変わらないなぁ、と朝希は思い笑むのだ。
彼女の、蕾のようなあどけなさを。
大好きな人のための生チョコ作り。
チョコが程よく溶けた頃、紺はお酒を投入。
思いの外際立つ香りにクラクラしそうになるが味は上出来。
形を作ったチョコの半分は粉糖を。もう半分にはココア。
出来上がればラッピングして赤いリボン。
想像以上の出来に思わず嬉しくなってザザにお披露目しに。
自分用に作ったダージリン香る生チョコをお裾分け。
「えっめめさん作んねえの」
哭の言葉にメィメは。
「おれは食う専兼貰う専だから作らねえよ」
と、言いつつも準備や洗い物は手伝いを。
その礼はうまいもんで頼むと言いながら。
「メスさばきなら任せて……」
と、揮おうとするナユタの手から奪って、包丁渡す。
「んん、チョコ作んのにチョコ溶かすの?」
横から見様見真似。
哭が作るのは杏のチョコ。
「男性は、少し苦くても好みのうちでしょうか?」
ホワイトチョコを溶かし抹茶と豆乳を加えお酒を。
景は久しぶりながら手際よく進みほっとする。
そんな、皆の様子を真似してこよりはオーソドックスな生チョコを。
こんこん、とんとんとこよりがたてる音に合わせてベルスーズも刻む。
レシピ通りならちゃんと作れるはずと意気込んで。
「かおり ある! こより は ココア!」
そして最後にココア。
買う派のロビンは、むしろもらいたい派。
けれどみんなで一緒につくるのも、楽しい。
「砕いて、……こっちは鍋にかけるの?」
あっ、えっ、わっ、とロビンの声が零れる。
「……ロ、ロビンさん、大丈夫?」
もう一度、ゆっくり作ってみましょうかと息吹が助け船を。
そこへアーリャも、ロビンにはがんばりましたシールをあげるのと。
「沢山出来てしまっても、形が歪でも全部メィメさんが責任持って食べてくださるから、平気よ」
「そうそう、いっぱいになってもきっと大丈夫なのよ。甘いものはベツバラというもの」
うんうんと、息吹の言葉にアーリャも頷く。
「おれの腹の耐久を確認すんのやめろ」
「もしお腹を壊したら、治療、承りますね」
そう言って景は応援。
治療を前提にすんなとメィメは返す。
笑いながら息吹も自分のチョコをに紅茶、フレーバーティーでの香り付け。
「さきほどあちらでこんなのをいただいて来ました! はちみつのパウダーの入ったお紅茶だそうですよー」
あまくておいしそーなにおいがしますとナユタはそれをチョコに。
出来上がりつつあるチョコの姿。
すんと皆がつけた香りを感じメィメは鼻をうごめかせ。
「杏、木苺、紅茶に果物、抹茶、甘さにほろ苦さ……所謂恋の味」
「あら。恋の味だなんて、素敵ね」
どれが誰のかは見失いそうにないけどと哭は笑う。
「みんな甘い好き? 甘い嫌い? 嫌い は 苦くする!」
みんなのチョコを見せてもらいつつ、こよりは自分のもみてみて! と差し出す。
「甘いチョコも、苦いチョコもすきなのよ」
こよりに笑いかけるアーリャの手にはきらきらきらめく宝石箱のようなチョコ。
香りも形も、それぞれの個性。
人となりが出るのも面白いですねとベルスーズは笑う。
誰かに美味しいと言って貰えれば――嬉しい。
恋はまだわからないけれど、きっとこういう気持ちですね、と。
●おしゃべりと試食
なにはともあれ食べてみるべしと口へ。
「んー……? なんじゃろう、確かにチョコなんじゃが、不思議なお味なのじゃ」
けれど、結構癖になる。
普通のチョコよりすきかもとひょいひょいと早苗は口に運ぶ。
「あー、早苗? 一応酒が入ってるからそんなにパクパク食うと……」
「ん? なーに、入ってるって言っても香り付け程度なのじゃろう、へーきへーき!」
その言い分は悪酔いする奴の言い分で、と思う者のルルドはまぁ良いかと零す。
美味しそうに食べているし、最悪自分もいるのだからと。
そわそわと動く耳と尻尾。
つかさがくすりと零した笑いにレイヴンは何だと言う視線を向ければ。
「いや、そわそわして可愛いもんだと思ってな?」
「み、耳が……!?」
その様子にまた笑い零し、貰ったチョコを食べれば、使うか迷っていたものの香り。
レイヴンはじーっと地酒入りチョコを見ているミュゲに真っ赤になってぱたん、ってしても知らないぞと紡ぐ。
帰りに地酒を買って帰らないかと、相談しつつ互いのチョコの試食は続く。
地酒の生チョコを作りたかった。
むしろ、飲みたかったとアリシスフェイルは思いつつ。
口どけなめらかな生チョコを口に。
「熾月は誰にあげるの?」
「俺は家族みたいに大事な子と、今日は家でお留守番してる子達にあげるつもりだよ」
でも、今日のは今日で交換会しよ、と熾月が言うと。
「交換会!」
シェアすれば色々味わえる。
素敵だわとアリシスフェイルは笑って。
「あとねあとね、地酒のもいっこあげる。ナイショだよ?」
「えへへ、ナイショ、だね」
人差し指一本、唇の上においてのナイショ。
マスカット果汁加えた生ホワイトチョコとピオーネ果汁入り生チョコを前にルリィは早速伸びてきたユーロの手に呆れる。
「ユーロのもちょうだい」
そう言って手を伸ばしたルリィが食べたのは桃の果汁の生チョコ。
お裾分けして食べさせあいっこ。
手だと普通だから口でとユーロは始める。
大好きだからこれくらいいいよねと。
その様子に子供っぽいと呆れるユーロの口に放り込まれるチョコ。
カレンは二人の口に生チョコきびだんごを運んだ。
姉妹で過ごす時間は大好きな時間だ。
「はい、ゼフト。あ~んして?」
ゼフトが覗き込んだ先。ハートの生チョコをエアーデは彼の口元へ。
「なめらかで優しい甘さだな。まるでエアの心を表しているようさ」
「はい、今度は私にも……」
「そうだな。では、俺もエアに食べさせてあげよう」
あ~んと口開けてまつ。そこに広がる甘さ。
大切な人とこういう事をやってみたくて。
美味しいわと微笑むエアーデはそっと抱き着き耳元に口寄せる。
「これからもどんな時も一緒だよ?」
その囁きにへの返事に抱きしめて。
「それは俺も同じだ」
ずっと一緒にいると約束を。
ヒールもチョコ作りも頑張ったあとはあたたかい紅茶と一緒に味見の時間。
「お婿さん、どうかしら? 美味しく出来てる?」
ゼルダが問えば、一口食べたお婿さんは幸せそう。
「おじさまのお口に合うかしら?」
「ゼルダ殿の作られたものも美味しいのぅ」
コアントローきかせた生チョコにゼーは笑み、自分が作ったものを差し出す。
「日々、しゃんと前を向いて頑張るふたりへプレゼント。お好みじゃろうかな?」
ゼルダは嬉しいと笑む。そして自分のもまたプレゼント。
それには、日頃のありがとうと大好きをこめて。
作者:志羽 |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2018年2月13日
難度:易しい
参加:68人
結果:成功!
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得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 4/キャラが大事にされていた 5
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