着物美女が極太を頬張る大正義

作者:呉川兎男

●東京浅草、雷門
 新年、東京浅草の雷門に続く参道はたくさんの人で賑わっていた。
 老若男女を問わず、国内外から多くの人がこの地を訪れていた。
 新年らしく、その中には着物姿も多い。
「お待たせー!」
 ひとりの若い女の子が華やかな柄の着物を身にまとい、同じように色とりどりの柄の着物で着飾ったグループに駆け込んだ。
「わー、その柄、素敵!」
「やーん、かわいー」
「これだけ着物で集まると壮観ねー!」
「初詣ってわけじゃないけど、せっかくだもんね」
 若い着物の美人集団は浅草の参道を歩き出した。
「あ、見てみて、出店がある! プレミアム・フランクフルトだって!」
「本場ドイツ仕込みの極太フランクフルトだって、良い匂ーい」
「すごーい。おっきくて、つやつや!」
「ね、ちょっと食べていこうよ」
 着物美女たちは出店で極太フランクフルトを買って、口々に頬張った。
「あ、んぐ、すごい、大っきい……」
「やーん、こんなのお口に入らないよー」
「あむっ、んっ、やん、お汁が熱い」
「あ、こぼれてきちゃった……じゅるっ……れろ、れる……」
 極太の肉の棒に艷やかな唇を寄せ、頬張り、垂れてきた汁を、袖をまくって、吸って、舐める。
「う、うおおおおおおおおっ!!」
 唐突に、参道を歩いていた男性が雄叫びを上げた。
「着物美人が極太フランクフルトを頬張る姿こそ、この世の大正義だあああああっ!」
 男の全身から次々に鳥の羽が生えて、唇はくちばしへと変じていった。
 彼は自らの大正義を強く信じるビルシャナ『着物美人が極太フランクフルトを頬張る姿こそ大正義明王』となりて、周囲の人々に信仰を説いて回っていく……。

●ヘリオポート上空
「東京浅草にて、大正義ビルシャナが出現します。はからずも、先日の除夜のビルシャナ事件後に、巻島・菫(サキュバスの螺旋忍者・e35873)さんが危惧していた通りになってしまいました」
 セリカ・リュミエール(シャドウエルフのヘリオライダー・en0002)は集まったケルベロスたちを前に説明を始めた。
「このビルシャナは自らの『大正義』を強く信じるあまり変じてしまった一般人です。まだ配下の信者はいませんが、放置すれば、周囲に自らの信念を説いてまわり、同じ大正義を信じる人々を次々に信者化し、配下のビルシャナを増やしてしまいます。その前に、撃破しなくてはなりません」
 セリカは険しい顔で一同を見渡す。
「大正義ビルシャナは、こちらが戦闘行動を取らない限り、自らの大正義に関する賛成も反対も、あらゆる意見に反応します。この習性を利用し、議論を挑むなどして注意を引きつけつつ、周囲の避難を行うのがよいでしょう。ただし、中途半端な議論はかえって人々を扇動するきっかけにされてしまいますので、挑む際は本気の覚悟が必要です。そして、肝心の大正義の内容ですが……」
 セリカは言い淀む。若干、顔が赤い。
「着物姿の美しい女性が、その、大っきな、フランクフルトなど棒状の、お、お肉を、ええと、頬張る姿こそが大正義、と信じているようです……ゴホン、ですので、この点について真剣な議論を挑む必要があります」
 セリカはまだ赤い顔を引き締めて、説明を続ける。
「なお、気をつけていただきたいのですが、避難誘導の際に能力の使用は極力控えて下さい。ビルシャナが戦闘行為とみなして暴れ始める可能性があります。今回のビルシャナは炎とプレッシャー、そして癒やしの力を使うようです。一体だけとはいえ、油断はなさらないようにして下さい」
「着物姿の美しい女性が、その、大っきな、フランクフルトなど棒状の、お、お肉を、ええと、頬張る姿こそが大正義、と信じているようです……ゴホン、ですので、この点について真剣な議論を挑む必要があります」
 セリカはまだ赤い顔を引き締めて、説明を続ける。
「なお、気をつけていただきたいのですが、避難誘導の際に能力の使用は極力控えて下さい。ビルシャナが戦闘行為とみなして暴れ始める可能性があります。今回のビルシャナは炎とプレッシャー、そして癒やしの力を使うようです。一体だけとはいえ、油断はなさらないようにして下さい」


参加者
ラインハルト・リッチモンド(紅の餓狼・e00956)
コクマ・シヴァルス(ドヴェルグの賢者・e04813)
除・神月(猛拳・e16846)
エメラルド・アルカディア(雷鳴の戦士・e24441)
巻島・菫(サキュバスの螺旋忍者・e35873)
萌葱・紫苑(和洋折衷・e44769)
ティターニア・ワルプルギス(快楽の魔法少女・e44927)

■リプレイ

●東京、浅草、雷門前の大通り
「とまぁ、そうゆう訳で、色々暴れると思いますので、ご協力をよろしくお願い致します」
 ラインハルト・リッチモンド(紅の餓狼・e00956)たち避難誘導班は現場近くの警察たちに協力を依頼する。
「説得でアレやコレやと行うので男性職員の眼福になる光景があるかもしれないです。ご協力していただければ幸いなのですが」
 などと冗談も交えつつ、警官たちと協力体制を築いていく。
「正直に生きてんのは好きだけどヨー、何ならもうちょい素直になれるよーに調教してやんねーとナー?」
 艶やかな着物姿の除・神月(猛拳・e16846)は出店のフランクフルトをかじりつつ、ビルシャナの出現に備えていた。
「太い棒状のお肉を頬張る、ですか……まぁ、割とよくやってますよ。サキュバスですから。ちょっと小さめのを指先でちろちろ弄ってみたり、逆にものすごく大きいのの先っぽをちろちろ舐めたり……でもやっぱり、頬張るならココ、ですよね」
 クノーヴレット・メーベルナッハ(知の病・e01052)はフランクフルトを堪能しつつ、愛おしげに下腹部のあたりを撫で擦る。
「極太い肉は大好物ですね、よく見切り品を狙ってます。ビールが進みますよね!」
 巻島・菫(サキュバスの螺旋忍者・e35873)も美味そうに極太を頬張っている。
「というか、別にフランクフルトはどう食べようと問題あるまいて」
 コクマ・シヴァルス(ドヴェルグの賢者・e04813)は周辺の避難誘導ルートを確認しつつ、仲間たちのアレな会話を聞くともなしに聞いていた。
「まぁ……ちょっとワシも想像してしまったではないか」
 若干、ぎこちない動きでコクマは見回りと並行して、説得のための小道具も仕入れていく。

●大正義、現る
「う、うおおおおおおおおっ!!」
 大通りの中に男性の野太い雄叫びが木霊する。
「着物美人が極太フランクフルトを頬張る姿こそ、この世の大正義だあああああっ!」
 予言通り、大正義ビルシャナが覚醒した。
 説得組の女性たちはすぐさま、購入した極太を手に手に、ビルシャナへと近寄る。
 コクマもビルシャナの近くの人々を避難させつつ、保冷袋を手に向かった。
 着物姿の神月はこってりとしたマヨネーズがけの極太フランクフルトに舌を這わせ、見せつけるように白いどろりとした塊を舌先ですくい取り、極太を頬張る。
「あむ、ン……立派なフランクフルトじゃねーカ。食べ応えあるよナ……はむ、じゅるっ」
 クノーヴレットも手にした極太の棒を咥えたりしながら、ビルシャナに問いかける。
「極太を頬張る女性、良いですよね。ですが……それだけで良いのですか?」
 彼の正義を肯定しつつ、甘く問いかける。
「頬張るだけじゃなく、舐めたり、吸い上げたり、いっそ手で握って擦って欲しいと思われたのでは?」
 極太の肉の棒にくちびるを寄せて、舌を這わせて、手で上下に擦ってみせる。
「そ、それもまた、正義なり」
 ビルシャナは見目麗しい女性たちの積極的で挑発的な肯定により、若干、内股っぽくなりつつ、ちょっとたじろいでいる。
「あぁン? なんか別のもんが反応してねーカー」
 神月は艶っぽい笑みを深めて、ビルシャナとの距離を詰める。
「本当は頬張ってる姿を見るんじゃなくてヨー、何カ頬張って欲しいモンがあるんじゃねーのカ? 大正義なんて捨てテ、正直になりャ、そんなお願いも聞いてやるんだゼー?」
「或いは……ふふ、こうして胸の間に挟むのがお好きでしょうか♪」
 クノーヴレットも反対側から近寄りつつ、胸元を露にして、その谷間に何かを挟み込んで上下にこするような仕草を見せる。
「わ、我は『着物美女が極太を頬張る姿こそ大正義明王』であるぞ!」
「でも本当は……イイと思っておいでですよね? だって、貴方の腰から下のソレ……」
 クノーヴレットが艶やかな流し目を送ると、ビルシャナがますます内股で前かがみになる。
 それをすかさず、神月がとらえる。ビルシャナに寄り添い、一部を優しく撫で擦り、耳元にくちびるを寄せる。燃えるように赤い舌がビルシャナの耳に吸い込まれた。
「おおうっ! だ、大正義っ!」
 ビルシャナがガクガクと脚を震わせ、くちばしを仰け反らせる。
「あたしの舌使イ、悪くねーだロ?」
 神月が耳元にささやく。
「素直になれたらヨ、頑張ったご褒美ニ、別のフランクフルトも『食べて』やろーカ?」
「お、恐ろしきニョショウのアクマたちよ! 我は明王、そんな誘惑に……おふうっ!」
 神月、そしてクノーヴレットが寄り添い、愛おしげに撫で擦る。
「おうっ、おうっ……涅槃、ねはんんんっ!!」
 自称・明王の腰が前後にカクカクと震えると、弓なりにのけぞって全身をガクガクと震わせた。
「ふむ、成程。フランクフルト、確かにそれを頬張るのも正義だろう」
 話の流れを止めぬよう、コクマが新たな話へと誘導する。
「だが貴様、それだけに目を捉われてないか。フランクフルトは齧る物、だが本質的には舐める物こそ真の正義よ!」
 おもむろに要冷凍の袋から人数分のバニラアイス棒を取り出して、女性陣に渡していく。
「見よ、優しく舐めとるその姿を。まさに蕩けているようであろうがっ!」
 コクマは女性たちを振り返り、ビルシャナに示す。
「……あ、いかん。ワシもどきどきしてきた」
 ビルシャナはなぜか急に賢者のような顔をして、頷きを返す。
「なるほど、それもまた真理、其の正義には一定の同意を示そう。だが、しかし。我が正義にありて、其の正義にないもの、それ即ち『あ、やっ、熱いお汁、火傷しちゃう!』の要素である!」
 大正義ビルシャナは握りこぶしをつくり、くちばしを天高く突き立てて声高に叫んだ。
 すると、ティターニア・ワルプルギス(快楽の魔法少女・e44927)がそれに反論を返す。
「でも、せっかくの晴れ着で太いものを頬張ったりしたら、先端から垂れた汁で着物を汚したり、どろりとした液が顔についてしまいます。女性のそういう姿ははしたないと思いませんか?」
 顔や手を(わざと)汚してしまった神月やクノーヴレットの姿を指す。
「納得、して下さいますよね?」
「ふっ、笑止千万」
 ビルシャナは香ばしいポーズとともに、笑う。
「はしたない? 汚れる? それこそがまさに大正義! むしろもっとやれ!」
 盛り上がる議論を脇目に、避難誘導班は無事に役割を完了しつつあった。
 ラインハルトが手にしたキープアウトテープで、現場を封鎖していく。
 エメラルド・アルカディア(雷鳴の戦士・e24441)はビルシャナの行動を注視し、テープが攻撃行動と見られないか気をつけていた。幸い、議論に夢中のビルシャナが気付いた様子はなかった。
 避難誘導、そして封鎖は無事に完了した。
 菫も説得に参加し、ラインハルトとエメラルドは遠巻きにしつつ、戦闘準備を整える。
「というかぶっちゃけ、着物とか服がどうこうより、頬張るのが好きなんだろうキミィ」
 胸元を開いたタイトスカートのナース服姿の菫は、いつのまにかジューシーな極太のを頬張りつつ、ビルシャナに問いかける。
 咥えていた棒状の肉の中から、熱くて濃い白い液体が吹き出して、菫の口元を汚した。
「あっ、太いのの中から熱くて濃いのが……こんなの、欲しくなっちゃいます……え? もちろん上の口の話ですよ?」
 菫は他にもチョコバナナやら、コクマから練乳入りアイスやらをもらっては、次々と頬張っていく。
 垂れ滴る濁った液体が、くちびるに垂れたり、服に零れそうになるのを、舌で舐め取ったり、指ですくったりする。
 そうしてたくさんの棒に次々と舌を這わせながら、背伸びをしたり屈んだり、ついにはピチピチにタイトなナース服のボタンが飛んで、胸元の渓谷が際どいところまであらわになったり、お尻の合わせが破れて、裾が桃の丸みのギリギリまで見え隠れしてしまったりしている。
「ぬ、ぬぅ、これはまた涅槃……いやしかし、やはり大正義は着物にこそ……」
 ビルシャナは挙動不審となりつつ、視線をチラチラと向けている。
「び、ビルシャナも不埒だが、案外ケルベロスも不埒な考えの者は多いな……英雄色を好む、という事だろうか」
 見守っていたエメラルドは、説得班の怪しげな雰囲気に恥ずかしそうに目を逸らした。
「うん、エロイ……想像力は無限、偉大ですね。どうしてこう、関係無いものでここまで想像できるのでしょうか」
 ラインハルトも説得を見ながら顔を赤らめつつ、
「この光景が見れただけでも来て良かったでしょ?」
 封鎖を手伝ってくれている男性の警官たちと、互いにサムズアップを交わし合う。
「ふむ、なるほど。つまり、お前はこう言うのが好きなのか」
 紺色の着物に身を包んだ萌葱・紫苑(和洋折衷・e44769)が、手にした極太の肉の棒に舌を這わせ、根本から先端まで、もったいぶるようにゆっくりと舐め上げる。
「然り。すばらしい」
 ビルシャナはうっとりと目を細める。
「では、頂こうか?」
 紫苑の白い歯が、肉の棒の先端を躊躇なく噛みちぎった。
「ひぎぃ!?」
 ビルシャナと、他にもいくつかの悲鳴が上がった。
 紫苑はしとやかに口元へと手を当てつつ、肉の塊を咀嚼し、飲み下す。
「ふむ、悪くない味だ。で、君達はこう言うのが好みなのか?」
 キレイに噛みちぎられたジューシーな肉の断面を見せつけ、いっそ優しげに微笑む。
「その願い、叶えてやろうか?」
 ビルシャナたちは内股になって、必死に首を横に振っていた。
「それにしても、皆さん、フランクフルトの話をしているのに、なんだか他のものを指しているような……極太の肉の棒なんて、フランクフルト以外になにがあるのでしょう?」
 ティターニアはおとがいに手を当てて、困惑を浮かべている。
「そもそも女性が食べている姿を見つめる、盗み見るなど言語道断だ。親しくなければ尚更、親しい仲にも礼儀あり……それでも尚その姿をみたいのなら、その、頬張るなど関係なく最早女性の恥ずかしい姿を見たいだけの変態行為ではないのか?」
 さらにはエメラルドがバッサリと正論で切り伏せた。
「ふっ……余人が何と言おうが、我は我の大正義を貫くのみ! 世界中の美しき女性に着物を! そして、極太の肉の棒を頬張るのだ!」
 ビルシャナは声高に叫び、翼を大きく広げた。
 ここが潮時とばかりに、面々は戦闘態勢に移る。
「仕方ありません……」
 説得は不可能とわかり、ティターニアは悲しげな表情で魔導書を開いて、魔法少女に変身する。
「きゃはっ☆ 私、変身前は清楚なお嬢様だけど、変身すると快楽大好きになっちゃうの♪ 私と一緒に快楽に溺れましょう♪」
 清楚な口調はガラリと変わり、赤い瞳に狂気が宿る。
 紫苑もまた、着物姿から騎士甲冑へ姿を変えて、マントを翻して長剣と盾を取り出した。
「さぁ、その邪な願いを断ち切ってやろうッ!」
 コクマが得物を手に、回転の勢いとともにビルシャナに切り込んだ。水晶をまとった刃で横薙ぎに打払いつつ、ビルシャナの動きを牽制する。
 ラインハルトも拳打と蹴撃でビルシャナを相手取る。間合いを開けられれば、蹴り技から放つ炎を見舞い、再び距離をつめていく。
 菫は後方から手裏剣を放ち、援護する。
 エメラルドの発動した雷の壁が味方の異常耐性を上げた。
「我が、燃え盛る大正義っ!」
 ビルシャナが孔雀を象った炎を飛ばして攻撃をしかけてくる。
「我はヴァルキュリア、雷鳴と共に駆け、勇ある者を選定する使いなり! 我が雷鳴と共に汝が道の切り開かれん事を願う!」
 エメラルドの治癒が味方を癒やす。
 クノーヴレットもサキュバスの力で回復を支援しつつ、使い魔のシュピールとともに、援護射撃の黒い魔法弾を放った。
「う、うおお! やめろ、我のソレを、そんな目で見るな!」
 などと悪夢に悶え苦しむビルシャナに、神月が拳を武器に攻めかかる。激しくも巧みな技がビルシャナにダメージを与えつつ、なぜか服を剥ぎ取っていく。
「くっ、我こそは、明王なるぞ!」
 ビルシャナは全身から光を放ち、目くらましをする。
 ひるんだ手近な者に、襲いかかる。
「悪いな。貴様の相手は私だッ!」
 すかさず、横合いから紫苑が組み付く。
「盾には、こういう使い方もあるッ!」
 手にしたシールドに魔力を纏わせると、ビルシャナの不意を突いて、一撃を見舞った。
 怯んだビルシャナに、ティターニアが素敵なプレゼントを用意していた。
「ビルシャナさん、これが欲しかったんでしょう? いっぱい頬張ってくださいねっ♪」
 極太の触手たちがビルシャナに襲いかかる。
「ち、ちがう、我は見る専門で……うぶっ!」
「トッピングに無貌の従属は、い・か・が?」
 無情にも緑色の粘菌がおかわりされる。
「さあ、私と一緒に触手による快楽を楽しみましょ♪」
 すっかり狂気に浸ったティターニアはさらに無数の触手を召喚して、味方たちにも襲いかからせる。
「上の口はもちろん、ほかのお口でも……うふっ、ビルシャナさんの言うように、太い肉の棒は美味しいですね♪」
 太いものにアレコレされた味方たちは、なぜか傷が癒えていた。
「ぬぅ、この世に、着物美女と極太の、大正義を……」
「さあ、お掃除の時間です! 雑巾拭きたて足元注意ですよ!」
 なおも抗うビルシャナの足元に、菫が濡れ雑巾をさり気なく置いて、転ばせる。
「うふふ、捕まえました……♪ さぁ、私のこの指で奏でて差し上げますから、素敵な声で歌ってくださいね…♪」
 クノーヴレットがそっとビルシャナに寄り添うと、淫蕩な指先の踊るような動きでビルシャナを翻弄する。
「おおうっ! 涅槃、ねはんんんっ!」
 足はガクガクになり、すでに半死半生のビルシャナに、ラインハルトがトドメとばかりに懐に飛び込んだ。
「まぁ、貴方がナニを想像してこうなったかは知りませんが……悲しい性って奴なのかもしれませんね。だからこそ、もう休んでください」
 当て技により態勢を崩したビルシャナを逆関節の一本背負いで宙へと放り投げる。
 逆さになった相手の頭部に、トドメの蹴りを見舞った。
「我、大正義に生き……大正義に……殉ず……」
 着物美女が極太を頬張る大正義明王は、ここに沈んだのだった。

●世は並べて事も無し
 やがて戦闘の跡も癒えた雷門の前の大通りは、何事もなかったように日常へと戻った。
 任務を終えたエメラルドはようやく一息をつくと、くだんの出店でフランクフルトを買った。
「ふむ。こういった出店の物も美味しいものだな」
 形の良い艶やかなくちびるが、極太のフランクフルトを美味しそうにくわえて、噛みちぎった。

作者:呉川兎男 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2018年1月29日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 5
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