オウガ遭遇戦~鬼は来りて飢えに喘ぐ

作者:質種剰

●飢餓状態
 岡山県は岡山市。
 山中にしては人の手が加わってかなだらかな道に、低い怒号が響き渡った。
「グォオオォォオオォォッ!!」
 怒号の主は、一見しただけだと人間に見紛う体躯をしていたが、背面を見るや異形であると判る。
 頭部から背中にかけて、鋭い黄金のツノが何本も生えているのだ。
 奴こそがコードネーム『デウスエクス・プラブータ』。
 そう、オウガと呼ばれているデウスエクスである。
 オウガの目は血走り、眦は吊り上がり、鬼の形相とはかくやとばかりの表情をしている。
「グォァアアァァアアァッ!!」
 それと言うのも、このオウガ、どうやらグラビティ・チェインが枯渇していて、飢えに飢えている極限状態であるらしい。
 理性を完全に失っているのも仕方ない状況と云えよう。
●強敵襲来
「レベッカ・ハイドン(鎧装竜騎兵・e03392)殿を含めた皆さんが探索を進めてくださっていらした事で、オウガに関する予知を得られたであります」
 小檻・かけら(清霜ヘリオライダー・en0031)がやたら分厚い資料を手に説明を始める。
「岡山県中山茶臼山古墳周辺に、オウガが多数出現すると予知できたのであります」
 オウガが出現するのは2月3日だと判明しているが、彼らのゲートの位置までは特定する事が出来なかったという。
「出現するオウガはグラビティ・チェインの強度な枯渇状態にある為、知性が失われていまして、ただただ人間を殺してグラビティ・チェインを強奪しようと試みるであります」
 この状態で話し合いなどは全く行えず、戦うしか手立てが無い——とかけらは断じた。
「オウガ達は多くのグラビティ・チェインを求めて、節分の神事で多くの人が集まっている吉備津神社方面へと移動するであります」
 それ故、中山茶臼山古墳から吉備の中山細谷川までの地点へと赴いて、オウガの迎撃を行って欲しい。
「中山茶臼山古墳周辺には、表面が鏡のように平板だという鏡岩を始めとした巨石遺跡が多くありまして、その巨石の周辺へオウガはよく出現するであります。ですから巨石周辺で迎撃なさるか、或いは……オウガ達が必ず通過する、吉備は中山細谷川の隘路の出口で迎撃なさる事になります」
 かけらは続ける。
「皆さんに戦って頂きたいオウガは1体。グラビティ・チェインの枯渇状態なので、このままグラビティ・チェインを補給しないとコギトエルゴスム化してしまうでありますが、その前に人間を殺してグラビティ・チェインを奪おうと侵攻してくるであります」
 前述の通り迎撃地点は2か所あるが、出現ポイントである巨石群で迎撃した場合は周囲に一般人などもいないお陰で、戦闘に集中できる。
「こちらで戦闘を行った場合、グラビティ・チェインの枯渇によるコギトエルゴスム化まで20分程度かかる為、コギトエルゴスム化の前に戦闘の決着がつく可能性が非常に高くなります」
 もう一方の迎撃ポイント、吉備は中山細谷川の隘路の出口での迎撃については。
「途中の経路は不明でありますが、オウガは必ずこの地点を通過するので、確実に迎撃する事ができます」
 ただ、この地点は節分のイベントで人が集まっている吉備津神社に近く、突破されてしまうと一般人に被害が出てしまうのを避けられない。
 それ故、突破されないように注意する必要がある。
「こちらで迎撃した場合、戦闘開始後12分程度で、グラビティ・チェインの枯渇によるコギトエルゴスム化が始まると想定されます」
 オウガの戦闘力は高く、常に全力で攻撃してくるので、わざと戦闘を長引かせるような戦闘を行った場合、ケルベロス側が大きく不利になってしまう。
「コギトエルゴスム化を狙う場合は、相応の作戦や戦術が必要になるでありましょうね……」
 さて、かけらが予知したオウガは、身体に生えた黄金のツノによく似た、トゲ付きの金棒を振るって攻撃するという。
「金棒は鉄塊剣ぐらいの巨大さでありまして、その金棒を全力で振り下ろして来るであります」
 まさに力任せに『叩き潰し』てくる訳だが、敏捷性に優れたグラビティであり、射程は短くともその破壊力と追撃のダメージは決して油断できない。
「他にも、飢餓状態のオウガは軽々と金棒を振り回して、ワールドエンドディバイダーやドレインスラッシュによく似たグラビティも使って来るでありますよ」
 かけらはそう説明を締め括って、彼女なりにケルベロス達を激励した。
「オウガは戦闘力の高いデウスエクスですから、まずは勝利する事を第一に考えてくださいましね。ケルベロスが敗北すれば、多くの一般人に被害が出てしまいますから……」
 ですが、と付け加えるのも忘れない。
「もし……オウガを滅ぼさずに対処する事ができれば、今後のオウガとの関係を良好なものにできるやもしれませんが……決して無理は禁物でありますね」


参加者
貴石・連(砂礫降る・e01343)
葛城・唯奈(銃弾と共に舞う・e02093)
ラーナ・ユイロトス(蓮上の雨蛙・e02112)
守屋・一騎(戦場に在る者・e02341)
レベッカ・ハイドン(鎧装竜騎兵・e03392)
皇・絶華(影月・e04491)
カティア・アスティ(憂いの拳士・e12838)

■リプレイ


 吉備の中山細谷川。
 比較的近くの吉備津神社に背を向ける形で、ケルベロス達は隘路に陣取り、オウガが通るのを待ち構えていた。
(「飢餓に苦しんでいたローカスト達を思い出す……あの時は救えなかった」)
 守屋・一騎(戦場に在る者・e02341)は、この狭く険しい道を通る一般人かいないか、もしいたら逃げるよう促さなければ——と神経を尖らせている。
 黒い柴犬のウェアライダーで、右目を銀色に地獄化したブレイズキャリバーだ。
 子どもっぽいイメージの強い元気坊主だが、その本質は猜疑心が強く排他的、思考の渦にも嵌まりやすい性格。
 また、己が居場所を戦いに見出している所がある。
「だから今度は救いたい——だが最優先は一般人の命や安全。それは譲れない」
 オウガのコギトエルゴスム化と、神社に集う一般人を守る事——どちらも実現したいという強い意志でもって、懸命に避難を呼びかける一騎だ。
「新しいデウスエクス……この出会いが私達にとって不幸となるかは……私達次第か」
 皇・絶華(影月・e04491)は、予め作っておいた吉備の中山から吉備津神社までの細かい見取り図を広げて、オウガの隘路以降の進行ルートを推測していた。
 さらりとしたセミロングの銀髪と涼やかな瞳がクールな空気を醸し出している、螺旋忍者の少年。
 好きな調味料は漢方薬と豪語する料理好きだが、何故か栄養価『のみ』に重きをおく彼の手料理を完食出来る者は少ない。
 だが、それならそれで——と絶華はグラビティを用いて毒性を強化し、デウスエクスとの戦いに役立てていたりする。
「この遭遇が不幸でないようにしたいな」
 絶対にオウガを突破もさせなければ死なせもしない——固い決意を胸に絶華はキッと前を向いた。
「早く倒しちゃいけない、というのも結構きついね。それはそれでやりようはあるけど!」
 と、困難な戦闘に意欲を燃やしているのは葛城・唯奈(銃弾と共に舞う・e02093)。
 ケルベロスになった事で思う存分銃を撃てると、無邪気に喜ぶガンスリンガーの少女だ。
 身寄りのない孤児だったが、そんな来し方を感じさせないノリの良い性格で口調も軽い。
 最近、成長期でスタイルがぐっと良くなったそうな。
「一定時間まで耐える戦いは初めてだな……えっと、神社はこっちの方角だよね??」
 唯奈は振り返って、節分のお祭り目当てに集まっているだろう参拝客を守るべく、自分達の位置把握に努めた。
 一方。
「節分に現れるとは、デウスエクスって律儀なんだか何なんだか」
 貴石・連(砂礫降る・e01343)は、呆れた風に溜め息をつく。
 カジュアルな服装を好んで着る、降魔拳士の少女。
 今身につけている騎師甲冑『銀貨千枚』や左腕に巻いた水晶の腕輪も、連のボーイッシュな雰囲気をよく引き立てている。
 好きな食べ物はカフェオレとベーグルサンドという、快活でサバサバした性格の医大生だ。
「とにかく誰も不幸を負わないよう、精一杯を尽くそう。ベッカもよろしく」
 連が隣に立つ恋人を見やって声をかければ、
「ええ、よろしくレン。オウガを止めないといけないですね」
 レベッカ・ハイドン(鎧装竜騎兵・e03392)も、しっかりと頷いてみせた。
 肩先で切り揃えた艶のある黒髪と円らな瞳、浅黒い肌が特徴的な、人派ドラゴニアンの大学生。
 黒っぽいフィルムスーツに覆われた肢体の見事なボディーラインも目を引く、そこはかとなく色っぽい美女だ。
 勇者の家系に生まれ、知られざる『古の騎士』より継承したアームドフォートを愛用する、歴戦の鎧装騎兵でもある。
「わざと戦闘を長引かせれば大きく不利になる……オウガが私達を無視して強引に突破を試みないかも心配ですね」
 自身で探索した成果を不幸な結末で終わらせたくないとの思いもあるのだろう、元より苛烈さを秘めるレベッカを取り巻く空気は、ピリピリと張り詰めていた。
「準備完了。カモン、オウガ」
 連は両手のバトルガントレットの具合を確かめてから、不敵に笑った。
 他方。
「オウガの出現……即ちプラブータのゲートがどこぞにあったということでしょうか」
 ラーナ・ユイロトス(蓮上の雨蛙・e02112)は、ことりと不思議そうに小首を傾げた。
 雨粒みたいにキラキラと光を受けて輝くツノと翼、そして雨蛙を思わせる緑の髪が印象的なドラゴニアンの女性。
 昨年は、自分の暴走時の姿をしたワイルドハントと対峙、これを倒すも、やはりというべきかその心境は他人からは窺い知れない。
 いつも微笑んでいるかのような顔立ちをした、神秘的な雰囲気のウィッチドクターである。
「しかし、お腹が空くのは辛いものです、ですがそれに対してはいどうぞと提供できないのも苦しいところです」
 もはやコギトエルゴスム化は避けられないオウガの窮状を慮ってか、苦い声で呟くラーナだ。
「この状況……何だか、ローカストを、思い出します……もう、あんな、悲しいの……嫌です……!」
 カティア・アスティ(憂いの拳士・e12838)は、飢餓ローカストとの戦いを振り返って、切なそうに首を振った。
 幼い頃、宿敵セシカに奪われた髪が地獄化してブレイズキャリバーへと覚醒した、オラトリオの少女。
 そのトラウマから鬱屈した人生を過ごしてきたのだが、セシカ当人を討つ事が出来たお陰で、本人曰くなんか吹っ切れたらしい。
 しかし、染みついたコミュ障根性と途切れ途切れな口調はなかなか治らず——胸が小さいのも諦めたつもりだが、やっぱり辛いのだとか。
「そういえば……オウガと、オウガメタル……確か、関係、あったの、でしたっけ……?」
 気を取り直して、セクシー系アルバイト制服の表面を流れるオウガメタルへ尋ねるカティア。
「……何か、ご存知です……?」
 何も知らないオウガメタルは淡い光を明滅するだけで、カティアの予想通り答えてはくれなかった。
(「耐久戦……相手が力尽きてコギトエルゴスム化するのを待つ、か……」)
 エヴァンジェリン・ローゼンヴェルグ(真白なる福音・e07785)は、ドラゴニックハンマーを手に、いつでもオウガの進軍を阻もうと臨戦態勢でいた。
 長く伸ばしたハニーブロンドの髪にツリ目がちなサファイア・ブルーの瞳が、涼やかな印象を与える女性。
 髪より生えた荊に咲く薔薇と、背から広がる一対の翼、それらの眩いばかりの白さは、エヴァンジェリンの気高い騎士道精神を表しているかのようだ。
 また、深みのある青を差し色にした銀の鎧も、彼女のスタイル抜群な身体を尚も美しく彩っている。
(「無理して攻撃する必要が無いとはいえ……こちらがオウガの攻撃を耐え切るだけでも困難を極めるだろう……気を引き締めねば」)
 日頃からクールで寡黙なエヴァンジェリンだが、その表情は常にも増して険しい。


「グォオァアァアァッ!!」
 ケルベロス達の前に現れたオウガは、やはり理性をすっかり失った様子で前進してきた。
「グギィッ!」
 それでも、狭い道を塞いでいるケルベロスらが容易く打ち破れない障害だと判るのか、力任せに巨大金棒を振り下ろしてきた。
 ズシィィ……ン!!
「ベッカ、危ない!」
 連がレベッカの前へ躍り出て、両手のバトルガントレットで金棒を受け止めようとするも、やはりグラビティによる超重量に押し潰されてダメージは免れない。
「今はメディックとしてのお役目、全力で果たしましょう。後に目覚めたとき、気持ちよくお話しいただくためにも」
 すぐさま、ラーナが魔術切開とショック打撃を伴う緊急手術を決行。
 連の負った深手を大幅に回復させた。
「さぁ、いこうか……」
 自分を奮い立たせるかのように呟くのはエヴァンジェリン。
「これより先にオウガの侵攻を許す訳にはいかない……必ず止めてみせる」
 『砲撃形態』に変形させたドラゴニックハンマーを振るい、竜砲弾を撃ち出してオウガを爆炎に包んだ。
「私達はまだお前達について知らない。そして今のままでは知る事も出来ない」
 絶華は、ゲシュタルトグレイブを構えてオウガの懐に飛び込むと、
「だから……止めさせてもらう」
 超高速の突きをその筋骨隆々たる腹部へ見舞うや、貫いた刺創から稲妻の如き衝撃を全身に広げて、奴の神経回路を麻痺させた。
「願わくば……お前達が私達にとって外敵とならない事を祈ろう」
 そう複雑な面持ちで呟く絶華。少しでもオウガの攻撃手数が減る可能性に賭けての稲妻突きだ。
「Bang、ってか!」
 唯奈は愛用のリボルバー銃を連射する。戦闘中故にその口調は荒々しい。
 ばら撒かれた弾丸はオウガの逞しい大腿部に着弾、攻撃を避けにくく仕向けた。
「5分経過」
 戦闘開始より時間を計っていたエヴァンジェリンが告げる。
「……失ったものは、もう戻らない。なら、せめて……」
 カティアは、自身のグラビティ・チェインを花の形をしたエネルギー体に変換。
 我知らず地獄の炎を纏ったそれらを両手からばら撒いて、オウガへ刺すような痛みを齎した。
「かなり危険な状態になってますねオウガ。まともな状態のオウガが残ってるといいんですけど」
 レインボーバスターライフルで狙いを定め、エネルギー光弾を射出するのはレベッカ。
 眩い光がオウガの巨大金棒を飲み込み、奴のグラビティを中和して弱体化させた。
「やられっぱなしになる気はないよ」
 連は空の霊力帯びしバトルガントレットで、オウガの腹部を力一杯殴りつける。
 彼女の拳が正確に腹の傷口を捉え、痛烈な一撃となって抉り抜いた。
「退かない。行かせない。誰かを傷付けるならここで終わらせる」
 素の口調になって言い切ると共に、オウガへ肉薄するのは一騎。
 まさに電光石火の早業でオウガの下腹部を鋭く蹴りつけ、激しい衝撃を与えた。


 長く苦しい戦いが続いた。
「ウガァアアア!!!」
 オウガはグラビティ・チェインの枯渇に肉体的な激痛まで加わった為か、ますます猛り狂って、巨大金棒で地面を叩き割ってくる。
 今まで3回も攻撃をしくじってくれたのは、皆の麻痺攻めが功を奏したからだろう。
「倒れるには、ちっとばかり早すぎるな!」
 連を庇って全身を大爆発に晒した唯奈が、幸運にも魂が肉体から凌駕して立ち上がる。
「10分経過」
 エヴァンジェリンの時計によれば、後2分持ち堪えなければならない。
「貴様の六感を眠らせる!」
 瞬きする間にオウガとの距離を詰め、七つの気脈を突くのは絶華。
 視覚、聴覚、嗅覚、触覚、味覚、六感、七感までを一気に乱して、回避行動を制限してみせた。
 唯奈はずっと咥えていた棒つき飴をバリバリと噛み砕き、棒を吐き捨てる。
「威力は保証するぜ、吹っ飛びな!」
 同時にアームドフォートの主砲を一斉発射、とにかくオウガを痺れさせようと砲弾の雨を降らせた。
「これは……一度には回復しきれませんね。どなたかヒールの援護をお願いします」
 ルドラの子供達を振り翳し、雷の壁を構築しながらラーナが声を張る。
 ライトニングウォールは前衛陣の喰らった爆発の衝撃を和らげ、活力を与えてくれた。
「了解しました」
 呼びかけに応えたレベッカはすぐに、半透明の『御業』を唯奈へ差し向け、鎧に変形させて彼女を守護する。
「決して……撤退はしません……たとえ、最後の一人に、なろうとも」
 ふわりと広げた天使の翼から、聖なる光を照射するのはカティアだ。
「グギギギ……!」
 光を浴びたオウガは、己が『罪』を直接焼かれた痛みに苦悶、既に被った様々な衝撃や痺れが増幅する感覚を味わった。
「我が魂を刃と為し、万物悉く薙ぎ払え!」
 両手で構えたエヴァンジェリンは、時空の調停者たるオラトリオの大いなる力の一端を再現すべく、魔力を圧縮する。
 そうして研ぎ澄ませた高密度の魔力で編んだ極大な光刃を、縦に大きく振り抜いて一閃、オウガを星光の奔流に呑み込んだ。
「ここは何が何でも行き止まりなの!」
 と、皆と同じ不退転の覚悟をもって指天殺を繰り出すのは連。
 指一本の突きのみでオウガの気脈を断ち、石化にも似た状態異常を齎した。
「一般人の命を守る為ならここでとどめを刺す事も厭わない……それでも」
 一騎は複雑そうな面持ちになりながらも、オウガへブラックスライムを嗾ける。
「もしもアンタが最低な奴だったとしても、こんな餓えた状態で倒したくないのは本音だよ」
 捕食モードに変形したブラックスライムが、オウガに頭から齧りつき、その巨体を丸呑みにせんと膨張した。
 それから尚も1分をケルベロス達は何とか持ち堪えて、遂に。
 カラン……!
 グラビティ・チェインの尽きたオウガがコギトエルゴスム化する様を、目の当たりにしたのだった。
 誰も倒れずに8人全員が戦闘終了まで持ち堪えられたのは、大幅に不利な戦況を想定した上で、何より防戦一辺倒に回復を優先したお陰だろうか。
「あー、慣れない戦闘でつっかれたー」
 ふー、と安堵の息を吐くのは唯奈だ。
「お疲れ様、でしたね」
 地面に転がったコギトエルゴスムを糸目で追いかけ、ラーナがそっと回収する。
「この選択が正しいかどうかはまだわからない。だが……もし脅威になるとしても、その時は……打ち倒すのみだからな」
 絶華は、拾い上げられたそれを両手で受け取り、じっと見つめた。
「そうするだけの強さもまた……きっと私達には必要なのだろうから」
 一方。
「遺跡へオウガのゲート捜索に行ったりもしてみたいですが……まずはレン、一緒に節分のお祭りを覗きに行きませんか?」
 レベッカも肩の力を抜くように笑顔を見せて、恋人へ声をかける。
「良いね、行こうベッカ。確か鬼やらいって言って、豆撒きをするんだよね」
「ええ。豆の中には当たりもあるとか、楽しみですね、レン」
 吉備津神社のお祭りに繰り出すケルベロス達を、節分の福は温かく迎えてくれるに違いない。

作者:質種剰 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2018年2月3日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 5
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