碧翼のエンジェル

作者:宮内ゆう

●運命の出会い
 迷っていた。
 動きが止まった。
 だから何も出来なくなった。言わばスランプという奴だ。
 その上インスピレーションさえ沸いてこない。
 新たなメニューを考えなくてはならないというのに。
 これでは料理人としてやっていけない。
 そう思い悩んでいた折、彼は出会ってしまったのだ。
 その純白の身体に緑色の羽根を纏ったように見える姿、少なくとも彼にとってそれは天使だった。
「……甘い、だと」
「白菜はね、寒さから身を守るために糖分を溜め込むんだよ」
 天使もとい白菜を一口含み、料理人の男が感嘆の声を漏らすと、農家のお爺さんは笑顔で答えた。
「いや、素晴らしい白菜だ、ぜひうちに直接卸してほしい!」
「ほっほ、契約成立ですな」
「ああ、白菜料理、きっと良いものが作れる、創作意欲がわいてきたああああ! アレをこうしてコレをああして……こうしちゃいられないな、早速一品作りたい。ちょっとキッチンを貸して……」
 居ても立ってもいられず、早速料理をするべく白菜を引っこ抜こうとして、男は異変に気付いた。なんか白菜が急に巨大化していたのだ。
「な……ん……?」
 思考が追いつくまえに、男は覆い被さってきた巨大白菜に取り込まれた。
 白菜は、いつの間にか攻性植物と化しており、男に寄生したのである。
 なお、農家のお爺さんはすでに逃げてた。

●水炊き食べたい
「お鍋の季節ね」
 ルリィ・シャルラッハロート(スカーレットデスティニー・e21360)は言った。
「お鍋の季節よ」
 もう一度言った。
 意訳すると、新メニューに悩む料理人を白菜の攻性植物が取り込むかもしれない、ということだろう。きっとそうに違いない。そうに決まっている。
「つまり、お鍋が食べられるわ」
 別にこの料理人の思いついた料理が鍋とは誰も言ってはいない。
 でもそういうことでもいい。
「ええと、つまり攻性植物の事件ですね」
 ヘリオライダーの茶太が言う。
 日本の白菜生産量第一位を誇る茨城県にある農家で事は起きた。
 白菜畑にやってきていた料理人の男性が、攻性植物と化した白菜に襲われ、寄生されてしまったのだ。このまま移動を開始し、罪もない人々を襲うに違いない。
 そうなる前に、攻性植物を倒さねばならない。
「農家の方々はすでに避難済み、場所も私有地なので他の人もいません」
 周囲の人的被害は気にする必要がない。物的な面では、畑で戦うことで他の白菜に被害が出ることだが、それは攻性植物が畑から出たところで迎え撃てば問題ない。
 また、敵は1体のみ。普通に戦えばそう苦労する相手ではない。
 なので、気にするべき点はただひとつ。
 一般人が攻性植物の宿主にされているということだ。
 普通に倒せば、宿主の男も一緒に死んでしまう。
 だが、攻性植物にヒールをかけながら戦うことで救出できる可能性が出てくる。いってみれば、少しずつ弱らせていくことで宿主を引きはがす、というイメージかもしれない。
「あとはまぁ、声をかけてあげるのもいいかもしれません」
 といっても、かけたからといってどうなるものではない。気持ちの問題である。
「どれだけ白菜好きかとか、すき焼き食べたいとか語れば良いのでは」
 救出の成否に関わらないせいか、茶太の言い分が適当すぎる。
 まあ、大事なのは何より一気にダメージを与えすぎないことだ。
「救い出すのは大変だと思います。けどこんな命の落とし方があっていいわけないんです。だから、きっと救い出してあげて下さい。あと僕もお鍋好きだし」
 そういって茶太は頭を下げ、話を締めくくった。
 料理人の男は、白菜を天使だと言った。ならば我々にとっても天使となり得るのか。
 それは、寒空だけが知っている。


参加者
ラトゥーニ・ベルフロー(至福の夢・e00214)
シグリット・グレイス(ラトゥーニのサーヴァント・e01375)
リリウム・オルトレイン(星見る仔犬・e01775)
リルミア・ベルティ(錫色の天使・e12037)
ドミニク・ジェナー(激情サウダージ・e14679)
ルリィ・シャルラッハロート(スカーレットデスティニー・e21360)
葵原・風流(蒼翠の四宝刀・e28315)
人首・ツグミ(絶対正義・e37943)

■リプレイ

●満たされない者たち
 見渡す限りの白菜畑。
 白菜農家以外の者が、これだけの白菜に囲まれることはそうないだろう。
 その中でもひときわみずみずしい碧を放つ白菜。被害者の男性はそれを以て、天使と称した。
「よほど美味しい白菜だったのね。私も食べてみたい」
「あっ、はいはいはーい、わたししってますです!」
 ぽつりとルリィ・シャルラッハロート(スカーレットデスティニー・e21360)が呟いたところで、リリウム・オルトレイン(星見る仔犬・e01775)が元気に手とあほ毛を掲げて振った。
「白菜さんはさいきんとってもたかくなりましたです! こーきゅーひん!」
「それは困ったわね。なんとしてもここで人助けをしてお鍋にありつかないと」
「はいです! わたしはごまだれで食べるのがすきです!」
 決意新たに拳を握るルリィに対して、リリウムはあほ毛をびょんびょんさせてプラチナカラーをアピール。ツヤとハリがあるのは分かったから無理にプラチナって言葉を使わなくても良いと思う。
 そんなやたら高いテンションの2人を見てドミニク・ジェナー(激情サウダージ・e14679)は首をかしげた。
 最初、白菜鍋を食べる依頼だと思ってた。でもよく今回の話を見返してみたら鍋の話なんかじゃなかった。でもやっぱり鍋の話な気がする。一周回って帰ってきた、そんな気分。
 そして出てきた一言。
「鍋食いてェ」
 結局は欲望に忠実だった。
 ドミニクとしては隣にいた顔見知り(あくまで顔見知り)に語りかけたつもりであったが、そこにシグリット・グレイス(ラトゥーニのサーヴァント・e01375)の姿はなく、『これはシグリットです』と書かれた箱が置いてあるのみだった。
 当の本人はというと、ラトゥーニ・ベルフロー(至福の夢・e00214)に調味料をめちゃくちゃぶち込まれてた。
 なお、ミミックのリリさんはなんか白菜の影に隠れてる。
「ちっ、ダミーの置き場所まちがっおぼぶ」
「シグがサーヴァントになる……なら、リリ解雇……?」
 なぜかシグリットはラトゥーニのサーヴァントとなることを決めたようだ。一体どんな話のやりとりがあったのか想像もつかない、まるでつかない。
 まぁ、なると言ったからにはこの程度の扱い問題ない。塩胡椒まみれでも問題ない。
「まずそうですねーぇ」
 調味料に浸された姿を見て人首・ツグミ(絶対正義・e37943)が素直な感想を漏らした。べつに草なわけじゃないし美味しそうにみえないのも仕方ない。
 でもおかげさまでテンションは駄々下がり。なぜなら彼女は。
「お腹空きましたよーぅ……」
 ということらしい。
「本当に、お腹空きましたよーぅ……今ならいっぱい食べられそうですよーぅ……」
 おかしな話である。
 今回は白菜を食べることが主目的ではない。これから厳しい戦闘を行い一般人を救出することだ。何故万全を整えず腹を空かせてきたのか、疑問でならない。
「あのデウスエクス……美味しそうですねーぇ」
 ツグミのその言葉に、一気にケルベロスたちに緊張が走る。彼女の視線の先、畑の向こうによたよた動く巨大な白菜が現れていたのだ。
 とりあえず、デウスエクスそのものは食べられない。
「ええっと……」
 そのシルエットがだんだんはっきりするようになって、葵原・風流(蒼翠の四宝刀・e28315)は困惑の声を漏らした。
 でっかい白菜に手足が生えて、中央には顔がある、まさに白菜の着ぐるみといった出で立ち。
「攻性植物白菜マン……? あ、いえ、私は白菜をモチーフにしたご当地キャラの討伐に来たのでしょうか?」
 風流が疑問を呈したところ、意を得たと言わんばかりにリルミア・ベルティ(錫色の天使・e12037)が言った。
「そうですね、ゆるキャラっぽい気がしたので、私調べてきました」
 疑問はそこじゃない。でも気にしない。
「頭が白菜で、八百屋のおじさんのような姿をしてました……」
 なんだか微妙な感じ。
「でもやっぱり、着ぐるみの方が可愛い気がしますっ」
 ぐっと気合いを入れて主張するリルミア。
 一理あるしたぶん大部分がそう思っているだろう。
 でもやっぱり今の疑問とは関係ない。

●スロウシューター
 攻性植物白菜マンもケルベロスたちを認識したようだ。
「畑の真ん中にぃる、なら何か投げたらこっちくるかも?」
 なんか今日のラトゥーニはやる気があるというか働きそうな感じ。
 というわけで何か畑に投げた。
「うぼぁ!」
 何かと言えばシグリットである。サーヴァントはなげるもの。
「あー、白菜食いてェ」
 なんか唐突にドミニクが言った。心底どうでも良さそう。
 それは攻性植物白菜マンもおなじで、思いっきり無視した。無視して真っ直ぐ他のケルベロスたちに向かってきた。ちゃんと白菜は避けながら。
 そして畑からのそのそ這い出すと、脇の地面の上でケルベロスたちと相まみえることになった。
「なんというか、律儀ですね」
 感心半分、呆れ半分で風流が言う。
「ああ、人の姿を失っても白菜を思う気持ちは残っているのですね」
「なるほど、じゃあ攻性植物はゆっくり死んでいってね」
「ええ!? え、ああ、ええ……?」
 一方、リルミアは随分と感激したらしい。だというのにルリィの有無を言わさぬ言動に驚き、さらにゆっくりというところが的を射ていると感じてなんとも曖昧な言動になってしまってたりする。
 なお、油断していたわけではない。いつでも動けるように警戒していた。それでも、先に動いたのは攻性植物白菜マンのほうだった。
 あからさまに導火線に火のついた白菜の形した爆弾ぽい何かを投げつけてきた。
「きゃーっち!」
 ボールを投げられた子犬のように、リリウムが見事インターセプト。
「……ぱすです!」
 からのパス。
「……へぇ?」
 どかーん。
 パスを受けたツグミが爆発した。
「ああ、ごめんなさいです! キャッチからのパスはきほんなのでついです!」
「や……やってくれましたねーぇ」
 立ちこめた煙を斬り裂き、蹴りが閃き光の筋となって攻性植物白菜マンを裂く。
 この程度の攻撃で立ち止まるようなツグミではない。彼女には確固たる正義がある。それを貫くためであれば誰がどれだけ血を流そうとも躊躇することはないのだ。
 では、何がそこまで彼女を駆り立てるのか。
「美味しいは正義ですよーぅ!」
 らしい。
「白菜食いてェ!」
 ドミニクが同調した。白菜を見ていろいろ昂ぶったのだろう。やたらめったらめちゃくちゃに銃弾をばらまく。
 一見めちゃくちゃでもその動きは実は冷静、あくまで相手の足止め、制圧のための射撃。
 攻性植物白菜マンが出遅れ、ワンテンポ遅れて次の爆弾を放つ。だが、すでに迎撃態勢を整えていたルリィが爆弾を叩き割って破裂させ、その間に風流が星座の力を宿した斬撃をお見舞いする。
「今の、導火線だけを切り落とせばよかったのでは」
「派手な方がいいじゃない」
 黒煙まみれの2人。
「今のうちにヒールをかけましょう」
「はいです!」
 ダメージが入ったことを確認して、すかさずリルミアとリリウムが攻性植物白菜マンを癒やす。
 妨害されないようにリリさんもフォロー。
「がんばれー」
 ちゃんと応援してる。今日のラトゥーニは随分真面目だ。一体どうしたのだというのか。
 その一方で畑に投げ込まれたシグリットが何をしているかというと。
「まずは白菜を敷き、上に豚肉を並べる。そこに白菜を被せさらに豚肉を重ねる。コレを何層かにしたら、上から適度なサイズにカットする。ザク切りで構わん。そしてそれを鍋に並べる」
 料理始めてた。
「縦にして並べたら、味付けした出汁を流し込み、蓋をして煮立たせる……しばらくすればミルフィーユ鍋の完成だ」
 ちゃんと戦えという声が聞こえてきそうなものだけど、なんやかんやで誰も注意してくれない。
 仕方ないので、落ち着いたあとは自主的に攻撃に参加しておいた。

●白菜を砕く
 誰が安全と言ったか。
 そんなことはなかった。気付いたらリリさんはラトゥーニの腕の中にいた。いやな予感しかしない。
「両手で持ってふだんの2ばぃ……」
 もう悟った投げられるやつだこれ。
「さらにふだんの2ばぃのジャンプで4ばぃパワー……」
 ラトゥーニが飛び上がった。違和感しかない。
「そして、ふだんの3ばぃの回転をかけて投げれば……」
 まさかの12倍パワー!
 なんてことはなかった。きりもみ回転で突っ込んで行ったリリさんは攻性植物白菜マンに直撃、バウンドして自主的な攻撃と回復を繰り返していたシグリットの顔面に激突した。あなたとがったいしたい。
 そんな感じの惨事があったりなかったりあったりしたけど、順調に攻性植物白菜マンにはダメージが蓄積され、ヒールでの回復も順調。ケルベロスたちにも若干の疲れは見えているところだが、そろそろ決着がつく頃だろう。
「ここからは慎重に、手加減していかないとね」
 そう言ったルリィはチェンソー剣を両手で正面に構え、エンジン音をけたたましく鳴らしながら白菜に振り下ろした。白菜の身体が深く抉れ、葉々が粉々に砕け飛び散る。
 見事なクリティカルだ。
「手加減とは一体」
 確率だから仕方ない。
 ぼやきつつも明日本気出す心を溶岩に変えて攻撃を放つ風流だが、彼女のそれだって加熱するとかそんな次元の話じゃない。
 でも安心、攻性植物白菜マンは燃えるでもなくプレッシャーを感じたようだ。大地に両手と膝をついてぷるぷる震えている。
「ずっと思っていたんですが……囚われてしまった人の救出、なんですよね」
「はい、その通りです」
 風流の言葉にリルミアが頷く。
「あの人、ものすごく馴染んでいませんか?」
「きっとそれだけ白菜を愛しているんですっ」
「あ、そーいう解釈ですか」
 ならば、攻性植物が弱っている今こそ、白菜マンに語りかけるときなのだろう。意を決してリルミアは歩み出た。
「白菜、美味しいですよね! 豚バラ白菜鍋とか大好きです!」
 誰かさっき作ってた。戦闘中に。
「煮てよし、漬けてよし、生でもよし、和洋中どれでもいける冬野菜界のオールラウンダー白菜!」
 ぐぐ、っと攻性植物白菜マンが立ち上がり始めた。絵面としては敵を応援してるように見えなくもない。
「あなたにインスピレーションを授けたそんな白菜の新作料理、食べてみたいです。必ず助けてみせますから、良かったらご馳走してくださいねしてくれるかもしれませんしてくれるといいな」
 なんかいろいろ本音がだだ漏れたところだが、きっと心は通じたと思いたい。攻性植物白菜マンもすっかり立ち上がったところだし。
「ではここできょうのえほんです!」
 唐突すぎるリリウムのブックオープン。
 世は戦乱。狸、狐、レッサーパンダの三国が覇権を争う天下三分の時代。
 3匹のたぬきが世界を統治せんと誓いを立て、白菜畑で義兄弟の鍋を交わす――。
 だが畑を荒らされた白菜農家が怒りの大反撃、農家ビームが世界を炎の海に沈めるのだった。
「くさってやがる……はやすぎたんだです……」
 ついでにいっしょに攻性植物白菜マンも焼き払われてた。
 もえてる、やばい、このままだと焼け落ちる。
「このまま終わらせはしませんよーぅ」
 ツグミが扇を一振り、なにがしかの幻影が白菜を包み傷を癒やしていく。
 すべては白菜のため、きっと美味しい白菜料理を食べさせてもらえると信じて。
「お鍋たべましょーぅ」
「白菜食いてェーッ!!」
 機を窺っていたドミニクが神速とも言える抜き撃ちで、攻性植物白菜マンの四肢を同時に貫いた。支える手立てをなくした白菜はその場に崩れ落ちるように転がる。
 最後の最後までなんとも緊張感のない姿だった。

●鍋空の下
 ひたり。ひたり。
 タベサセテ……。
 ボクタチヲタベサセテ……。
 ひたり、ひたり。
 タベサセテヨオオオオオ……。
「ぎやああああああああ!!!!」
 被害者の男性が叫びながら起き上がった。とても元気なようだ。
「一体どんな幻影見せたんですか」
「さーぁ? どんなでしょーぅ」
 風流に聞かれてツグミはすっとぼけた。
 まぁ元気だったみたいなので、素直に白菜料理を作ってもらうことにした。
「鍋とか食いてェ」
 待ってる間、ドミニクがすでに耐えられなさそう。
 最初から言語がひどいことになってるけど、きっとそういう前振りだったに違いない。
「水炊きとか食いてェ、すき焼きとか食いてェ、ミルフィーユ鍋とか食いてェ」
 まだ言う。
 とにかく腹を空かせすぎである。
「鍋以外とか食いてェ」
 結局なんでも良いのか。
 なんかリリウムがよじ登ってる。ドミニクライダー。
「こうもたくさんあると、いろいろ食べてみたくなりますねーぇ。自分は拘りないですからなんでも……」
 言いかけでツグミの言葉が止まった。
 なぜならラトゥーニと目が合ってしまったからだ。
 今回は本当に謎が尽きない。普段働こうとしないこの人が、やたらとやる気を出してる。出した結果鍋作りを手伝ってる。
「てきとぅに……」
 なんか身体からにじみ出してる黒いオーラみたいなのが鍋に混じり込んでいってる。何が何だか分からない。
「ちょっとそれはノーセンキューですぅ」
「だぃじょぅぶ、ぉぃしくなぁれー……」
 黒オーラ鍋は美味しくなった。
「あら、このミルフィーユ鍋おいしいわね」
 まるで我慢する気ないルリィが、なんか畑に放置してあったミルフィーユ鍋に手をつけ始めた。
「うーん、美味しいですねぇ」
 ほっこり。
 リルミアもちゃっかり自分の分確保してた。
「そういえば、正式名称はミルフィーユ鍋でいいんでしょうか」
「分かれば良いんじゃない?」
 説明が雑すぎる。
 それを作ったシグリットと言えばなんかすごいぐったりしてた。
「いや、サボっていたわけではないぞ。少なくとも今回は」
 なんかリリさんに語りかけてる。リリさんはなんか口から黒いエクトプラズム吐いててヤバイ感じだけど。リリウムがつんつんするとリリさんがぴくぴくした。
「おにーさんはがんばりました、わたししってますです!」
 えへんと胸を張る。
「それから、ひとをたすけたらごちそうがでてくることもしってますです!」
 おめめきらきら、あほげびょんびょん。
「……あー、キムチ鍋とかもいいかもな」
 何かを訴える目に耐えきれず、もうひとつ何か作ることにしたシグリットだった。
「いろいろな鍋があるのね。冬はシチューやスープ、ポトフも良いけど、日本に来て鍋も良いものと知ったわ」
 すき焼き、水炊き、ふぐちりなんかも。ルリィのわくわくが高まっていく。
「彼の新作鍋料理ってどんなものかしら?」
 もはや誰も敢えて言わない。
 彼が鍋を作るなどとは一言も言っていないことなど。
 やがて、寒空の下に男の作った温かい白菜料理が運ばれてきた。
 言うまでもなく、それは白菜鍋だった。

作者:宮内ゆう 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2018年1月30日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 1/素敵だった 2/キャラが大事にされていた 2
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