●蘇った鬼
岡山の山奥に、咆哮が響いた。
森の中、巨大な岩が鎮座する場所に現れたのは、無数の角を生やした『鬼』だ。
昔話の鬼さながらの、筋肉に覆われた体はまるで岩のよう。
頭頂部から背中にかけて、無数の角がまるでたてがみのように生えている。
もっとも、その赤銅色の肉体を、周りの岩と見間違えることはなかっただろうが。
手にしているのは、その体躯に見劣りしない太くて長い金属製の棒だ。
「……ウ……グ……グラビティ……チェイン……。よこせぇぇぇ!」
力任せに振り回した棒は、空を引き裂き、巨石の1つを砕く。
だが、鬼は自分が砕いた岩になど、まるで興味を抱いてはいなかった。
開いた口元から唾液が落ち、地面を汚す。
その視線の先は、たださらに別の岩と森があるだけだ。
岩陰に誰もいなかったことを知って鬼は苛立ち、大地に足を叩きつける……。
次の瞬間、鬼の体は反動で数歩分も移動し、経路上にあった大木を粉々に砕いていた。
「チェイン……よこせ……」
巨岩遺跡を破壊しながら鬼……オウガと呼ばれるデウスエクスは、獲物を求めて移動していった。
●節分の鬼
集まったケルベロスたちに、石田・芹架(ドラゴニアンのヘリオライダー・en0117)はオウガが起こす事件を予知したと告げた。
「赤鉄・鈴珠(ファーストエイド・e28402)さんなど、複数の方が節分にあわせて鬼、つまりオウガが現れることを予測して調査されていましたが、それが当たっていたようです」
オウガが現れるのは、岡山県にある茶臼山古墳の周辺。日付が2月3日であることはわかっているが、彼らのゲートの位置などは特定できていない。
「出現するオウガは強度のグラビティ・チェイン枯渇状態にあり、知性は失われています。ただ人間を殺してグラビティ・チェインを奪うことしか考えていません」
オウガについては知りたいことがある者もいるだろうが、会話が成立するような状態ではないということだ。
「オウガたちは節分で人が多く集まっている吉備津神社へと向かうようです」
敵がたどり着くまでに迎撃して欲しいと芹架は告げた。
古墳の周辺には、表面が鏡のように平らだという鏡岩をはじめとして、多数の巨岩遺跡が存在している。オウガは巨岩の近くに現れることが多いようだ。
出現地点で迎撃するか、あるいは彼らが必ず通ることになる中山細谷川の隘路の出口で迎撃することになる。
それから、芹架は敵の戦力について説明を始めた。
「敵はまず、巨大な金棒を持っています。これを用いて、鉄塊剣と同等の技を使うことができるようです」
また、高速で突進し、頭部から背中にかけて生えた角による攻撃を行うこともできる。
速度が早いため、遠距離にも攻撃が可能だ。命中すると、角で引き裂かれて傷が治りにくくなってしまうようだ。
「なお、今回の敵はグラビティ・チェインが危機的に欠乏している状態です。撃破する他に、チェインが枯渇してコギトエルゴスムになるのを待つことで勝利することも可能です」
もっとも、オウガは非常に強力であり、しかも飢餓状態の敵はひたすら全力で攻撃してくる。
長時間持ちこたえようとすると難易度が逆に高くなるので、撃破を狙うほうが無難かもしれない。
「先ほども言いましたが、戦場は2つの地点のどちらかを選ぶ形になります」
まずは敵が出現する巨岩遺跡付近。こちらなら一般人を巻き込む心配はないが、コギトエルゴスム化まで20分ほどかかると推測されるので、撃破して勝つしかないだろう。
それから、中山細谷川付近の隘路。ここまで来てから仕掛ければ、敵は12分ほどでコギトエルゴスムになる。倒すだけでなく、敵の自滅を待つことも選択肢に入ってくる。
ただし、隘路からは人が集まっている吉備津神社が近い。突破される可能性があるので、阻止に十分な作戦を練っておかなければならないだろう。
「どちらで戦うかは、皆さんで話し合っていただければと思います」
芹架は言った。
「オウガは強力な敵ですが、節分に鬼の襲撃を成功させるわけにはいきません」
鬼を撃退し、福を呼び込んで欲しいと芹架は言った。
参加者 | |
---|---|
望月・巌(昼之月・e00281) |
リーファリナ・フラッグス(拳で語るお姉さん・e00877) |
ノーザンライト・ゴーストセイン(ヤンデレ魔女・e05320) |
螺堂・セイヤ(螺旋竜・e05343) |
嘉神・陽治(武闘派ドクター・e06574) |
タクティ・ハーロット(重力を喰らう晶龍・e06699) |
志藤・巌(壊し屋・e10136) |
加藤・光廣(焔色・e34936) |
●節分の鬼
中山細谷川の隘路に、ケルベロスたちは集まっていた。
ドン、と音がした。志藤・巌(壊し屋・e10136)が大きな音を立てて装備していた丸太を地面に突き立てている。
8人のケルベロスは即席のバリケードを作っていたのだ。
用意できる限りの材料で作った障害物の前面は、装甲版で補強されていた。
「……こんなところだな」
離れた遺跡で復活した敵が移動してくるまで、少しだけ時間がある。
さすがに10tトラックを借りてくるとか、あまり大掛かりなことまでする時間はないが、それでも無双の怪力も活用しつつ手に入る限りの材料で彼らはそれを作っていた。
もっとも、敵の移動を完全に止めるのは無理だ。仮に、10tトラックを持って来ることができても、ケルベロスやデウスエクスにとってはちょっと邪魔と感じる程度だろう。
だが、邪魔だと感じてくれるなら、それだけ突破を試みる可能性は減る。今回のように理性のない状態の敵なら、なおさらだ。
「ま、準備はこれで良しとしておこうぜ。さて、鬼退治ならこれを飲まなきゃな」
加藤・光廣(焔色・e34936)が懐から銀製のスキットルを取り出して、一口あおる。
「鬼が飲めば毒になるってほどの強い奴だ。お前さんたちもどうだ?」
ケルベロスの中には10代の者も多いが、今回のメンバーには未成年は1人もいない。すでに老境に達した歳の男は、不敵に笑って仲間たちにも勧めてみせた。
「悪いが、ゆっくりと酒盛りに興じている時間はなさそうだ」
冷静な声で答えたのは螺堂・セイヤ(螺旋竜・e05343)だった。
ドラゴニアンの翼で飛んでいた彼は、移動してくる敵の姿をとらえたのだ。
青年は片手で妖刀を抜き、漆黒の手甲を装備したもう片方の手を軽く握る。
「オウガいきなり出てきたな……ラクシュミ見る限り悪そうな種族には見えないけど……。まあ、考えるのは後でいいか」
ハンマーガントレットの重みを確かめつつ、タクティ・ハーロット(重力を喰らう晶龍・e06699)が言う。
「節分に鬼とはタイミングがバッチリだが……しかし、大変そうだなぁ」
リーファリナ・フラッグス(拳で語るお姉さん・e00877)が大きく腕を回すと、前髪に一房混ざった毛先だけ色違いの髪が揺れた。
「犠牲も被害も出さないのは難しい……けど、心情的には楽な道……」
ノーザンライト・ゴーストセイン(ヤンデレ魔女・e05320)が呟く。
魔女の帽子をかぶったその表情はずっとぼんやりとしたままで、口に出すまでは仲間たちにもその心情を推し量るのは難しかった。
「取り敢えずまずは無力化ですなーだぜ。難しくても、やるだけやってみるんだぜ」
タクティがさらに言葉をつづけたのとほぼ同時に、ひときわ高い足音が前方から響く。
「チェインンンンンッ!」
巨大な鉄の棒を、オウガが振り上げていた。
「よもや本場で鬼退治とはな」
嘉神・陽治(武闘派ドクター・e06574)が隣に立つ色黒の男に声をかけた。
「ああ。節分に鬼退治とは洒落てるねぇ。しかも、桃太郎伝説のある岡山で……」
青春アミーゴである彼の言葉に、望月・巌(昼之月・e00281)が頷く。
「とはいえ皆の言うとおり、本意で攻め込んだとはまだ言い難い。このまま地球の敵対者にしちまうわけには惜しいな。今回は大人しく眠って貰うとしようぜ」
「だな。話が聞ける様子じゃねぇし、とりま、おねんねして貰いますかってね」
眼鏡をかけた長身の男たちは、すでにそれぞれの得物を構えていた。
狙撃役である望月・巌は攻撃を仕掛ける機をうかがうため、回復役の陽治は敵の動きを見極めるために、それぞれオウガへと視線を向けている。
「悪いけど、ここは通行止めだぜ。もっとも、遠回りには及ばねえがな」
光廣がまだ中身の残ったスキットルを投げつける。
それが、戦いが始まる合図となった。
●鬼を食い止めろ
一瞬にして加速したオウガは、角の生えた頭で望月・巌に向かって突っ込んでいく。
志藤・巌はとっさに飛び出して、自分と同じ名前の(読み方はゲンとイワオで異なっていたが)男をかばう。
頑丈な体に角が突き刺さり、血が周囲へと飛び散った。
「悪いな、巌」
「大したことじゃねえよ。それより援護を頼むぜ、ガンさん」
傷を負いながらも、青年は揺らぐことなく己の武器を構えてみせる。
「力自慢とのぶつかり合い……俺好みだ。思い切り来いよ!」
隘路の土を蹴り、彼はオウガへと突進していった。
「若いのは元気がいいねぇ。とはいえ適当に挑んで時間が稼げる相手でもあるまい。追儺に則って豆まきと行くぜ」
後方で望月・巌の声が聞こえた。
その声を聞きながら、志藤・巌は隕鉄製のガントレットを振り上げる。その篭手は激しく燃え上がっていた。
「尤も、豆は豆でもちょいと特別な豆だけどな! ほらよ、鬼は~外」
素早く放たれた望月・巌の攻撃が敵の体勢を崩した――そこに、志藤・巌は全力で突っ込んでいく。
「オウガも殺さず、真の犠牲者0を目指す。俺もそんな気概で挑むとするか!」
燃え上がる拳をただ全力で叩き込む。一見すると雑にも思える動きだが、その動きは援護の攻撃としっかりタイミングを合わせたものだった。
拳を振り抜きながら駆け抜けたところで、陽治が適切な心霊手術を施してくれる。
援護しながら望月・巌は集中力を高めているようだった。
攻撃を受けたオウガは、狂乱した叫びを上げながらまた金棒を振り上げた。
そこに他のケルベロスたちも攻撃をしかけていく。
「さーて、ここから先は通行止めなのだぜ? 通行許可でるまでちょっと待ってもらってもいいかなだぜー」
虹を纏った蹴りで、タクティが敵を挑発していた。彼とタイミングを合わせて、光廣も鋭い蹴りを敵へと叩き込む。
「外さない……。受けろ、心蝕む呪いの矢」
ノーザンライトは漆黒の矢弾をオウガへ向けた。
希少な原料を用いて作り出した魔毒の結晶体であるその矢に加え、桃太郎の故事に倣ってきびだんごをも構える。
「鬼をお供にして、灰を不法投棄する爺さんと、雀を虐待する婆さんを、退治するってネット掲示板で見たぞな?」
どこか間違った知識と共に、ノーザンライトはオウガに矢弾を放った。
魔毒で構成された矢は敵を貫き、おぞましい感触を与える。
同時に、敵の戦意を毒がくじいているはずだ。
不快さを表して、オウガがうめく。
空の魔力を宿した刀で、セイヤが矢の刺さった傷口を切り開いた。
その間に、リーファリナが盾を作り出して傷ついた仲間を守っている。
だが、飢えたオウガは止まる気配を見せなかった。
金棒でケルベロスたちを薙ぎ払う。
タクティは彼のミミックと共に、志藤・巌と光廣をとっさにかばっていた。
2人分の衝撃が、両腕のガントレットと白いコートの上から容赦なく襲いかかる。
「ミミック、こらえるんだぜ。まだまだ先は長いんだぜ」
同じ衝撃を食らっているサーヴァントに声をかけると、ミミックは蓋を開け閉めしてそれに応じてきた。
「さすがは鬼のパワーなんだぜ。持久戦は骨が折れそうなんだぜ」
大きく息を吐く。
「ま、そのためにおいちゃんたちがいるわけだからな」
「おう! 誰も倒れないようにしっかり支えてやるぞ!」
飄々とした調子で陽治が鎖の結界を展開し、リーファリナは力強い言葉に反して花びらを戦場に舞い散らせた。
「助かるんだぜ。まだまだ倒れるわけにはいかないんだぜ」
仲間のおかげでいくらか痛みが和らぎ、タクティは笑顔を見せる。
防御を固めたことを察したか、オウガが吠えた。金棒が異形の形態へと変化していく。
望月・巌はすぐにその動きに反応して見せた。
「回復も大事だが、それだけが持久戦じゃないんだぜ。どんなに重い一撃でも、当たらなきゃ良い。しぶとい奴は逃げるのが上手い奴さ」
集中力は十分に高まっている。
狙いどころがまるで止まっているかのように見えた。
「さあ、コレでも食らいな」
飛ばした弾丸が、敵の体だけでなく金棒をも打つ。
力を得た敵の得物は、一撃を繰り出す暇もなく元に戻り、その力を失っていた。
陽治に目配せをすると、彼は肩を軽くすくめて見せた。
悔しげに吠える敵へとセイヤがさらに接近する。
「戦鬼か……女神ラクシュミとは随分と印象が違うな……」
片手の刀で牽制しながら、もう一方の手を鋭く突き出す。青年の指先が敵の体を捉えた。
「ま、これが本当の姿とは限らねぇさ」
チェーンソーで切り裂きながら光廣が言う。
オウガがコギトエルゴスムと化すまで、まだまだ時間は長かった。
●願いが届くように
敵はもちろん、味方も倒れぬままに戦いは続いた。
普段とは違う戦い方をする時間はずいぶんと長く感じたが、おそらくはまだ半分が過ぎたくらいでしかない。
オウガを怒らせたタクティが特に狙われている。
うなりを上げて振り下ろされた金棒が、青年の体をしたたかに打った。
振り下ろす寸前、一瞬動きが止まっていなければ倒れていたかもしれない。
「タクティ、下がれ! 俺が前に出る」
望月・巌に声をかけられて、膝をつきかけたタクティが後方へと飛びのく。望月・巌がその前まで素早く進み出た。
「助かるんだぜ、巌。オウガのパワーは半端じゃないんだぜ……やられちまうかと思ったんだぜ」
「私の前で倒れさせはしないさ! 任せてくれ!」
リーファリナはマインドリングを握り、息を吐くタクティへ向けた。
オウガの攻撃力が高いため、彼女も陽治も回復の手を緩めている暇はなかった。男性が多い戦場なのに、フラグを立てる暇もない。
今回は拳を封印し、みんなを支えて癒す魔法使いのお姉さんとしてリーファリナは力を尽くしている。
「大変だが、ここが踏ん張りどころだな。気合を入れていこう!」
拳をぐっと握って告げる彼女に、タクティも拳を固めて応じてくれた。
戦闘の途中で自分の役目を切り替えるのはあまり良い手ではない……が、それでも、倒れてしまうよりはマシなはずだ。
だが、入れ替わったところを狙ったように、望月・巌にオウガが向かう。体当たりで彼を吹き飛ばし……そのまま、バリケードへと突っ込んで行こうとした。
「そっちには行かせねえよ、赤鬼!」
志藤・巌が鉄塊剣をオウガへ叩きつけた。進路を塞ぐように移動しながら、光廣も同じく鉄塊剣を振るう。
挑発されたオウガが吠えた。
陽治は仲間たちが進路を塞いだのを確かめてから、望月・巌へと視線を向けた。
「勇んで出て行って、一発で終わったりしないよな巌?」
そんなことはありえないとわかっていて、それでも言えるのは相手が彼だからだ。
「あったりめえだろ!」
身軽に跳ね起きた望月・巌に軽く口の端を上げて見せつつ、陽治は的確に彼へと心霊手術を施した。
回復を受けた男が、弾丸を戦場にばらまいて敵の足を止める。
ノーザンライトも前衛に出て敵の進路を止める。
そこに金棒が大きく振り回され、皆をまとめて薙ぎ払った。
「オウガホームラン、怖すぎる」
怖そうにはとても見えない表情で魔女が呟く。
「でも、通りたければ、わたし達を倒してから行くんだな」
表情はそのままに、しかし魔女ははっきりとオウガに宣言した。
突破を阻まれて、オウガはさらに暴れまわる。
望月・巌やノーザンライトも加わった前衛を、問答無用の威力が削り取っていく。
残り時間は、後数分になっているはずだ。ただ、ノーザンライトが用意したアラームはまだ鳴っていない。
リーファリナや陽治の回復があってもなお、もともと前衛にいた者は危険な状態だったし、他の者も当たり方が悪ければ倒れかねない傷を受けていた。
オウガが身を屈める。
光廣は飢餓の狂気を宿すその目が、自分を捉えたことにはっきりと気づいた。
次の瞬間、土が爆ぜる。
敵の動きは鈍っていたが、それでもかわしきることは難しい。
(「下手に避けてバリケードを壊されちゃたまらねぇ。食らうほうがマシ……か」)
一度は動かなくなった脚に、力を込める。
自分に向かって飛んできた敵を、光廣は正面から受け止めた。
鋭い角が深々と彼の体に突き刺さり、体の中を抉る。
「……しょうがねえ……あとちいと、任せたぜ……」
地獄によって得た脚が、わずかの間だけ、彼を支えてくれた。
その時間は、はたから見れば、おそらく一瞬だけだったのだろう。
即席のバリケードにもたれかかるようにして、光廣は倒れた。
だが、残り時間は後わずかのはずだ。
「こんなにやられて情けねぇなぁ、だが、手はまだ残っている。さて……お次の一手はどうするね? ドクター」
望月・巌と陽治が目配せをしあい、倒してしまわぬようあえて敵を回復する。
飢餓状態の敵に効くかどうかは不確定だったが、今回は効果を発揮した。それを確かめて、陽治も敵を回復する。
回復したところで、さらにケルベロスは敵の動きを止める技を使った。
セイヤは漆黒の手甲から一指を突き出して、敵へと接近する。
「この先には進ません……! 多くの人達の為やオマエ達の為にも……オマエを止めてみせる……!」
止まってくれることを願って、点穴を突く。
オウガが固まった……と見えた次の瞬間、鬼が金棒を振りかざす。
防衛役の仲間たちが身構える――だが、敵が得物を振り下ろすことは、なかった。
アラームが鳴り響く。
「……最後の最後で、効いてくれたか」
石のように固まったままコギトエルゴスムと化していく敵を見やり、彼は息を吐いた。
●福の訪れを願って
オウガが完全に宝石と化したのを確かめて、ケルベロスたちは構えを解いた。
「……よかった」
ノーザンライトの呟きに、仲間たちが頷いた。
「終わりよければすべて良しってな。陽治、光廣の傷はどうだ?」
望月・巌に声をかけられるまでもなく、武闘派ドクターは倒れた仲間の傷を診ていた。
「かなりの傷だが……ま、死にはしないさ。周りのヒールは治療の後だな」
適当そうな様子だが、陽治は的確に手当てを始める。
「無事ならいいさ。怪我が治ったらゆっくり飲みに行こうぜ、加藤さん」
飲み友達である男に、志藤・巌がねぎらいの声をかけた。
「俺はあまり怪我をしてない。このまま、オウガが現れた地点を調査してくる。オウガのゲートがあるかもしれないしな」
傷の手当てを始めた仲間たちにセイヤが告げた。
「確かにいろいろ知りたいんだぜ。……オウガメタルとはどういう関係なんだろ。知ってたりしないかなだぜ」
タクティが、xenoという名のオウガメタルに問いかけている。
だが、気になることは多かったが、それはまた後の話だ。
「無事に終わったなら、恵方巻でも食べに行くかな。丸かぶりだ」
大きく体を伸ばしながら、リーファリナが言う。
鬼は無事に祓われ、福がきっと訪れるはずだ。
ただ、鬼――オウガにも福があることを、コギトエルゴスムを見ながらケルベロスたちは願った。
作者:青葉桂都 |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2018年2月3日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 4/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 2
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