●破壊せしモノは怒りと共に
群馬県渋川市にある、自然園。
冬のこの時期は花も咲いておらず、春の開園の時期に向けて、少しずつ整備が始まりつつある。
……そんな自然園の整備員が、植物の状況を探りに園内を歩いていると……こんな冬に珍しく、黄色い葉をつけた植物を発見。
『あれぇ……真冬なのに、なんで花が咲いてるんだぁ?』
と言いつつ、その花の元へと近づく。
……白い世界の中に、黄色く咲く花の美しさ……と、そこに。
『あれれ、綺麗だねー。よーっし!』
見えない所から、声を上げるのは……鬼百合の陽ちゃん。
「景気よくいっちゃおー! 山を下りたら自然を破壊してきた文明とかなんか、ドッカーンって破壊しちゃってよね!」
と言いつつ、彼女はその手から、謎の花粉をその花に降り注ぐ。
その花粉を受けた花は、みるみる内に攻性植物となって……見とれている彼をシュシュッ、と蔓で捕捉し、釣り上げる。
『う、うわぁああ!?』
釣り上げられて恐怖の声を上げる彼は……花の咲く元となった木の幹へと、埋め込まれていくのであった。
「ケルベロスの皆さん、集まってくれたッスね! それじゃ、説明させて貰うッスよ!」
と、黒瀬・ダンテは集まったケルベロスに力強い挨拶をしつつ。
「どうも群馬県渋川市にある自然園に、植物を攻性植物に造り替え謎の胞子をばらまく人型の攻性植物が現れた様なんッス」
「そしてその胞子を受けた植物の下部が、攻性植物へと変化してしまい、其の場に居た一般人へと襲いかかり、宿主にしてしまったんッス」
「そこで、ケルベロスの皆さんは急ぎ現場に向かって貰い、一般人を宿主にした攻性植物を退治してきて欲しいんッスよ!」
そして、改めてダンテは。
「今回、一般人を宿主にした攻性植物は一体のみで、その他に配下の者は居ない様ッス。ただ、取り込まれた一般人は、この攻性植物と一体化してしまっており、普通に攻性植物を倒すと一緒に死んでしまうんッス」
「ただ、相手にヒールを掛けながら戦う事によって、戦闘終了後に攻性植物に取り込まれた彼を救出出来る可能性があるんッスよ!」
「又、今回戦場となるのは、休場中の自然園……雪は降り積もり、足元も不安定な状態ッス。ただ、彼以外の一般人は遠く離れた所にしか居ないッスから、他の一般人対処は必要無いッス」
「尚、この黄色い花を付けた攻性植物の攻撃方法は、雪山の中で花を開き、光を吸収しての自己回復。雪の下に伸ばした幹を鞭のように唸らせて、足に巻き付けて転倒させる攻撃と、周りの樹に蔓を叩きつけて、頭上から雪を振り落させる攻撃がある様ッス」
「周りは雪景色で強烈に寒いッスから、防寒対策もしっかりする様にお願いするッスよ!」
そして、ダンテは。
「色々と話したッスけど、攻性植物に寄生された彼には罪はないッス。どうか彼を救出してくれる様、宜しく頼むッスよ!!」
拳を振り上げ、皆を送り出すのであった。
参加者 | |
---|---|
倉田・柚子(サキュバスアーマリー・e00552) |
リュートニア・ファーレン(紅氷の一閃・e02550) |
四辻・樒(黒の背反・e03880) |
月篠・灯音(犬好きの新妻・e04557) |
パトリシア・シランス(紅蓮地獄・e10443) |
安海・藤子(道化と嗤う・e36211) |
中村・憐(生きてるだけで丸儲け・e42329) |
ルデン・レジュア(夢色の夜・e44363) |
●迸る自然の涙
群馬県渋川市にある自然園。
冬という事も有り、今、園内に居るのは準備を着々と進めている自然園関係者のみ。
春も間近に迫り、開園の時期に向けての準備は間もなく大詰めと言った頃。
……しかし、そんな自然園に突如咲いた花……黄色く色付いた花は、とても美しいのだが……その花を誘い出したのは、【鬼百合の陽ちゃん】という、人型攻性植物の一つ。
「うーん……鬼百合の陽ちゃんって、中々可愛い名前ッスけど、やる事はえげつないッスよねぇ……」
と中村・憐(生きてるだけで丸儲け・e42329)が髪を掻いて溜息を吐くと、倉田・柚子(サキュバスアーマリー・e00552)もこくり、と頷いて。
「そうですね。攻性植物に取り込まれてしまう一般人の事件も後を絶ちませんね……」
「そうっすよね! 植物園の整備員さんとなれば、植物への愛情はあると思うんッスよ。でも、その人を襲うという事は、地球の人間と植物を反目させようと目論んでいるのかな、とも思うっす。そんな陽ちゃんは赦せないっすよ!」
拳をぐっと握りしめる憐、それに安海・藤子(道化と嗤う・e36211)が。
「そうね。これからの為に準備しているのに、そんな所を襲うのねぇ……相手のやり方としては、理にかなってるけど、早々あばれさせるつもりもないのよね? ま、頼もしい知り合いも多いし、きっちりとやり切りましょうか」
くすり、と傍らの仲間……月篠・灯音(犬好きの新妻・e04557)と四辻・樒(黒の背反・e03880)、パトリシア・シランス(紅蓮地獄・e10443)の三人に笑い掛けると、煙草を吹かしながらパトリシアも。
「ん……ああ、そうだな。ツキちゃん、しきみんカップルと一緒にこうして参加する事になるとは思わなかったわ。宜しく頼むわね」
「うん。パティや樒、藤子さんもいるから大丈夫。みんなの背中はきっちり守るのだ!」
「そうだな……でも大丈夫か? 寒くないか?」
そっと上着を掛け、カイロを両手に仕込み、灯音の手を握る樒。
「備えあれば憂いなし、と言うしな」
と、樒の言葉に軽く顔を紅くする灯音。くすりと笑いながら。
「まぁ、雪の中の植物というのも風情はあるが……攻性植物ではな。寄生された植物に罪はないが、倒して警備員を無事に救出してやらなければな」
「……うん。それに春も間近……春になったら、樒とまた遊びに来たいな……」
そんな二人の仲睦まじい空気にくすくすと笑うパトリシア……そして、リュートニア・ファーレン(紅氷の一閃・e02550)が。
「まぁ、理由は分からなくもないけど、だからと言って許せるものでもない。捕まった人は助けたい。がんばろうね、クゥ」
そっとボクスドラゴン『クゥ』の頭を撫でるリュートニアに、クゥはこくり、と頷く。そしてルデン・レジュア(夢色の夜・e44363)も。
「攻性植物……そうか、これが……せっかくの綺麗な華になんてことを……自然のどこを守っているんだか……絶対に許せない……必ず、倒すよ……」
と、彼も静かに気合いを入れて……そしてケルベロス達は、自然園の入口へ。
閉じられている入口の脇、従業員通用口を通り……ケルベロス達は、自然園へと入っていくのであった。
●壊れし自然に
そして、ケルベロス達は自然園の中を進んでいく……すると。
『……うぁああああ!!』
響き渡る悲鳴。その悲鳴の元は……当然。
「……あっちの方かな? 皆、急ごう」
とリュートニアが指さし、クゥがその方向へと走っていく。
……そして、数分走ったところに……攻性植物に捕らわれの職員さんを発見。
「居たわね……さてと、早速だが始めようか」
と、普段よりつけているお面を外す藤子、そして憐も。
「そうっす! 俺達ケルベロスが来たからには、必ずあんたを助けるっす! だから、諦めちゃダメっすよ!!」
強く、言葉を投げかける憐、そして他のケルベロス達も……攻性植物の真っ正面に対峙。
「パティ、藤子さん。背中は任せるのだ!」
にぱぁっ、と微笑み、憧れの二人に犬の様に、後ろ髪を振り乱す灯音……更に最愛の伴侶である樒にも。
「樒、長期戦だが頼むよ」
雪をぐっと踏みしめながら、銀槍を握りしめる灯音。
……と、そんなケルベロス達の動きに対し、職員を捉えた攻性植物は……蔓を更に絡みつかせて締め付けを強くしていく。
強く強く締め付けられ、苦悶の表情を浮かべる職員……そこにすぐさま、ルデンが。
「終わる。もうすぐだから……だから、一緒に花を見に行こう?」
と、職員に対する励まし、期待の言葉を投げかけ、気を失わない様に、希望を失わないように呼びかけ続け、更に幾何学的模様を空に描き、職員の傷跡へと飛ばし、回復。
その回復効果に、僅かながら意識を取り戻した職員。
「ごめんね。これからちょっと痛いかもしれない……けど、助ける為には、貴方を捉えている者を倒さないといけないんです」
と真っ直ぐに攻性植物、及び職員を見据えた上で、スターゲイザーの一閃を叩き込む。
そして続く藤子は。
「さぁ、皆、行くぞ」
「うん! 降り立て 白癒」
灯音が頷きつつ、前衛陣へ白癒の盾アップを付与して防御力を強化すると、パトリシアはクラッシャーポジションを纏い、攻撃力が高まった状態にて縛霊撃の一閃。
かなりの大ダメージが、攻性植物と職員を苦しめる中、更に樒のゼログラビトンが降り注ぎ、藤子もスターゲイザーによる足止め効果付与を仕掛ける。
……バッドステータスが聞いているかどうかは、見た目の上からは解らないが、体力が削れているのは確か。
そして、藤子の行動に対抗し、攻性植物はまるで八つ当たりの如く、周りの木々に向けて蔓をベチン、と叩きつける。
当然、頭上の木々に積もっていた雪は震動で、ドシン、と地上に落下。
「危ないです!」
とそれに柚子が即座に反応……雪に埋もれることは回避。
ただ、足が雪に埋まり、動きが鈍る。
「にゃ!!」
と、柚子のウイングキャットのカイロが翼を広げ、仲間達の足止め効果解除を行う。
「カイロ、ありがとうございます」
と挨拶しつつ、柚子は自分自身に。
「これが私の万能薬です」
と『恋愛色塗料』にて回復し、その傍ら、クゥも属性インストールで回復。
そして、憐が。
「それじゃ、行くっすよ!」
と力強い言葉を叫び、攻性植物の懐へと突進していき、螺旋掌の一撃を叩きつけると、パトリシアのライドキャリバーはキャリバースピンによって、雪を巻き上げながら攻性植物へ更なるダメージを蓄積させる。
続く刻、攻性植物の動きはさほど変わりないのを見て取ると。
「まだ、元気いっぱいの様ですね」
「以外に体力は多いのかもしれないッスね。でも、諦めずに行くッスよ!!」
柚子に更なる気合いを燃やす憐、そしてルデンも。
「少し、少しの辛抱だ。待っててくれ」
と、言葉を掛けつつ、攻性植物への回復を継続。
その弱り具合を見据えた上で、更に回復が必要だと判断すると……クゥや憐も一緒になって回復を攻性植物に飛ばす。
勿論、敵を回復するという事は、戦闘も長引くという事にはなるのだが……攻性植物が相手となっては、それも仕方ない所。
そして、回復が不要と判断すると、残る仲間達は攻性植物への攻撃と、バッドステータスの付与に尽力していく。
……そんなケルベロス達の攻防に対し、攻性植物は蔓を振り回したり、雪中の中から不意に突き上げたりしての反撃を繰り返す。
こちらの攻撃も、中々のダメージではあるが、灯音やカイロの回復は、その傷跡を広げる前に、確実に回復。
そして……戦闘開始から十数分。
『……ゥォオン』
遠くから、哀しみの嘆き声の様な物が聞こえる。
そして、次の瞬間……攻性植物の身体に、急激にひび割れの様な物が発生。
蔓を地面に叩きつけ、死の前の悪あがきをしている様にも……。
「む……藤子さん、敵さんそろそろ弱ってきているかな?」
と灯音が皆に注意喚起すると、それに頷きながら樒とパトリシアも。
「そうだな。そろそろ加減が必要か……気をつけて攻撃しないとまずいな」
「そうね。いよいよ面倒臭い最後の削りの頃合いね」
そんな言葉を交わしつつ、威力の少ない攻撃方法へとそれぞれシフト。
回復するリュートニアとルデンの効果を待ちながら、少しずつ、少しずつ……。
そして……。
『グォオオン……』
更に、苦しみの嘆きを上げた攻性植物……蔓一つがボトリ、とその場に落下する。
そして、それが好機であると認識した灯音が。
「……樒っ、パティ、お願いっ!」
と声を掛けつつ、白癒を掛けて強化。
「ああ……了解」
軽く微笑み、そして樒は近接位置からのバスタービーム。
光に貫かれた攻性植物、そして続くパトリシアも光のバスタービームを放つと……攻性植物の頭部に、大きな風穴を貫く。
そして、柚子が。
「仕掛けます」
とファナティックレインボウの一撃を放つと……攻性植物は、光に包まれるかの如く、その場から崩れ墜ちていった。
●苦しみ紛れ
そして、無事に攻性植物を仕留めたケルベロス達……そして、攻性植物の居た所には、蔓からの粘液に塗れた……職員さんの姿。
「ふぅ……終わりましたかね? 職員さんに怪我はないでしょうか?」
と、駆け寄りつつ、その傷の具合を確認する柚子。
……すり傷、切り傷等、生々しい傷痕が結構残ってはいるが、意識ははっきりとしており、怪我はヒールすれば取りあえずは問題無いだろう。
そんな傷の手当てを、そそくさとリュートニアがヒールグラビティを掛けて治療……そして意識を取り戻した彼に。
「あ、大丈夫? 傷跡は……うん、ある程度治ってるかな。でも、このまま返らせる訳にもいかないから、一端病院に行くべきだよ。救急車を呼んだから、もうすぐ来ると思うよ」
と灯音が言うと共に……遠くの方から救急車のサイレンが。
そのサイレンに頷き、クゥがとてとてと掛けていき……救急車の人達をここまで連れて来る。
その間に、職員さんに対し憐は職員さんの心を解きほぐす為に……色々と会話。
目の前の黄色い花に突然襲われた事……意識を失いかけた中、思ったのは……自分は、植物に愛されていなかったのではないか、という自戒の念。
でも、そんな彼へ憐は手をぎゅっと握りしめながら。
「いや、あんたは何も悪くないっす。悪いのは人間と自然を仲違いさせようとするデウスエクスっすよ! それは近い内に絶対に倒してやるっすから、安心して下さいっす!!」
拳を握りしめ、強い口調で元気付ける憐。
その一言に、更にルデンも。
「うん……もう大丈夫だから……安心して……疲れたら、眠っていいよ……」
と……優しく、頭を撫でる。
そして……救急隊員達もやってきて、彼を搬送して行った後に。
「動いたけど……やっぱり寒い、寒いな……一緒にココアでも飲もう……」
とルデンは空を静かに見上げながら、ココアを一口、そしてリュートニアは一仕事頑張ってくれたクゥを抱き上げて。
「お疲れさま、ありがとう」
と、クゥを抱き上げて、その身体を優しく撫でる。
そして……その横では。
「樒ー!!」
嬉しさを体で表現するかの如く、ぶっとびつく灯音。
そんな灯音にくすりと微笑みながら。
「ん、お疲れ様……ほら」
と、突然灯音を肩車する樒。
「え、ええっ!?」
とびっくりし、ぎゅっと頭にしがみつく灯音、そして。
「たまにはこういうのも良いと思うがどうだ?」
微笑む樒に灯音はこくり、と頷き。
「そうなのだ。また遊びに来たいのだ。今度は春に」
微笑み返す灯音……そんな二人を見て藤子とパトリシアは。
「全く……ほんといっつも仲が良いわねぇ……」
「そうね。ま、ツキちゃん、しきみん、トーコもお疲れ様、っと」
パン、とハイタッチに答える藤子。
そして、改めてパトリシアは愛用のジッポで火をつけると共に、樹を見上げる……そこには、僅かに咲いている青色の蕾。
「あら……小さな蕾ね。綺麗な華を、咲かせてね?」
とそっと微笑み掛けると、藤子も。
「……まだ見頃じゃないわねぇ……早くお花見が出来るようになると嬉しいんだけど」
「お花見なんて、まだまだ先ね。まぁ頃合いが来たら、又来るのも良いかもしれないわね」
くすりと笑い……そして。
「まぁ皆お疲れ様だ。後は風邪をひかないように皆気をつけてな」
と言葉を投げかけつつ……皆も帰路へとつくのであった。
作者:幾夜緋琉 |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2018年2月7日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 1/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 2
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