琉球古武術大決戦!!

作者:洗井落雲

●武術家、悩みに悩む。
 琉球古武術。文字通り、琉球――沖縄にて発展した武術の総称である。
 さて、ここに男が一人。我流ながら、琉球古武術を極めんとする者である。今日も一日、山奥にこもり、ひたすらに武術の修業を行う。
 だが、男は迷っていた。武術の心得があるものは、その一挙手一投足から、迷いを感じ取れたかもしれない。
 男はまだ若い。その拳、極めるには至らず、道半ば。理想の『型』には程遠く、自らの才能を疑い――さりとて自分には武術しかない。
 スランプのようなものなのだろう。どのような道であれ、誰もが何度もぶつかる壁だ。
 男は頭を振るい、迷いを打ち消そうとした。と――。
「悩むのか、武術家が」
 せせら笑うような声が聞こえた。少女とも少年ともつかぬ、中性的な声であった。
「悩むくらいなら見せてみなよ! お前の、お前の思い描く最高の『武術』を!」
 その声に操られるように――男は動いた。
 拳を突き出す。トンファーでの打撃。一撃一撃を、突如現れた人物へ打ち込んでいく。
 今までのそれが嘘のように、男の動きは機敏であった。というのも、男は突如現れた人物――ドリームイーター、幻武極に、操られるような形で業を繰り出しているのだ。
 拳を曇らせるのは、迷いである。ならば、迷いを――操られるという形であれ、無くしたのであれば――本来の、ベストコンディションが出せるという物。
 だが、結局は人間の攻撃。如何にそれが素晴らしい物であっても、ドリームイーターである幻武極へのダメージへはつながらない。
「ふぅん、やるじゃないか。僕のモザイクは晴れなかったけどね。まぁ、お前の武術はそれはそれで素晴らしかったよ」
 にこり、と笑うと、幻武極は、手にした『鍵』を、男に突き刺した。
 ドリームイーターの鍵――ドリームエナジーを奪うためのアイテム。
 男はその場に倒れる。だが、死んではいない。
 倒れた男の隣に、男によく似た姿の怪人が現れる。ドリームイーターだ。
 ドリームイーターは男の動きをトレースしたかのように――しかし、男のそれよりも鋭く――武術の『型』を披露する。
 ふむふむ、と幻武極は頷くと、
「よし、じゃあお前の武術を見せ付けてきなよ」
 そう言って、ドリームイーターを送り出し、姿を消したのだった。

●武術家、おおいにわくわくする。
 さて、ここはケルベロスの施設、そのとある一室である。事件発生との知らせを受け、ケルベロス達が続々と入室していく。
 そのなか、椅子に腰かけて、話すは2人の少女。
「りゅーきゅーこぶじゅつ! なんか凄そう」
 と、興味津々でフレア・ベルネット(ヴァルキュリアの刀剣士・en0248)が言うのへ、
「うん、実際見てみると凄いよ! 素手の格闘術はもちろん、武器を使った流派もあってね? 奥が深いんだよねぇ……」
 と、語るのは、光宗・睦(上から読んでも下から読んでも・e02124)だ。降魔拳士でもある睦だ、武術方面の興味もあるのかもしれない。
「丁度いい、その琉球古武術が拝めるかもしれんぞ」
 そう言いながらやってきたのは、ヘリオライダー、アーサー・カトール(ウェアライダーのヘリオライダー・en0240)だ。
「武術を極めようとしている武術家が、ドリームイーターに襲われる事件が発生した」
 アーサーが言うには、幻武極と言うドリームイーターが、修行中の武術家を襲い、自分に欠損している『武術』を奪って、モザイクを晴らそうとしているらしい。
 今回、幻武極のモザイクははれなかったようだが、代わりに武術家から生み出したドリームイーターを暴れさせようとしている。
「このドリームイーターだが、襲われた武術家の『理想の武術』を使って戦うそうだ」
「その襲われた武術家が、琉球古武術の使い手って事?」
 尋ねるフレアに、
「うむ。我流だそうだが、なかなかしっかりとした使い手のようだよ。少々スランプに陥っていたようだが……いや、それはまぁいい」
 アーサーは咳ばらいを一つ、
「とにかく、今なら下山中のドリームイーターが人里に降りる前に迎え撃つことができる。このタイミングで倒してしまえば、被害を0にする事が出来るわけだ」
「なるほど……腕が鳴るね!」
 睦が嬉し気に、両手を握りしめて、言った。
 今回敵となるドリームイーターは1体。幻武極はすでに姿を消しているため、戦う事は出来ない。
 戦場となるのは、山の中腹ほど、程よく開けた場所になる。周囲に邪魔になるようなものはなく、人も訪れる事はない。敵との戦いに集中してほしい。
 敵ドリームイーターは、武術家が理想とした技で攻撃してくる。元が人間の武術だとしても、ドリームイーターの繰り出す攻撃なので、ケルベロスはダメージを受ける。
 中々の強敵だと思われるので、注意してもらいたい。
「このドリームイーターは、自らの武術の真髄を見せつけたいと考えているようだ。まぁ、こう言っては何だが、相手もいっぱしの武術家から生まれたドリームイーター。ここは一つ、果し合いをするような気持で臨んでくれ。君たちの無事と、作戦の成功を、祈っているよ」
 そう言って、アーサーはケルベロス達を送り出したのだった。


参加者
ガーネット・レイランサー(桜華葬紅・e00557)
四乃森・沙雪(陰陽師・e00645)
落内・眠堂(指括り・e01178)
大神・凛(ちねり剣客・e01645)
光宗・睦(上から読んでも下から読んでも・e02124)
燈家・陽葉(光響射て・e02459)
鈴木・犬太郎(超人・e05685)
桜庭・萌花(キャンディギャル・e22767)

■リプレイ

●ケルベロス、武術家と相対する。
 ヘリオンから降下したケルベロス達が着地したのは、被害者が襲撃を受けた山奥の修行場、そこから少し外れた場所である。
 気温は少々低かったが、天に雲一つなく、風もまたさほど吹いてはいない。ピクニックにはちょうど良い気候だろう。まぁ、これからケルベロス達が行うのは果し合いなのだが。
 さて、ケルベロス達は早速、索敵を開始した。敵はこの近辺を通過することになっている。万が一にでも見逃して、人里に下ろすわけにはいかない。
「……リューキュー・コブジュツ。……降魔拳士の技は延長にあるのだろうか?」
 ガーネット・レイランサー(桜華葬紅・e00557)が呟くのへ、桜庭・萌花(キャンディギャル・e22767)が答える。
「んー、どーなんだろうね。我流って話だし……睦ちゃんはそう言うの詳しくない?」
 話をふられた光宗・睦(上から読んでも下から読んでも・e02124)が、むむ、と唸った。
「私も我流拳法だしなぁ……でも、ちゃんとした武術極めて降魔拳士の技に応用してるケルベロスも居るのかも。いいよね、ちゃんとした武術! かなり興味ある!」
 ぐっ、と拳を握り、突き出す。
「そういえば、トンファーって琉球武術で使われる武器なんだったね」
 燈家・陽葉(光響射て・e02459)が、ぽん、と手を叩きつつ、言った。
「トンファーキックって言いながら殴るんだっけ?」
 その言葉に、萌花は首を傾げ、
「えー、なんか違くない……?」
「トンファーで、キックで、殴る……? 矛盾が発生している……」
 少々深刻に悩んだ顔をするガーネットである。
「まぁ、どんなものかは、実際見てみればわかるだろうな」
 落内・眠堂(指括り・e01178)が笑いながら言った。
「ふるくから伝わる武術と対峙できて、目の前でその技を見られる。いや、コイツは結構、楽しみだ」
「わかる! ロマン感じちゃうよね!」
 嬉し気に同意する睦である。
「確かに、同じ武人としては気になるな」
 鈴木・犬太郎(超人・e05685)が言う。
「でもそれ以上に、同じ武人として、その技がデウスエクスに利用される前に、しっかり止めてやりたいもんだぜ」
「そうだね」
 四乃森・沙雪(陰陽師・e00645)が同意する。
「……何かの道を究めようとする者が狙われて利用されるというのは忍びない。必ず助けてあげないと」
 と、沙雪が言った時である。
 ぴり、と。
 空気が張り詰めた、様な気がした。
「……居るな」
 大神・凛(ちねり剣客・e01645)が呟く。
 果たして、目の前に、それはいた。
 体の所々がモザイク化した、怪人だ。人間のような姿をしているが、顔はモザイクに覆われ、よくわからない。だが、武術家の魂ともいえる両手足は、モザイクに包まれることなく、鍛えられたその姿をさらしている。間違いない。武術家から生まれたドリームイーターだ!
「なるほど、いっぱしの使い手と見える」
 凛が、斬霊刀『黒楼丸』と『白楼丸』を抜き放ち、構えた。
「その武術、私の剣術で防いでみようか」
 その一言で、ドリームイーターはこちらを敵と認識したようである。すっ、と油断なく構えをとる。
「なるほど、良い気迫だ」
 犬太郎がニヤリと笑い、応じて構える。
「……フレアちゃん、予定通り、お願いね?」
 萌花の言葉に、フレア・ベルネット(ヴァルキュリアの刀剣士・en0248)が頷いた。
 フレアには、念のため、気絶しているはずの被害者の様子を見に行ってもらうことになっていた。戦場からは離れているはずだが、万が一、戦闘に巻き込まれるような位置にいたとしたら、元も子もないだろう。
「りょーかいっ。被害者さんの方は任せて。……なるべく早く戻ってくるようにするから、皆も気をつけてね?」
 フレアの言葉に、睦が頷いた。
「任せて! フレアちゃんが戻ってくる前にやっつける位に頑張っちゃうから!」
「う、ボクも琉球古武術みたいのにー……ま、冗談はさておいて、行ってくる!」
 たっ、とフレアが駆け出す。
 ドリームイーターは、フレアには目もくれなかった。あくまで相手は、残ったケルベロス達である。そう言うかのように。
「陰陽道四乃森流、四乃森沙雪」
 沙雪が手を握り、人差し指と中指をまっすぐに立てた。刀印である。その刀印で以て、斬霊刀『神霊剣・天』の刀身をなぞる。
「――参ります」
 その言葉を合図に。
 果し合いは幕をあげた。

●ケルベロス、武術家と果たし合う。
 真っ先に動いたのは、陽葉である。オウガメタル『雪と星の導き』の力を借り、ケルベロス達へ援護の光を放った陽葉は、ドリームイーターと相対しつつ、言った。
「見せてみなよ、君のいう、武術の神髄とやら」
 挑発する様に、言葉を紡ぐ。しかし、その瞳に嘲笑の色はない。油断なく相手の出方をうかがう――そう、相手をなめて油断するような愚を、陽葉はおかさない。
「先に言っておくけれど、精神が伴っていないなら、どれだけ型を鋭くしても意味は無いからね」
 ぴくり、と、ドリームイーターが反応した――様な気がした。
 自身の武の真髄。
 それを見せつける事を一つの目的としているドリームイーターにとって、聞き逃せない事だったのかもしれない。
「こちらも正面から討たせてもらう」
 沙雪が神霊剣・天を構え、駆ける。鋭い一閃。ドリームイーターはそれを自らの腕で受ける。傷はまだ浅い。間髪入れず、犬太郎が続いた。
「俺の武術だ、受けてみやがれ!」
 繰り出される拳! ドリームイーターは、再度自らの腕でブロックを行う。走る衝撃。びり、とした空気が、ドリームイーターと犬太郎の間に広がる。
「駆けるぞ、ライト!」
 凛はライドキャリバー『ライト』に声をかけ、同時に走る。ライトは自らの身体に炎を纏い。凛は接近すると、自らの刃にて、霊体を切り裂く一撃を繰り出した。霊体の損傷――それは、如何に体を鋼に鍛えようともやすやすと防げるものではあるまい。
 とは言え、相手はデウスエクス。それが即座に致命傷とならないことは、凛もわかっている。一撃を加えた凛が飛びずさると同時に、ライトが突撃を敢行した。炎を纏いし一撃――流石のドリームイーターも、これを防ぎきることは困難だろう。炎がその身を侵食していく。
「目標捕捉。戦闘を開始する」
 ガーネットが呟く。耳のあたりよりアンテナが立ち上がり、ゴーグルが顔を覆う。瞳は赤く、輝いた。
 同時に、数多のヒールドローンが展開された。ケルベロス達へ向かって、ドローンが飛んでいく。
「まずは、味方の援護を優先とする」
 相手は強敵だ。警戒しすぎる位が丁度いい。
「元凶のドリームイーターじゃないけど……見せてもらうよ、あなたの武術!」
 言って、睦は飛んだ。かなりの高さ、ドリームイーターの上空まで一気に飛び上がり、翼をしまう。後は落ちるだけだ。
「もちろん、タダじゃないよ! まずは私の武術――存分にっ!」
 その自由落下こそが、睦の攻撃手段。速度を上げ、上空より敵目掛けて落下。接触する寸前、するりと態勢を入れ替え、相手の首を右腕でひっかける。空中より仕掛ける、ネックブリーカー・ドロップ。睦の武術、その技の一つ、『乙女堕天流星(シューティングスタードロップ)』!
 全体重、そして自由落下の勢いを乗せたネックブリーカー・ドロップは、相手の首、そしてたたきつけられる後頭部に甚大なダメージを与える。その衝撃は、しばらく体に残り、その動きを阻害するだろう。
 しかし、その一撃を受けたドリームイーターは、くるりと回転して立ち上がると、睦の前へと立ちはだかった。そのまま無拍子で放たれる正拳突き。
 胸部を狙ってくる!
 敵の狙いを把握した睦は、とっさに両腕でガード。しかし、鋭い拳の一撃は、ガードを突き抜け、衝撃を身体へと到達させる。すべてを、何もかもを吹っ飛ばされるかのような衝撃。
 一瞬、息がつまるかのような感覚。
「うっ、く……ぅ」
 睦が思わず、息を吐いた。だが、意識は手放さない。力を振り絞って、飛びずさった。
 着地する。息を整える。思わず、胸に手を当てた。
 凄くドキドキしている。
 怖いからじゃない。
 痛いからじゃない。
「――――あはっ♪」
 思わず、笑った。
 無自覚の笑みだった。無意識の笑みだった。何故笑ったのか、睦にはわからないだろうし、もし分かったとしても、認めないだろう。今は、まだ。
「なるほど、厄介な拳だ。封じさせてもらう」
 眠堂が護符を構えた。その護符が輝くや、彩と共に図柄が描かれる。と、同時に、ドリームイーターの拳付近が爆発する。
 爆発に乗じ、萌花が鋭い蹴りの一撃を見舞う。デコられ、キラキラと輝くブーツが宙を裂く。睦への攻撃への仕返しと、胸部を狙って放たれる研ぎ澄まされた一撃をドリームイーターは受けきれず、直撃。萌花はその反動で飛びずさり、睦の隣に着地する。
「ちょっと、睦ちゃん、だいじょーぶ!?」
 萌花の言葉に、睦は笑いつつ、
「大丈夫! ちょっと痛かったけど……うん、凄い。達人の一撃かぁ。ふふ」
 答える。
(「う、ヤバ。ちょっとバーサクってる」)
 睦の返答に、胸中で呟いた。
 睦の性格は多少把握している萌花である。ああ、これはちょっとスイッチが入っちゃったな、これは止まらないぞ、と、若干の諦めを感じつつ、
「とりま、あんま無茶しないでよ?」
 と、くぎを刺して置く。
「うん、わかってる! さて、第二ラウンド、はじめようか!」
 と、楽し気に指を鳴らす睦を見ながら、
(「わかってない……」)
 と内心ぼやく萌花であった。

 幾たびの打ち合い。
 拳が飛び交い、武器が飛び交い、技が飛び交い、業が飛び交う。
 ああ、これぞ正しく果たし合い。
 己が技の全てを繰り出し、持てる力の全てを引き出し。
 ただぶつけ合う。ただ高め合う。
 ああ、君よ、みたまえ。
 ここに繰り広げられたるは。
 まさに武術の大決戦。

「確かに素晴らしい動きだね。じゃあ、これは見切れるかな?」
 陽葉が放つ、神速の矢の一撃。その一撃はドリームイーターの拳を突き刺す。
「君の武術は借り物だ。そんなもので、真髄なんて……見せられるわけがないとは思うけど?」
「鬼魔駆逐、破邪、建御雷! 臨・兵・闘・者・皆・陣・列・在・前!」
 沙雪が刀印を結び、九字の印を切る。四縦五横。完成した刹那、沙雪の刀印より、光が刃となり伸びる。これぞ『破邪聖剣・建御雷(ハジャセイケンタケミカヅチ)』。この刃に断てぬ邪はなし。ドリームイーターとて例外に非ず。
 破邪の刃がドリームイーターを切り裂く。続いて、犬太郎が駆けた。幾たびの拳を受けて、その身体にはいくつもの傷がついている。
 だが倒れず。だが倒れぬ。犬太郎もまた、武人であるがゆえに。
「一撃だ、俺のたった一撃を全力で完璧にお前にブチ込む」
 犬太郎の洞察力、反射神経、判断力。その天性ともいえる全ての力を用いて放たれる、渾身の右ストレート。獄炎を纏いし降魔の拳。『神風正拳ストレート(ジンプウセイケンストレート)』! 全力の一撃を、確実に打ちこむ!
 撃ち込まれた拳は、ドリームイーターの腹部にめり込んだ。息をしていれば、確実に肺の中の空気をすべて吐き出しただろう一撃。
 ドリームイーターはまだ消滅しない。
「切り裂くッ!」
 凛が気合と共に、霊刀の一閃を放つ。ドリームイーターがのけぞった。傷口が開く。
「修復弾装填。……ハッチ開放、全弾斉射!」
 傷ついたケルベロスへ、緑の光の尾を引いたミサイルの雨が撃ち込まれる。と言っても、これは攻撃ではない。言葉通り、傷を癒す特殊な弾。ガーネットの『対生命体用リペアミサイル(タイセイメイタイヨウリペアミサイル)』だ。
 ミサイルの爆発、それに伴い発生する癒しの光球。特殊な援護に笑顔を浮かべ、
「噂通り! すっごい!」
 睦が如意棒を構える。弾丸のごとく伸びた如意棒が、ドリームイーターを突き、吹き飛ばす。
 ドリームイーターは吹き飛ばされたまま空中で反転、サイを生み出し、投げつける。
「……それは通さない」
 眠堂が、投てきされたサイの前に立ちはだかった。オウガメタルを纏い、サイを受ける。
「お前さんも、もう満足だろう」
 眠堂が護符を構える。彩、描かれるそれは三本足のカラスの姿。
「髄を射よ、三連矢」
 カラスの姿は刹那。放たれるは三連の矢。『八咫(ヤタ)』による攻撃は、ドリームイーターの身体に突き刺さる。
「ふぅん、もうボロボロじゃん?」
 にまり、と笑い、挑発的に。萌花はリップを取り出すと、すっ、と唇に当てた。
 鮮やかな赤。誘惑の赤。蠱惑の赤。
「じゃあ、そろそろ楽にしてあ・げ・る♪」
 甘い誘惑。とろける囁き。声を聞いたら逃れられない。すべて萌花の思うが儘に。
『R.I.P. Service(リップサービス)』。痺れる恋、痺れる心。
 ドリームイーターにも、その魔法の効果はてきめんだった。力なくうなだれる。もはや、指一本動かす力もあるまい。
「――そのまま静かに。恋に溺れて。消えて行きなさい」
 その言葉をトリガーにしたように。
 ドリームイーターの身体はモザイクに包まれると、跡形もなく消え去ったのだった。

●ケルベロス、完勝する。
 森の中をミサイルが飛び交う――いうまでもないが、ガーネットの『対生命体用リペアミサイル』である。
「うーん、改めて、凄いものだな……」
 凛が感心したように頷きながら、ヒール風景を眺めていた。
「見た目はアレだが特に問題はない」
 ガーネットが頷く。
「所で、彼の容態だが……」
 と、ガーネットが視線を移す。その先には、被害者の武術家の様子を確認するケルベロス達の姿がある。
「ああ、特にケガはないみたいだ。意識もはっきりしてる」
 犬太郎がそういうと、ガーネットは頷いた。
「無事なら、それでいい。……しかし、拳法と言うものは、様々な体系があるのだな……」
 感心するように頷いた後、ガーネットは再びミサイルを放ち始めた。

「無事みたいだね」
 と、陽葉が言う。武術家の男は状況の説明を受けると、深く頭を下げた。自らの未熟さゆえの事件だ、と、恥じ入っている様子だった。
「その様子だと……悩みというのは、やはり修業が上手くいかないとか、そういうものなのかな?」
 陽葉が尋ねた。恥ずかしながら、と男は言う。
「まぁ、なんてゆーか、我流でやってると、迷うこともあるよね」
 持参していた水筒から、温かい飲み物をコップに注いで手渡しながら、萌花が言う。
「一朝一夕、苦も無く積み上がる業じゃねえからこそ、アンタのその拳には価値が生まれるんだ」
 眠堂が言った。
「そうだね。修行の道は険しいし……壁にぶつかる事もあるだろうね」
 沙雪が言う。
「でも、壁にぶつかる、って、ある程度身に付いてるってことだと思うし。んー……似たような志の人と交流するのも一つの手かもよ」
 萌花が言葉を引き継いだ。
 交流ですか、と尋ねる武術家に、睦は、
「うん、ストイックなのもいいけど。私も、戦い方が我流だから、色んな人の戦い方を見たりすると、勉強になるよ。……そうだ! 良かったら、琉球古武術の事、色々教えてほしいんだよね!」
 と、目を輝かせ、睦が迫る。武術家は苦笑しながら、助けてもらった恩もあります、自分の知りうる範囲でよければ、と快諾してくれた。
「もしよければ……演舞なんて見せてもらえると、嬉しいかな」
 と、沙雪が言う。他のケルベロス達も、興味があるようだ。
 未熟な身の上で見苦しいですが――。
 武術家はそういうと、見事な演武を披露したのであった。

 武術家の技を持つドリームイーターとの戦い。
 そして、その武術家との会話によって、何か得るものが、ケルベロス達にあったかもしれない。
 いずれにせよ。
 ケルベロス達の活躍により、1人の被害者も出すことなく、事件は解決したのであった。

作者:洗井落雲 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2018年2月1日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 2/キャラが大事にされていた 0
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