永遠の学生服

作者:雷紋寺音弥

●最後の制服
 誰もいない部屋の中。鏡に映った自分の姿を眺めながら、藤本・沙織(ふじもと・さおり)は思わず大きな溜息を吐いた。
「はぁ……。この制服も、そろそろ着納めかぁ……。もっと、ずっと着ていたかったなぁ……」
 大学入試も迫り、クラスが受験ムードで染まる中、進学先も早々に決まってしまった彼女の悩みは別のところにある。
 自分が女子高生としていられるのも、後僅か。当然、卒業してしまえば、この学生服ともお別れだ。
「まあ、確かに卒業したからって制服が着られなくなる訳じゃないけど……でも、高校生じゃないのに制服着たって、それじゃただのコスプレだし……」
 そう、彼女が誰に言うともなしに呟いたときだった。
 突然、沙織の前に現れた、孔雀のような姿をした天女の幻。それが優しく微笑んだ瞬間、彼女の姿もまた光に包まれてビルシャナへと変わり。
「そうだ……。これから先、この高校を受験する可能性のある中学生達を全部殺しちゃえば、新しく入学してくる人もいなくなる……。そうすれば、いつまでも、永遠に女子高生でいられるじゃん!」
 どう考えても荒唐無稽で歪んだ教え。しかし、それでも進退窮まった沙織にとっては、最後の望みに思えてしまったのだろうか。
「うふふ……。だったら、まずはこの街にいる中学生を、皆殺しにしちゃえばいいんだよね……」
 翼を広げ、颯爽と部屋を飛び出した沙織は、そのまま昼下がりの街へと獲物を求めて繰り出して行った。

●歪んだ大願
「召集に応じてくれ、感謝する。六道・蘭華(双霊秘詩の奉剣士・e02423)の懸念していた通り、卒業を拒んで永遠に制服を着たがるビルシャナが現れた」
 だが、そのビルシャナは今までのような信者を集めるタイプとは違う。そう結んで、クロート・エステス(ドワーフのヘリオライダー・en0211)は集まったケルベロス達に自らの垣間見た予知について語り始めた。
「今回のビルシャナは、ビルシャナ菩薩『大願天女』によってビルシャナ化されてしまった人間だ。名前は藤本・沙織(ふじもと・さおり)。県立の高校に通う3年生で、卒業を控えてブルーな気持ちになっているようなんだが……」
 彼女の願いは、永遠に女子高生ライフを満喫して、ずっと学生服を着ていたいというもの。しかし、何を間違えたのか自分の通っている高校を受験する可能性のある中学生を皆殺しにして、誰も入学しないようにすれば、願いが叶うと思ってしまったらしい。
「どう考えても、ナンセンスな思考だな。だが、ビルシャナ化した沙織を説得できれば、計画を諦めさせて彼女も救い出すことができる。可能であれば、彼女も助けてやってくれ」
 ビルシャナ化した沙織を説得する方法は、大きく分けて3つある。
 1つ目は、殺人などといった極端な方法を用いなくとも、先にケルベロスの方で願いを叶えてしまうこと。だが、お金や物が欲しいという願いなら兎も角、今回の事件に関しては、これはなかなか難しいだろう。
 2つ目は、これから行おうとしている暴力的な手段では、願いを叶えられないことを証明すること。大願天女の影響で、沙織は自分の計画に陶酔してしまっているので、なるべくシンプルで納得しやすい方法で、彼女の計画の欠点を突く必要がある。
 最後に3つ目。これは願望の内容が下らない事を納得させるという方法で、彼女の願望諸共に、制服に対する執着を叩き潰す方法だ。『制服なんて絶対に着たくない!』と思わせることができれば、彼女を説得することは可能だろう。
「今から家に向かえば、沙織がビルシャナ化した直後に接触することも可能だぜ。戦闘になると、沙織は強烈な閃光や謎の経文、清めの光といった技を使用して来る。ビルシャナの使う技としてはオーソドックスなもので、特に奇抜な特徴はないようだな」
 ある意味では、彼女もビルシャナの被害者である。卒業を控えた女子高生の涙など、卒業式に流すものだけで十分だ。
 そう言って、クロートは改めて、ケルベロス達に依頼した。


参加者
八代・社(ヴァンガード・e00037)
赤堀・いちご(ないしょのお嬢様・e00103)
眞月・戒李(ストレイダンス・e00383)
六道・蘭華(双霊秘詩の奉剣士・e02423)
愛沢・瑠璃(メロコア系地下アイドル・e19468)
セデル・ヴァルフリート(秩序の護り手・e24407)
ラジュラム・ナグ(桜花爛漫・e37017)

■リプレイ

●制服は永久に
 夕暮れ時の住宅街。ビルシャナ出現の報を受け、現場へと急行したケルベロス達。
 そこは、どこにでもある何の変哲もない民家だった。最悪の場合、押し入ろうとも考えたが、幸いにして扉に鍵はかかっていなかった。
「ああもう、可愛すぎですわ♪」
「い、今はそんな場合じゃ…」
 制服姿の赤堀・いちご(ないしょのお嬢様・e00103)を、六道・蘭華(双霊秘詩の奉剣士・e02423)が抱き締めていたが、それはそれ。
「それにしても、また厄介なビルシャナが現れましたね」
 叶わぬ願いを抱いた者の心に付け入り、その願いを大きく歪めてしまう。なんとも面倒な存在が現れたものだと、セデル・ヴァルフリート(秩序の護り手・e24407)は溜息一つ。
 とりあえずは、今はビルシャナと化した少女を説得し、その凶行を止めさせねばならない。その想いを胸に、ケルベロス達は家の扉に手を伸ばし。
「……誰!?」
 家の中に足を踏み入れるなり、こちらを振り返る制服姿の少女。だが、今やその身体に人間としての面影はなかった。
 大願天女の言葉に耳を傾けてしまった少女、藤本・沙織は、既に人としての姿を捨てていた。だが、それでもまだ、心までは完全に人間を辞めていないはず。そんな一縷の望みに賭けて、ラジュラム・ナグ(桜花爛漫・e37017)問い掛けた。
「ちょいと考えてみようか? 入学者が居なくなったとしても、卒業式は無くなるだろうか?」
 入学する者がいなくとも、実行する側の教師がいれば式は執り行われるだろう。否、仮に教師がいなくとも、今度は行政が放ってはおくまい。
 邪魔者を消したところで、卒業式はなくならない。ならば、誰かを殺して式を中止にさせようという行動も無意味だとラジュラムは告げたが、沙織は首を縦に振ろうとはしなかった。
「うるっさいわね! だったら、入学者だけじゃなくて、式をやろうとする大人も全部殺しちゃえば同じでしょ? 解ったら、そこを退いて! 私の邪魔をするなら、あなた達も殺すわよ?」
 これも、大願天女の力による影響なのだろうか。ビルシャナと化した沙織は、既に周りの状況も世間の常識も眼中にないようだった。このままでは、彼女は本当に魂までビルシャナと化し、何の躊躇いもなく人々を虐殺する存在になってしまう。
 だが、ここで諦めては全てが終わりだ。仮に式を執り行う大人が全て消えたとしても、残された同級生達はどう思うだろう。
「あの……そもそも論として、入学者がいなくなっても、今在籍している人は普通に卒業するのでは……?」
 未だ進学先の決まっていない者もいるとはいえ、それでも時期が来れば、3年生は学校を去るだろうといちごは言った。
 ある者は大学や専門学校へと進学し、中には就職する者もいるだろう。それは、新入生や教師がいなくとも同じこと。誰かがいるから、ところてんのように押し出され、学校を追われるのではないのだと伝え。
「過疎地の学校とかテレビで見ないかな? 入学する生徒がいなくても、卒業式は行われて最終的に学校は無人になる。いくら君がいる学校を受験する子たちを殺しても、そんな事関係なしに卒業式は執り行われるよ」
 それは、廃校化という時代の流れ。どれだけ人を殺しても、それはむしろ学校そのものを消滅させる、己の首を絞めるだけの行為であると眞月・戒李(ストレイダンス・e00383)は語る。
「あたしの故郷も、少子化なんかで高校が統廃合されたわ。入ってくる生徒がいなくなったら、貴方の高校も統廃合されるでしょうね」
 間髪入れず、愛沢・瑠璃(メロコア系地下アイドル・e19468)もまた自分の見て来た現実を沙織に語った。
 高校が統廃合されてしまえば、制服どころの騒ぎではない。無駄なコストはかけない、このご時世。古いデザインの制服は見直され、最悪の場合は制度そのものが廃止。否、それで済めば良いが、そもそも学校が廃校になってしまえば、制服を着る意味さえなくなってしまう。
「……それなのに貴方の計画……本当にやるの?」
 いくらなんでも、リターンに対するリスクの方が大き過ぎる。様々なものを失って、その果てにあるのが学校の消滅に伴う制服の廃止では、何のために人を殺す意味があるのかと。
「無辜の子を殺めれば、言い訳はできませんわよ」
 手厳しい蘭華の言葉。だが、彼女の言うことは尤もだ。
 ビルシャナと化して人を殺めれば、さすがに学校とて黙ってはいまい。退学……否、この場合は人外の存在として除名処分を受け、女子高生として制服を着られる時間が短くなるだけだとも。
「それと、もう一つ。沙織さんは、ただ制服『だけ』が大事ですの?」
 本当に問いたかったのは、むしろそちらの方。確かに制服は女子高生を象徴するものだが、それを守るだけで、本当に沙織の守りたいものを守れるのだろうか。
「制服を着続ける事、本当にそれが貴方の目指す学園生活でしょうか? 制服はあくまで学園生活の一部であり、全てではないはずです」
 目的と手段が入れ替わった状態では、何をしたところで満たされないとセデル・ヴァルフリート(秩序の護り手・e24407)が告げれば、レティシア・アークライト(月燈・e22396)もまた、至極当然のことを沙織に問う。
「永遠なんて、ありません。だって貴女も歳を取るでしょう? 周りがどんどん大人になって素敵な服を着て綺麗になっていく中で、貴女一人、ずっとそのままでも本当にいいんですか?」
 いくら制服を守り続け、頑なに卒業を拒んだところで、歳を取ることからは逃れられない。
「な、なによ……。それでも、私はずっと、高校生のままでいたいのよ! 身体はお婆ちゃんになっても、心が18歳のままなら、ずっと女子高生でいられるもん!」
 一瞬、沙織の表情に躊躇いの色が浮かんだが、それは直ぐに彼女の言葉と共に掻き消えた。なんとも酷い屁理屈だったが、それでも今までのやり取りを経て、八代・社(ヴァンガード・e00037)は確信していた。
 この少女には、まだ救いがある。言葉に詰まり、間に合わせの屁理屈でしか反論できないのが、何よりの証拠。ならば、最後まで手を差し伸べてやるのが、彼女に関わった者としての務めだと。
「変わりたくないのは解る。けど、そればかりじゃ前に進めないし、誰かの道を塞ぎかねん」
 自分で踏み出すことができないのであれば、その手伝いをさせてもらおう。折角、お節介な人間が八人も揃ったのだから。
 沙織に足りないもの。それは自分の過去を過去と認め、未来へと踏み出すための一歩。思い出は、心を縛る鎖ではなく糧である。それを教えるべく、ケルベロス達は改めて、沙織に本当に大切なことを伝えることにした。

●未来と思い出
「沙織さん。やっぱり……制服だけ着ていればいいというものではないと思いますよ」
「デザイナー制服とかおしゃれな制服とかもあるけど……やっぱ、毎日代わり映えしないってのはあたしはちょっと苦手ね……。オンなら仕方ないけどオフまで着るのはちょっと……」
 制服は、あくまで象徴に過ぎない。いちごに続き、瑠璃もまた自分の気持ちを口にした。もっとも、個々人の気持ちや感想程度では揺らがないのか、沙織は辛辣な言葉を返してくるだけだった。
「別に、あんた達にどう思われようと、私の勝手でしょ? それに、服をコロコロ変えたからって、刺激のある毎日を送れるって保証もないしね」
 もっとも、沙織の口から紡がれたその言葉は、即ち盛大なブーメランとして、彼女自身に突き刺さるもの。衣服によって日々の価値が左右されるのではないのだとしたら、制服に拘ることもまた、ナンセンスにしかならないのだから。
「私のこれは、ただのドラマの衣装です。制服着て学校に通ったわけではありません。……学校の思い出があるわけではないんです」
 それでも、沙織の制服は違うだろうと、いちごは尋ねた。その制服と共に重ね、紡いで来た数々の思い出。本当に大事なのは、その思い出の方ではないのかと。そう問い掛けるのはいちごだけでなく、レティシアもまた同じ。
「楽しかった日々も、過ごした時間も、思い出も、制服を着なくなったって消えませんよ。貴女がちゃんと覚えてさえいれば……そしてこの先、これまでのような楽しい思い出がまた新しく増えるかもと考えたら、少し、未来が楽しみになりませんか?」
 過去には戻れないし、変えられない。しかし、その思い出を大切にすることはできる。そして、そのために必要なのは、決して人を殺すことなどではない。
 学園生活とは、誰かに何かを教えられ、それを共に誰かと学び、励み、そして交流を育んで行くものだ。しかし、そこで誰かを殺してしまえば、もう後には戻れないとセデルが続け。
「貴方の求めている学園生活、そこには、きっと誰かの存在があったはず。それを思い出してください」
 仲の良い友達、憧れの先輩、そして世話になった恩師の顔を思い出せ。その言葉に、沙織の顔に再び躊躇いの色が浮かんだ。
「友達……先生……。わ、わたしは……」
「こうまでして繋ぎ止めたいと思うくらい、いい高校生活だったんだろうな。でも――他の奴から居場所を奪い取ってまで続けるのは筋が違う。いつかは場所は譲るべきだし、おまえは前に進むべきだ」
 畳み掛けるならば今だ。好機を察し、社は誘うようにして問い掛けた。戒李もまた、それに続く。
「これから行く所も、同じくらい楽しいかも知れないぜ? 中学から高校に上がった時を思い出せよ。不安だったけど、来てみれば楽しかっただろう?」
「それに、友達と話さなかった? 将来はかっこいい恋人見つけるとかさ。先があるから今が楽しいんだよ。断言してもいいけど、卒業した後だってこれまでと同じか、それ以上に楽しい日々が待ってるよ」
 進学先の決まっている沙織であれば、薄々は気付いているだろう。スクールライフも楽しいが、キャンパスライフというものは、それ以上に楽しい何かがあるものだと。
「大事なモノを自ら台無しにするのでなく、その思い出を大切に抱いていきましょう。……ね?」
 人の血で制服を染めてしまえば、その思い出さえも穢れてしまう。だから、もうそろそろこちらへ、人の世界へ戻って来る頃合いだと、蘭華が優しく手を差し伸べた。
「……そうね。私、どうかしてたのかも。本当は、単に認めたくないだけで……」
 ビルシャナの姿のまま、沙織は差し出された手へ翼となった手を伸ばす。だが、その羽先が蘭華の指先に触れようとした瞬間、激しい光が沙織を包み、彼女の身体を攻撃した。
「……ッ!?」
 衝撃で沙織だけでなく蘭華まで吹き飛ばされ、互いに部屋の壁に激突する。見れば、沙織は全身から煙を上げながらも、白目を向いたままこちらへ襲い掛かって来た。
「ビルシャナめ、強硬手段に出るつもりか……」
 歯噛みするラジュラム。どちらにせよ、この戦いを制さずして沙織を救い出すことはできない。
 歪んだ妄執から、彼女を解き放つまで、後一押し。殺戮機械の如く暴走するビルシャナを取り囲み、ケルベロス達は一斉に攻撃を開始した。

●移ろいの意味
 大願天女の力に抵抗の意志を見せた沙織だったが、それでも非情なるビルシャナは、最後まで彼女の身体を弄ぶことを諦めてはいなかった。
 ただ、目の前の存在を無作為に殺戮するだけの存在となったビルシャナの攻撃は、しかしそれだけに重たく強烈だ。もっとも、先の抵抗により、天罰の光による一撃を受けていたからだろうか。沙織の精神こそ奥底に封じ込められてしまったものの、ビルシャナ自身もまた、酷く傷付き消耗していた。
「……オォォォォッ!!」
 咆哮と共に、ビルシャナが強烈な閃光を解き放つ。眩い光が正面に立っている者達を纏めて飲み込んだが、それでもケルベロス達は、倒れることをしなかった。
「まだです……。ここで倒れるわけには参りません……」
 鉄塊剣を床に突き刺し、蘭華が崩れ落ちそうになりながらも踏み止まった。同じく、レティシアやセデルもまた、それぞれにビルシャナの攻撃を耐え抜いていた。
「変化のない人生なんてありません。一期一会、というくらいですから」
「それに、人生とは戦いであるとも言われています。戦って、傷付いて……それでも、そのたびに少しずつ、前に進んで行けるものなのです」
 人は出会いと別れを繰り返し、様々なものを乗り越えて大きくなって行くものだ。その邪魔を、ビルシャナなどにさせてたまるものか。
 もう、これ以上は時間をかける必要もなかった。いちごと瑠璃が放つ桃色の霧が仲間達を包み込み、再び立ち上がる力を与えて行く。ラジュナムの地獄が桜吹雪となって舞い散れば、蘭華もまた鋼鉄の精霊に、紫電を纏わせ撃ち出した。
「咲き誇れ」
「紫が命を別つとも……此方の不浄、神雷(アクセル)にて全て振り切れ! 華の剣姫!」
 乱れ桜が霹靂に舞う。互いに頷き、セデルとレティシアが虹や星を蹴り出せば、それに続けてサーヴァント達も、一斉にビルシャナへと殺到し。
「歪め。おれの魔弾をくれてやる」
 羽交い締めにされた状態で引っ掛かれ、体当たりを食らわせれているビルシャナに、社が中空に浮かべておいた、無数の魔弾を起動させた。
「カイリ! 叩っ斬れ!」
 飛来する青白い閃光の雨が、四方八方から降り注ぎビルシャナの逃げ場を奪って行く。それこそが、全てを斬り裂く一刀への布石。
「さあ、早く起きて。振り返らずに、まっすぐこっちに走っておいで」
 戒李の顕現させし空間が、ビルシャナを塗り潰し、そして断つ。その瞬間、憑き物が取れたようにして羽が舞い……後には制服姿の沙織が、人の形を取り戻して倒れていた。

●ラストJK
 戦いの終わった部屋の中。意識を取り戻した沙織へと、ケルベロス達は改めて告げた。
 本当に大切な思い出は、いつまでも色褪せないもの。もし、それがないというのであれば、残された僅かな時間で新しい思い出を作ればいい。
「そう、私も制服には思い入れがありますので……」
 だから、今でも高校時代の思い出は大切にしている。そう言って蘭華が取り出した写真には、ブレザー姿の彼女や恋人が映し出されていた。
「楽しそうでうらやましいです♪」
 写真を覗いたいちごが思わず笑顔を浮かべ、沙織も何かを悟ったようだ。
 残り僅かな高校生活。これを機に、受験が終わった友人と、一緒に遊園地にでも出かけてみようか。勿論、高校生活最後の思い出として、全員一緒の制服で。
「ここからが人生も楽しくなる。お前さんもこれからを楽しみな」
 去り際に、ラジュラムはそれだけ言って、後は振り返ることをしなかった。ここから先の物語は、沙織自身が紡ぐべきものだと知っていたから。

作者:雷紋寺音弥 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2018年1月28日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 5
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