ナズナの誕生日~スノーフェスティバル!

作者:狐路ユッカ

●雪の世界
 ちらちらと雪が舞っている。1月19日、誕生日を迎えるナズナ・ベルグリン(シャドウエルフのガンスリンガー・en0006)は、ほう、と白い息を一つ。
「……スノーフェスティバル……?」
 ふと目に入った広告に、足を止めた。大きな雪の滑り台、雪合戦会場、冷えた体を温める屋台にかまくらカフェ……。どれもが魅力的に見えて、さっそく皆に紹介したくなり、ヘリポートへ向かうのだった。

●雪と遊ぼう!
「皆さん、スノーフェスティバルに行きませんか?」
 ナズナはぴらりとチラシを取り出すと、ケルベロスたちに掲げて見せる。
「北海道でイベントがあるんです。ええと、全長200mの大きな雪の滑り台をタイヤのチューブで滑り降りれるんですって。楽しそうですよね」
 雪合戦会場では、勝ち負け関係なしに思いっきり雪玉をぶつけあえるらしい。広場に設置される飛び入り参加もOKのスノーボードのハーフパイプは、白熱したイベント会場になるに違いない。雪玉の飛んでこない安全なエリアでは、参加者が自由に雪像を作ることができる。そして、
「雪遊びで体が冷えてしまったら、かまくらの中で温かい飲み物やお食事もいただけるみたいですよ」
 いろいろな楽しみ方ができそうですね、とナズナは同行者を募るのであった。


■リプレイ

「此れは戦いだ。油断は禁物だが、容赦も厳禁だ。全力で討つべし」
 藍染・夜は眼前の二人に真剣な眼差しを向け、宣言した。負けた人が全員にココア奢りね? と付け足すと、月織・宿利が雪玉を握りながら頷く。
「いざ尋常に」
「いざ!」
 楝・累音がしっかりと頷いたその瞬間、夜が累音へ速攻でしかける。
「こら避けるなよ」
「こんなん避けるに決まってるだろ」
 即座に投げ返す。
「っと」
 屈んで雪玉を避ける。
「あら」
 それを見ている宿利に、夜は雪の煌めきにも負けぬ笑顔で誘った。
「俺は女性の味方。宿利にはぶつけられない」
「紳士なのね? 遠慮しなくたっていいのに」
「だから手を結んで一緒に悪の幹部(累音)を倒そう?」
 宿利が夜に向けていた手を止める。振りかぶったその腕そのまま、くるりと方向転換してそれを累音にぶん投げた。
「わ」
 累音はすぐに気付いた。二人が同盟を組んでいることに。
「お前らあっさり同盟組みすぎじゃね? 雪玉よりもイケメンの甘い笑顔が最大の敵だな」
 華麗に躱し、たと思った先で夜が待ち構えていた。挟み撃ちだ。
「……前言撤回。全力で逃げてやろう」
 ――俺に当てて人間雪像を作ってみせるがいい。
「……ふふ」
 しばらく戦いが続き、宿利は笑い出してしまった。雪まみれになった二人の姿が雪像じみていたからだ。良い戦いだった、と二人は休戦の握手を交わすのであった。宿利が二人の雪をはらう手伝いをしていると累音がため息交じりで笑う。
「こりゃ俺の負けだな、カフェで一休みといこうか」
 俺の奢りだ。
 宿利は夜と目を合わせ、やったぁと喜ぶ。三人の足取りは軽い。美味しいココアに、思いを馳せながら。

「よぉし、勇チーム頑張ろうぜ。アイカさん、シュカくん、千賀くん、よろしくっ」
 虎丸・勇はやる気満々で仲間たちと視線を交わす。相対するは。
「摩琴、マイヤ、セト、後ろは任せましたよ……ふっ」
 雅楽方・しずくが所属する摩琴チームだ。精いっぱいクールな微笑を浮かべ、真っ白なコートで雪に擬態する。
「任せて!」
 マイヤ・マルヴァレフは大きく頷くと、雪の壁に隠れてラーシュと共に雪玉を作り始めた。
「って、これが北海道のパウダースノー!」
 握っても、さらさらしていて握りづらいのだ。かなり力を込めて握らないと、崩れてしまう。力任せにやっても固まってくれない、テクニックを要求される雪だった。
「良いですかぽんず、食べてはいけませんよ? 良いですね?」
 勇チームの方では、アイカ・フロールも雪玉を作っている。ぽんずも小さな手で一生懸命協力している模様。
「うおおおお!! くらえええ!!」
 半端ない勢いで摩琴チームへ突撃をかますのは千賀・剛久。突撃隊長は弾幕が如き攻撃で圧倒する。那磁霧・摩琴は、隠れることなく左右にステップを踏みながら肘と手首のスナップを利かせて思いっきり雪玉を放つ。さながらクイックドロウ。
「ガンスリンガーのホンキをみせてあげよう! えっへん」
 犬吠埼・シュカは皆より低い身長を生かして弾幕の間を走り抜け、標的にギリギリまで近づく。
「えーい!」
「わぷっ!? 脚も止まるしこれじゃ投げてる時は的だね…つめた~いっ!?」
 思いっきり雪玉を食らった摩琴が笑った。
「わあ、大丈夫?! よーし、選手交代。わたし達のコンビネーションを見せてやr……ばふっ!」
 行くぞと意気込んだ矢先飛んできた雪玉を顔面に受け、マイヤは顔を左右に振った。
「向こうのチームもつよいけど、ふふーん、当たらないもんねーっ、って、あわわわ」
 シュカはフワフワの粉雪に足を取られ、その場にすっ転んでしまう。
「ぴゃん!」
「多分誰も気付いてないだろうけど私は螺旋忍者、忍者なんだぜ? 影の如く敵を仕留める隠密なのだ! 暗殺してやるぜ!」
 飛んだり跳ねたり、ヒットアンドアウェイで立ち回る勇。けれど。
「うっひゃあ冷てぇ!」
 戦場を飛び交う雪玉は容赦ない。もはや敵か味方かもぶっちゃけ区別がつかなくなるレベルだ。物陰に隠れていたしずくが、目の前を通った剛久に雪玉を投げつける。
「ふっふっふ、掛かりましたね……って、ぶふぉっ!?」
「うおおあ!?」
 クロスカウンター。
「か、顔に雪玉が! 冷たいですー!」
「援護投擲ならお任せください」
 セト・ヴァリアスも、せいっ! とひとつ雪玉を投げる。先刻雪をひっかぶった勇に、見事命中だ。
「ああ、しかし雪が舞うと、凄く綺麗ですね」
 当たって弾ける雪を見て、セトがぽつりと呟く。思わず見惚れていたことにハッとして戦線へ視線を戻すも、
「ですが今は真剣勝負、最後まで気を抜かずに……うぷっ」
 ばすん! と雪玉を顔面で受ける。
「……つめたい」
「すごい白熱してきましたね……ここは私も攻撃に参加です!」
 ヒュッと雪玉を投げるアイカ。セトに命中させると、自慢げに笑った。
「ふふふ、私も中々のコントロールぶふっ! つ、冷たいです……!」
 お返しとばかりに雪玉が飛んでくる。

「ふー、エキサイトしたね」
 寒がりな私にしては動けたかなと勇が笑い、かまくらで暖まりながら何か飲もうかと皆で移動を開始する。
「動き回ったから暑いくらいだよ」
 マイヤはかまくらは初めてなんだ、とキョロキョロしている。目前に現れた大きな雪のドームがそれと聞いて、目を輝かせた。
「運動したら、何だかお腹が空いちゃいました」
 しずくは、かまくらでぬくぬくしながらお汁粉でも食べたい気分だという。
「わたしも甘いお汁粉食べたいな」
「あっ、わたしお餅が入ってるやつがいいです!」
「あ、私も!」
 アイカが一緒に注文すると、三人は顔を見合わせて笑った。
「おぉ、お汁粉美味しそうだね?」
 ホットコーヒーをすすりながら、勇がお汁粉組を覗き込む。
「かまくらって温かいね~」
 ふわぁと息を吐き出す摩琴に、セトは頷く。
「つい夢中になって忘れてましたが、やはり外は寒いですね」
 頷き合う皆の鼻先は、赤く染まっていた。
「かまくら、不思議と落ち着く空間ですね」
「ね」
 摩琴は運ばれてきたココアに口をつけご満悦だ。
「あ~、おいし~♪」
「摩琴さんのココアもとても美味しそうですね……」
 と、アイカが言うと、続いてセトも注文をする。
「僕もココアを頂きたいです。マシュマロも乗せて欲しいです」
「マシュマロですと! セトさん天才ですか!」
 運ばれてきたココアはふわふわのマシュマロが浮かび、とろりととろけかけた部分が雪のよう。
「あまーいココアはあったまるねぇ……楽しい雪の思い出が出来て嬉しいな!」
 シュカは、ココアの湯気の向こうで笑った。
「たくさん遊んで温まって楽しかったね♪」
「沢山はしゃいで食べて、冬満喫できました」
 再度、皆で顔を見合わせて笑う。あまい香りが漂うかまくらの中は、最高の冬の思い出の充実感に満たされているのだった。

「眠堂、お弁当食べよ!」
 フェンリル・フェンリスウールヴは、早速重箱を開けるようにと落内・眠堂にせがんだ。かまくらのなかでご飯を食べるのが夢だったのだ。が、1人でお弁当を作るのはちょっと厳しい。そこで白羽の矢がたったのが友人である眠堂だったというわけである。朝から眠堂のお弁当作りを手伝っていたその時点からもうお腹は空いていた。
「いただきます」
 卵焼きは甘いのが良い、とねだったため、彼はきちんと入れてくれていた。誰かの為に作るものは、自然と気合が入る。その味は。
「おいしい……」
 フェンリルは一口頬張った卵焼きの優しい甘みに、ふわふわと尾を揺らした。ふ、と眠堂の口元も緩む。彼にも尾があったなら、彼女の感想にきっと揺れていたことだろう。
 ふと外を見ると、元気に遊んでる人たちが見える。運動会を観戦しているような気分で眠堂はフェンリルに問うた。
「お前もあっちで駆け回らなくていいのか?」
「え?」
「ほら、犬だし」
 指を指した先には狼の尾。フェンリルはびたびたと尾を床に叩き付け、
「俺は狼だ」
 と憤慨して見せた。けれど、いつもの揶揄とわかっているし、今日は不機嫌は長く続かない。美味しいお弁当があるから。

 小ぶりなかまくらの中には、一組の夫婦が水入らずの時間を過ごしていた。ちゃぶ台の上には苺味のスパークリング日本酒と、御影・有理が作った鶏の唐揚げ、出汁巻き卵、白菜の浅漬け。最愛の夫である鉄・冬真と結婚してから和食もだいぶ作り慣れてはきたが、今回も彼の口に合うだろうか。ドキドキしながら彼が料理を口に運ぶさまを見つめる。
「とても美味しいよ、有理」
 美味しい。その言葉に嬉しくなり、頬を染めて微笑む。
「はい、お代わりどうぞ」
「ありがとう」
 お礼の気持ちも込めてお酒を注ぐ冬真の横顔を見て、改めて思う。
(「とても温かな気持ちになるのは、貴方と一緒だからだね」)
「少し飲みすぎても僕が傍にいるから大丈夫」
 そう言って笑う冬真に、有理はお言葉に甘えてもう少し飲んでみようかな、とグラスに手を伸ばす。その時だ。
「ただ……少し味見はしてしまうかもしれないけれど、ね?」
 その手にそっと己の手を重ね、冬真は有理の唇に掠めるような口づけを落とした。その唇は、いつもより甘くて、熱い。
(「お酒に酔う前に貴方に酔ってしまったみたい」)
 ほんのりと頬を染めて、ねだる。
「……ね、もう一回キスして?」
 その誘いを断る理由など、どこにもなかった。

「わー! 雪だー!」
 あたり一面の雪景色に、光宗・睦はテンションがあがってはしゃぎだす。
(「なるべく着こんではきたけど、さすがに、さむっ」)
 桜庭・萌花は身震いをした後、
「萌花ちゃんも行こ行こっ! 雪だるまとか作ろうよー」
 という睦の誘いに頷いた。
「睦ちゃん、せっかくだしあたしたちらしいのつくろうよ」
「どうせなら、超可愛くデコった雪だるまにしちゃおう」
 二人で、雪玉を転がしてまずは雪だるまの原型を作る。ここからが本領発揮だ。
「かわいいバケツも頭にのせて。……リボンの扱いなら任せて」
 萌花はてきぱきとリボンを結び、盛り盛りにデコっていく。
「あ、目元に松葉とか差したらつけまっぽくて可愛いかも!」
「いいねそれ!」
「赤い葉っぱでチーク入れたりしても可愛くない?」
 キャッキャと笑いながら、雪だるまにメイクを施していく。
「あは、チークもつけまもいい感じに盛れたね」
「腕のポーズにもこだわって、ギャルだるま完成~☆」
 写真撮ろう、とギャルお決まりの自撮りも済ませ、
「あ、あっちにかまくらカフェとかあるよ。温かいものとか飲みに行こー!」
「あったかいもの飲んであったまろ」
 すっかり冷え切った手に息を吹きかけ、二人はかまくらカフェへ向かうのだった。

 ミリム・ウィアテストは、雪のお祭りなんて初めてでドキドキワクワク。やりたいことがある。雪像づくりだ。
 雪を押し固めて積み重ねて、作るものはネオアームストロングジェット。
「……うん、微妙だし作り直しだ」
 ミリムはそれを崩すと、近くを通りかかったナズナ・ベルグリンに声をかけた。
「ナズナさん一緒にナノナノ作ってみない?」
「是非。お手伝いしますね」
「ボク雪の扱いは下手だけど上手く出来たらいいなー!」
 できあがったナノナノのお腹に、最後にハートを描いて完成。
「できたーっ!!」
 ミリムが額の汗を拭うと、背後から拍手が聞こえた。
「可愛らしいですね」
 イッパイアッテナ・ルドルフが、労ってくれたのだ。
「ありがとうございます!」
「あれ、イッパイアッテナさんも雪像を?」
 ナズナが覗き込むと、そこには上顎を盾にして構えエクトプラズムで武装したミミックの雪像が。立体的に浮きがって見える武装が何ともリアルだ。その横から、ひょこりと相箱のザラキが顔を出した。
「はい、ザラキと競い愛で互いの雪像を作ったんですよ」
 こちらです、と促されて視線を向けると、そこにはデフォルメされたドワーフの雪像。ザラキがエクトプラズムで器用に表面を整えてくれたのだそう。
 並んだ雪像にほっこりとしていると、少し離れたところから誘いの声が聞こえる。
「ナズナちゃん一緒に雪像つくろ~」
 白咲・朝乃が手招きをしていた。
「たくさん雪を集めて半球体にしてほしいの!」
 協力して雪を集めると、朝乃は赤い実で目を作り、大きな葉っぱで耳を付ける。
「なに作ってるかわかるかな?」
 ふふ、と笑うと、最後にてっぺんを平らに均してみせた。
「これは……」
「出来た! 雪ウサギのユズナちゃんです!」
 見ていた二人からも拍手が上がる。
「可愛い!」
「さ、乗って乗って~!」
 乗っても大丈夫でしょうか、とナズナは雪ウサギの上に乗る。
「写真撮ろ!」
 ナズナの横に並び、朝乃はピースサインで写真に収まる。
「っくしゅ、少し冷えてきましたね……一緒にカフェはいかがですか?」

 いつも和やかなデートをしている二人にとっては少し珍しい事だった。アンゼリカ・アーベントロートが童心にかえって遊ぶのも良いと言うと、東・天紅はアンゼリカの手を取って走り出す。
「童心に、返って。……こんな風に?」
 銀世界の中、雪を投げ合ってじゃれ合う。冷えてしまった天紅の頬に、アンゼリカはこうするとあたたかい、と自分の頬を寄せた。
「アンゼリカのことも、温めて、あげる」
 巨大滑り台へのぼり、二人用ソリで滑ると天紅は少し強がっているのか、
「もう少し、速くても、平気……!」
 じゃあ、次はもう少し加速してみよう、と二度目のソリ。一度目と同じように、天紅はぎゅうとアンゼリカの腰に抱きついた。その腕を、しっかりと包むように抱き返す。ぴったりとくっついた背に、天紅の高鳴る鼓動を感じて、なんだか愛おしくなる。坂の終着点、スピードを落としやがて止まったソリ。二人は雪まみれの互いを見て笑みを交わす。
「……もう一回、乗りたい、な」
 ねだるように囁く天紅。
「うん、もう一回乗ろう」
 頷くアンゼリカ。君が望むなら、何度だって。

「みんなで競争しない? 一番早く滑れたチームがカフェでご馳走してもらうの!」
 二人乗りのソリの前の方に乗ると、八剣・小紅はそんな提案をした。
「……女達相手といえ、勝負であれば勝ちに行くぞ?」
 もう一方のソリ、レオンハルト・ヴァレンシュタインの後方に乗ったゼノア・クロイツェルが頷く。
「よっしゃぁ小紅ちゃん! 絶対勝つぞー!」
 篁・メノウは小紅の後ろに座ると、拳を突き上げる。
「メノウ頑張ろう……! 先生とゼノアには負けないぞ!」
 レオンハルトが笑った。
「ゼノアよ、足を引っ張る出ないぞ?」
 ソリの前に座って構え、
「カフェでの馳走は我らのものじゃ、暴走列車の如くいざ往かん!」
 滑り出しの為に後方の者は地を軽く蹴った。風を切るソリは、雪を巻き上げ一直線に坂を下る。レオンハルトは身を屈めて、ソリと一体化するようにスピードを上げる。コントロールはゼノアにまかせっきりだ。
「す、すご、先生はやいっ!」
「ふん……スピードを出すのはいいが、落ちるなよ……っと!」
 先を滑っていた小紅達に追突しそうな勢いで迫り、ゼノアはぐんと体重を傾けた。寸でのところでかわすように小紅達を追い抜かす。
「わぷっ」
 舞い上がった粉雪が、小紅とメノウの顔にかかった。やがてソリは執着地点へ。結果は。

「……レオンハルト達の勝ち、か」
 大型のかまくらカフェでコーヒーを飲みながら、月夜・夕は楽しげなソリ遊びを見つめていた。銀は、ぬるめのホットミルクを皿からのんびりと頂いているところだった。
 カフェの扉が開き、ソリ遊びのメンツと雪像づくりをしていた者達が入ってくる。その中にナズナの姿を見つけ、夕は軽く手を挙げた。
「誕生日おめでとう、プレゼントは無いが……代わりに何か奢らせてくれるかい?」
 お言葉に甘えて、と答えると、小紅が悔しそうに負けを報告してきた。
「負けちゃったーっ!」
「楽しめたようで何よりだな?」
 賭けをしてたんだけどね、という小紅に、ゼノアはカウンターで頼んできた温かい飲み物を手渡す。
「えっ、ありがとう!」
 元より、勝っても女性陣には奢るつもりでいたのだ。
「時に小紅殿とメノウ嬢は、まさに雪の妖精もかくやの可憐さじゃと思わぬか?」
 レオンハルトがそんな風に嘯くと、
「ん? ああ、そうだな」
 ゼノアがコーヒーを飲みながら適当に答えた。
 こんなやり取りには慣れっこなメノウは、「当然だね」と答える。視線を向けられ、夕はしれっと嘯き返した。
「確かに妖精みたいに可憐なのは確かだが、『雪の』ってのは否定しておこうかな」
 一拍置いて。
「雪は抱きしめたら解ける。そんなのは嫌だろう?」
 そう付け足すと、誰からともなく笑いが起こった。
「皆のお蔭で楽しい時間を過ごせた、感謝じゃぞ」
 レオンハルトは、朗らかに笑うのだった。

「ナズナさん、今日はありがと! そしておめでとう!」
 ミリムは祝い事には赤飯! とナズナに渡す。
「お茶菓子があるんです。ユズナちゃんクッキー! そしておまけのユズナちゃんストラップです! お誕生日プレゼントだよ。おめでとう!」
 ココアを飲みながら、朝乃は皆にお茶菓子を振る舞い、そしてナズナに笑いかけた。
「ナズナさん、お誕生日おめでとうございます!」
「ありがとうございます……!」
 イッパイアッテナが大きな拍手をする。集ったケルベロス達がつられるように拍手をした。寒さの厳しいこの頃だけれど、なんだか温かい、とナズナは擽ったそうに笑うのだった。

作者:狐路ユッカ 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2018年1月31日
難度:易しい
参加:27人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 2/キャラが大事にされていた 0
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