●俺の秘密特訓
「えいっ! えいっ! 出ろ! 風の刃!」
今は使われていない倉庫の中で少年は、必死に腕を振っていた。
「絶対、出る筈なんだ! 俺は風使いなんだから!」
「面白いね、坊主。お前の、最高の『武術』を見せてみな!」
その時、背後から挑発するような女性の声が少年の耳に入る。
振り返った瞬間、少年は何かに操られるように、アスファルトを蹴ると自身の風の力を用いて、女性に攻撃を加える。
必死の形相で風を操ろうとする少年のキックがパンチが女性を捉える。
「僕のモザイクは晴れなかったけど、お前の武術、力を求める気合いって言うのかい? それはそれで素晴らしかったよ」
攻撃を受け続けていた女性『幻武極』は、少年の胸を大きな鍵で貫きながら呟いた。
その言葉を薄れゆく意識の中で聞きながら、少年はアスファルトに倒れ込んだ。
少年の傍らには、足元から気流を吹き上げる緑髪の長身の青年がいつの間にか現れていた。
彼が右手を置かれた資材に向けると、見えない刃がそれらを切り裂いた。
「お前の武術を見せ付けてきなよ」
幻武極の言葉に頷くと、青年は倉庫の出口に足を向けた。
そして、倒れた少年を残し、幻武極もいつの間にか姿を消していた……。
●少年の理想の戦士
「最近、出現報告が多数届いている、武術家を狙うドリームイーター『幻武極』の出現及び彼女が創りだした、ドリームイーターが繁華街を襲う未来が予知出来た。みんなにはこの、創りだされたドリームイーターの撃破をお願いしたい」
ダウンジャケットを羽織った、大淀・雄大(太陽の花のヘリオライダー・en0056)は、ヘリポートに現れると、そう話を切り出した。
「だけど今回、幻武極と出くわして、ドリームイーターを体外に創りだされ意識を失っているのは、正確には武術家じゃない。風を武器として扱うことに憧れて一生懸命に練習していた、小学生の男子だ」
ケルベロス達は事実、グラビティの力で超常的な能力を武器として戦うことが出来るが、一般的な男の子にそんな力は無い。
自分にしか無い力で戦ってみたい、被害に遭った男の子がそう思っても仕方が無いのかもしれない。
「モザイクが晴れ無かった為、現着時点で幻武極は既に姿を消している。だけど、現れたドリームイーターが現場である、倉庫から出たくらいには現着出来ると思うから、みんなには、ドリームイーターが繁華街に向かう前に、この倉庫周辺でドリームイーターと交戦、撃破してもらいたい」
意識を失った少年は倉庫内で倒れているが、倉庫内に寒風は入って来ず、保護はドリームイーターを撃破してからで大丈夫だと雄大は言う。
「ドリームイーターの戦闘手段の説明な。風をカッコ良く使って戦う戦士って言う少年の憧れが具現化されていて、風の力で常に50cm程浮いてるけど、特に高速移動が出来るって程ではないらしいけど、素早い動きが特徴みたいだな」
漫画や、アメリカンヒーロー、格闘ゲームの影響を多分に受けているのだろう。
「攻撃手段は風の刃を作りだして敵を切り裂く攻撃、大きな竜巻を起こして複数人を巻き込む攻撃、全身に風を纏って放つ高威力のキックって感じだな」
ドリームイーターとの戦闘場所になると想定される、倉庫の外は繁華街から離れており、外部の人間の侵入を心配する必要が無い事、地面はアスファルトだが壊して問題のある様な物が無い事から、ヒールも最低限でいいと言うことも付け加えられる。
「風使いのドリームイーターの目的は、自身の風の力の威力を世間に知らしめること。その目的の一つとして、ケルベロスと言う、誰もが認める強者たちが戦闘を仕掛けてくれば、笑みを浮かべて乗って来る筈だから、少年の理想を壊すみたいで申し訳ない気もするけど、返り討ちにして欲しい。その後、倉庫内の少年の保護までがお仕事だけど、何らかのフォローをしてくれると嬉しいかな……」
雄大には分かるのだ、自分にしかない力で敵を倒したいと言う少年の気持ちが。
戦いに赴くケルベロス達の背を見送ることしか出来ない自分の無力さと重なってしまうから。
「まっ! そう言う訳だから、ドリームイーターの撃破、宜しく頼んだぜ、みんな!」
いつもの元気な声で雄大はケルベロス達に笑顔でそう言った。
参加者 | |
---|---|
木戸・ケイ(流浪のキッド・e02634) |
ミレイ・シュバルツ(風姫・e09359) |
英・虎次郎(魔飼者・e20924) |
ジェミ・ニア(星喰・e23256) |
左潟・十郎(風落ちパーシモン・e25634) |
ラルバ・ライフェン(太陽のカケラ・e36610) |
レーニ・シュピーゲル(空を描く小鳥・e45065) |
ガートルード・コロネーション(コロネじゃないもん・e45615) |
●風吹きて
「秘密基地で猛特訓か……何かガキの頃を思い出すぜ。……大人が水を差したか無いけど」
鋭い目つきの中にも複雑な彩を乗せ、そう呟くのは、英・虎次郎(魔飼者・e20924)だ。
彼等8人のケルベロスは、日が暮れ始めた倉庫街に来ていた。
「風使いのドリームイーターか……どんな奴かな? 強敵だろうけど、こっちも負けねえぜ!」
そう息まき竜尾を強く振るのは、ラルバ・ライフェン(太陽のカケラ・e36610)。
「レーニも風は好きだよ。そよそよ優しい囁きも、強い嵐の鋭さも。あたたかな日差しを連れてきてくれるから」
ほわほわ言葉を紡ぐ、レーニ・シュピーゲル(空を描く小鳥・e45065)には、1つ不思議なことがあった。
(「被害者の少年、確か健斗さんよね? なんで風使いさんになりたかったのかなぁ?、……戦隊のレッドさんや、アニメでもよく主人公さんになる炎使いさんでもなく、風を選んだ理由があるのかな?」)
『ピューッ』と吹く冬の自然な風を肌に感じながら、レーニはそんなことを考える。
「風使いですか……何だか魔法みたいですね」
少年が普通に風を魔法のように使えたらと、ただ願っただけならよかったのにと、ガートルード・コロネーション(コロネじゃないもん・e45615)は、思ってしまう。
不思議な力を使いたい、その力で悪い事をする相手をやっつけたい、その思いは子供なら普通に持っていてもいい願いだから……でも、だからこそ。
「……許せません! ドリームイーターを倒し、少年の夢を取り戻しましょう!」
左手に自身の髪とお揃いのリボンを付けた長剣『サンライズブリンガー』を右手にタワーシールドを構え、ガートルードは現場への足を速める。
そして、目的の敵は居た。
長い緑髪を風になびかせた長身の青年……風使いのドリームイーターだ。
「僕らはケルベロス。君を討ちに来たよ」
最初に名乗ったのは、ジェミ・ニア(星喰・e23256)だった。
手にはすぐにでも攻撃に移れるようにドラゴニックハンマーを携えている。
「……ケルベロス」
ドリームイーターは、その名を聞くと、自身が纏っていた風を更に強くする。
(「犠牲者が出る前にここで倒す。……それに、風使いの武術家というなら『風姫』のわたしが負ける訳にいかない」)
蒼い瞳に強い意志をたぎらせているのは、ミレイ・シュバルツ(風姫・e09359)だ。
「『風姫』ミレイ・シュバルツ、参ります」
ミレイは、言葉にすると同時にアスファルトを蹴った。
「風すら刻め……鎌鼬!」
無数の闇色のワイヤーでドリームイーターに先手の一撃を与える。
「俺は、人呼んで流浪のキッド。ちょっとは名の知れたケルベロスだ! 相手になるぜ、風使い!」
『斬霊刀『シラヌイ』』に雷の霊力を纏わせ、居合の要領でドリームイータの肩口を刺し貫くのは、『流浪のキッド』もとい、木戸・ケイ(流浪のキッド・e02634)だ。
だが二人の連戟を受けても、ドリームイーターは口元に笑みを浮かべ右手を前方に差し出す。
接近していた2人はすぐに距離を取るが、ドリームイーターの起こした風は竜巻となって、後ろを固めるケルベロス達に勢いよく轟音をあげて向かっていった。
●暴風と成り
巨大な竜巻が広がる中、小竜と桃色の騎士が咄嗟に虎次郎とジェミを護る為に竜巻を全身に受ける。
「オウガメタルさん、ガートルードさんとラルバさんの傷を銀色の力で癒してなの」
2人の身体をレーニの身体から放たれた光の粒子が覆えば、傷も次第に癒えていく。
「なかなか言い力だな。相手になってやるぜ! お前の全力を見せてみろよ!!」
強き言葉を吐きながら、ラルバ自身もオウガメタルの力を借りる。
「加減を知らない暴れん坊をこのまま放っても置けないんでな……坊主にゃ悪いが壊して止めるぜっ! ――――哮ッ!!」
虎のように跳躍しながら吠えると虎次郎はドリームイーターに急接近し、落下の加速を利用した蹴りをドリームイーターの胸部に決める。
そのグラビティを込めた強襲は、ドリームイーターの周囲のアスファルトに亀裂を入れる程だ。
ドリームイーターが動きを止めたかに見えたその時、ガートルードがドリームイーターの風を操る右腕に狙いを定め、剣を振るうが、半歩のバックステップでかわされてしまう。
「ガートルードさん!」
戦場にジェミの声が響けば、ガートルードは縦に跳躍し射線を開く。
同時に放たれる、ドラゴンが吠えたかのような質量の砲撃。
(「戦う程、皆を守れるだけの強さを求め……そして心の痛みに寄り添う弱さを失いたくないとも思う……」)
竜槌をドリームイーターに向けながらジェミは、強さの本質……戦う力を得る意味についてほんの数秒だけ考えを傾ける。
「本当に強い者は、力をひけらかしたりしないもんだと思うが……」
夢から生まれたモノの『進化の可能性』すら奪う氷結エネルギーを叩きつけるのは、左潟・十郎(風落ちパーシモン・e25634)だ。
「……ま、取り敢えず。強さを証明しようって心算なら、まずは俺達の相手をして貰おうか……」
降り下ろしていた瑠璃色のハンマーを反動でかち上げ舞い散る星をきらめかせながら、十郎はドリームイーターに言う。
ケルベロス達の連携は終わらない。
長い黒髪を靡かせつつ放つ空をも断ずる斬撃、銀糸の髪が優雅に流れる刃の如き疾風の蹴り、獣尾を揺らしながらの鉄パイプでの殴打、正確な角度からの流星の軌跡を描くキック、右手の指輪から具現化された光の剣での斬撃、黒き生命体はドリームイーター自体を喰い破ろうとする。
その間も緑の竜翼から放たれる銀色の精神を研ぎ澄ます力とグラビティの力を底上げする水彩絵具の魔力。
だが、ドリームイーターは……いや、風の戦士は不敵な笑みを浮かべていた。
●無風に帰す
「あなたに触れる 空のいろ」
レーニの水彩絵筆が空をひと撫ですれば、夕焼け空がそこだけ青空になり零れ落ちた透明なしずくが、恵みの雨となって、風の刃で傷ついたガートルードの身体の傷を癒していく。
ケイの相棒のボクスドラゴン『ポヨン』も自身の水の属性をケイに注ぎ込んでいる。
「サンキュー、ポヨン。愛してるぜ!」
軽口を叩きながらも、ケイの表情は芳しくない。
他のケルベロス達も同じだった。
「もっとだ、もっと! みんなの集中力を高めるんだ! 銀の粒子でみんなの力を研ぎ澄ませー!」
大きな声で叫びながらラルバは、数度目のオウガ粒子を開放する。
(「自分にしかない力で戦ってみたいってのは、何となく分かるぞ。……でも、ただ、力を見せつけるた為に……その為だけに、誰かを傷つけるんなら絶対に止めてやるぜ!」)
「そろそろ、動きも鈍ってきたようだな」
『慚愧』でドリームイーターの傷口を抉りながら、十郎が呟く。
(「……重要なのは力の有無でなく、それを扱う心の有り様。……護る為に使うか、傷つける為に使うか」)
十郎の刃を無理矢理、風で引き剥がすと、ドリームイーターは虎次郎に疾風の様な蹴りを喰らわせる。
「くっ! 痛覚ってもんが無いのか……? ヒールは追いつかねえな。ならお前の力喰らわせてもらうぜ!」
ドリームイーター自身の力を喰らう地獄の炎を呼び出すと、虎次郎はその炎ごとドリームイーターを殴りつける。
「あなたの風は強い。けれど、わたし達はここで負ける訳に行かない。……食め、大蛇!」
大鎌『黒死天翔』の黒き刃をドリームイータの肩口に掛け、一気に引き裂くミレイ。
「餮べてしまいます、よ?」
ジェミの影を伝いドリームイーターの影から発生した漆黒の矢は、変幻自在な軌道を描き黒き切っ先がドリームイータに幾つもの傷口を空けていく。
(「それにしても、思っていた以上に手強いですね。回復が追いつかない程だったとは……」)
心の中でジェミが呟く。
戦闘開始から既に10分以上が経過していた。
機動力に関してはヘリオライダーから注意を受けていた為、ケルベロス達もまず機動力を下げることに重点を置いていた。
だが、その為の攻撃が6割程しか当たらなかったのだ。
確実に狙って攻撃を当てられるジェミと虎次郎が中心となって、ドリームイーターの戦闘能力を下げ、十郎がそれを畳みかける。
前衛陣は、それをカバーする形で立ち回り、確実にグラビティ・チェインを削っていく。
作戦としては間違っていない、と言うより模範解答と言っていい。
ただ、序盤ケルベロス達の攻撃は当たらずともドリームイータの攻撃を避けるのが困難でダメージの蓄積が想定以上だったのだ。
ケルベロスの戦線を維持する為に、回復の要を担っているレーニは精一杯自分の役目を全うしている……だが、レーニは失伝継承者からケルベロスになったばかりで、どうしても戦闘経験が他のメンバーに比べて少ないと言わざるを得ない。
ポヨンが回復に回っても回復出来るのは1人。それに加え、サーヴァントは保有グラビティ・チェインが少ない。
数度攻撃に巻き込まれてしまえば、グラビティ・チェインの枯渇で姿を消してしまう。
アタッカー達が自身の回復に回れば当然、攻撃の手数も減る……結果、決定打を与えられないまま10分を経過させてしまったのだ。
「これ以上誰も傷つけさせないよ!」
ドリームイーターの注意を引くように、その華奢な体で声をあげるガートルードだが、ケルベロス達の中では一番息が荒い。
3人のディフェンダーの内の1人として攻撃を受け続けていた彼女だが、彼女の体内グラビティ・チェインもまた多くなかったのだ。
理想論ではなく、事実として言うのであれば、ケイやラルバの6割から7割程度が最大保持出来る、グラビティ・チェインになる。
彼女自身も光の盾を展開しているが、それでも盾を万全に張り続けるまでに受けたダメージを全て癒すことは出来ず……少ない回復手が彼女だけを回復し続けることも出来ない以上、戦闘がこのまま長引けば、彼女が膝を付く可能性は非常に高いだろう……だが、ガートルードの瞳の強い意志の炎は消えていない。
(「敵が強いから……私達も、仲間と一緒に戦ってるんだ。彼にも健斗さんにも、それを分かってほしいから……絶対に、負けない!」)
「お前の悪事もここまでよ! どこまでも追い詰める……地の果て、天までも届け! ワイルドアーム!」
ワイルド化された左手をドリームイーターに向け、手にした白銀の刃で真っ直ぐにドリームイーターを突き刺す、ガートルード。
(「風は空を渡るいろ。風の力強さを知る彼の想いが、モザイク色に塗り潰されたりしちゃ駄目なの」)
レーニの強い思いが癒しの色を広げていく。
「俺の烈風、受けてみな! 念仏でも、辞世の句でも詠んでみるんだな!」
ケイの神速の抜刀術は、剣閃と共に桜吹雪を一面に舞わせる。
『カチャン』
刀が収まる音と共に風が巻き、舞い散る桜がドリームイーターを包み込み、燃え上がる。
(「強さって何だろう。何のために戦う?」)
竜槌を振り上げ、ドリームイーターに接敵したジェミはふと思考する。
(「僕らは人を守り、敵を退ける為に戦う。でも、本当に『強い』のは拳に頼らず、皆を守れる人なのかもしれない。……戦いは戦いを生む。巻き込まれる人も、泣く人もいる。皆の痛みに寄り添って、力に頼ることなく敵を退ける事が出来たなら……僕は、甘いのかな」)
そんなことを思いながらも目の前の敵は、今持てる力以外で消すことしか出来ないと――最初から分かっていたのだろう――氷の力を振り下ろす、ジェミ。
「そろそろ終いにしよう……痛みは露の間、後は花色の夢だ」
十郎の掌から溢れるように咲いた鉄仙の青い花は蔓を伸ばしてドリームイーターに追い縋り、捕らえきるとで更に花を咲かせ、呑み込む様に絡みつく。
「力とか武術は、人が心から笑えるようにする為にあるんだ! だから、俺達から逃げられると思うなよ! 疾風の狼、行っけぇぇ!!」
気合いと共にラルバが生み出した一撃は狼の如き形を成し、ドリームイーターに鋭い牙を立てる。
「止めは任せるぜ、ミレイ……!」
標識看板をドリームイーターの頭上から叩きつけ、虎次郎が言う。
(「しかし、中々骨の折れる相手だったな……子供の夢と侮っちゃいけないぜ。坊主が目を覚ましたら、手強い相手だったぞと教えてやろう。……このまま本当に本気で特訓を続けたら、もしかしたらもしかするかもな?」)
心身を鍛え続けケルベロスになった者も少なくない……ひょっとしたらひょっとするかもと虎次郎は思う。
「風の支配者『風姫』の名において風をもってあなたを倒す。裂け、彼岸花」
無数の鋼糸が螺旋の力と同調し、ドリームイーターを雁字搦めに拘束する。
鋼糸の拘束はやがて、微細な刃となってドリームイーターを切り刻む。
……そして霧散。
風の戦士は彼岸の花こそ咲かせなかったが、泡沫の夢のように消えた。
一陣の風が吹いた。
だが、そこにはもう、悪しき力の存在した証は何も残されていなかった……。
●そして……向い風は追い風となる
「……あれ? 俺?」
「具合悪い所は、ある?」
ペリドットの瞳の青年に問われるが何が起きたか分からない。
「おはよ。大丈夫? 寒くない? あのね、貴方が無事で良かった。貴方だけの、あんしんの魔法だね」
藍色のストールを少女が肩にかけてくれる。
「ここで特訓してたのかな? 風使いかあ……そんな力があれば、デクスエウスみたいな悪い奴もやっつけられるよね! だけど、その力を使いこなせないうちに、今日みたいに悪い奴がきたら……1人じゃ危ないよね」
桃髪の女性に言われ、胸に差された鍵を思い出す……それ以外は思い出せなかったけれど。
「ドリームイーターに狙われるほどの強い思いとか、強くなりたいって頑張ってるの、カッコイイと思うぜ!」
「イメージは力になるんだぜ。風使いの技、結構効いたからさ。描いた夢に向かっていく精神は、大切にしてほしいんだよな」
竜人の少年と黒髪の青年曰く自分の夢は叶ったらしい、どうやら悪い方向でらしいが。
「あなたの風は強かった。この体で味わった……」
それこそ風の妖精のような女性はただ一言そう言った。
「俺も子供の頃は、自分の力の無さを悔しく思ってたけど、背伸びすればするほど上手くいかないんだよなぁ。結局、自分に出来る精一杯をきちんとやるようにしたら、大事な人がとても喜んでくれたよ」
視線こそ合わさなかったが獣人の青年の言葉には温かな思いを感じる。
「……今日の事もこの場所も、もちろん誰にも内緒にするよ。何時の日か坊主が本当の意味で強くなるまで、俺達だけの秘密にしよう」
強面のお兄さんは、そう言うとにやりと笑った。
……何時の日か、その言葉がとても印象的で、その気持ちを抱いたまま俺は家に戻った。
今度こそ本当に強くなるんだと、もう一度思った……。
作者:陸野蛍 |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2018年2月15日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 8/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 0
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