みかんの木は自然と共に

作者:なちゅい

●みかんと一緒に自然に還ろう
 一般的に、冬場に出回るみかんは「温州みかん」と呼ばれる品種で、その名は中国の名産地、温州(うんしゅう)から来ている。
 また、甘い柑橘類だから、蜜柑との表記が定着したと思われる。なんでも、室町時代にはこの名前が確認できるとのことだ。
 みかんの産地として名高い愛媛県。
 収穫は9~12月ということで、すでにオフシーズンとなっている。
 瀬戸内だと比較的温暖でそれほど対策は必要ないが、それでもみかんは寒さに弱い植物。冬場を過ごす為にと農家は防寒対策を行う。
 その日、みかん農家の大鷲・恒彦は幼木にむしろ、コモといった、ワラを集めた物を幹に巻きつけていた。
 彼の背後に忍び寄ってきたのは、大きな4枚の葉を背にした長い髪を三つ編みにした少女。
 少女はそっと、近場のみかんの木に謎の花粉を振りかけて……。
 その木は突如、異形化して大きくなる。冬場にもかかわらず、葉を生い茂らせ、果実すらも実らせたみかんの木は地中から這い出て、大鷲に襲い掛かる。
「ん? ……ぬおおっ!」
 いきなり現われたデウスエクスに対処できようはずもない。大鷲は瞬く間に攻性植物に寄生され、その幹に取り込まれることとなってしまう。
「立派なみかんの攻性植物になりました♪ にへらー」
 人型攻性植物の少女、鬼胡桃の姫ちゃんは笑顔を浮かべて新しく生まれた攻性植物を見上げ、うんうんと頷く。
 奇声を上げた攻性植物は根をうごめかせながら、人を求めて農園から出て行ったのだった。

 寒い日々が続く。
 普段雪の降らない西日本や関東でも、大雪になったという話がある。
「本当に寒いね。皆、防寒対策は大丈夫?」
 リーゼリット・クローナ(ほんわかヘリオライダー・en0039)は、この場にやってきたケルベロス達を気遣う。
 ウィッチドクターはいるものの、様々な難病対応に追われる者が多い状況を考えれば、風邪ばかりは自己管理でどうにかしたいものである。
「今度はみかん農家が取り込まれて、みかん狩りだそーです?」
 一恋・二葉(暴君カリギュラ・e00018)の言葉に、リーゼリットは頷いて。
「うん、攻性植物の対処を皆にお願いしたいんだ」
 またも現れる人型攻性植物、 『人は自然に還ろう計画』を実行する鬼胡桃の姫ちゃん。
 彼女が振り撒く謎の胞子によって愛媛県のみかん農家が被害に遭ってしまい、攻性植物化したみかんの木に寄生されてしまうというのだ。
「説明が終わったら現場に向かうけれど、大丈夫かな」
 問題ないと答えるケルベロス達へ、リーゼリットは説明を続ける。
 攻性植物は1体のみで現われ、配下などはいない。
 やや大きくなったみかんの木の幹に男性が取り込まれた姿をしており、冬場なのに枝には葉を茂らせ、果実も実らせている。
 戦闘ではスナイパーとして位置取り、蔓触手、光花、埋葬という3つの形態を使い分けて襲ってくるようだ。
「取り込まれた人は攻性植物と一体化していて、普通に攻性植物を倒すと一緒に死んでしまうよ」
 助けるには、相手にヒールをかけながら粘り強く戦い、攻性植物を攻撃していく必要がある。そうすることで、戦いの後に取り込まれた男性を救出できる可能性が生まれるのだ。
「現場は、愛媛県のみかん農家の敷地にある蜜柑農園だね」
 ケルベロスの到着時にはすでに、近隣住人の避難は済んでいる。
 戦いに専念はできるが、みかんの木々に囲まれて戦うことになる。農家のことを思えば、戦後のヒールを想定しておくべきだろう。
「残念ながら、人型攻性植物の姿は、現場にはもうないみたいだね」
 こちらも気になるが、今は、攻性植物の撃破を優先したい。寄生された男性救出を目指すならばなおのこと。皆で力を合わせて戦わねばならないからだ。
「無事に解決できたなら、感謝も込めてみかんを食べさせてもらえるよ」
 農家宅でこたつに入りながら食べるみかん。戦いの後ならなおのこと、美味しく感じることだろう。
 また、もしかしたら、何かみかんを使った料理を農家の人達に振舞ってもらえるかもしれない。
 冬場のみかんに、ケルベロス達が思い思いの言葉を語ると、リーゼリットは微笑んで。
「うん、その為にも、男性を救出してあげてほしいかな」
 攻性植物に寄生された人の救出は慎重になる必要がある。だからこそ、皆でこの事態に臨んでほしいと彼女は話を締めくくったのだった。


参加者
アイビー・サオトメ(アグリッピナ・e03636)
霖道・裁一(残機数無限で警備する羽サバト・e04479)
ロウガ・ジェラフィード(金色の戦天使・e04854)
円谷・円(デッドリバイバル・e07301)
大原・大地(チビデブゴニアン・e12427)
ジェミ・フロート(紅蓮風姫・e20983)
ユーロ・シャルラッハロート(スカーレットデストラクション・e21365)
ダンドロ・バルバリーゴ(冷厳なる鉄鎚・e44180)

■リプレイ

●寒空の下で救出を
 愛媛県の某所に降り立つケルベロス達。
 瀬戸内は温暖な場所とは言われるが、それでも冬場は寒い。
「こんな日はおこたに入って、みかんでも食べたいって思ってたところなのに」
 肌を露出しない格好の円谷・円(デッドリバイバル・e07301)だが、それでも身を震わせながらスマートフォンを手にして。
「おこたにみかんがおいしいのに。へー、今ってオフシーズンなんだ」
 すでに、みかんの収穫時期は過ぎている。今出回っているのはその季節に獲れたものというわけだ。
「冬でも実れば良いのにね。かと言って、攻性植物はだめだけど……」
「ミカンの攻性植物かあ」
 円の話を聞いていて、金色のツインテールを揺らすユーロ・シャルラッハロート(スカーレットデストラクション・e21365)は今回の相手が果実を使ったグラビティを使わないことを幸いと話す。
「自然に還るも何も、攻性植物の方がよっぽど地球の自然破壊してるわよね!」
 こちらは、赤髪のツインテールのジェミ・フロート(紅蓮風姫・e20983)。攻性植物の侵略は阻止してみせると、気合十分だ。
「確かに以前……人と自然は共に在ったと言ってよい」
 ――ただ、今の両者はけして交わらぬ、並行線のような存在。
 すでに悟ったかのように、灰色の髪を持つダンドロ・バルバリーゴ(冷厳なる鉄鎚・e44180)が独白する。
「今の文明が破壊され……新たな再生でも始まれば別かもしれぬがな」
 還りたくとも還れない。この世はそういうものばかりだと彼は語った。
 決して交わる事のない相手。女の子のような容姿のアイビー・サオトメ(アグリッピナ・e03636)は宿敵の顔を思い出し、男性の救出を誓う。
 同じく、内気な竜派ドラゴニアンの大原・大地(チビデブゴニアン・e12427)も、久々に訪れたこの地で被害者の男性を絶対救出させたいと意気込みを見せていた。
「ミカンのお世話してたおじさんを助け出さないとね。美味しいミカンのためにも」
 そんなユーロの言葉に、霖道・裁一(残機数無限で警備する羽サバト・e04479)が口元を吊り上げて。
「みかんと言えば、甘酸っぱい。甘酸っぱいと言えば、リア充。やはりこれも爆破案件になりそうな予感! 多分!」
 怪しく目を煌かした裁一は、全身から怪しげなオーラを発する。
「寒い日々に少しでも温かいお話として振り返ることができるよう、今回も頑張りましょうか!」
 そう仲間達に告げるジェミの前には、みかん農園が見えてきた。
 すでに、攻性植物が現われているらしく、破壊音が聞こえたメンバー達はそちらへと急行していく。

 一行は程なく、冬場にもかかわらず果実を実らせ、枝や根を蠢かせたみかんの攻性植物を前にすることとなる。
「ということで、甘酸っぱい植物は間引きしますよ、間引き。デストローイ!」
 早速、構えを取る裁一。その視線の先、幹には捕らわれた男性の姿が確認できる。
「それにしても、この者は別に自然を破壊したとか、そういうものでもなかろうに」
 ほぼ同世代の男性の姿に、ダンドロは俯瞰したような物言いをする。
 自然に対して暴虐を働く者の懲罰ならば、まだ理解できなくもないとしながらも、決意した彼はバスタードソード「Diadochoi」に手をかけて。
「だが何であれ……、このような行動を許容するわけにはいかぬ」
 攻性植物も、新たな獲物が来たと根を蔓触手のように変えて伸ばしてくる。
 後方のアイビーの瞳からハートが消えて臨戦態勢に入る中、その手前にいる金髪ストレートヘアのロウガ・ジェラフィード(金色の戦天使・e04854)は巨大な天使の翼を広げて。
「果実の実りにかかった時間、それを育て上げた作り手の時間、その二つと命を弄ぶこと、断じて許すものか」
 ――必ず、男性を救ってみせる。
 ゾディアックソードを抜いた彼は、仲間と共に襲い来る攻性植物の対応を開始したのだった。

●捕らわれの男性を元気付けながら……
 枝や根を伸ばし、襲ってくるみかんの攻性植物。
 その幹に寄生された男性の救出を目指し、メンバー達は戦場を立ち回る。
 男性にヒールをしつつ攻撃。作戦は単純に見えてなかなか難しい。
 大地は広範囲に伸びる蔓触手と化した根をボクスドラゴンのジンと共に受け止めながらも、相手に音速の拳を叩きこんでいく。
 ジンは無邪気に自身の属性を振り撒き、相手の異常攻撃から仲間を護ろうと動いてくれている。
 そのそばには、同じく盾となるウイングキャット、蓬莱の姿がある。
 尻尾のリングを飛ばすもふもふな愛猫を後方から見ていた円は、寒さを覚えて身を震わせる。
「さくっと終わらせて、温かいとこにいこ!」
 そんな彼女は翼を広げながら、祈りを捧げる。
「祈りよ届け、我が友に」
 円が呼び出したのは、空に浮かぶ新円を描いた月だ。
 そこから仲間達へと降り注がれた光は、敵を滅する為の力を与えていく。
「早速爆破しつつ、助ける一石二鳥!」
 高く飛び上がる裁一はその前に相手の足止めをと、流星の蹴りで攻性植物の体に強く衝撃を与える。
「輪廻と再生を司る蛇夫宮の加護よ!!」
 ロウガは後方のメンバーに対して蛇の紋様が刻まれた剣を振るい、地面に描く星座を光らせることで仲間達に守護の力を与えていく。
 攻性植物へと、攻撃に動くメンバーは多い。
 金色のツインテールを揺らし、相手に見えない爆弾を貼り付けたユーロはそれを起爆させることで相手を威圧すると、赤いツインテールを揺らめかすジェミが前線で相手へと躍りこんで。
「大丈夫、私たちが、ケルベロスが助けるわ!」
 彼女は至近距離からアームドフォートの主砲を一斉発射し、攻性植物へと叩き込んでいく。攻性植物はそれを浴び、僅かに身体を痺れさせていた様子だ。
「そこからすぐ出しますから、諦めないでください」
 アイビーもまた攻性植物に捕らわれた男性を元気付けながらも、バスターライフルの照準を合わせ、相手のグラビティを中和させる光線を発射していく。
 仲間達の攻撃が続くと、やや男性の容態が気になるところ。
 攻撃主体で動くダンドロだったが、一旦攻撃の手を止めて仲間が攻性植物の回復に当たるのを待つ。
「……挫けぬ心よ。その身を鉄の壁と変えん!」
 ダンドロの叫びは、金色の輝く光の盾となって前面に展開していく。
 他のメンバーもまた攻撃を控える間に、ロウガ、円が男性の体力回復に動いて。
「舞うは許しの花、癒しの円環――祝福の五色、其の身に宿りて闘う力に――全てはやがて還る刻(イノチ)の為に――」
 ロウガの髪の薔薇から舞う五色の花びらは男性を取り囲み、心身を安らげるアロマとなって彼の体力を幾分か取り戻す。
 さらに、円もウィッチドクターとしての施術で、男性の負傷を癒す。
 ただ、一体化した攻性植物にまで、効果が及ぶのは実に面倒だ。
 敵は周囲に伸ばす根を地面に埋め、広範囲を侵食していくのである。

 冬場のみかん農園での戦いは、長期戦を余儀なくされる。
 轟竜砲を相手に打ち込むアイビー。敵が僅かに怯み、男性の息遣いがはげしくなれば、ロウガが薔薇の花びらを舞わせてその治療を行う。
 回復と攻撃。メンバー達は攻性植物と寄生された男性の姿を注視しながらも、グラビティを繰り出していく。
 膠着した状況は、ケルベロス達を疲弊させる。
「まだまだ、おいしいみかんを食べるまではへっちゃらよ!」
 ジェミが明るい口調で仲間を鼓舞するが、攻性植物はなおも実らせたみかんの果実を光り輝かせた。
 それを察し、大地は仲間の前に飛び出して。
「これで防ぐ!」
 太陽の大盾を構えた大地は、一斉に自分目掛けて飛んでくる破壊光線を受け止める。
 じりじりと体力が削られているのを実感する大地だが、耐え切った彼はジンの属性注入を受けながらも稲妻を纏わせた槍で攻め立てる。
「どんな辛い悲しみでも いつかは必ず癒えるから、忘れないで……♪」
 ユーロが歌うは、追憶に囚われず前に進む者の歌。いかに攻性植物といえども、グラビティが込められた歌の前では戸惑いを見せてしまう。
 その隙を逃さず、ダンドロは相手の枝や果実を「Diadochoi」で断ち切ってみせた。
 すぐに別の枝や果実が姿を現してしまうが、その分敵は余計にグラビティ・チェインを使っているはず。
 ダンドロはそう考えて幹に視線を向けると、捕らわれの男性が苦しそうに息をしている。
「おおっと、植物はしぶといくせに、中の男性はなんか危なそうでは!」
 裁一の呼びかけもあり、相手に対するヒールが足りないと判断した円が緊急治療に動く。
 攻撃役が多いこともあって、戦況は攻撃過剰となりがちとなっていた。
 そのせいかメンバーが自己回復に当たっていたこともあったが、仲間に撃つ用に想定していたグラビティを装備していなかったのは、円にとって手痛い部分だったようだ。
 同じく、ロウガも治療に当たることが多かったが、それでも一度はと古代語を詠唱して。
「理無き神の刻よ、その歩みを停めよ!!」
 完成した魔法は光線となって発射され、相手の根元を石のように固まらせた。
 メンバー達はできる限り、農園に被害が及ばぬようにと気がけて立ち回る。
 戦いの前にジェミが言ったとおり、一番みかん農園を傷つけているのは、他ならぬみかんの攻性植物というのがなんとも皮肉な状況だ。
 そいつを止める為に、気配を消した裁一が敵へと忍びよって。
「枯葉剤と言うやつです。今回は主に、攻性植物用の」
 元々は、リア充に対する八つ当たりもあって、相手に怪しげな薬物を注射器などで投与するグラビティ。彼が言っているのはその中身のことだ。
 それによって、攻性植物がじたばたと枝や根を動かしてもがき始める。
 どうやら、寄生された男性の体も徐々に剥がれてきていたようだ。
 ジェミは勝機と感じ、自身の掌に魔力らしきグラビティを集めて。
「とにかく! ぶっ飛ばすわ!」
 彼女は男性が取り込まれた部分を避け、幹の上部目掛けて掌打を叩き込む。
 内部から破壊するグラビティ……なのだが、外側ごと吹っ飛んでいるのはご愛嬌というべきなのだろうか。
 アイビーも決め技をと自らの地獄の炎を使い、右手の甲に紋を刻む。
「現の怒、虚の炎。在り得ざる疵を開け、翅の紋」
 言葉を紡ぐ度に右腕と頭に鈍い痛みが走るが、彼は気にせずに擬似地獄化した手を振り上げ、攻性植物の根元を強く殴りつける。
 グラビティ・チェインが枯渇した攻性植物は見る見るうちに枯れ果て、横倒しに崩れ落ちてしまう。
 その身体が風に吹かれて消えていく中から、取り込まれていた男性の姿を発見し、ケルベロス達は安堵の息を漏らしていた。
 なお余談だが、爆破案件と言っていた裁一は、一つも爆破グラビティを持っていなかったことを付け加えておく。

●おこたでみかん
 男性、大鷲・恒彦の救出に成功し、再び瞳にハートを浮かび上がらせたアイビーがその安否を確認し、オウガ粒子を飛ばして治療に当たる。
 率先してその介抱に当たっていたのは、大地だ。
 大地は怪我した男性の患部に触れ、ヒールを施す。やや小太りな体型の男性の姿に、彼はなぜか鼻血が出そうなくらいに興奮しつつ、気力を与えていたようだ。
 程なく、目覚めた大鷲の無事を確認して安堵するメンバー達。
 ダンドロは大鷲に確認しつつ、戦場となったみかん農園に光の盾を展開して修復に当たると、裁一もまた光の盾を出現させて侵食された野山を癒す。
 ユーロは桃色の霧を周囲に展開し、円は月の祝福をみかんの木々へと与えていく。
 五色の薔薇の花びらを舞わせたロウガが修復を終え、補填の為にと大鷲にケルベロスカードを渡す。
「めげずに頑張って欲しい」
「また何かあったら……」
 大地もすかさず、大鷲へとカードを差し出していたようだった。
「おじさんに、美味しいミカンが食べたいんだけど、ダメかな?」
 ユーロが可愛らしくお願いすると、大鷲も自分を助けてくれたケルベロスの頼みならと、メンバーを自宅へと案内する。
「れっつ、コタツミカン!」
 メンバー達は大きなコタツに足を入れ、ほっと一息。
「ミカンも、オレンジとは違った美味しさだよね。コタツミカンは日本の冬って感じ」
「うん、やっぱり冬はこたつよね」
 ドイツ出身のユーロは日本に来てから体験済みだったが、他の暖房器具と一風変わった感じで趣があると語る。同じ髪型のジェミもそれに同意していたようだ。
「蓬莱。はい、半分こ」
 円は愛猫へと皮をむいたみかんを半分差し出す。反対側では、ロウガも一つずつ口に入れている。
 また、甘酸っぱいものは爆破だとか何だかんだ言いつつも、裁一も美味しそうにみかんを食べていた。
 好きな人や知人へのお土産にとして、みかんが欲しいと希望していたアイビー。箱いっぱいにみかんをもらった彼はぺこぺこと頭を下げ、感謝していたようである。

 ユーロの発案もあってこたつでゲームをしていたメンバーへと、大鷲の家族がみかん料理を振舞ってくれる。
 デザートを考えていたユーロだったが、最初に出てきたのは、みかんご飯。ご飯を炊くときにみかんジュースを入れるというもの。このみかんご飯は、いなりに入れることもあるのだそうだ。
「愛媛の果物と言えばみかん、魚といえば鯛、と言う事でたい焼きはどうですか?」
 いなりに反応した大地がそう勧めていたのは、置いておいて。
 卓上にはみかん入りのフルーツサラダに、鶏肉の和風みかん煮なんてものも並ぶ。さっぱりした味が一風変わった風味として楽しませてくれる一皿だ。
「そのまま食う程度しか知らぬ身にとっては、新鮮よの」
 大鷲の家族の饗応に、ダンドロは心から礼を述べる。
「私達レプリカントもさ、地球の自然の一部って胸を張っていえるかな」
 料理を頂いていたジェミが何気なく呟くが、すぐに首を振って。
「んーん、愚問よね。こうやって地球のおいしいの、一緒に味わえるんだから」
 地球の幸を堪能するのに、種族など関係ない。そう考えつつジェミは料理を再び口に入れ、笑顔を浮かべるのだった。

作者:なちゅい 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2018年1月30日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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