ただの金づると客を蔑む男

作者:なちゅい

●腹黒ホストの本性
 大阪府大阪市、ミナミと呼ばれる場所。
 関西の人間以外だと馴染みがない名前だが、ミナミは通称で、道頓堀などを含む繁華街を指す。
 そこにあるホストクラブに、ちょっとした悪名高いホストがいた。
 店においてもトップクラスの成績をたたき出すホスト、籔本・拓斗。
 表ではかなり指名率も高く、客を持て成す術を持つ人気が高い男なのだが……。
「所詮、客なんぞ、ただの金づるやろ」
 その客に対してですらも、裏では人としてすら扱ってはいない。ホストどころか人としてあるまじき外道である。
「なんや、はよ疲れた俺様の肩揉まんかい、ボケェ」
 また、同じホストを、まるで物のように扱う男だ。お陰で、同僚からは腫れ物扱い。店長も扱いに困る存在となっている。
「ほな、おつかれー」
 仕事を終えた彼は自宅までのほんの数百メートルをタクシーで移動し、マンションの地下駐車場で降りてからエレベーターを目指す。
 その彼の背後に、いつの間にかタールの翼を背に生やした踊り子のような姿の女性が現われて。
「いい男じゃない。気に入ったわ」
 暗い瞳を持つ女性は僅かに微笑んで腕を突き出すと、燃え上がる青い炎が彼の体を包み込む。
「な、なんやねん、これ……あああああぁぁっ!!」
 炎に包まれた籔本は崩れ落ち、完全に焼死してしまった。
 だが、その遺体は大きく変形し、身長3mほどの大男となる。ゆっくりと起き上がる藪本だった存在を女性は見つめて。
「なかなか、良い見た目のエインヘリアルにできたわね。やっぱり、エインヘリアルなら外見にこだわらないとよね」
「なんや……? めっちゃ苦しい……」
 苦しむ彼へと、女性は笑ったまま言葉を返す。
「なら、とっとととっととグラビティ・チェインを奪ってきてね。そしたら、迎えに来てあげる」
 そんな言葉を残し、女性……シャイターン『炎彩使い』の1人、青のホスフィンはこの場から姿を消していったのだった。

 シャイターンの『炎彩使い』の出現が続く。
「今度は、客をただの金づるだと言うホストがエインヘリアル化するそうだな」
 先んじてヘリポートにやってきた村雨・柚月(黒髪藍眼・e09239)の話を元に、リーゼリット・クローナ(ほんわかヘリオライダー・en0039)がヘリオンで予知を行うと……。
「うん……、残念ながら、そんな事件が視えてしまったよ」
 少しずつこの場に集まるケルベロス。リーゼリットは頃合いを見て、今回の依頼の説明を始める。
「動き出したのは、有力なシャイターン『炎彩使い』だね」
 このシャイターンの女性達は死者の泉の力を操り、その炎で燃やし尽くした男性をその場でエインヘリアルにすることができるようだ。
 出現したエインヘリアルはグラビティ・チェインが枯渇した状態のようで、人間を殺してグラビティ・チェインを奪おうと暴れ出すらしい。
「準備ができ次第、現場に向かうよ。暴れるエインヘリアルの撃破を皆に頼みたいんだ」
 エインヘリアルの出現は深夜1時ごろ。大阪府大阪市のミナミと呼ばれる繁華街だ。
 夜でも人の行き来がある為、ある程度人払いなどの対策は必須と言えるだろう。
「相手はホスト……元、というべきかな」
 客に対しては相手が気持ちよく過ごせる接客を行っていた男だが、エインヘリアルと成り果てたことで、全ての相手に容赦なく攻撃を仕掛けてくる。
 クラッシャーとして立ち振る舞う彼は、眼力で牽制した相手に向かって手にするナイフで斬りかかり、あるいは鮮烈なる蹴りを叩き込んでくるようだ。
「『自身は優れていて、全ての人間は自分の糧となるのは当然』なんて考えを持っている相手だね」
 エインヘリアルとなり、殺人すらも厭わぬ彼をそのままにしておくわけにはいかない。
 また、倒した後は周辺のヒール作業を行いたい。
 深夜とはいえ、眠ることのない街だ。ケルベロス達の歌声や演奏による修復で癒しがあれば、現地の人々を元気づけることができるだろう。
 繁華街に現れるのは、相手を人間と見下す存在と成り果てたエインヘリアルだ。犠牲者が出る前に討伐せねばならない。
「デウスエクスと成り果てた彼に、情けなど無用だよ」
 そうしなければ、周囲の人々の命も危ない。
 だからこそ、全力で当たって欲しいとリーゼリットは参加するメンバー達へと注意を促し、話を締めくくったのだった。


参加者
バーヴェン・ルース(復讐者・e00819)
上月・紫緒(シングマイラブ・e01167)
ヴィットリオ・ファルコニエーリ(残り火の戦場進行・e02033)
佐藤・非正規雇用(ただの金づる・e07700)
村雨・柚月(黒髪藍眼・e09239)
ペル・ディティオ(破滅へ歩む・e29224)
榊原・一騎(銀腕の闘拳士・e34607)
ケイティ・ラスト(蠱惑の猫・e44146)

■リプレイ

●夜中のミナミにて
 大阪府大阪市にやってきたケルベロス達。
 ミナミと呼ばれる地は、夜中になってもネオンが瞬き、街を照らし出す。
「こんな時間でも、街は賑やかなんだな」
 漆黒の髪を風で揺らす村雨・柚月(黒髪藍眼・e09239)は念の為にとスマートフォンで時刻を確認するが、間違いなく午前0時を回ったところである。
 ケルベロスである以外は普通の学生である榊原・一騎(銀腕の闘拳士・e34607)はあまり女性と縁のない生活を送っていたからか、初めて来る歓楽街という場所をやや俯きがちに歩いていたが。
「炎彩使い関連の依頼に入るのは初めてだけど、やる事は大して変わらないみたいだね」
 そうして、彼は今回対する敵の話題を仲間達へと持ちかけた。
「前から思ってたけど、シャイターンって趣味悪くない?」
 幾度かこの手の依頼に参加している金髪の少年、ヴィットリオ・ファルコニエーリ(残り火の戦場進行・e02033)が事件の元凶となる炎彩使いについて考える。
 相手は炎と略奪を司るシャイターンとはいえ、選定されるエインヘリアルの行く末を、ヴィットリオはケルベロスでありながらも、心配にすらなってしまうと語った。
「――ム。確かに、女性を金づる扱いとは……な」
 右目に地獄の炎を燃え上がらせたバーヴェン・ルース(復讐者・e00819)が話題の中心をエインヘリアルとされたホストへと移すと。
「女の子と話して、お金まで貰えるなんて羨ましい職業だな」
 竜派ドラゴニアンの佐藤・非正規雇用(ただの金づる・e07700)が本音を語る。
 お金を払ってでも女の子と話したいという非正規雇用に、同じ旅団でそれなりの付き合いがある柚月は呆れながらも、彼らしいと考えていたようだ。
「人の恋心を利用してるみたいで、ヤな人ですね」
 眼鏡女子の上月・紫緒(シングマイラブ・e01167)は、今回の相手に嫌悪感を示す。
「我は比較的、好感は持てたがな」
 一方で、外套に身を包むペル・ディティオ(破滅へ歩む・e29224)は他メンバーと異なる考えを持つようで。
「裏でどう思おうが、表では割りきって客に完璧だからな。実力が全ての世さ」
 もっとも、その当人も過去になってしまったようだがと、ペルはかすかに笑う。
 そいつが人間だったときには、それでもホストとして最低限のプロ意識はあったのだろうとヴィットリオも推察はするものの。
「女性を食い物にする感じの奴、ってのは同じ男として許せないよね」
「元同業者として、コイツにプロの心意気ってのを教えてから殺してやるにゃ」
 怒りを露わにする彼の後方で、年の割りに大人びた少女、ケイティ・ラスト(蠱惑の猫・e44146)が夜のネオンに照らされた目を光らせる。
 そこで、こめかみを叩いて考えていたバーヴェンが思ったことを口に出す。
「深く言うつもりはないが……、その心は……その関係は悲しすぎたのではないのか?」
 それについて、誰も言葉を返さない。一騎も小さく首を横に振っていた。
「……思うところはありますけども」
 皆の恋を叶え、皆で幸せになりたいと話す紫緒は、これ以上、悲劇を大きくさせないと誓う。
 柚月もケルベロスとして、デウスエクスの被害を最小限に食い止めると呟いて。
「ならば今は……この哀れなエインヘリアルが街に飛び出して、更なる悲劇を生まないようにしなければ」
 頷き合うメンバー達は、足早に現場へと急ぐのである。

 街にはすでに、エインヘリアルとなった男が出現していた。
「お前ら、はよ俺様の養分にならんかい!」
 見上げるような大男と成り果てたホスト、スーツ着用の籔本・拓斗が歓楽街を闊歩していた。
 それを見たバーヴェンは剣気解放し、周辺の人々を無気力化させる。
 数人のメンバーがその一般人対応へと当たり、非正規雇用は敵を中心に周囲へとキープアウトテープを張り巡らし始めて。
「この先、繁華街だと思ってる? 今日は地獄の一丁目だぜ!」
 グラビティの所持が非正規雇用のみとあって、他メンバーは直接人々に声がけして対応に当たる。
 一騎は周辺の人に隣人力を使って呼びかけて説明し、紫緒はラブフェロモンで人々の注目を集めた後、凛とした風を吹かせて。
「ケルベロスですよ。ここは戦場になるので、急いででも慌てずに避難してくださいね」
 この場の人々を冷静にさせ、彼女は避難誘導させていたようだ。
 一方で、エインヘリアルを囲むは、柚月、ペル、それにディートを駆るヴィットリオだ。
「なんや、お前ら」
 威嚇してくるエインヘリアル籔本に対し、すぐさま戦いに持ち込もうとするメンバー達だったが。
「待って、ちょっと待つにゃぁ!」
 ケイティがエインヘリアルの前に飛び出して叫ぶ。
「こんなイケメン、ここでぶっ殺すとかあり得ないにゃあ! 何とか、何とかにゃらんのか?」
「……?」
 籔本は訝しげに、自分に擦り寄って靴にキスするケイティを見つめる。
 自身を花売りだと称する彼女は、両腕を広げて。
「駄目だにゃぁ……。猫は、猫の全てを捧げてもいいから、この男を助けて欲しいにゃあ」
「け、ケイティちゃ~ん! 今夜も最高だぁ!」
「佐藤さん……」
 そんな彼女の姿に、非正規雇用は財布に手を伸ばす。この場の柚月は苦笑すらしていたようだ。
 ケイティはなおも、艶かしく相手に接して。
「ね、ここは猫と一緒に逃げるにゃぁ……。お願いだにゃぁ」
 ケイティは十分に相手を油断させたと見て、腰に隠していた手裏剣を相手の首筋に突き立てようとする。
「バカが、見え見えやぞ!?」
 だが、それを籔本が振り払うと、ケイティがナイフを拾いながら笑う。
「ま、全部嘘だけどにゃ。にゃはは!」
 奇襲は失敗したが、それでも避難の時間を稼ぐには十分。
「エインヘリアルよ……相手は我らだッ」
 叫び、仕掛けるバーヴェンに続き、人々の避難をあらかた済ませたメンバー達も合流し、ケルベロス達は攻撃を開始したのだった。

●その接待は受け入れられない
 時間稼ぎは十分。
 周囲の人の避難が進んだところで、ケルベロス達もエインヘリアルの殲滅にかかる。
 中衛に立っていたペルは、仲間が仕掛けるタイミングで宙を舞っていて。
「そら、元人気ホスト、指名してやるぞ。もてなしてみるといい。実力派だろう?」
 外套をはためかせたペルがエインヘリアル籔本の頭上から強襲し、流星の蹴りを見舞って相手の足止めを図る。
 バーヴェンが自身を地獄の炎で包む後方で、ドラゴニックハンマーを両手で構えた柚月が竜砲弾を発射し、エインヘリアルへと叩き込んでいく。
 足を竦める敵に、手前の紫緒がなおも仕掛ける。
(「彼を想えば、私はどこまでも進めるから」)
 紫緒は刹那、脳裏に恋人の姿を思い浮かべながら、恋獄ノ大太刀で緩やかな弧を描いて斬りかかる。
「せやったら……、お相手いたします」
 ホスト口調に切り替えた藪本はナイフを取り出し、こちらへと切りかかってきた。
 それを受け止めるは、ライドキャリバー、ディートに乗るヴィットリオ。すでに彼は、事前情報を元に防具で相手のグラビティの対策済みだ。
 騎乗しながらの戦闘は、ディートにも負担を強いることにはなるが、ヴィットリオはその分機動力を活かして縦横無尽に戦場を駆け回り、ディートのスピンに合わせて精神を集中させることで相手の体を爆発させていく。
「お前の相手はこっちだよ!」
 仲間に気を取られる敵を、同じく盾役を請け負う一騎が挑発しながら相手の頭上より急降下蹴りを喰らわせた。
 睨み付けてくるエインヘリアルの形相はとてもじゃないが、接客に携わる者の表情とは思えない。
「壱号機から捌号機は前へ! 負傷者の治療を優先!」
 敵の攻撃に晒される前列の仲間の手前へ、非正規雇用がヒールドローンを展開していく。彼のオルトロス、店長もくわえた神器の剣でエインヘリアルへと傷を増やしていたようだ。
 そして、死角からはケイティが近づく。
「……ド三流のゴミ男。生かす価値なんてない、死んじゃえ」
 彼女の放った手裏剣はエインヘリアルの体を斬りつけ、内蔵された毒で侵す。
 そこへ、力を高めたバーヴェンが近づき、愛用の斬霊刀の刀身を雷の闘気で包み、突き出す。
 着ていたスーツを破かれながらも、エインヘリアルは睨みを利かせて蹴りかかってくるのだった。

 元人間とは思えぬほど、タフなホスト。
 荒々しい接待は、一騎がメインとなって受け止めることとなる。
 重い蹴りを受けた彼は怯みながらも、愛用の「ブーステッドフィスト・シルバー」を装着した拳を強く握りしめて。
「凍らせて、砕くっ!」
 正面から一騎が拳を叩きこみ、グラビティによる衝撃で相手の腹を凍りつかせていく。
 そこを目掛け、ディートがガトリングガンを掃射し、凍らせた身体を砕きつつ痛打を浴びせかける。
「燃え上がれ、活力の炎っ!」
 騎乗するヴィットリオは体内のグラビティ・チェインを炎に変えて。
 雪のように周囲に舞い散る白い火の粉は幻想的な光景を生み出しながら、盾となる自身や一騎の傷を癒していく。
 非正規雇用も気力を撃ち出してそのサポートを行う手前で、他のメンバーが全力でグラビティを発する。
「一緒に気持ちよくなるって気持ちが第一だにゃ。接客舐めんにゃ!」
 ケイティは相手の傷を斬り広げようと考えていたが、グラビティの装備に問題があったらしい。
 それでも、彼女は惨殺ナイフを煌かせ、エインヘリアルにトラウマを見せ付ける。
「ぐっ……」
 額に手を当て、顔を歪める藪本。
 だが、彼はホストとして、全力で相手を持て成そうとナイフを振りかざす。
「クク……、大した歓迎だな。客だけでなく得物の扱いも悪くない」
 ペルは相手の戦いぶりを観察して評価を示すが、すぐに小さく首を振って白き魔力で生み出した白雷を己の拳に宿して。
「もっとも、簡単に満足はしてやらんが。……食らえ」
 そのまま、ペルは強くエインヘリアルの胸部へと拳をぶつけていく。
 敵の体に駆け巡る雷は、そいつを痺れによってわずかに拘束する。
「汝の魂に……」
 動けぬエインヘリアルへと、バーヴェンは鞘に収めた斬霊刀の柄を握り、グラビティを集中させて。
「救いアレ!!」
 抜刀すると同時に彼は刃を一閃させ、相手の体を断ち切らんとする。
 だが、倒れない。踏みとどまる敵に、今度は柚月が攻め入った。
「いい加減倒れやがれ! エレクトロドライブ!」
 電磁気の力を秘めたカードを発動させた柚月は、敵に己のギターを投げ飛ばす。
 同時に、己の翼を羽ばたかせた紫緒が地獄の蒼炎を舞い上がらせ、その手に黒と青の刃が顕現していく。
「私のこの黒剣、これって一度は手放した力なんですよ」
 恋に救われた彼女にはもう、狂気は不必要なもの。
 ――ただ、この狂気で誰かを救うことができるのなら。
「この戦いの一時だけ、狂気に染まりましょう」
 鞭のようにしなる刃は相手の体を打ち付け、切り裂いていく。
 さらに、電磁気を帯びたギターの殴打を浴びた敵はさらに雷を浴びせられてその身を竦めた。ブーメランのように戻ってきたギターを、柚月は見事にキャッチする。
 ナイフを握るエインヘリアルは切りかかろうとするも、身体が動かない。
 そこを狙った一騎が、ドラゴニックハンマーを振り上げて。
「その歪んだ進化の力、奪わせてもらうよ!」
 強かに打ちつけた一打が、エインヘリアルの全ての可能性を打ち砕く。
「な、なん、やて……?」
 巣に戻った薮本の全身が完全に凍りつき、すぐに弾け飛ぶ。煌く氷は夜の街へと消え去ってしまう。
「せめて祈ろう。汝の魂に幸いあれ……」
 散っていった敵へ、バーヴェンは再び祈りを捧げていたのだった。

●夜のミナミで思い思いに……
 戦いが終わり、ケルベロス達は夜のミナミに散開して事後処理に当たる。
 ヴィットリオが発する白い炎。それに、戻ってくる人々が興味を示して。
「あ、この白い炎はヒールグラビティだから安全だよ」
 そんな説明をしつつ、彼は道路を修復していく。
「―ム。修復に役に立つグラビティは……ない」
 バーヴェンは瓦礫の移動など、人力で修復の手伝いに回る。こうした行動も、人々を元気付けることに繋がるのだ。
「私の歌で、街を直せるのなら」
 紫緒はフレーズを口にする直前、恋人を思う。
 彼と出会うまでは……いや、覚悟が決まる前は地獄化した舌で真剣に歌うことができなかった。
 でも、今は思いを込めて、人に聞かせたいって思える。
「元気に、みんなの恋を応援できるような、そんな歌の一時を」
 ――こう思えるようになったのも、全てあの人のお陰。だから、皆も恋をして幸せになって欲しい。
 響き渡る紫緒の恋の歌に集まる人々は耳を傾け、しばしの間聞き惚れていたようだった。

 一騎はヒールドローンを飛ばして修復に当たっていたのだが、彼は創作活動で作っていたゲームBGMを流す。
 眠らぬ街で流れる静けさをイメージした曲に興味を示す人々もいたものの、手早く修復を済ませた一騎は足早に撤収していたようだった。
「佐藤さん、歌うならギターで伴奏しましょうか?」
 ブラッドスターを歌っていた柚月は、非正規雇用が歌うとあって提案を持ちかける。
「もう今夜は帰らない~♪ もう今夜は帰らない~♪」
 すると、それに同意した非正規雇用は息を吸って歌い始める。柚月もメロディを確認しつつ、ギターの音色を響かせていた。
「帰らないったら帰らない~♪ 今夜は朝まで、Hold me Tight!!」
「……やっぱ、佐藤さんだった」
 メロディはいいものの、余りにナンセンスな歌詞に柚月はまたも苦笑していた。
 ……なお、非正規雇用は街の修復完了後ナンパに繰り出したようだが、身ぐるみ剥がされてゴミ捨て場に寝転がされることになるのは、別の話である。

作者:なちゅい 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2018年1月27日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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