オウガ遭遇戦~アタック・オン・ハンガーオウガ

作者:鹿崎シーカー

 岡山県・山中。自然の中に佇立するタワーシールドめいた巨石が蹴倒され、太い足に踏み砕かれた。粉々になった切片の上を歩くのは、二メートル近い力士じみた体型の男性だ。裸の上半身に、分厚い体躯。失った両手首の先と口、瞳に緑色の炎をたたえ、額には鋭い黄金の角が生えている。行く手に生えた木々や巨石をなぎ払っては蹴ってよけ、地鳴りを響かせながら歩行する。
「グゥオオォォォォ……」
 うなり声とともに口から炎の筋が飛ぶ。同時に太い腹から雷鳴じみた音が鳴り、木々を揺らして小鳥達が飛び立っていく。巨躯の男は一切動じないまま、腹の虫を絶叫させつつ山の中を切り拓いて進んでいった。


「……オウガ?」
「そう。正式に言うと、デウスエクス・プラブータ。他のデウスエクスも目じゃないぐらいのパワー自慢さ」
 首を傾げるミッシェルに、穫は資料の束を読んで聞かせる。
 2月3日。岡山県中山茶臼山古墳周辺に、オウガの大量出現が予知された。
 コードネーム『デウスエクス・プラブータ』。人間の頭部や背中から『黄金の角』を生やしたような姿をしたデウスエクスで、鬼神の異名を取る種族。生まれながらに他のデウスエクスを圧倒する程の腕力を有した強者達だ。重度のグラビティ・チェイン枯渇状態を患った彼らは、大勢で吉備津神社に進軍。グラビティ・チェイン略奪のため、節分の神事で神社に集まった人々を虐殺しようとしているらしい。
 当のオウガ達はグラビティ・チェイン欠乏症の影響で知性を失い、話し合いは不可能。放置すれば無辜の人々が全て鬼のエサと化す。よって、皆にはこのオウガの迎撃を行ってほしいのだ。
 迎撃作戦の概要だが、まず中山茶臼山古墳周辺にある巨石遺跡か、吉備の中山細谷川の隘路の出口で戦うかを選んでもらうことになる。前者、中山茶臼山古墳周辺にある巨石遺跡では、巨石周辺に出現するオウガを出待ちして叩く作戦。後者の吉備の中山細谷川の隘路の出口は神社に向かうオウガが必ず通る道であることを利用した待ち伏せだ。オウガ達の現状により、どちらを戦場に選ぶかによって取りやすい作戦が変わるのが今作戦の特徴となる。
 現在、オウガは重度のグラビティ・チェイン欠乏症であり、コギトエルゴスム化が近い状態にある。つまり、相手を倒さずコギトエルゴスム化させることで無力化できるわけだが、この無力化までの時間がネック。巨石遺跡に現れたばかりのオウガはコギトエルゴスム化まで二十分、中山細谷川まで進んだ個体は十二分ほど時間がかかる。加えて、オウガの戦闘力は非常に高く、飢餓状態も相まって常に全力。わざと戦闘を長引かせると不利になる可能性があり、倒すにしても生かすにしても相応の戦術が要求される。
 戦場と、活殺。どちらを選ぶかはケルベロスの自由だ。
 ちなみに今回相手をするオウガは力士の如き巨躯の個体で、消失した手首と口、目から出した炎を操る能力を持つ。炎は普通の火炎として放出する他、手や触手、槍になど自由な形状にして物理的破壊力を発揮することもできる。生まれながらにして他種族を圧倒するパワーに、オールレンジに対応する武装。前述のことと合わせて、作戦はよく考えてほしい。
「できれば殺さないであげたい気持ちはあるんだけど……正直向こうもかなり強いから。一般人のこともあるし、ね」
「………………」


参加者
アニエス・ジケル(銀青仙花・e01341)
叢雲・宗嗣(夢う比翼・e01722)
タンザナイト・ディープブルー(流れ落ち星・e03342)
牧島・奏音(マキシマムカノン・e04057)
カーネリア・リンクス(紅天の華・e04082)
リン・グレーム(銃鬼・e09131)
セット・サンダークラップ(青天に響く霹靂の竜・e14228)
差深月・紫音(死闘歓迎・e36172)

■リプレイ

「ぐはぁッ!」
「ピブーッ!」
 巨石を破壊しタンザナイト・ディープブルー(流れ落ち星・e03342)と青白二色のテレビウムが吹き飛んだ! 切片舞う中で後方回転、着地したタンザナイトに力士めいたオウガが突撃! 緑炎の拳にタンザナイトは水晶じみたバスターソードを打ちつけた。弾かれる刃! 後ろへ振りかぶられたオウガの拳に、背後に回った牧島・奏音(マキシマムカノン・e04057)はアサルトライフルで狙いを定める。
「止まれッ! 篁流射撃術・偽式!」
 輝く銃口!
「『重星』ッ!」
 銃声三発と同時にフックを打ちかけた肘が星空めいて小爆発! 振り向いたオウガの視界、奏音の後方上空に跳躍したカーネリア・リンクス(紅天の華・e04082)はロングの銀髪をはためかせ指に挟んだ鉄針に真っ赤に燃える火をともす。
「さあ、篁流の技の冴え……ばっちり見て行ってくれよな! お代は大人しくなる事でっ! 篁流射撃術!」
 オウガが大口を開いて吠えた。プロミネンスじみて放たれる炎に向かってカーネリアは燃える針を投げつける!
「『霧雨』ぇッ!」
 真っ直ぐ斜めに飛んだ針を緑炎の帯が撃ち落とす。当たらず交錯した針の一部がオウガの肩に突き刺さり、炎の幾条かが体育座りめいた姿勢で両手をクロスしたカーネリアにぶつかり爆発。オウガは開いた大口を奏音に向けマシンガン乱射じみて火炎弾をぶちまけた。炎は間に割り込んだエメラルド型ドローンに着弾、粉々に爆散させる。険しい表情したリン・グレーム(銃鬼・e09131) は大型のガンソードを抜き引き金を引いた。丸太めいて太い手首を鉛弾が穿つ!
「グォォアアアアアアア!」
 オウガ瞳の炎が燃え上がり、手の炎が触手に変形。全身のバネを使って振り回された炎の触手がリンの背を打ち周囲の巨石、木々をなぎ倒しながら縦横無尽に荒れ狂う! 二度回転し両手を振り上げたオウガの顔に小石が命中。拾い上げた巨石の欠片を振りかぶり、セット・サンダークラップ(青天に響く霹靂の竜・e14228)は威勢良く叫んだ。
「うおおおおっ! こっちを見ろっすーッ!」
 石を投げつけるセットに向かってオウガが咆哮! 触手が霧散して炎のトライデントに変性、オウガの刺突と共に一気に伸びた。槍はセットの前に並んだ盾の青い電磁バリアを貫通、彼の脇腹を抉る。
「んぐっ……!」
 膝をついたセットの傷が血を噴いた。両手をハンマー状にして電磁バリアを盾型ドローンごと殴り砕いたオウガが大手を振りかぶった姿勢で一時停止。肩越しに振り返った燃える瞳に、丸太めいた腕をつかみ肩に刀剣を突き刺した差深月・紫音(死闘歓迎・e36172)は不敵に笑う。
「楽しそうだな。俺とも踊ろうぜ。なあ?」
 吠え上げたオウガのスイングをバックジャンプ回避。空中で後転した紫音は巨体のタックルを紙一重でかわし、赤く染めた羽織の袖から鎖を伸ばして振り回す。シャトルランじみて再度駆け込んでくるオウガの前に生まれた黒いバリアが炎のパンチを受けて粉砕! 炎刃に変えた逆手の下段突きにバク転するが、彼の軌道に血が線を引く。着地した紫音を橙色の炎が包んだ。地面に燃える剣を突き立て叢雲・宗嗣(夢う比翼・e01722)が合図する!
「リンクス!」
「おう! 篁流剣術!」
 その場でコマめいて回転したカーネリアを中心にして吹雪が渦巻く。白い竜巻が口の炎を膨らませたオウガを飲み込み消えた次の瞬間、オウガは全方位を氷の刃に囲まれた。切っ先で巨体を示すカーネリア!
「『冬月』ッ!」
 殺到する氷の刃の中でオウガは両腕を振り回し出した。炎の触手が飛んでくる刃を片っ端から打ち砕き、氷片全てを吹き飛ばす! 口から蒸気じみて火を吐き暴れるオウガにアニエス・ジケル(銀青仙花・e01341)がラジコン型リモコンを操り、ボタンを押した。
「えいっ……!」
 オウガを包む白い爆風! 触手が消え突っ込んでいく氷刃の周囲を走りながら奏音は銃を構えた。不規則に瞬くマズルフラッシュ。空薬莢が白煙をまとって飛んでいく。
「篁流射撃術、『昴』!」
 吸い込まれた弾丸を見た奏音が急ブレーキをかけた瞬間オウガが冷気を突き破る! 突進の勢いを乗せ炎の爪で薙ぎ、真横に吹き飛ばされた奏音に大きな火炎弾を撃ち出した。それを防ぐエメラルド型ドローン。息を吸いこむオウガの両サイドから低姿勢で紫音とタンザナイトが蹴りかかる! 太刀に変わったオウガの腕が闇雲に振り回された。
「ォォォォオオオオオオオオオオ!」
 ステップで間合いに潜る二人を滅茶苦茶な斬撃がかすめ、肌を斬る。一定範囲で攻撃をしのぎながら紫音はにやにや笑いで紅を差したまなじりを開く。
「そこだッ」
 回し蹴りが鳩尾に命中! 体を折るオウガの膝にタンザナイトは低空飛び蹴り! 動きの止まったその一瞬に、アニエスはオウガの顔面に回転かかと落としを叩き込んだ。反動で跳び下がった彼女と入れ替わりテレビウムのポチがオウガの頭まで跳躍。頭部画面をフラッシュさせたポチに、オウガのヘッドバットが命中!
「ポチくんっ!」
 怒声を張り上げ、オウガはキックしてきた二人に火炎を吐いた。轟と燃え上がる緑炎。刀を水平に持った宗嗣は刀身に炎を収束させ横薙ぎに一閃させる!
「篁流剣術……『暁月』ッ!」
 撃ち出された赤い熱波が緑の炎にぶつかり、押しのけ、塗り潰す。爆炎をバックダッシュで脱出した二人の火傷をざっと走査し宗嗣はセットに向かって手を挙げた。
「サンダークラップ!」
「了解っす! 演算速度上昇!」
 盾型ドローンが二人に青光を照射。その時、赤い熱波を弾き飛ばしてオウガが襲来! 大鎌に変えた両腕を翼のように引き絞る!
「ゴアアアアアアアアア!」
「ハッハ……やる気十分だなァ」
「紫音、止めなくばッ!」
 紫音の傷から噴き出した血が彼の全身にまとわりついて鎧に変じ、タンザナイトの上半身に暗黒星雲じみた光が湧き立つ。大鎌をハサミのように振り抜かれかんとするオウガの懐に飛び込んだリンが巨体の肩口を銃撃! そのままふらつくオウガに飛びかかり、太い首に手をかけ背後へ回り、ガンソードを首に当てて締め上げる。のけ反ったオウガに巨壁に登った奏音は照準を合わせた。
「リンさんそのまま! 『卯の花腐し』ッ!」
 銃声が響き膨らんだ腹に金に光る煙が弾け、煙幕じみてその場に滞留。煙幕に包まれ動きを鈍化させたオウガにアニエスとカーネリアが突っ込んでいく。
「っしゃあ今だ! 篁流格闘術!」
「ご、ごめんなさいっ……ちょっと痛く、します、ね……!」
 片足裏を向けて跳ぶカーネリアと拳に白光をまとわせたアニエス。首にからみついたガンソードを握り潰して破壊したオウガの口から緑炎が閃きカーネリアを吹っ飛ばす! 腹に打ち込まれたアニエスの小さな拳から白光がクモの巣じみて展開、巨体を包んで捕らえるもオウガはこれを力任せに引き千切った。ポチのタックルを受けたアニエスの居た場所に拳が振り下ろされ地面陥没! そのままオウガの口が機関銃掃射の如く火炎弾を乱射する。飛び交い、射線に割り込んだセットの盾型ドローンに身を隠しつつ一同は後退。ガンソードを捨て銀のリボルバーを抜いたリンは背後からオウガに接近しエメラルド型ドローンを召喚しそれらを砕いた裏拳を跳躍回避! 追い抜きざまに発砲し胴体に複数の弾痕を穿つ。巨石に隠れた宗嗣は紫音に目をやる。
「差深月! リンクスの回復に行く。しばらく頼んだ!」
「あいよ。んじゃ、こっちはこっちで仕切り直すぜ」
「宗嗣さん、リアちゃんよろしく!」
 遮蔽から出た奏音がアサルトライフル射撃を繰り出す! 弾丸はリンと銃撃戦を展開するオウガの太ももや二の腕にヒット。両手を刃に変えての回転をリンはバク転で避けた。着地した彼の腹部、X字に交叉したベルトとシャツがバックリと裂け、傷跡が露出! 彼の周囲にドローンを飛ばしたセットは青いホロキーボードを必死で叩く。
「うおおおおお! 傷早くふさがれっす!」
 傷の修復が始まるリンに刃の両手を掲げ斬り込むオウガ! その横合いに駆けこんだタンザナイトは水晶剣のフルスイングをぶつけ、左肩に中段突き! 浮いた足を振り下ろしたオウガの三叉槍化した右ストレートと水晶剣がぶつかり合う。弾かれたたらを踏んだタンザナイトを大鎌化した左フックが襲う。緑炎の刃があばらに突き刺さる!
「ぐっ……ぐはッ!」
「ゴゥゥゥアアアアアア!」
 オウガは鎌に突き刺さったタンザナイトを引き寄せ三叉槍の右ブロー! 血を吐くタンザナイトの背中に穂先がのぞく!
「ポチくんっ!」
「ピププッ!」
 アニエスの号令を受けたポチが傘を片手にオウガへ突撃。両手の武器化を解除したオウガの右アームハンマーを転がって避け、鬼のこめかみへ傘を突き出した。アニエスは尻尾で地面を打って跳躍、突かれたこめかみに回し蹴り! 彼女がスタンしたオウガから反動で飛び離れるとともに紫音は腕に刀を斬り下ろした。前腕部に食い込んだ刃をすぐに引き抜きバック。鼻先を炎の戦槌がかすめ、首に緑の触手が巻きつく。緩慢に立ち上がったオウガは、紫音の首に巻きつけた触手を思い切り引く。
「こんのッ!」
 立ち直ったリンが触手のつながった腕を撃つ! 肉と血が弾けるのも構わずオウガは紫音を引き寄せ零距離から業火を吐きかけた。紫音の影が炎にかすむ!
「紫音!」
 腹の傷を押さえて身を起こすタンザナイトの周りに盾型ドローンが集合し蒼光照射。強いて起き上がらんとする彼は直後、オレンジ色に炎上! 同時にセットのドローンを足場に水切石めいて跳躍しながらカーネリアは刀に真紅の炎を宿した。
「篁流剣術!」
 盾の一個に屈んだ状態で飛び乗り、ジャンプ。火炎弾を飛ばしまくるオウガ直上から刀を逆手に構え垂直落下!
「『落月』ッ!」
 燃える刃が右肩口に突き刺さる! 天に向かって吼えたオウガは紫音を投げ飛ばし肩のカーネリアにつかみかかった。刀を引き抜き、脳天を地面に振り下ろす! 大地陥没! だが凹んだ地面の亀裂中央、上下逆さになったカーネリアの銀髪が巨大なかぎ爪の姿を取って緩衝。強まるオウガの握力にうめきながら叫ぶ!
「奏音!」
「おっけーリアちゃん! 篁流射撃術ッ!」
 巨石の影から転がり出た奏音がマガジンチェンジ。引き金を引いて全弾放ち、オウガ周囲の地面に次々撃ち込んでいく。閃光を放つ着弾痕!
「牧島式『星屑』ッ!」
 弾痕が一斉に炸裂し粉塵を巻き起こした。砂ぼこりが去った後には星屑じみた光が飛び交い、オウガをその場にぬい止める。瞳の炎を揺らめかせるオウガを巨石越しに見たセットはホロキーボードを高速タイプ。宗嗣の前にホロウィンドウを出現させる。
『後衛の皆さんは任せてほしいっす!』
「了解だサンダークラップ。差深月」
 宗嗣はボロボロの羽織を着直した紫音は刀を手に立ち上がる。全身の傷が血煙を噴き、赤黒い鎧を再生。口元の血をぬぐった彼は狂気じみた笑みを浮かべる。
「平気だ。楽しいぜ」
「言うと思った。行くぞ!」
 跳ね起き走り出した紫音の背中に宗嗣は刀を扇風機めいて振り回し始めた。発火した刃の回転数が上がって加速、業火の大渦に成長!
「篁流回復術、『塵旋風』!」
 渦が爆炎の竜巻を放ち紫音を飲んでオウガの元まで一直線! 他の面々がオウガから飛び離れると同時に炎竜巻は動きを止めた巨体に衝突。渦の中を疾駆する紫音の血鎧ガントレットを伝い、彼の刀をコーティング。赤黒い長剣に変成させた。
「さあて……まだ続くだろ? 血で血を洗う死闘はよ!」
 竜巻の中、オウガは壊れかけの機械めいてぎこちない動きで首を巡らす。開いた顎が緑炎のハープーンを射撃。矢を血刀で斬り払った紫音は踏み込み斬撃! 裂けた脇腹から脂ぎった血が噴出! さらに大口を開け咆哮するオウガ。彼を止めていた光と火の竜巻が吹っ飛んだ。紫音の腹に炎の拳が突き刺さり、緑の大剣が肩当て諸共右鎖骨から肋骨までを一気に断ち切る。そのまま血鎧の剣士をなぎ払ったオウガは両手を触手に変え嵐じみて振り回した! 肉迫しかけたアニエスとポチを跳ね飛ばす!
「きゃっ……!」
 宙を舞う二人を空中で待ち構えたセットの盾型ドローンがキャッチ。吠え猛る鬼は目を燃やし怒号を上げる! 荒れ狂う二本の触手。土埃を上げ割れ砕ける地面から距離を取りつつカーネリアは銀の針を取り出した。
「リン、足だ! 右足ッ!」
「ヴィイ! 転べッ!」
 二丁リボルバーが火を噴き銀針が飛んだ。オウガ右膝の肉が弾け、体勢を崩すのを見たタンザナイトは手の平に青い球体を生み出し巨体の足元へ投擲。群青色の光が爆発し、後ろへ数歩下がったオウガは左足に力を込めて体勢復帰。右手の触手を横薙ぎに振るう! 立ち並ぶ巨石を次々粉砕しながら触手はリンとカーネリアを打ち据え、その先の巨石ごと奏音を捉え、慌てて伏せたセットの頭上を突破! セットは高速タイプでドローンを操り、アニエスを乗せた機体をオウガ直上まで移動させた。飛び降りたアニエスは白く光る両脚でオウガの右肩をストンプ! ズンと右膝をついた鬼に向かって疾走した紫音は血刀で胴を斜めに斬り上げる。
「オオオオオアアアアアアア!」
 雄叫びを上げ、オウガが火炎放射を放つ。大きく波打って迫る炎の前にセットが盾型ドローンを割り込ませて防御。青の電磁バリアを張るそれを、オウガは炎ごと突き破って突進! 槍にした両手で貫いた紫音とポチを投げ捨て、銃を構えるリンの肩口をひと突きでえぐり取った。刀を振り抜き、仲間に炎の旋風を吹かせて宗嗣!
「牧島!」
「止まれええええええええッ!」
 アサルトライフルから銃声一発! 真っ直ぐ飛来した銃弾をパンチ迎撃したオウガの拳がロケットの如く飛び出し奏音を殴り飛ばして後方の巨石と衝突粉砕。膨らむ左拳を握ったオウガにカーネリアが飛びかかる!
「篁流格闘術……『雪崩・裂鋼』ッ!」
 突き出された掌底が炎パンチとぶつかり合った直後、オウガの腕から肩まで破裂! 全身の傷から血をまき散らしながら顔の炎を燃え盛らせたオウガは右手で着地したカーネリアに殴りかかった。それを受け止めるタンザナイト!
「グゥオオオオオオオオオ!」
「ふんむうううううううッ!」
 タンザナイトの全身が星雲じみた光を爆発させた。足を踏ん張り、歯を食いしばる彼につかまれた炎の腕もまた膨張し、轟とうなり声を上げる。オウガの怪獣めいた叫びとほとばしる血飛沫を被り、タンザナイトは声を張る。
「止まって……止まってくださいッ! これ以上は……ぬおおおおおッ!」
 次の瞬間、炎が消えた。勢い余って前につんのめり、うつ伏せに倒れたタンザナイトはオウガを見上げる。傷だらけの巨体は彫像めいて凍りつき、両手と顔にくすぶる緑の種火が燃え尽きる。水を打ったように周囲が静まり返る中、オウガは仰向けに倒れ、動かなくなった。

作者:鹿崎シーカー 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2018年2月3日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 6/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 0
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