オウガ遭遇戦~鬼哭啾啾

作者:秋月きり

 オオオオオオオオ。
 鳴き声が響いていた。獣じみた雄叫びは、この世のものと思えない慟哭の声であった。
 場所にして岡山県の山中。巨石の前にそれはいた。
 体躯にして2メートルに至らない程度の筋骨隆々の巨漢。太い腕に握られているのは巨大な鉄塊だった。
 地球人と見紛う外見の男はしかし、決定的に違う容姿を備えていた。男の額からは金色の一本角が生えていたのだ。
 鬼。誰もが彼をそう形容するだろう。そして、その認識は間違っていなかった。
 オオオオオオオオ。
 男は慟哭と共に、巨木をなぎ倒す。自身の胴程もあるそれは、男の一撃により根元より砕け散っていた。
 コードネーム「デウスエクス・プラブータ」。オウガの一員であった男はグラビティ・チェインの枯渇により、狂乱状態に陥っていた。
 やがて男は足を踏み出す。自身の歩む先に豊富なグラビティ・チェインがある。男の嗅覚はそれを感じ取っていた。

「リィ・ディドルディドル(悪の嚢・e03674)を始めとした皆さんが探索を進めてくれた事で、オウガに関する予知を得る事が出来たわ」
 弾ませればいいのか、それとも落ち込めばいいのか。リーシャ・レヴィアタン(ドラゴニアンのヘリオライダー・en0068)は複雑な表情を浮かべ、ケルベロス達に自身の見た予知を告げる。
 岡山県中山茶臼山古墳周辺に、オウガが多数出現する余地を見た、との事だった。
「オウガの現れる日時は2月3日。だけど、予知では彼らのゲートの位置を特定する迄に至ってないわ」
 それが朗報なのか悲報なのか。判断できる由もないケルベロス達は彼女の次の言葉を待つ。
「出現するオウガは極度のグラビティ・チェイン飢餓状態に陥っていて、知性が失われている。ただただ、人間を殺してグラビティ・チェインの強奪を目論む――悪鬼と化しているの」
 この状態のオウガに何を話しかけても応じる事はない。戦うしか止める手段はないと断言する。
「で、そのオウガ達は多くのグラビティ・チェインを求めて吉備津神社方面に移動するようなの。ちょうど、その頃、節分の神事で神社周辺には多くの人が集まっているから、それに惹かれて、だと思う」
 だから、皆には中山茶臼山古墳から吉備の中山細谷川までの地点でオウガの迎撃を行って欲しいと告げる。
「戦闘場所は二つ。一つは、中山茶臼山古墳周辺にある巨石周辺。古墳周辺には鏡岩を始めとした巨石遺跡が多くあり、そこにオウガは現れる」
 伸ばした人差し指と中指のうち、中指が折りたたまれ、人差し指だけがケルベロス達に向けられていた。
「もしくは、オウガが必ず通過する吉備の中山細谷川の隘路。その出口での迎撃になるわ」
 そして、オウガとの戦闘に勝利する方法は2つしかないとリーシャは言葉を続ける。一つはグラビティ・チェインの枯渇によるコギトエルゴスム化。そして、もう一つは当然、その心臓に重力の鎖を叩き込む――ケルベロスとして、デウスエクスに『死』を与える事だ。
「巨石群で迎撃した場合、周囲に人影はないから、戦闘に集中出来るわ。逆に吉備の中山細谷川の隘路の出口で迎撃を行う場合、節分イベントが行われる吉備神社が近くにある事は注意しなければならない。……先も言ったけど、ここには節分イベントの為、集まっている人々が多数いるの」
 当然、ケルベロス達を突破されれば多数の犠牲者を生む結果になるだろう。戦場を選ぶ事は出来るが、その有利不利は踏まえて欲しい、との事だった。
「オウガは戦闘力が高く、普通に戦っても苦戦は必至。もしもそれ以上の結果を望むならば、相応の作戦や戦術が必要になる事を忘れないで」
 ちなみに、コギトエルゴスム化による勝利を狙う場合、巨石群ではコギトエルゴスムと化すまで20分程度。隘路の出口では12分程度の時間を稼ぐ必要があると推測されてる。当然、オウが自身、無策でそれを行えるほど与しやすい相手ではない。
「だから、本来ならそのまま倒して欲しいの。それがみんなにとって、そして周辺地域の住民の安全にとって、一番いい結果と思うから」
 無茶はして欲しくない。揺れる金色の瞳はそう訴えていた。
 なお、オウガの操るグラビティは鈍器――つまり、エクスカリバールの様なものらしい。戦闘に役立てて欲しいとリーシャは告げる。
「みんなが敗北すれば一般人に被害が出てしまう。それは努々忘れないで」
 それだけを告げ、リーシャはケルベロス達を送り出すのだった。
「それじゃ、いってらっしゃい。悔いのない選択となるよう、祈っているわ」


参加者
久条・蒼真(覇斬剣闘士・e00233)
レクシア・クーン(咲き誇る姫紫君子蘭・e00448)
白銀・風音(お昼寝大好きうさぎ・e01669)
リコリス・ラジアータ(錆びた真鍮歯車・e02164)
一津橋・茜(紅蒼ブラストバーン・e13537)
ルビー・グレイディ(曇り空・e27831)
リチャード・ツァオ(異端英国紳士・e32732)
長篠・ゴロベエ(パッチワークライフ・e34485)

■リプレイ

●12分/攻防
 ぶんと響く風切り音は力強く響く。
 如何なるものをも粉砕する無双の一撃を紙一重で躱した長篠・ゴロベエ(パッチワークライフ・e34485)はくっと嘆息の息を零した。
「話は……聞いてくれないか」
 問い掛けにも似た独白に応えはない。狂乱に染まった眼光が、自身に注がれるだけだった。
 そして響く慟哭は、鬼哭の声。
 彼は哭いていた。何を思い、慟哭を響かせるのかはわからない。怒りか、哀しみか、それとも飢えに対する恐怖心か。
「これが、オーガ、ですか……」
 長槍を構えるリコリス・ラジアータ(錆びた真鍮歯車・e02164)の声は震えていた。それは一重に、相手の力量を思い知ったが故だった。地獄と化したはずの心臓は激しく鼓動し、冷水の如き何かを体中に駆け巡らせる。
 ダモクレスからレプリカントになった時、その意味を彼女は理解した筈だった。それの感情の名は恐怖。がちがちと鳴り響きそうな奥歯を噛み締める事で、恐怖を制する。
 デウスエクス・プラブータ――オウガ。それが彼女達が対峙するデウスエクスの名前だった。
 それについての情報をケルベロス達はほぼ有していない。それが鬼の名に相応しい金色の角を持っている事。彼の特徴なのか、赤銅色の肌を持っている事。そして。
「――危ないっ!」
 鉄塊の如き金棒の一撃をゲシュタルトグレイブで受け止めたルビー・グレイディ(曇り空・e27831)は勢いを殺しきれず、後方へと吹き飛ぶ。くるくると冗談の様に吹き飛ぶ様子は、糸の切れた凧を連想させた。
「っと、大丈夫ですか?」
 宙に舞う小柄な体躯を受け止めたリチャード・ツァオ(異端英国紳士・e32732)がむっと呻き声を漏らす。玉突き事故の様な衝撃は、彼に少なからずのダメージを与えていたようだ。
「こんなのを12分も……」
 潰れ兎になっちゃう、との白銀・風音(お昼寝大好きうさぎ・e01669)が口にする感想に、レクシア・クーン(咲き誇る姫紫君子蘭・e00448)が神妙に頷き、応じる。
「しかも、誰も倒れては駄目と言うおまけ付き、です」
 まさに背水の陣、と口にするその目は、真摯な青を纏っていた。
 風音の口にした時間制限はオウガがコギトエルゴスムと化すまでの時間だ。中山細谷川の隘路を選んだ際に告げられたその刻は、その間、耐え切れば戦闘は終了する、と言う示唆であった。だが、コギトエルゴスムと化す条件がグラビティ・チェイン枯渇の飢えに起因するものならば、それがただの時間制限で無い事は明白だった。
「俺たち一人でも倒れれば、彼はそこからグラビティ・チェインを吸い上げるだろうな」
 駆動音を響かせるチェーンソー剣で金棒を受け止めた久条・蒼真(覇斬剣闘士・e00233)が淡々と告げる。
 そう。オウガがこの場所で戦い続けているのは、好戦的が故ではない。足止めに奔走するケルベロス達を殺し、その魂からグラビティ・チェイン奪おうとしているのだ。
 仮にケルベロスが誰か一人でも倒れれば、オウガはその血肉を喰らい、魂からグラビティ・チェインを奪うだろう。それは『グラビティ・チェイン枯渇によるコギトエルゴスム化』が望めない事を意味していた。
「難儀な耐久戦ですね~。指が鳴ります」
 ぽきぽきと指を鳴らしながら、一津橋・茜(紅蒼ブラストバーン・e13537)が嘯く。大言壮語な台詞は、自身を奮い立たせる為に紡がれていた。
 ルビーのミミック、ダンボールちゃんを合わせ、ケルベロス達の総数は9人。対してオウガは1体。だが、オウガは誰か一人を屠るだけで良く、ケルベロス達はダンボールちゃん以外が倒れるのは許されていない、字面だけ見れば一方的に不利な戦いは難儀、と言う他無かった。
 だが、それでもケルベロス達はオウガを殺さずに済む方法として消耗戦を選んだ。選ばざる得なかった。
「……ここを通す訳に行きません」
 後ろに控える吉備神社に集う、多くの人々の為にと、レクシアの言葉は決意を以って紡がれる。彼らを思えば、当然、突破を許す訳に行かない。
(「せめて、事前に避難勧告を出せれば……」)
 しかし、それは叶わぬ思いだった。未来予知と違う状況を作り出せば、何が起きるか判らない。状況の悪化を防ぐ為、それは避けなければならなかった。
「お前達の女神には借りがある。だから、お前を殺さず、終わらせる」
 屋久島の事、ピルグリムとの戦いの事。噂でしか知らないそれらを想起し、ゴロベエは祈りを捧げる。
 この戦い、必ず誰の命を奪わせず、奪わず、円満な解決を迎えさせる。それが、ゴロベエの願いでもあった。

●5分/焦燥
 オオオオオオオオ。
 鬼哭の声が響く。オウガの口から零れる声は山々に木霊し、反響音がケルベロス達の耳朶を幾度となく叩いていた。
「そう簡単に倒れません!」
 治癒用のドローンを駆るレクシアは地獄に染まった翼を推進力に転換。オウガの周囲を駆け巡る事で攪乱の役目を果たしていた。
 数の利以外にケルベロス達の優位を示すものがあるとするならば、それは理性の有無だ。
 飢餓による狂乱に染まったオウガの攻撃は、条件反射に近かった。有利不利を考えず、近くにいる者を攻撃する。とりあえず目の前の標的に手を出した、と言い出しかねない攻撃は、故に狙いが定まっておらず、結果として同じケルベロス達への集中砲火を防ぐ事となる。
 飛び回るレクシアを叩き落そうと振り降ろされた金棒の一撃はしかし。
「やれやれ。悪鬼を懲らしめるとは、まるで桃太郎ですね」
 岡山県に由来する昔話のヒーローの名を口にするリチャードの長剣は、それを受け止めていた。
 だが、デウスエクスの膂力はその抗いを許しはしない。ギリギリと押し返され、やがて、金棒がリチャードの頭を粉砕するべく距離を詰める。
「我が手には、全てを薙ぎ払う赤き稲妻!」
 リチャードの命を救ったのは赤色のオーラを纏う、茜の拳だった。
 オウガの顎を捉え、吹き飛ばす筈の一撃をしかし、オウガは数歩、踏鞴踏むのみで踏みとどまる。ぎらつく視線と共に、太い腕が茜に伸ばされた。
 赤き雷光を押さえるは赤銅色の肌をした素手。炎でも焼けず、雷光でも焦げず。物理現象すら凌駕する腕力、茜の拳がぎちぎちと悲鳴を上げた。
「あたしがここで止めるんだ……!」
 掌が完全に閉じられる間際。ルビーの繰る雷を纏った長槍の一撃が、オウガの腕に突き刺さった。同時に飛び込んだミミック――ダンボールちゃんの歯は、その腕に食い込み、痛みでオウガの口から呻き声が迸る。
 間一髪で圧壊から逃れた茜は蹴りを敢行した。オウガの身体そのものを足場にして跳躍。彼我の距離を取る。
「骨を折るつもりで来たけど、本気で折りそうになるなんて……」
「とんでもないパワーだよね」
 ゴロベイは微苦笑と共に、風音は焦りの口調と共に光の盾を生成、茜の傷を癒す。
 拳を握りしめ、具合を確認していた茜は力強く頷く事で、まだ戦えるとの意思表示を見せた。
「ここでお前は足止めだ」
 諭すように放たれた蒼真の蹴りを、オウガは身を捻る事で受け流す。強力にして強靭。オウガが纏う筋肉は桁外れの膂力を生み出す武器であり、如何なる攻撃からも身体を守る鎧である。そう悟った瞬間、彼の頭上を金属塊が通過していた。
「強いな、お前」
 零れた感想は、心よりの物であった。破壊力を考えれば、蒼真が遭遇した如何なるデウスエクスよりも高い、そんな気さえ覚えてしまう。
「ですが、そうであれ、ここで負けるつもりはありません」
 リコリスの紡ぐ詠唱は、石化の魔力と化してオウガに牙を剥いた。魔力に捕らわれたオウガはしかし、それすらも力任せに振りほどき、足を止める事無くケルベロス達へ走り寄る。
「――本当に、出鱈目、ですね」
 何時しか、ケルベロス達の遭遇したオウガ――女神ラクシュミも出鱈目な戦闘力を持っていた。出自が同じならば出鱈目さ加減も同じかと零したリコリスの吐露はしかし、誰の耳にも届いていなかった。

●3分/慟哭
 オオオオオオオオ。
 鬼哭の声は鳴りやまない。
「――まだ12分までは程遠い、ですか」
「正確には、9分。あと、3分ほど、です」
 氷纏う長剣でオウガを牽制するリチャードに応えるのは、アイズフォンで時間を計るリコリスの声だった。いつもと同じ一分、いつもと平等な筈の一秒はしかし、いつもと同じとは思えないくらいに緩やかなものに感じた。
(「まだ、3分も、か」)
「ドワーフの意地、見せてあげる!」
 盾役として無数の傷を負ったルビーは、自己暗示で傷を癒しながら立ち上がる。だが、傷に抗うが故の動作は酷く緩慢で、オウガの肉薄を許してしまった。
「――っ!」
 サーヴァント使い、そしてサーヴァントは常人に比べ、体力が劣る傾向にある。今の彼女にオウガの一撃を耐えきるだけの体力は残されていなかった。
「ダンボール……ちゃん?」
 そして、それはサーヴァントであるミミックも同じだった。主を庇う為に割って入り、金棒に吹き飛ばされたミミックはむしろ誇らしげに、光の粒と化し、消失していく。
 ルビーが悲哀に満ちた声を上げたのは一瞬だけだった。目端を乱暴に拭った彼女に、再度、斬撃が襲い掛かる。
「――やらせません」
 ミミックに続き、ルビーを庇った人影は、強がりとも取れる笑みを浮かべていた。その身体は纏う服ごと切り裂かれ、白く細い手はまびろ出た膨らみを押さえている。頬を羞恥に染め、それでも人影――レクシアは気丈に叫ぶ。
「負ける訳に、行かないんです!」
 背後に控える人々の為に。
 仲間達の帰りを待つ誰かの為に。
 そして何より。
(「もしかしたら、貴方も私の仲間になるのかもしれません――」)
 だから耐えろと願う。故に耐えろと祈る。必ず耐えろと叫び続ける。
 レクシアの叫びに呼応し、傷が、そして切り裂かれた衣服までもが再生していく。ヒールの力は有機物だけでなく無機物までも影響する。この世界の理を目の当たりにした彼女から零れたのは、感嘆にも似た溜め息だった。
「そうだ。女神ラクシュミ様の為にも負けられない!」
 ゴロベエもまた、叫びと共にレクシアにヒールを紡ぐ。
 それが起きたのはその瞬間だった。
「……ラ、ク、シュ、ミ?」
「え? 喋りました?!」
 途切れ途切れの声はオウガから、それに対する驚愕は茜から紡がれる。しかし、オウガの言葉は一瞬の事。再びその口が紡ぐ言葉は、鬼哭の声だった。
「オオオオオオオオオ!」
「ラクシュミが判るのか、それとも……?」
 金棒を掻い潜る蒼真の声に反応はない。雄叫びにも似た嗚咽と共に振るわれる金棒は木々を抉り、道路を粉砕し、ケルベロス達をも強襲していった。
「……一瞬だけ、でしたね」
 電動鋸の一撃でオウガを牽制する茜はむぅっと呻く。
「だが、それで充分。――重要なのは炒り豆を中てる事ではなく、撒かれた事こそが本命だ。自宅警備式結界起動……MAMEMAKI 百鬼封神!」
 対してゴロベエの声は喜色に染まっていた。何となくオウガへ効果があると彼自身が信じ込む入り豆を掴むと、足止めになれとばかりにオウガの足元にばらまく。
 豆如きに怯むオウガではないが、それがグラビティの込められたものであれば別だ。足を撃たれ、二、三歩、足踏みするように後退する。
「大丈夫。ラクシュミ様は地球にいるよ。だから、貴方も、早く――」
 風音による定命化の文言は最後まで紡がれなかった。オウガの投擲した金棒は彼女を襲い、紙一重で躱した地面を大きく穿つ。
「あと、2分」
「やれやれ。早くそんな未来が来ればいいのですけど」
 電撃纏う槍を繰り出すリコリスの言葉と、魂喰らうリチャードの拳の一撃が重なり、オウガの身体へと強く、打ち据えられていた。

●0分/終局
 到来は唐突だった。
 カランと乾いた音は、コギトエルゴスムが地面に零れた証左。
 そしてなにより、鬼哭の声が鳴り響いていない事が、終局を告げていた。
「戦闘終了です。お疲れさまでした」
 コギトエルゴスムを拾い上げたリコリスは淡々と告げると、こぶし大の宝石と化したそれを懐へと収める。
 これが今後、災いとなるか福となるか、それは誰も知らない。ただ、それを福とするために自分達は尽力した。それでいいのでは? と思う。
「コギト、ゲットだぜ! です!」
 勝鬨の声を茜が上げる。だがその身体はぺたりと地面にへたり込み、これ以上動きたくないと泣き言混じりの声すら口から零れていた。
「同じく……」
 座り込んだルビーもまた、同意の声を上げた。これからゲートの探索やオウガそのものの調査、出来れば節分行事の見学等、やりたい事は沢山あったが、身体が付いていきそうにない。それ程、濃厚な12分を過ごしたのかと、今更ながら実感が湧いてくる。
「やれやれ。御伽噺の英雄に肖るのも楽ではありませんね。絵本に出てくる鬼なら楽なんですけど」
「加えて得た物は金銀財宝じゃなく、コギトエルゴスムが一つだけ。……お伽話なら、意地悪する方の報酬だよね」
 リチャードの嘆きに軽口で応戦する風音。
 まったく、と笑う一同は言葉を続ける。
「でも、それが一番の報酬……かな?」
 12分耐えきった先にある未来。オウガを殺さずコギトエルゴスムとして封印する。その先は約束されたものでは無いけれど、そこに向かう道標を作る事は出来た。その事が誇らしいと、ゴロベイは笑う。
「さて。そろそろ迎えの時間かな?」
 蒼真の声に応える様、パラパラパラとヘリオンのローター音が響きだす。8人の回収は直ぐに行われるだろう。
 そして。
「……それじゃあ、帰る前に、ヒールを施してしまいましょう」
 レクシアの容赦ない追い打ちに、一同は顔を見合わせ、うんざりとした表情と共に笑い合うのだった。

作者:秋月きり 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2018年2月3日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 2/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 4
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